ポンプ関連の基礎知識
2010年12月16日
本日午後、七尾市内富岡町のH家より、ポンプの扱いに関する問合せ・相談があった。
私は気付かなかったが、最近その家は建て替えたようだ。古い家の時、何度か修理に行ったことがあるので、設備に関してはよく覚えている家だった。
家の床下に井戸がある家だ。
建て替えに際して、昔使っていたポンプなどを(我店でなく、建て替え時に来た業社に)据え付け直してもらったようだ。以前は家の中に家庭用ポンプが据え付けられていたが、現在は中庭に野ざらし状態。
据え付け直した業社は、屋外にポンプを野ざらしに置いても大丈夫と言ったらしいが、この「大丈夫」という言葉が曲者。取扱説明書に書いてある「大丈夫」という意味は、蓋が被せてあり、モーター部などに水が入らないから、ショート、漏電などの問題はないという意味だ。
しかし寿命という点では、ポンプ専業の我店から言わせれば、大きな間違い。
ポンプ小屋を造ったりして、水がポンプに直接かからなくした場合は、ポンプに雨が直接かかるい場合と比較すれば(私が沢山古いポンプを見てきた経験からいえば)2、3倍寿命が違う。早い場合は十年もしない内に外側が錆び錆びになるが、いい環境にある場合は20年、30年と長持ちすることもある。
今日私は、そのH家の奥さんにも言ったのだが、ポンプ小屋を造るのが面倒なら、ホームセンターなどに行き、そのポンプの周りを覆う程度の大きさのポリ製の漬物桶やゴミ箱でもいいから逆さまに被せて、配水管の部分だけ切り欠き、上に重石でも載せていくだけでもいい。
本当にそれだけで全然違う。
現在家庭用の浅井戸ポンプは大体9万円前後するが、たった2,3千円の投資で2,3倍寿命が違う訳である。
ところでこのH家の井戸にはもう一つポンプが据え付けてある。
排水用の清水用水中ポンプだ。こちらにも(家庭用ポンプ異常に)大きな問題点が見つかった。
この家の井戸は湧水量が非常に豊富で、放っておくと井戸が床面まで水で溢れるほど満杯になる。以前は、床面より10cm程度下に口径10cmほオーバーフローの排水穴があり、ポンプなど故障してもそこから溝に排水できるようになっていた。
ただしその場合は、水量が多いので井戸の近くの溝から水があふれ、近辺の土が湿っぽくなった。この家の水中ポンプはそれを防ぐためのものだ。道路の溝に直接つながった埋設管を利用し、水中ポンプで排水できるようにしてあった。
今回、建て替えにあたって、そのオーバーフロー用の配管が、(私の勘違いであれば逆にいいのだが)どうもコンクリで出口を埋められ使えないようになっていた。こうなると水中ポンプが壊れた場合、前より悪く、井戸のヒューム管のコンクリート枠の上まで溜まってから、井戸の周りに水を流すことになる。
その場合は、家の床下が水浸しになるわけだ。
湧水量が、床面より低ければギリギリの水位で止まれば何とかそれは防げるのだが、ここの家の場合、湧水量は強くおそらくヒューム管を超えて溢れるのではないかと思う。
今回床下に炭など敷いて湿気を防ぐ処置がしてあるというが、水が溢れてしまえば全く意味をなさない。湿気防止の高額の処置を施したのなら、私からするとそこまで考えて当然なのだが、ポンプを据え付けなおした業社は、そこまで頭が回らなかったのか。
マズイ事をしたものだ。
皆さんも、水周りの事は、家の耐久性などの大きなポイントにもあるので、業社に任せっきりでなく、ある程度関心を持って注意してほしいと思う。
2010年08月11日
先日、ななか漁業協同組合の某支所から、三相50φ400Wの海水用水中ポンプを特急で直してくれと言われたが、調べてみると内部海水侵入で漏電。
カードテスタで試しに、ケーブルの1線と外側のフレームの間に流した程度でも、簡単に針が振り切れるほど漏電していた。
とても修理など無理なので、あらたに注文することで了解を得て、数社に同等品の在庫を問い合わせ、なんとか2,3日で調達した。
今日届いたポンプの梱包を解いて、水中ケーブルをみると、ケーブルの4線(アースを含む)が剥き出しで、コンセントにつなぐプラグがついていなかった。
三相の商品の場合、よくある普通のパターンである。
お客さんは、ポンプは自分で取り付けると言っていた。
が私は、三相動力で配線を間違えた事に気づかず長時間、逆転させたらまずいので、お客さんに、こちらから接続しにいこうかと問い合わせた。
