ピンク映画の現場

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プロローグ
ピンク映画に出会って、4度目の春を迎えた。
その間、ピンク映画をめぐる状況は、大きく変わった。
浅草世界館や新宿国際をはじめとする、各地の成人映画館の相次ぐ閉館。
そして、フジフィルムの35ミリフィルムの生産終了。
特に、商業映画としては、現在、唯一フィルムによる撮影・上映をしているピンク映画にとって、フジフィルムの撤退は死活問題だ。
よく、フィルムで撮影された映像の美しさを賞賛するシネフィルの方々がおられるが、別にピンク映画は、映像のクオリティを保つためにフィルムで撮影され、フィルムで上映されているわけではない。
現存する成人映画館の大多数が、老朽化し、経営も苦しく、今更デジタル上映の施設を導入する体力を持ち合わせていない。しかしながら、細々とでも成人映画を上映する映画館がある限り、映画会社はフィルムでの作品供給を止めるわけにはいかないのだ。
何も、芸術性のためとか、ひと握りの好事家のためにフィルムでの映画製作を続けているわけではなく、そこには、商売としての必然があるのだ。
そんなピンク映画に、国内で唯一35ミリフィルムを供給していたフジフィルムが、生産ラインを廃止した。
そのニュースが伝えられた時、多くの関係者、そしてファンは、「ああ、これでピンク映画は終わった」と思ったはずだ。
しかし、どっこい、ピンク映画は終わっていない。
現在は、フジフィルムが生産したフィルムのストックを使い、映画製作は続けられている。
また、そのストックが尽きたあとは、コダック社のフィルムが供給されることになった。
そう、ピンク映画は、まだ殺されない。

そんなピンク映画であるが、遅かれ早かれ最後の一本が作られる日はやってくる。
いつか、ミスターピンクこと池島ゆたか監督はこう言った。
「生きとし生けるものには、必ず終わりがやってくる。ピンク映画も例外ではない。しかし、その日が来るまで、俺は映画を撮り続ける。」

ピンク映画に出会って4度目の春を迎えた。
そしてその間に、池島監督、倖田李梨、なかみつせいじ、竹本泰志をはじめとする、素晴らしい監督やスタッフ、女優、男優、そしてピンク映画を愛するファンの皆さんと出会うことができた。
そんな出会いによって、私と映画との関係性は大きく変わった。
この素敵で熱い映画、スタッフ、キャストたちを応援したいという想い。
いつか終わりが来るにしても、その時までピンク映画の傍らにいたいという欲求。
それが、「ピンク映画勝手に活性化計画」であり、そのひとつの目標が、ピンク映画の現場ルポであったわけだ。
なかでも、関根和美監督との出会いは、大きなターニングポイントだった。
そこから生まれたのが、昨年公開された東尾真子主演作『若未亡人 うるむ肉壷』の予告編だった。
これは、本来予告編のないOPピンク映画のために、関根監督と作り上げたもので、現在YouTubeでは33万回再生されている。
そんな経緯で、昨年、『奴隷人妻 恥辱のあえぎ』の現場を取材した。
しかし、これは、ひとえに私の能力不足でいまだ記事完成に至っていない。ごめんなさい!
そして、訪れた2回目のチャンス。
2013年2月6日、7日。


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宮村恋、竹本泰志の絡みに指示をする関根監督。


そういうわけで、関根和美監督最新作『浮気調査/情欲裏ファイル』の撮影現場レポをお届けする。
本作は、自称職業監督 関根和美が、これがピンク映画デビューとなる波多野結衣、竹洞組『淫蕩告白 兄嫁の濡れた午後』『三十路義母 背徳のしたたり』の2本に出演の宮村恋、同じく竹洞組『野外プレイ 覗きの濡れ場』でピンクデビューした吉瀬リナと、美形ぞろいの女優陣に加え、なかみつせいじ、牧村耕次、竹本泰志、那波隆史という曲者演技派俳優を起用した、気軽に楽しめる王道ピンクである。
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宮村恋、吉瀬リナ、波多野結衣の美女トリオ!後ろに映り込んでいるのは背後霊(笑)

