2007年06月01日

剛より柔

あの粉塵の量を見ろ。
然程の穴をあけた訳でも無いのにあの量、
恐らくは彼の自重によるものだろう。
あんな石塊を相手取ろうと言うのだから、全く。


痛む背中を気にかけながらも立ち上がる。
足場は悪いが、今のうちだ。
2の手、3の手を取るべく刻印棒に手をかける。
植物印を手に取り瓦礫の山に据え――



――その時




薄れた粉塵幕をつき破り、拳程の礫が一直線に飛来した。
とっさに槌を顔の前にかざして防御を、




ゴッ




……勢いを殺しきれずに槌の柄で額を打った。
つ、と小さな血の流れ。
平常の膂力からして、私の2周りは上を行くのか。


くら、と視界が回る隙に、エズィ殿が立ち上がる。
近づけるな、何もさせるな、と警鐘が鳴る。
先ほど瓦礫に立てた印は、まだある。打ち据えろ!


ゴォンと力任せに印を打つ。


生まれ、出でろ、柔の力。
ざわざわと獣毛が逆立つように蔦が生まれ、
見る見る内に長さを増して蠢きだす。


「捕らえ、締め上げろ!」



少々の足止めにはなるだろか。
今のうちにあなぐらを出でて――地の利を!  

2007年05月19日

土煙。

「私、1人では、さびしい…っ。……貴方も、降りておいで」
突如、メレさんの足元で土煙が上がった。
それは刹那の内に此方へと近づき、大地は粉々に砕けて僕の足を捕らえた。


もうもうと立ち昇る砂埃とは対照的に、場は暫しの静寂。


なんとか半身を起したものの、僕の服は随分汚れてしまっていた。
「その綺麗な血でもって、洗わせて頂けるのかな。お嬢さん。」
嫌味な口ぶりで、仄かな怒りを顕わにしてみせる。

二人の位置はそう遠くはないが、こちらの武器は埋もれてしまっているし、起き上がるのもあちらが先になるだろう。

勝利を手に入れたい訳ではない。
ただ、相手を負かしたい。




故に。






「―――」

手にすくった土は、見る間に真っ白な石へと変わる。
そして出来上がったばかりの礫を、女性の綺麗な顔に向かって投げつけた。

どんな汚い手でも使ってやるさ。
もはや、面倒とか仕方ないといった感情はどこかへ行ってしまった。




絶対に屈服させてやる。  

2007年05月13日

泥んこ:メレ

「――――っ!」

喉の奥で、悲鳴がはじけた。
背中から落ちた衝撃で肺が圧迫される。
したたかに打ち付けられた部位に熱が走った。



先に地面が崩落したお陰で、
まるで穴にすっぽり包み込まれるような形で落下したけれど。

体が綺麗にくの字に曲がってはまってしまって。
おまけに此処は何とも埃っぽい。




『たまには泥にまみれて遊んでみたらどうだい?』






遠くから、エズィ殿の声。
はは。忌々しいね。



槌。ハンマーは何処だ――手の中に在る。良し。



良し。







「私、1人では、さびしい…っ。……貴方も、降りておいで」





本来なら、採掘用の技術なのだが……
半身を起こし、刻印棒に魔力を込めて手近な岩に打ち込む。

ぴしりと小さな音を立てて岩に亀裂が走り――



――それは地面を打ち崩しながらエズィ殿の足元へとひた走る!  

2007年05月10日

反撃。

ガ    キィ。


「…すこし頑張りすぎたかな。」
横に掃われた一撃を、石の腕で受け止める。
正直痛い。

けれど、こういう肉弾戦闘はあまり慣れていないんだろう。
あまりに隙だらけ。あまりに不用意。
受け止めた槌を強くにぎりしめると、大きく振りかぶって、





放り投げた。


そして、
「―――ラハトォッ!」
背後から現れた天使が、弾けるように細やかな姿に分裂してゆく。
「あそこだ。」
指さす先には魔術師の華奢な身体―――の、落下予定地点。