それに対してお客さんからは、壊れた水中ポンプのケーブルのプラグを利用し、新しいポンプのケーブルと古いポンプのケーブルの赤、青、白、緑を互いに結べば、うまくいくだろうから、後はこちら(お客側)でやるという。
しかし私の経験上、意外と三相の線の色は、緑(アース)線は別にして、意外と適当で、メーカー、客先によって違うことが多い。
やはり最低一回は、回転方向を調べてほしい。
調べ方だが非常に簡単である。今回のようなハンディタイプの水中ポンプの場合、ほんの1,2秒空転させればいい(長時間の空運転はダメ)。
ポンプが反動で右回りか、左回りに回るはずである。
その反動で回った方向の反対の方向に、羽根が回っていると考える。
もし水中ポンプが反動で回った方向と取扱説明書もしくはポンプに書いてある回転方向が同じなら、逆転していることになる。
その際は、水中ケーブルの配線をやり直す手もあるが、動力側の三相の3線のうち、2線を入れ替えればそれで済む。
2010年06月15日
昨日、崎山地区の某家の浅井戸ポンプの水が揚がらなくなったということで、修理にいってきた。
実は、この家のポンプは1,2年も前に一度診ており、大体原因がわかっている。
我店で付けたポンプではないが、我店で付けたかどうかにかかわらず対応している。
そういう事でポンプ自体は、1,2年前に来た時、直せそうな部分は大体直している。一応ポンプを再度色々調べてみてみるが経年劣化による能力ダウンはあるが、錆びやゴミなどの詰りなどによる能力ダウン(つまり直せる要因)はもう殆ど無い。
でも大きな問題点がある。設置場所だ。裏庭の井戸のそばにポンプを置かず、家の周りをL字形に半周、図ってみると約16mも周して、台所の出窓の下の雨が当たらない下に置いているのだ。
最初にこのポンプを取り付けた業者は、気を利かせたつもりなのかもしれないが、ポンプの能力を損なわせる無知な設置である。そんな気を利かせるなら、井戸の側にポンプを設置し、小屋くらいはサービス(無料)にするなどすればいいのだ。
家庭用ポンプは、井戸の出来るだけ近くがいい。少なくとも2,3mの範囲に設置してほしい。ポンプの能力は全揚程(簡単に言うと、吸上げの高さと揚水の高さを足した高さ)で書かれて、横引きの距離(吸口配管でポンプまで水平に引く距離)はあまり問題にしないが、それはポンプの設置があくまで井戸の近場にある時である。
井戸から十数mも離れると、吸上げ能力は数mほど差し引かねばならないだろう。
これは鉄管か塩ビ管かなどによっても能力の落ち方は違うのだが、細かい点は書かない。要は折角新規にポンプを買っても、その能力を落としてしまうということだ。
私の法から家の人にポンプの設置場所のやり直しを薦めたが、今からでは配管やり直しや小屋代に費用がかかると思ったのか(大してとらないのだが)、応じてもらえなかった。
仕方ないから再度色々調べたら、井戸の中の配管に、底フートバルブが付いていなかった(ポンプの力が強ければ必ずしも付ける必要はない)。
底フートバルブとは、ポンプの吸口の先端(つまり吸口配管の一番下)に取付ける逆止弁のことである。これが付いていると、吸口の水が、水を使っていない時(言い換えるならばポンプが停まっている時)でも下がることはなく、始動の際、ポンプの力をサポートできるのだ。
それで底フートバルブをつけたら、力は多少弱いが、悪い症状は消えた。これで何とかまだ数年は持つだろう。
現状は、川本製作所製のカワエースというポンプがついているのだが、これはコップ半分に満たないようなちょっとの水の量でも反応する敏感なポンプだ。敏感と書くと、普通の人は良いような気がするかもしれないが、ポンプが始終運転という事は、電気料金を食うということだ。実際、この家のポンプも水の下がり(水圧の低下)を抑えようとしばしば(または始終)運転していた。
お客さんによっては、音に慣れてくると、浄化槽のブロワ等と同様に、このちょっと煩いのがこのポンプの常態かと勘違いし、気にも留めない人も多々あるが、電気料金が勿体無い。
今回底フートバルブを付ける事によって、そのしょっちゅうポンプが始動するという常態も解消できた。
まあ一応不具合は解消できたが、皆様にはポンプを設置する場合、是非とも井戸の近くに設置することをお願いしたい。
2010年04月29日