いい女たちのエロい絡みと、ギャグなのか本気なのか判断のつかないストーリー展開(笑)。
今、こんな感じのピンク映画が撮れるのは、関根監督だけだといっても過言ではないだろう。
ピンク映画という土俵の中で、自らの作家性を観客に押し付けることをせず、一部の映画ファンのためではなく、平日の昼間から、わずかばかりのファンタジーを求めて映画館を訪れた寄る辺なきおっさん達のために作品を提供するという姿勢。
それが、関根監督のスタンスである。

第一章 女優たち
「脚本とキャスティング。その時点で、映画はほとんど出来上がっている。現場であれこれ変更することはほとんどない。時間の無駄だ。」
そう語る関根監督が、今回起用した女優たちを紹介しよう。

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今回主演の波多野結衣。本作がピンク映画デビュー作となる。
2008年にAVデビュー。『レッドクリフ』(2009)でブレイクした台湾の女優リン・チーリン(林 志玲)に似ていることから、台湾を中心とした中華圏での人気が高い。その人気を裏付けるように、Twitterでの彼女のフォロワー数は、39000人!!38万人のフォロワーを有する蒼井そらは別格として、このフォロワー数は現役AV女優としてはTOP10に入る。
まあ、リン・チーリンに似ているかどうかは別として、波多野結衣は、ここ1年でピンク映画デビューした女優の中でもトップクラスの美形であることは間違いない。
作品中では、現在のピンク映画を代表するなかみつせいじ、牧村耕次、那波隆史、竹本泰志を相手に、妄想癖のある弁護士秘書という難易度の高い(笑)役を熱演。スーツ姿のカッコよさ、濡れ場での美しい表情は多くのファンを魅了するだろう。
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2番手には、竹洞哲也監督『野外プレイ 覗きの濡れ場』(2013)でピンクデビューした吉瀬リナ。
当BATTLEBABESにおいても、ここ最近、とみに登場回数が増えた女優である(笑)。
というのも、彼女は『レイプゾンビ2&3』(2013)に女子自衛官 チカ役で初めて我々ボンクラの前に姿を現して以来、若き「おっぱいと血派」の旗手 田代尚也監督の『裸の修道女』(2012)ではタイトルロールを文字通り裸で熱演し、竹洞組を経て、関根組と、明らかにこちら側の女優として、自主制作、エロVシネ、ピンク映画の垣根を越えて活躍。エキストラであろうと、役付であろうと、貪欲に演技する場を求める姿勢は、日本エクストリーム映画界の新たな星の誕生を予感させる。
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なお、彼女は、4月24日でAV女優としての活動を終え、今後は、映画、Vシネをメインに活動する。
それに伴い、名前も衣緒菜(いおな)に変更!
ちらほら聞こえてくる情報によると、今後も目が離せない女優である。
本作品では大物ヤクザの孫娘として登場。関根組の若きレギュラー 森山翔吾を相手に、女子大生役とは思えないエロ・スキルを発動!!ベテラン・カメラマン 下元哲も思わず「いいね!!」を連発(笑)。
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素顔は天然200%(笑)


3番手には、竹洞組『淫蕩告白 兄嫁の濡れた午後』(2012)でピンク映画デビューし、同じく竹洞組『三十路義母 背徳のしたたり』(2012)に続くピンク映画3作目になる宮村恋。
彼女もまた、友松直之監督『レイプゾンビ2&3』のヒロインとして、当ブログではお馴染みの女優だ。
奇しくも今回の関根組は、宮村、吉瀬というチーム・レイプゾンビ共演作となったわけだ。
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撮影前の吉瀬リナ&宮村恋。ってか、スマホをいじってるなんて余裕だな?(笑)