その辺りの地面にひびが入ったかと思うと、
急激に崩落を始めた。

「たまには泥にまみれて遊んでみたらどうだい?」  

2007年05月05日

初手

いやそんなあからさまに面倒そうな顔をされても。


「いけないな。残る思い出は楽しいものでなくては」




エズィ殿の武器を見る。石塊。
武器と称するには余りに其れは、機能を無視しすぎているけれど。
あれがあたれば、粉々になるのは私のほうだろうな。



ならば。
あの石塊が届かぬ程遠くから攻めるか、
あの石塊が回らぬ程近くへ飛び込むか。



――――城攻めをしているのではない。
享楽と、痛みと、スリルを与えに来ているのだ。
やるべき事は、弁えている。




一歩目を踏み出す。次いで二歩、……三歩四歩五歩
徒歩から速度を上げて、駆ける。
疾風の如く、速さを求む。





要はどちらかが面白いかであり、
今日は近接戦闘こそが良と出ただけ。








さぁ、始まりは同じ舞台で踊ろうではないか!







鎚を大きく振りかぶり。
まずは横なぎに、一閃。  

2007年05月03日

厄日。

どうして。

どうして、僕は今日に限って馬車を使わなかったのか。
そう、今になって後悔している。
足早に去るのは名残惜しい、とでも思っていたんだろうか。
柄にも無い。
その結果が、これだ。



「エズィ殿!その出国――――御止めさせて頂こう!」




嗚呼、嗚呼。
何の冗談だろう。
槌の先、そして敵意をこちらに向けて。
一人の女性が立ちはだかっている。
あまりに真摯なその双眸。
思わず眼をそらしたくなる程だ。



引き返すなり、別のルートで出国しても構わない、が。


「邪魔されて遠回りするのも癪だ。
 意地でも此処を通らせて貰うよ。」

そう言って、石像を両手で抱きしめるように構えた。


旅の前に疲れるのなんて真っ平だ。
早いところ、休ませて貰おう。  

2007年04月28日

思い出作りは大切です

朝靄の果てに、うっすらと城門の陰が見えた。
時間が時間だからか、首都へと続く街道に未だ人の姿は無い。
――――好都合。

此処はガレーナ首都の城壁外。
出入国管理局での手続きを終えれば、
他国へ向かうにはこの道を行くのが一番都合よい…はず。

目を凝らして城門を見守る。






やがて。門をくぐる小さな人影が、ひとつ。
いいや、遠くに在る故に小さくとも……
その体躯は油断為らないことを私は知っている。
彼、或いは彼女……あの方の身体、侮ることは無い。
本気になられれば、私など一溜まりも無い。分かっている。

しかし、其れでもこうしてやってきたのは。



「せめて一戦。記憶に残る思い出を」



お誘いの声を上げたのは私も同じ。
ならば私には、あの方に対する責がある。
ガレーナで暮らした思い出が、
飽いてしまった、だったら許せない。
また来たい、と言わしめよう。
其れが私なりの責だろう。




「エズィ殿!その出国――――御止めさせて頂こう!」




止まらぬだろうな、と知りつつも。
自前のハンマーをがちゃりと構え、
今、楽しげに笑みを浮かべて朗と宣言。  

2006年05月29日

汝、右の頬を殴られたら斬り殺せ:ヴォ

「平地に限った場合よね!いよっ!」

馬鹿は本当に怖い。某アホも然り、だ。
平然とそれまで積み上げてきた研鑽を超えてくる。

こっちは思いっきり突きを繰り出してる。じゃぁ避けねぇ。
変わりに、思いっきり斬り裂いてやろう。

ギリッ

聞こえるほどに歯を食いしばる。鈍い音とともに視界に星が舞った。
吹っ飛ばされそうになるのを全力でこらえ、怒りで切っ先が狂わないように、

――ふっ

一息をはく。

「そろそろ、喰いつかせてもらおうか……!」

びゅっ

突き出した切っ先を上空へ切り上げる。手に残るやわらかい感触を一気に切り下ろした。

「あいぎぎぎ。ぶはっ」
地面に倒れて鉄兵がもがく。さすがに腹を切り裂かれてすぐには動けないらしい。

「ぺっ」
口にたまった血を吐き出して、
「オラ、立てよ」

刃に血を滴らせ、油断なく近寄っていく。こいつはどんな手傷を負っていようが油断はしちゃいけない。
ほらみろ。

脂汗を浮かべて、苦しそうに息を吐きながら、

目はしっかりと俺を見てやがる。  

2006年05月28日

んーとんーと:鉄

オープニングヒットはこっちだった

ああ見えてああいう時冷静だろうな、とは思ってたし
こう見えてこういう時も冷静かどうか、分かってなかったかもしれない

というのが当たったっぽい、と思った

とにかく掴まったら九割殺されるらしい

五体を千切っても四体くらい余るから
それはとても困る

破壊神の力は使わない、というのが
どこまでそうなのか分からないけど
とにかく使わないというのは本当だろう(と考える)

