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. 今回は前回記事:テークバックで説明した、野球投手のテークバック動作について更に詳細な説明を行います。

 特に様々なピッチャーごとの動作の違いや種類などを整理していきます。

※本記事と併せご覧ください。
野球投手のテークバック

1. テークバック=「開始ポイント・「上げ動作トップ

 投手のテークバック動作は、おおむね「開始ポイント」「曲げ動作」「トップ」の3つの要素で説明することができます。
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写真図1: テークバック動作の3要素:「開始ポイント」「曲げ動作」「トップ」

 本サイトではテークバックの開始を「ボール腕の肘を曲げ始める瞬間」としており、その時のボールの位置を「開始ポイント」とします。
 またトップ状態を「前足裏の全体が地面に接した瞬間」とし、その時のボール腕の状態を「トップ」としています。
 「上げ動作」とは、この「開始ポイント」から「トップ」の間のボール腕の使い方のことを指します。

 テークバックを始めるポイント、そこからの上げ方(曲げ方)、前足が地面に接した瞬間の腕の形、この3つの要素でその投手のテークバック動作を説明することができ、動作の個人差や問題点を把握するのに生かすことが出来ます。



2-1. テークバックの要素①「開始ポイント」

 ここから3要素それぞれをテーマに、様々な投手のテークバック動作を見ていきます。

 最初の「開始ポイント」について、まずはそのベースとして大谷翔平投手・ダルビッシュ有投手を挙げます。
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写真2-1-1 / 2-1-2: 大谷翔平投手・ダルビッシュ有投手の「開始ポイント」

 おおむね後ろ足の大腿部の裏側で、背中のラインより外に出ない程度の位置が「開始ポイント」となっています。

 上記2投手はおおむね背中のライン程度まで腕を引きますが、太ももの真裏の位置以上に一塁側に引かないタイプがあります。
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左:http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14145702764
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写真図2-1-3 / 2-1-4: DeNA三浦大輔投手・埼玉西武菊池雄星投手のテークバック開始位置

 これとは逆に、一塁側(※右投手)に大きく腕を引くタイプがおり、このテークバック動作を行う投手は「アーム式」であることが多くなっています。
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左: http://m.sponichi.co.jp/baseball/news/2015/01/18/kiji/K20150118009650270.html
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左: http://photo.kahoku.co.jp/graph/2015/08/31/20150831khg000000002000c/016.html
写真図2-1-5/2-1-6: ロッテ田中英祐・仙台育英佐藤世那投手の開始ポイント
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写真2-1-7: 埼玉西武大石達也投手の開始ポイント(※写真の都合上少し後)
とトップでの腕の状態
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http://www.thesfnews.com/bumgarner-nearly-throws-perfect-game-against-padres/22604
写真図2-1-8: バンガーナー投手の腕の引き具合

 一方で、一般に言うテークバックでの「腕の引き過ぎ」となる一塁方向への引きではなく、別向きの二塁側に引く投手もいます。
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写真2-1-9/2-1-10: グレインキー投手とカーショウ投手の二塁方向に大きく引いた
テークバック開始ポイント

 一見ここからアーム式テークバックを行うように見える両投手は、後述する大谷投手やダルビッシュ投手と同じ仕組みのテークバックを行います。
(※連続写真はサイトトップページ→連続写真より



2-2. テークバックの要素②「上げ動作」

 次の要素2は、開始ポイントから始まるテークバックの「上げ動作」です。
 この動作は概ね、「持ち上げ式」か「アーム式」かの2種類に分かれます。

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写真2-2-1/2-2-2: 大谷翔平投手のピッチング時におけるテークバック動作

写真2-2-3/2-2-4: 大谷翔平投手のキャッチボールにおけるテークバック動作
※いずれも前回記事:テークバックより

 現代の野球指導において、腕・肘・肩に負担が少なく速いボールを投げられる標準形とされているのがこの「曲げ上げ式」テークバックであり、本サイトでもこれを推奨しています。

 これを本サイトでは「曲げ上げ式」「持ち上げ式」「敬礼式」「ターントップ(※旧サイトでの呼び名)」などと呼んでいますが、一方で日本の野球指導で広く一般に使われる「肘から上げる」等の用語は、その表現による誤解や弊害が大きいことから一切使用しません。(理由は注意すべきピッチング指導(4)を参照)

 動きの説明に戻ると、このテークバックは腕を曲げつつ上に上げるという動作であり、以下のような「敬礼」の腕の使い方でテークバックを行うものになります。
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図2-2-5: 持ち上げ式テークバック動作での腕の使い方=「敬礼」
前回記事:テークバックより

 大谷投手を始め、キャッチボールではこの「敬礼」ほぼそのままの腕の使い方です。
 一方で実際のピッチングでは、体重移動と反対に腕が残されないよう、また腕を高速で振るため体に近い上腕を強めに引き上げる必要があることから、肩甲骨のスライドも加わって「肘から上がる」ように見える動きとなります。


 この「持ち上げ式」に対するもう一つの「上げ動作」は「アーム式テークバック」と呼ばれるもので、詳細は別ページで説明します。
 本記事でその定義を一言で言えば、アーム式とは腕を大きく振るか、曲げずに振るか等ではなく、「ボール腕の指先が二塁方向を向くテークバック動作」と本サイトでは定義しています。

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 写真2-2-6/7/8/9: テークバック途中で指が二塁方向を向く「アーム式」の選手例
(DeNA須田幸太・中日岡田俊哉・中日岩瀬仁紀・SBサファテ各投手)