宮村恋の本格的な映画女優としての活動は、まだ始まったばかりだが、常に自分に与えられた役に対して真摯に向かい合い、そのキャラクターとしての人生を歩もうとする姿勢には感心させられる。
今回は、波多野結衣に浮気現場を押さえられる人妻役として登場。
これまでの出演作に比べると小さな役ではあるが、作品冒頭の濡れ場を見事に、情感たっぷりに演じ、3番手としての役目をきっちりと果たしている。
中でも、相手役の竹本泰志とのカラミの合間に見せる、切なくも愛おしい表情は、愛に飢えたボンクラおやじたちの心に深く突き刺さるだろう。
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こんな表情されて、「あなたの赤ちゃんが欲しい」とか言われたら、もう、死んでもいいと思うよ!(笑)

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第二章 俳優たち
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阿吽の呼吸で芝居を魅せるなかみつせいじ&牧村耕次

ピンク映画の華は、間違いなく女優だろう。
極端な言い方をすれば、女優の裸身があれば、それで成立する。
しかし、その女優を引き立て、あるいは、その魅力を場合によっては200%増幅させるのが男性俳優陣の役割だ。特に、AVを中心に活躍している女優の場合、演技力があるとは言い難いケースが多々ある。
濡れ場の見せ方は申し分ないが、セリフのある芝居になるとその実力は残酷なほど露呈する。
女優を巧みにリードし、その実力以上のものをスクリーンに定着させる。それは、監督の作業であると同時に、男性俳優陣に課せられた責任でもある。
今回出演のなかみつせいじ、牧村耕次は既にピンク映画出演20年に及ぶ大ベテラン。また、竹本泰志、那波隆史も現在のピンク映画を代表する俳優だ。
特に、なかみつ、牧村、竹本のお三方は、現在の関根組には欠かせないレギュラー陣。関根監督が、彼らに全幅の信頼を寄せているのは明らかだ。
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現在のピンク映画の顔といっても過言ではないなかみつせいじ

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貫禄の牧村耕次

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実物はかっこいいのに、俺のカメラで一度も格好良く写ったことのない竹本泰志(笑)
ってか、2012ピンク大賞男優賞受賞、おめでとうございます!

那波隆史は、蒼井そら主演の『制服美少女 先生あたしを抱いて』(2004、ビデオタイトル『つむぎ』)でピンク映画デビュー。最近では荒木太郎監督作品に欠かせない俳優として活躍。関根組は、昨年のゲイ映画『one night tune -俺たちの伝言-』が初お目見え。その後、『奴隷人妻』、本作、そして5月に撮影される関根組最新作にも出演が決定しており、新たな関根組レギュラーといってもいいだろう。
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2009ピンク大賞において『三匹の奴隷』(佐藤吏監督)における演技で男優賞を獲得した那波隆史。この作品で、我らが亜紗美をM女として目覚めさせる縄師という、まさに猛獣使いのような(笑)、前人未到の快挙を成し遂げた!
また、関根監督は、新たな若手俳優の起用にも積極的であり、その一人が森山翔吾だ。
森山は『奴隷人妻』、『巨乳天国 ゆれ揉みソープ』(2013)に続き、関根組三作目の登板だ。
今回、アッパーな下っ端ヤクザを演じる太田始も、ピンク映画のベテラン。
荒木組常連の太田にとって、関根組は、森山と同じく、今回が三作目になる。
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森山翔吾。現場では、監督やカメラマンの下元さんにいじられまくり(笑)

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牧村大親分に叱られ、半泣きの太田始。ちょっと、宮迫っぽい(笑)


第三章 ピンク映画ができるまで
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ここで、大蔵映画配給のピンク映画が作られる過程を簡単に説明しよう。