この木々は、どちらにとっても邪魔だ

その気になればどちらも木くらい切り倒せるが
別に木こりになりたい訳じゃない
つまり今はとにかく邪魔だ

最初だから横薙ぎで良かったけども
次からは縦薙ぎじゃないと当たらないだろう

で、それは相手も同じ事を考えているだろう

となってくると、分が悪い

鬼叩きはどう贔屓目に見たって
突いてどうにかする武器じゃない

そりゃ、当たれば痛いけどね

走っては隠れ、隠れては走るを繰り返しながら考える

相手はああ見えて冷静だ
でなくては、勝ち続けてこれない

つまり、クールダウンというのでは
こちらより圧倒的に上

なんだけど

じゃぁ逆言って、どう頑張っても
こちらの方が冷静じゃ居られないんなら
少々時間を掛けた方が、いいだろ

『焦れると焦るで一石二鳥、うわー、オイラ上手い!「』と、考えてるのか?」
「うわぁ!」

ドッ

ああ、痛い、突かれたか、しかも、顔、やばい、痛いのは後から来る

と思っている間に

拳が飛んできた、びっくりしていた
そのまま、右足の甲、左足の踵、と
立て続けに貰った

「…!…!…あいっったぁーーー!」

食らうままに後ろに飛んだ

打たれた場所が熱くない
血が出てない、全部徒手だ

威力を逃がしたとかじゃなくて単純に痛いから逃げた

今度は完璧に読まれていた
そりゃ、一回カウンターしてみせたら相手だって

こういう時だからこそ冷静になる

踏み込んでくるのが見えた

今度は突いてくる

キラっと光ったから間違いない

大振りを捨てて徒手で崩す、そっから刀
ジャブジャブストレート、ってのに近い

常套手段、つまり効果的だ

「頭でもまだ俺の方が上だ!」


重心が完璧に崩れている
どう踏ん張っても、重心が崩れたら立て直しが居る

一手遅くなる

のは

「平地に限った場合よね!いよっ!」
ぎゅっと捻って足を蹴り出す先は、後方の樹木


「せぁ!!」
不思議な体勢でストレートを振る  

はっは:ヴォ

「オっオイラ、が、いつもいつも死ぬと思ったら大間違いやからなぁー!」

鉄、構え。

「阿呆。大事な金づるを殺すわけがねー」

俺も構える。

「マっマジデ?」

ちょっと安心させて。

「9割殺しだ」

死刑宣告。

「それ死んでねぇ?」

落胆させて。

「気のせいだろ?」

俺は嬉々として。

―― ROUND 1 FIGHIT ! ――

「さっさと死ぬなよ、少しは楽しませろ!」

うっそうと茂る森の中で、俺の得物、つまりは大太刀は振り回すには不向きだ。
逆に鉄の鬼叩き。――――まぁ鉄棒はそれなりに扱える。

じゃぁ殴る。蹴る。
戦場じゃぁよくやることだ。なんら変わりはねぇ。

警戒している鉄に不用意に飛び込んだところで、さがられるだけ。
こっちは餌を用意した。この状況殻脱出できるひとつの条件だ。

あとはこっちの隙を見せてやれば……

「蔦が邪魔でみえねー」

木々から垂れ下がる蔦を払いのける振り、

顔の前に「わざわざ」腕を通過させ、一瞬の死角を作る。

「隙アリィ!」

かかった。
瞬間的に腕を引く、このままぶっ飛ばしてやる。
と、視線の先に鉄の姿がない。

「へっへっへ」

横か!
ドスンという衝撃を受けてよろめく。クソが。一応知能がありやがる。

「コロス」

「9割って言ったのに!」

「五月蝿い、黙れ」

キレた俺は、利き腕をぶんぶんと回し、次の行動に思考を巡らせ始めた。  

ヴォvs鉄

はぁはぁ


「おい、鉄ー、出てこい」


はぁはぁ

ああ、まずったなぁ


鉄兵は両手の平を正面に向け
それを脇下までぐっと引いて
息をすーっと吸い込み
そこからゆっくりと吐き出した

はぁ…はぁ…

ふぅーーー…

荒い呼吸はすっと収まり
虫の声やら梟の声が響くだけになった


えーと…なんだっけ


手付金を2億、払いが遅れたのが悪かった
要するに「けじめ」が必要なのは分かってるんだけど
どーも今日は機嫌が悪かったらしい

今手持ちが無いし


「どこだ」


声が近いので