先日、七尾市矢田新町のMさんからこんな修理の依頼があった。同市白馬町のパチンコ屋裏手に持つそのM家の畑で使う小型水中ポンプ(ハンディ型)の水が揚がらないので直してほしいとのこと。
何でも親戚の電気屋さんに診てもらったが、分からなかったという。
電気は入ってポンプも回転している音はするのだが、急に揚がらなくなったというのだ。
現場に行ってすぐに原因を究明した。安価な仕事だが、時々ある事例なので紹介したい。
現場は、幅1m50cmほどの用水路が横を流れるところで、その用水路に水中ポンプを下ろして水を汲み上げていた。
水中から引き揚げてあるポンプをみると、泥水でもいいようなタイプでなく、清水用(せいぜい風呂水を洗濯に再利用する程度のポンプ。写真のものとは別だがよくにたタイプ)であった。しかも羽根車がある吸口の底の部分に、フィルターの役目を果たす覆いがない。ボルトが錆びてフィルターのカバーがはずれてしまい、今は網をかける処置で済ませているという。
網をかける処置はいいとして、(川岸工事などで使う土木用のものは、川底でも問題はないが)清水(またはあまり汚れていない水)用の水中ポンプを川底に置くというやり方がが完全に間違っている。ポンプの羽根車の部分を調べてみると、羽根は回っているが、小さな石ころが詰まって水がほとんど流れない状態になっていた。
ビニールホースの繋ぎ目のプラスチックの継手を開いてみたら、そこも小さな石が一杯詰まっていた。
小さな畑で使う場合、ポンプの値段を出来るだけ安くしたいなら、このようなポンプで間に合わせるのも駄目だとはいわない(お薦めはしない)。が、それなりの対策が必要だ。
安価なミニポンプを使うなら、ポンプ底の吸込口は、川(池)底から最低でも15cm以上は離して設置すること。
またポンプ本体についているスリットの穴は、結構大きくて、ゴミを吸込みます。清水でない場合、細い草・茎、紐状のもの、石ころなど吸い込み、ポンプが詰まり、水が揚がらない原因となりますから、ビニールの細目の網か、ステンレスの細目の網(1,2mm角くらいのもの)を巻くようお願いしたい。
もし詰まった場合、水中ポンプの吸口を覆うカバーを開いて、羽根車が少し見える状態で、ピンセットやラジオペンチで、羽根に絡んだゴミを取り除けば動く場合もあります。(ただしモーター内部が見える状態まで絶対に分解しないで下さい。水密(圧力がかかっても水が漏れない防水処置)が保てず故障します。)
2010年04月18日
2つ前の記事で防食に関する事柄を書いたが、防食で先日書き忘れた事を書いておく。
それは型式が屋外型(モーター部の場合、屋外全閉外扇型など)といっても、防水や錆に万全ではないという事だ。
勿論、屋内型よりは、防食に対する対策は講じられているが、風雨に晒(さら)され錆びない訳がない。
設置の仕方は、出来れば水が流れる地表より10cmほど高くして、小屋のような覆いを被せ雨が直接かからないようにこしたことはない。そういうもの造るのや買うのが高いと思うのなら、硬化ビニールの大きな桶のようなものでもいいから、配管の切りかけをして、ポンプの上から被せ、重石でも載せるだけでも全然違う。
ポンプが、野晒しの場合と、地表から少し上げた位置に設置し、覆いを被せた場合とでは、私がこれまで見てきた例から想像するに、寿命は2倍以上開きがあるように思う。
最近、やたらと自分に都合の言いことばかり言い、権利を主張する風潮が出てきた。私のお客様の中でも前に何度か、‘何で屋外型なのにこんなに錆びるのが早いのだ’というような事を言われたことがある。
と言っても、ほとんどの場合、わが店で買ったものでない場合が多いのだが。当店で屋外型を買ってもらった場合はできるだけ小屋を被せるように指導している。
屋外型は基本的には、防水対策型であるということで、防食に充分な対応の型ではないのだ。
防食(耐食性)が充分なものが是非とも欲しいのなら、ステンレス製かチタン製の、外見は鋼製のものと変わらないが、価格が3倍とかそれ以上するものを買えばいい。
屋外仕様だからといって、耐食性があるなどと勝手に解釈してもらっては困る。
また言っておくがステンレス製やチタン製といっても、防食が完全な訳ではない。物には必ず寿命はある。
とにかく安く防食対策をしたいなら、屋外型でも風雨に晒されぬよう対策を施すことだ(ただし密閉は、空冷が利かなくなり、モーターが焼ける原因となるので避けてもらいたい)。