午前11時に予定通り長野県駒ケ岳醸造所に到着し、外は肌寒く一瞬にして酔い気、睡気も醒める。醸造所では現在の状況とビール試飲、それと原料になる麦芽を味見させてもらったが、これはメンバーには好評であった。というよりビールの素人にはビールがより身近に愛らしく接することができた瞬間でもあった。
場内はウイスキー工場にビール工場が間借りした配置であったがウイスキー樽、蒸留器、ビール発酵タンクなど素人には初めて見る光景に圧倒される。駒ケ岳の堆積岩からはミネラルを含んだ水が流れ出し、さらに新鮮な空気と麦から造りだされる南信州のビールは、人間の知恵と自然の恵みによるハーモニーの産物でもある。
昼食はレストラン味わい工房で、抽選会やビールの飲み放題もありワイワイガヤガヤの打ち解けた雰囲気となり長年の付き合いのように話が弾んだ。
次の訪問地は岐阜県恵那郡の
博石館であるが、ここは数十年前に、笠置山の麓で何回もキャンプしたことがあり懐かしい場所でもあった。博石館はさすがに石造りで花崗岩ばかりであるが、所々に晶洞(通称ガマ)を伴うペグマタイト(巨晶花崗岩)が置いてあり、石切り場の風景を思い起こす。
博石館ブルワリーは、奥まった場所にあり駒ケ岳醸造所よりは大きなビール醸造タンクが整然と並んでいた。試飲では何種類かの年代の異なるエールビール、自然酵母ビール、スモークビールなど醸造担当の丹羽さんの説明を聞きながら頂いた。ソーセージをつまみながらこんなビールが日本でもできるのかと感心しきりとなったが、同時に病みつきになることをも警戒した。
特に自然酵母ビールは日本ではまだ出来ていないだろうと思っていたので天然酵母の飛んでくる季節、時間、採取方法などの苦労話は、ビール造りに情熱を注いだ職人魂の醍醐味を味あわせてもらった。ここのビールも丹羽さんの情熱と美味しい水、笠置山から流れてくる空気が命のようだ。
今回のツアーでは、どのビールがどうのではなく美味しい水、空気、麦芽、情熱の一杯詰まったビールを舌、鼻、喉、食道、胃袋で味わい、楽しみ、空気を肌で感じビール醸造の多面的、芸術的な一面をも見せてもらった企画でもあった。
温故知新 記