体がビクっとなりそうになった
あぶない

なんというか、草を触っても気が付かれそうな気がする

といって、土を踏む音にびびっていたら歩けもしないんだけど
枯れ木でも踏み折ったら即座に気が付かれそうな…


触らぬ神に崇りなしというけど
もう触っちゃってるからどうしようもない
不死身だけど殴られたら痛いんだ


「音がしなくなった位置はわかってんだ、ここら一帯焼いてやろうか」


大丈夫大丈夫…そこまで面倒な事はしないはず
動揺させる手段だ…


「よーし、今出て来たら20で許してやる」


20億…は無いだろうし…
20発?それでもかなり嫌だが
出て行ったら「歯を20本」と言われそうで怖い


「じゃぁ2でどうだ」


落ち着け…場所が分からないから声を出してるんだ…
大体急に数字が減ったのが怖い「腕を2本」と言いそうだ
そう…場所は分かってないんだ…だからおびき出そうとしてるんだ


「…よし、それじゃ、俺に勝てたら見逃してやるぞ」


むむ


「しかも破壊神の力は使わンぞ、今機嫌がワリーのは
分かってるだろ、憂さ晴らしに付き合えば少し位割引してやるよ」
「乗った!あづ!!」


バキバキと勢いよくおびき出されたと同時に
ほっぺに一直線の火傷が出来た


「出てきたな…条件は本当だ、が、機嫌が悪いのも本当だ、とりあえず死ね」
「ヒッヒィィ!!う、うおお!やってやるぅぅ!(こ、こえー!)」


どうも本末転倒な思考をしている事には気が付かなかった
動転しているらしい


「オっオイラ、が、いつもいつも死ぬと思ったら大間違いやからなぁー!」  

2006年04月21日

「VSラキス=レイトラント」:ヴォ

「やれやれ」
ため息が出る。
ため息くらいも出るはずだ。久しぶりに仕事から戻った俺に宛てられた手紙。
差出人はラキス=レイトラント。

俺の数少ない知り合いの中でも、トップクラスで苦手な相手だ。
どうもこう、やりづらい。

ヴォルクルスは再び手の中にある一枚の紙切れに視線を落とす。
たった一行、わずか数文字で書かれたその手紙にはこう書かれていた。

「明日の昼、血達磨の前で」

ご丁寧にキスマーク付き。行かなきゃ行かないで何されるかわかったものじゃない。
ヴォルクルスはもう一度、深いため息をついた。


――――翌日。

「ごめんごめん、まった?」
「別に。用件は?」
「うーわそっけない。美女に呼び出されたんだしもうちょっとうれしくしたらどーよ」
「用件」

「んー暇だからさー。あたしの相手してよ」
「・・・は?」
「はい、はっじめー」

わけがわからないというヴォルクルスを無視して、ラキスの両手に魔力の光が宿っていく
「いや、お前ちょっとまて! 俺武器すらもtt・・・」
「天魔!」
「キケヨ!」
「最終!」

「オイ、テメェェェェェェェ!」

……
…………

「ふぅ、すっきりした」

にこやかに去っていくラキスの後ろでは、無防備に天魔最終の直撃を受け、黒こげとなった哀れなヴォルクルスの残骸が横たわっていた。

「またよろしくー」

「ぜ……ゼッテェ、コトワル……」

それだけをなんとか搾り出すと、ヴォルクルスの全身から力が抜けていった。  

2006年02月24日

「犬死に」 side:Dystopia

無碍に失われた命に悲しむわけでもなく、かといって事を起こした目の前の男に憤激している様子も無い。無表情の仮面の下に、全ては押し込められている。
ただ、番犬の目に、それは隠しきれていない。獅穏の周囲の空気が黒い霧に澱んでしまっているかのような錯覚。
「答えなさい」
感情の全く篭らない声
機械を思わせる無駄の無い動きで掲げられた手の先が発火したと思いきや、次にそれは番犬の右腕を焼いた。
「早く。次は逆の手を焼きます」
尋問。いや、これは拷問だ。
ひたひたと死の時が近付いている。それは、自白をしようがしまいが、おそらくそう遠くは無い時間に、訪れるであろう。
「…」
番犬が息も切れ切れに何かを呟いた。獅穏が耳を近づける。
「話せ」