 これに対し「持ち上げ式」テークバックでは、指先は二塁より胸側(右投手なら三塁側)を向いて上に上がっていきます。

写真2-2-10/11/12: 指先が二塁向きよりも胸側を向く「持ち上げ式テークバック」
(大谷翔平投手・菊池雄星投手・黒田博樹投手)

 別の表現で言えば、指の側面、小指の側面が二塁を向きながら腕を上げる動作とも呼べます。

 また一見アーム式と勘違いされやすい黒田投手ですが、指先は二塁よりも胸側を向いており、これは上記アーム式動作の投手とは異なる「持ち上げ式テークバック」として本サイトでは扱っています。
写真2-2-13/14/15: グレインキー投手のテークバック動作における手首の向き

両投手とも上げ動作では指が二塁ではなく横を向く

 グレインキー投手やカーショウ投手らは、開始ポイントで腕を二塁方向に大きめに引いていても、そこから指の側面を二塁方向に向けながらテークバックする、大谷投手らと同じ「曲げ上げ式」を行ってます。

 ここまでの「持ち上げ式」と「アーム式」で動きはおおむね2分されますが、以下の投手ら「持ち上げ式」をベースにしつつ「腕を引き過ぎる」タイプも存在します。

写真2-2-19/20: 東北楽天・安楽智大投手のテークバック動作

 この東北楽天安樂投手は、テークバック動作の開始ポイントは大谷・ダルビッシュらと同じもも裏の一般的な位置ながら、そこから肩甲骨の稼働域を「不要なまでに」ギリギリまで使い、腕を曲げながら大きく背中に引く動作を行っています。
 (楽天入団当初の先輩・田中将大投手も同様の動作でした)

 要素①の開始ポイントで腕を引き過ぎるのと、要素②の上げ動作の中で腕を引き過ぎるのとはまったく別の動きであり注意が必要ですが、完全にアーム式となる①に比べると②の方が許容度は大きめです。

 ただしこの②の引き過ぎは、「inverted-W(逆W)」とし肩肘の故障リスクが高いと主張しているアメリカ野球関係者もいるようで、実際にこの安楽投手レベルの引き過ぎは肩甲骨・肩の大きな可動を強いる割にピッチング能力への寄与は高いとは考えられず、「無用な腕の引き」と考えられるものです。

 しかし今回は余談となりますが、この引き過ぎ=逆Wを拡大解釈し、あたかも持ち上げ式テークバックが悪=アーム式への回帰が必要かのような主張も見受けられ、このように着眼点を見誤った主張に流されないことは重要です。



2-3. テークバックの要素③「トップ」

 3要素の最後はテークバックの最終状態、つまり前足が地面に設置した瞬間の腕の状態となる「トップ」です。

 このトップ状態について、本サイトでは「上腕がゼロ高さにある」「ひじ角度90度or弱」の体勢を標準としています。

写真2-3-1-1/1-2: 大谷翔平投手のトップ状態
「ゼロ高さ」と「90°」

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写真2-3-2-1/2/3: ダルビッシュ有投手・岩隈久志投手・田澤純一投手のトップ状態

 前足が地面に接地した瞬間の「トップ」において、上腕は肩のラインとほぼ平行に位置し、肘の曲がりは約90度となる、この腕の状態をベースとしています。

 ピッチングにおける腕の振りは、【ボールスロー編】2-1:腕の振り方で説明した通り、このトップ状態から上体が回転し行われるものですが、その間に上腕のゼロ高さはリリースまで一定に保たれます。

写真2-3-3: トップからリリースまで、上腕の「ゼロ高さ」が一定にキープされる様子
(※上腕高さが一定の中で、肘の屈曲⇒伸展や肩の外旋⇒内旋は生じます)

 ただしこのトップについて、上記の標準状態の選手達とは異なるバリエーションながら成果を残している投手も多数存在しており、その一つが肘の屈曲が大きいタイプです。

写真2-3-4-1/2: トップで肘の屈曲が大きい投手の例
Dena久保康友・MLBバートロ・コロン投手

 この肘角度について「トップで肘角度が90度より小さい場合、体の回転によって肘が伸びず負担がかかり故障する」と主張する指導法もありますが、これら例外も存在するため絶対のものではありません。

 もう一つのパターンとして、こちらは現在の日本の野球指導において明確に否定されることが多い「肘が低い」「肘が伸びている」トップです。

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写真2-3-5-1/2/3: 「肘が低い」「肘が伸びている」等と指摘されるトップ状態
(※上原浩治・リンスカム・バーランダー投手)

 体の回転は前足接地瞬間から始まるという考えを元に、体の回転開始直前でこのように「肘が低い」と肩関節上部の筋肉が引き伸びた状態となり、「肘が伸びている(曲がっていない)」と腕振り途中で内側の靭帯に負荷がかかり、両者とも大きな故障につながるとされています。

 しかしテークバック動作における腕の引き上げは、実際は前足接地瞬間以降も継続されるものであり、これらの投手はリリースに至るまで上腕を引き揚げ、肘を畳む動作を行います。

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写真2-3-6-1/2/3: 上原・リンスカム・バーランダー投手の
「トップ」以降のボール腕の動き
(※トップがテークバック終点でなくその後も腕をまとめる例)

 これらの動作は上記事例が存在する以上、今回のトップ状態に限りませんが、制球力と耐故障を確保した中で速球を投じるパフォーマンスを発揮できるのであれば一概に矯正すべきものと言いきれません。
 ただし、本サイトではこれらは”標準外であり非推奨の動作”とであると考えています。


※本記事と併せご覧ください。
野球投手のテークバック
注意すべきピッチング指導(4)テークバックの誤り「肘から上げる」「外旋」「意識しない」「直しにくい」


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