○企画、シナリオ作成、キャスティング、撮影準備
 会社側から題材やテーマについてお題(例えば、「熟女もの」とか、「巨乳ナースもの」とか)が与えられ、それに基づき、シナリオが執筆される。同時にキャスティングも進められる。会社から主演女優を指定される場合もある。女優については、AVで有名でも、ピンク映画のデビュー作は「新人」扱いであり、一般的には同監督で二作品に連続主演するケースが多い。最近の周防ゆきこ、愛田奈々の連続4作主演というのは異例である。
 シナリオは、何度かの会社側の修正を受け、決定稿が出来上がる。

○シナリオ読み合わせ、衣装合わせ
 撮影に入る1~2週間前に、出演者が集合して、シナリオの読み合わせと衣装合わせが行われる。
 シナリオの読み合せは、「本読み」とも言う。ここで初めて、他の役者とセリフのやり取りをすることで、自分の役のイメージを演出側と確認する作業でもある。
 衣装合わせは、本読みと同日に行われる。
 ピンク映画では、衣装、メイクは基本的に自前。事前に監督から指示のあったイメージに沿った衣装を全員が持ち寄り、いくつかの候補から、衣装が決定される。
 こうして、出演者は、各々のキャラクターに関する具体的なイメージを固め、クランクインまでの間にシナリオを読み込み、自分の役を完成に近づけていく。

○撮影
 通常、ピンク映画の場合は3日で撮影される。
 今回の関根組は、2日で撮影された。

○編集、アフレコ、ダビング
 撮影されたフィルムは、現像、荒編集を経て、本編集される。
 これをもとに、アフレコが行われる。
 ピンク映画は、音声は同時録音ではない。あとから、自分の演技に合わせて、役者が声だけを吹き込むのだ。
 これをアフレコという。
 このやり方には、多少現場でセリフを間違ったとしても、アフレコでカバーができる、あるいは、車の通過待ちとか、街の騒音とかを気にせずに撮影が行える(つまり、時間が短縮できる)というメリットがある。
 アフレコが終わると、その音声素材、効果音、音楽などをミックスダウンするダビング作業となる。
 これをもとに、サウンドトラックが作成され、映画は完成する。

○ゼロ号試写
 初号試写とも言う。
 完成した作品を会社に納品する前の関係者試写である。
 これはあくまで、商品チェックという側面があり、製作過程の最後のパートなのである。
 ゼロ号までが、役者にとっても仕事である、といわれるのはそのためである。

○映倫試写、納品
 ゼロ号試写後、作品は映倫の審査を受ける。
 これが、映倫試写である。
 ここで、見えたの見えないの、ほんとにやってるように見えるだの見えないだの、制作側と映倫側の攻防が行われ(笑)、余程のことがない限り、会社への納品ということになる。

○劇場公開
本読みから納品まで、4週間程の工程である。
納品された作品は、3~4ヶ月後に、上野オークラ劇場及び横浜光音座2の二館において封切られ、その後約1年をかけて、全国の成人映画館で順次公開されることになる。
なお、余談ではあるが、よく女優のファンの方々が、ブログに「DVDで観ます」的なコメントを寄せらておられることがあるけれど、残念ながら、基本的にOP映画の場合、ソフト化はされない。
従って、劇場で観るしかないのである。
現在、DMMでは、過去作品のダウンロード販売を行っているが、それも、2年前の作品まで。
なので、お目当ての作品が近くで上映された際には、それこそ、一期一会の覚悟で劇場に足を運んでいただきたい。やはり、映画は劇場で観るのが一番なのである。
ただし、男女問わず、痴漢に襲われる可能性はあるのだけれど。まあ、それも含めてのピンク映画だと思って、楽しんでいただきたい(笑)
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というわけで、次回、Part2では、いよいよ撮影現場に突入するのでお楽しみに。

なお、本作『浮気調査/情欲裏ファイル』は、6月公開予定。


※本記事に掲載した写真は全て、BATTLEBABESが撮影したものです。