「無駄死には、しねえ…」

瞬間、番犬の背中が大きく裂ける。危険を感じ、退こうとした獅穏の襟首を、番犬の左手が掴んでいた。
「貴様!」
何処にそんな力が残されていたのか、それとも番犬が最後の力を振り絞ったと見るべきか。
そして番犬の背中からは、血に濡れた巨大な砲身が突き出していた。
「散れよ!」
番犬の高笑いを轟音が掻き消した。炸裂弾。それが零距離で爆発したのだ。
硝煙の霧の向こうで、上半身を全く無くした番犬の姿を獅穏は見やった。
「迂闊だったか、」
エナジーコートの効果をもってしても、流石に抑えきれなかったようだ。獅穏は口から血溜まりを毀すと、そのまま床に倒れ込んだ。


その事を宿にいるカインは知らない。



  
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2006年02月11日

「vs片瀬藍」:ヴォ

今日は休日。
私は薬局を営んでいるせいもあって、なかなか自分の時間が取れない。

ぶらりと町へ出てきて歩いているだけでも何時もとは違う。
ついさっきかったばかりの肉まんをほおばりながら、街の中央を走る大通りを歩く。

「おい」

まさかその声が自分に向けられているとは気づかない私は、こぎれいに並べられた小物に目を取られていた。

「おい」
「え? 私?」

背後まで迫った声と気配にようやく振り返ると、
「あ、ヴォルさん。こんにちはー」
「気づくのがおせぇ」
こんな街中で出会うには少々珍しいその人物はかなりご機嫌斜めの様子。そう察した私は、挨拶もそこそこにその場を離れようと足早にその場を離れる。
が、

「ヒマダ。ブットバス」
「なんて横暴な!」

あまりに理不尽なその言葉が、私のせっかくの休日に別れを告げさせた。
こうなったら逃げても無駄。(当然逃げたいのは山々だけど)
一刻も早くこの事態を収拾するには……
「先手必勝!」
持っていた食べかけの肉まんを投げつけ(美味しかった)、距離をとる。
こちらの得物は槍。間合いの点では私のほうが有利だ。
だけど相手は百戦錬磨のヴォルさん。さてどうしたものか。
せっかく不意をついたところだし、突いちゃえ。

「せぇぃっ!」
通行人が見守る中(視線が痛い)、私の槍先がヴォルさんを貫く!
「……食い物を」
うっわ、案の定避けられてるし。
「粗末に」
やっば、後ろ取られてるし。
「すんな、阿呆」
あー、もー。考える前にぶん回す!

伸ばした腕に力を込めて、横なぎに槍を振るう。鈍い音とともに硬いものに当たった衝撃が、私の手を痺れさせた。
「いい反応するじゃねぇか」
そりゃどうも。
柄で槍先が巻き上げられ、そのままヴォルさんはもぐりこむように私の懐へ身を沈ませると、
「避けれるか?!」
楽しそうで何よりです。
私の休日はそこで終了。
見事にクリーンヒットした峰打ちは、久しく戦いを離れた私を気絶させるには十分だった。

