牛野小雪さんに、
『皆殺しの歌~200万で戸籍を売った男』 
の書評をいただいたので、

お礼もかねて、
『火星へいこう君の夢がそこにある』 
の感想文を書いてみることにしました。

こちらの本を読んで思ったのは、
とても繊細で描写が丁寧だということ。

牛野氏の性格をそのまま描いたような、
とても几帳面な、お話でした。

これをまだ20代の若者が書いたのであれば、
はなはだ30代。40代は末恐ろしい。
まさに未完の大器、
キレイな花を咲かせる7分咲きの蕾ということか。

著者の繊細な人柄、息づかいを感じながら、
丁寧に文章を拾い読みしました。

牛野さんとは、『こちエビ』
『こちら海老名市役所なんでも課』 で、
小久保真司という人物が出てきますが、
KDPで活躍している、こくぼさんのことですか? 
と問い合わせを受けた時から関係が始まり、
それが縁で交流させて頂いていました。

ときどき気分が乗っていないなというコメントを貰う時があり、
最近、牛野氏の体調の善し悪し、
頭の、キレッキレ具合がわかるようになりました。

火星を読んで、氏への印象は大きくぐらりと変化を遂げ、
強烈な個性として頭に定着しました。
氏の代表作と成り得る、特徴が色濃く出た作品だと思いますね。

『火星へ行こう君の夢がそこにある』は、
物語の細部まできちんと描き込まれていて、
本当に火星に旅行に行ってきたんじゃないの?
そう思わせる描写がふんだんに盛り込んでありました。

空想力が、まるで計算されたように、
ルービック・キューブのように無限の組み合せを披露し、
重厚な縦の糸となり、ナイーブな横の絹糸となり、
2本の生糸が織りなす調べは、
まさに、ト単調のように、
私の心の扉を叩き続けました。

KDPで小説をリリースするクラスになると
大概、この話はどこかで読んだことがあるなとか。
結末が容易に推測できてしまう話が多いものですが、
この話は、わたしには予測不能で、
今までに食べたことのない味覚でした。

まるで、ニューワールドをお披露目するのをためらっているかの如く
スロースタートの序曲に始まり
瞼に浮かぶものすべてが斬新で真新しい印象を受けた。

作者の独りよがりと呼ばれるような飛ばし記事、
(場面が飛んでしまう)こともなく、
時間を秒単位で刻むような不思議な感覚に浸れます。

筆が動ではなく、
静で支配されているのが効をなしているのでしょうね。
物語は静かな、ワンシーンから始まります。

腕立てをする場面では、『もう一回』、『もう一回』と、
益男を名乗る胸板の厚い男に促され
主人公は薄っすらと瞳に涙を浮かべる。

胸板の厚い男には胸毛がはえていそうだな、
しかも、モーホーっぽい、
変なところに1人突っ込みを入れ、
長い長いプロローグを楽しみました。

牛野氏のサイエンティフィカルな小説…。
独自の世界観に触れた人は、
またもう一度、同じ世界を旅したい、
月日をまたぎ、熱く願うことでしょう。

これはある意味、牛野氏の挑戦的、
挑発的な作品だと思う。

良い意味で、ポップで、アバンギャルドで、
KDP作家の刺激になりうる良質なスパイスを
十二分に秘めている。

これからも読者を欺き続け、
いぶし銀のように、黒光りし続ける存在であってほしいと思う。

氏の小説には、独自の語りがあり。
独自の世界観がある。

これは誰にも真似できないし、
日本人特有の、飴色をした瞳のように
不思議な精彩を放っているのは誰にも否定できない。

ぜひこの本を手に取り、
オリジナリティーあふれる世界を堪能してもらいたいと思う。

氏の繁栄を願う。
我が同志、数少ない仲間として。

ちなみに仲間が少ないというのは、わたしのことです。
あまりKDP界隈の人とは交流がありません。