「……暇つぶしにもならん」
そういい残して気絶した私を放置していくヴォルさん。
襲い掛かっておいてなんて言い草なんだと、薄れていく意識の中で私はため息をついた。
  

2006年02月07日

SIDE:Heaven’s Varrey 「確定」

「さァて」

ひとしきり笑った後
緩い表情を引き締める

「締めるかァ」

弾けるように車輪が回る
相棒が駆ける姿をワイプで頭の片隅に映し
対象からの視点を誘うように旋回する

「ははっはァァ!!此処だ、三下ァァ」

高速で駆け抜けるその肩に
再びRPG-7を構える

「フッ飛べ」

今の相棒さえいなければ、この界隈で並ぶ者のなかった精度
王者の座を追われたとはいえ、その命中率は健在だ

しかし、既に一度見せた手の内
ウコバクも素早く反応し、目に見えぬ障壁を撃ち放つ

手前で炸裂する弾頭


「掛かったッ!ハハァ、スモークだ!」

榴弾に仕込んだのは炸薬ではなかった
相棒が対象に到達するまで
膨張する煙がウコバクの視界を奪う

互い知ったるチームの完璧な時間計算だ


「頭脳も三下、お、おおっとォォ」

ブッ飛んでくる障壁をかわし

射程距離ギリギリ、小高い丘に陣をとった


「御待ち兼ねだ、ニキータァァ」

Heaven’s Varreyの代名詞
リモコン操作型ミサイル、ニキータであるが
そのごてごてした外観 およそ既製のものと同一とは見えない

ミサイルそのものに視界をダイブさせる荒業
そのコネクトに加え
まだ実用段階には至らないが、魔力を視界に反映させる試験形コネクトを接続してある

「ブラァック!スモークが晴れきる前に決める、障壁の範囲を固定してくれ」

「了解だ。障壁の展開状況の確定まで踊ってくる、何秒欲しい?」

「40!」

「30だ」

「お前さん商売にも向いてるぜ、撃つぞッ」

「焦げた肉でも文句は無しだ、いいな!」


轟音とともにミサイルが射出される

瞬間、鉄色の眼はミサイルの視点へと変わる


「見てやんよォ、お前の、死角」  

2006年02月02日

「vs不二重」:ヴォ

普段は人通りなどまったくない崩れた廃墟に影がひとつ。
太陽はとうに地平線に沈みきっている。

閑散とした廃墟で、影は何かを待つようにその場から動こうとはしない。
雲間を縫って、月の光が影を照らした。
漆黒のコートに身を包み、燃えるような赤い髪、そして鋭い視線。
カイン・ヴォルクルスはここでとある人物と待ち合わせをしていた。

待ち合わせとは言うものの、カインの手には何時もの愛刀が握られている。
色恋沙汰ではないようだ。まぁ彼を知る人物であれば、そんな浮いた話があるはずもないというのはわかりきったことなのだが。

「……来たか」

不意にカインが口を開いた。
あたりには闇が広がるばかりで、動くものといえば風に舞う枯れ草くらいである。

「……フフフ、お待たせしまシタ」

それは夜の闇を引き連れてやってきた。夜を統べる者。不死者達の王。
ヴァンパイア。
忌むべき存在でありながら、どこか憎めない男、不二重。
カインの待ち人だ。

「さて、用件は伝えたはずだが?」そういってカインが黒刀を抜き放つと、
「ええ、伺っておりまスよ」にこやかに不二重も身構える。

「オラ、来いよ」
すぅ、と右手を前方に突き出してカインは不適な笑みを浮かべた。
「でハ、お言葉に甘えまス」
にたり、と不二重も笑みを返し、二つの影は交錯する。

先手を取ったのは不二重だった。
ゆらゆらと虚ろげだった不二重の身体がふっと消えたように見える。
咄嗟にカインがその場から転がって避けると、いきなり上半身だけ姿を現した不二重が腕を振り下ろしていた。
「はっ、どこ狙ってやがる」
「フフ、やりまスネ」
言葉を残して不二重の姿が再び掻き消える。今度はカインが動いた。
何もない空間めがけて疾走すると、
「そこだ!」
闇を一気に切り裂く。空間に赤い筋が走り、そこからどっと血が流れ出していた。
切り裂かれた闇が剥がれ落ちると、腕から血を流して不二重が姿をあらわす。
「フフフ……でハこちらの番」
ゆらりと無造作に不二重が殴りかかって来た。余裕を持って刀でそれを受け止める。
「フフフ……ハハハハハハハハ……!」
突然不二重が笑い声を上げる。それに呼応するように、刀で受けられた腕に篭る力が跳ね上がっていく。
徐々に、だが確実に推され始めたカインが蹴りを放った。
それを意に介せず、万力の力がカインを押し潰さんとしていく。
なんとか持ちこたえるカインの刀が急に軽くなる。急激な力の流れについていけない体が前のめりによろけたところへ、不二重の鋭利な爪が食い込んでいた。
深々と突き刺さった爪をさらに抉りこむと、カインの顔が苦痛に歪む。

「痛イですカ? 美しい色の血デスね。フフハハハ!」
「……調子、のるんじゃ、ねぇ……!」
突きこまれた不二重の腕を握り締めると、一気に無理やり引き抜いた。
引き抜かれた爪を追うように、鮮血が弧を描く。
それに不二重が気を取られてしまったその一瞬、勝負は決していた。

「コレで、終わりだ! 一切の闇を打ち砕け、龍が咆哮! 吼えろ、ウェイ・オブ・ザ・ドラゴン!」
その声に気づいて視線を戻したとき、カインの黒刀は赤い光輝に包まれていた。
「剣陣旋風!」
不二重の頬を風が撫でた。
刹那、暴風が不二重の身体を宙空へと舞い上げる。
無数の真空の刃が、不二重に襲い掛かっていく。

不二重の身体が地面に叩きつけられるのと、カインが黒刀を鞘に納めたのは同時。
「俺の、勝ちだ」
「フ、フフ……参りましタ」

むくりと何事もなかったように身体を起こす不二重に苦笑しながら、
「メシでもおごってやろう。久々に鬱憤晴らしもできたしな」
「フハッ、鬱憤晴らしだのでス?」
「普通の奴らじゃ殺しかねん」
「……」



「いくぞ」手を差し伸べる。
「お変わり自由でス?」その手をガッチリと掴んで起き上がり、


かくも短い遊戯の時間は終わりを告げたのだった。  

2006年01月23日

SIDE:BlackDog 「Intermission」

ゴゥン……!

程遠くない場所からの爆発音。

「ヘヴン、か」

普通に悪魔ならこれで終わり。このあとヘヴンからの能天気な通信が入って終了。
だが、それがない。

「こちら【黒犬】。ヘヴン、状況を」
「確かに手ごたえはあった。はずすわけがねェ」

わずかに焦りを感じる。得体の知れない何かをヘヴンは感じたようだ。

「成る程? 直撃はした、だが相手は健在。そういうことだな」
「あァ、それもピンッピンでなァ。まったくもって割りにあわねぇぜ、ブラック」
「苦労したあとの食事はうまいものだろう? いつもいってたじゃないか」
「ハハァハ 違いないね。 合流するよ」
「ああ、了解した。詳しい話はそこで聞くとしよう」

――……。

「ふむ」
「ウコバクの野郎の直前でボン、ってわけだよ」
「そのあと、木々がなぎ倒された?」
「そうそう。しかもこの眼でも見えねェときた」

シュヴァイツァはあごに手を当て、思案している。
それをまねて、鉄眼も視線を宙に泳がせていた。

「障壁、か?」定まらない視点のまま、鉄眼が呟いた。
「成る程、それなら合点がいく」

それに賛同して、

「ウコバク程度の悪魔なら、多方面に障壁は晴れないはずだ。俺が牽制しよう。ヘヴンはめくらましの後、障壁のないほうから「ニキータ」をぶち込んでくれ」
「ハハアハ ステーキの出来上がりってか。OKOK。ほら、「アドル」のおもちゃだ」

ぽんと3,4つのマガジンを放り投げてよこすと、鉄眼は奇妙な笑いを浮かべて口を開く

「無茶はいいが、無理はするなよ、ブラック。あんたに死なれると食事に困る」
「ははははは、わかった。覚えておくよ。それにまだ死ぬ気はないんでね」
「じゃぁいくかァ。中年オヤジのラストダンス拝ませてもらうとするぜ」
「了解した。ああ、鼻歌の伴奏はいらない。ずれた音程で調子が狂ってしまうからな」

鉄眼の笑い声を合図に、シュヴァイツァは走り出す。

東の空は徐々に白み始め、夜の終わりはもうまもなくのようだった。

  

「怒れる穏やかな獅子」 side:volcrus

「まだ、死ぬな」

くず折れそうになる男の顔を蹴り上げる。
2つの拳銃は既に手を離れた。この男に戦う気力はもう残ってはいない。

だが、こいつはいささかやりすぎた。

楽には殺さない。死なせてたまるものか。
こいつが持ちうる全ての情報を聞き出し、嫌と言うほどの後悔をさせたあと殺してやる。

獅穏は自分のせいで他人が犠牲になることを嫌う。
それは彼の出世の地である、カグラの消失。そして彼のこれまでの人生で確立された、侵してはならない領域。

それを番犬はいとも容易く踏みにじった。

「答えなさい。お前の組織とは何だ? 規模は? 私たちにたどり着いた経緯は?」

意識があるかもわからない番犬に、矢継ぎ早に質問をまくし立てていく。
返答は、ない。

「組織の本拠地はどこだ? サーヴァ・ヴォルクルスについてどこまで掴んでいる?」

「……」

「答えなさい」

地の槍に突き刺さったままの番犬の右腕が、焼かれた。

「早く。次は逆の手を焼きます」

獅穏の表情は凍りつき、一切の情もこもらない瞳が、うなだれた番犬を捉えていた。  

2006年01月21日

SIDE:Heaven’s Varrey 「捕捉」

「バッタに近接戦闘たァね、毎度の事ながら恐れ入る」

荒く車椅子を飛ばす
懐からウォッカの瓶を取り出し
ぐびり、と気つけの1杯を口に含む

「あんな地雷だらけの戦地に駆りだされなきゃ、俺のフットワークも悪くなかったんだがね」

ははぁは、と御決りの笑いを語尾に加え
一人 夜の戦場で過去を思う

「まァ、お前さんにこんな事言ったって、結局は俺の胃の中に納まっちまうんだがよ」

車椅子が止まる

鉄色の眼の焦点は500m前方
悪魔として固有の名称を持つことを許された存在
いわゆる「ボス」である

「ウコバクか…懸賞金かかってんのか?お前」

鉄眼にとってしてみれば眼前に捉えた敵
しかし傍から見れば独り言である

「は!うすらでかいだけの上に無愛想ときやがった」

自分勝手な結論の後
バックパックから物騒な得物を取り出す
「RPG-7V1」
携行用の対戦車擲弾発射器である

「ブラックにゃァ悪いがこれで幕だ、俺もさっさと帰りたいんでね」

肩口から照準を合わせ、引き金に指をかける

「あばよ」

バシュッ、というキレのいい音と共に発射されるロケット
鉄眼の照準は一寸のズレも無く、対象の頭を吹き飛ばす

はずではあった

ゴゥン…と遠くで上がる黒煙

「終わって…ねェ、浅い…!?」

何かが前方からプレッシャーを伴って近付く
ただならぬ気配、急発進の為にギアを入れる

「なんだってんだよォォォォォォォ」

建物が崩壊し、眼前で木々が倒れる
正体の見えぬ攻撃、神経をフル稼働させて抜け道を探す

(この攻撃、衝撃じゃねェ、物理的な何かで…うおおおお)

間一髪、車椅子を急発進させて左手に回避する
1秒の後に轟音を立てて通過する「何か」

目を開ける

「…
 こいつ、マジでBランクか?」

凪ぎ倒された木々を見て、呆れたようにつぶやく


メインディッシュに限っては勝手が違うようだ  

2005年12月26日

「throw off one's mask 」 side:Dystopia

うまく言い表すことができないが、ぴりぴりとしたとても嫌なものをディストピアは肌に感じた。確実に敵は生きている。
隣の番犬もそれを察知しているようだった。但し番犬の場合には、それよりも獲物を仕留め切れなかったことに対する怒りのほうが、遥かに強い。
「野郎、死んでねえなぁ」番犬が憎憎しい表情で舌打ちをする。
「ウルド様の手を煩わせるようなこたあいたしやせん。こいつは俺がやりましょう。ヴォルクルスの方、宜しく」
番犬の言葉遣いが乱暴になった。
いや、メッキが剥がれたというべきか。
代わりにいつもの胡散臭さだけはそっくりと消えているのだから。
「そうさせてもらおうか」
とはいえ、元から共闘するつもりなどなかったが。
敵の気配に背を向けて走った。窓を身体で破り、酒場を強引に出た。
その一瞬後には、凄まじい魔力の衝撃が窓の割れ目から吹き出し、酒場の屋根を裂いた。
顔を覆った両腕を剥がす。
「ッ、…ヴォルクルスってのは、こっちのほうじゃないのか…。それより、こいつよりもっとやべえのか…?」
番犬はどうなったか。そんな心配をする余裕はない。
焦りから躓きながらも、酒場を後にする。轟音と、番犬ものと思われる銃声が何度も耳に届いた。

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Posted by battle1 at 17:56Comments(0)TrackBack(0)