【21世紀の現在にあって戦前回帰を志すという狂躁ぶり】

 【国民・市民・住民・庶民とは別世界に住む安倍晋三君,そのバック・ツー・ザ・フューチャーぶり】


 ①「日本の新内閣,バック・ツー・ザ・フューチャー,安倍晋三が組閣したぞっとするほど右寄り内閣が,この地域に悪い兆し」(『The Economist』2013年1月5日号)をめぐる批評

 この記事は,2012年12月26日に発足した第2次安倍晋三内閣を,以下の内容のように分析していた。今日は2015年10月25日だから,その後,2年と10ヶ月が経過してきた。
ザ・エコノミスト2013年1月5日表紙
 この記事に指摘されたごとき「安倍晋三政権に特有の凶相」は,いよいよその深刻度を増しつつある。日本を破壊しつつある安倍晋三という政治家は,国民たちを「不幸と不運のみなぎる〈ワンダーワールド〉(!?)」の瀬戸際にまで, “バック・ツー・ザ・フューチャー” 的に(?  否!)導きつつある。
 註記)左側画像は,イギリス『ザ・エコノミスト』2015年1月5日号の表紙。 “日本の危険な内閣” との見出しが右上に出ている

 〔以下記事からの本文引用は青文字とする→〕 その2012年12月26日,日本の新首相・安倍晋三氏はみずかの新内閣の陣容を明らかにした。第1級ナショナリストの安倍氏は,5年間で第3期めの景気後退に耐える日本経済の転換に専心すると約束した。

 2006年から7年,経済施策が戦時罪責をめぐる不必要な口論と災い発言の多い内閣に引っかきまわされ,大災禍に終わった首相第1任期で学んだ,と新首相はいう。


 「◆ 補注的議論 ◆」 アベノミクス(これはあだ名であって本名はアホノミクス)は,この政権の成立後2年と10ヶ月も経過したいまでもまだ,その目標であったインフレ・ターゲット2%は達成できていない。

 むしろ,この経済政策が狙っていなかったはずの,悪作用による諸影響のほうが顕著に現象している。それは,労働者・サラリーマンたちの賃金が実質指数でほとんど上昇していない事実においても,端的に露呈している。

 たとえば,『日本経済新聞』2015年10月20日朝刊コラム「〈大機小機〉物価目標から名目成長目標へ」は,安倍晋三の立場を忖度しながらも,次段のように実質面では,かなりきびしい論評をくわえている。

 --アベノミクスの「新3本の矢」は評判が芳しくない。従来の3本の矢の検証もせずに,政策の裏づけのない目標をかかげるのはいかがなものかというわけだ。たしかに問題は多いが,評価できる点もある。物価目標から名目成長目標に転換した点である。

 今〔2015〕年1月28日の本欄〔コラム「大機小機」のこと〕で〔この〕筆者は「物価目標より名目成長目標を」とし,3%の名目成長目標を提案した。原油安で日銀のかかげる2%の物価目標は実現が遠のいた。物価目標に固執し金融緩和がゆきすぎればツケは大きくなる。物価目標2%は世界の常識だが,米連邦準備理事会(FRB)でさえ,物価目標にこだわらず利上げを模索している。
 補注的議論のまた補注1) 「日銀のかかげる2%の物価目標は実現が遠のいた」というのは,アベノミクスがこの政策目標では実現不可能になった,つまり失敗だという事実経過を認めているのである。だが,このように,なにやらぐじゃぐじゃした「いいわけ」にしか聞こえない批評を,小田原評定よろしく繰りかえしている。

 〔コラム本文→〕 原油価格下落は物価を下げる一方で,成長底上げ効果がある。物価目標にこだわるより物価上昇と成長を合わせた名目成長目標を政府,日銀が共有する方が経済の現実に沿っている。
 補注的議論のまた補注2) 前段のとおり,労働者・サラリーマンたちの実質賃金はアベノミクスのおかげもあって,さらにじりじり低下しつつある。しかも,8月以降,賃金がわずかに上がったとはいっても,この率をはるかに上回る,それもインフレ指数にはじかに反映されないような「消費物資の全般的な値上がり」が,われわれの実生活を直撃している最中である。

 『日本経済新聞』(2015/10/22付)の記事は,ともかく「実質賃金 0.1%増 2カ月連続のプラス維持」との見出しで,こう報道していた。

 --厚生労働省が10月22日発表した8月の毎月勤労統計調査(確報値)によると,物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前〔2014〕年同〔8〕月より 0.1%増えた。速報値から 0.1ポイント下方修正したものの,2カ月連続のプラスを維持した。残業代が増えたほか,基本給も伸びたためだ。

 調査は従業員5人以上の事業所が対象。実質賃金指数は名目の賃金指数を消費者物価指数(CPI)で割って算出する。プラスは賃金の上昇が物価の伸びを上回るペースで進んでいることを示す。確報値では正社員よりも収入の低いパート労働者の比率が高まり,下方修正されやすい。

 実質賃金は,2015年7月に2年3カ月ぶりにプラスに浮上した。8月は名目の賃金水準を示す1人当たりの現金給与総額も前年同月より 0.4%増えて27万1913円となった。ボーナスなどの特別に支払われた給与は同 1.9%増の1万3755円,残業代などの所定外給与は同 1.6%増の1万9111円だった。基本給にあたる所定内給与も23万9047円と前年同月より0.2%増えた。

 〔前掲のコラム本文に戻る→〕 新3本の矢の名目国内総生産(GDP)600兆円という目標は,名目3%成長を実現すれば2020年度には達成できる計算だ。物価から名目成長への転換は,金融緩和依存から成長戦略重視へのリバランス(再均衡)である。

 問題は目標をどう達成するかである。新3本の矢の「一億総活躍社会」には内向き思想が潜む。それを超えてアジア太平洋を中心にグローバルな視野に立たないかぎり,新目標の実現は難しい。女性や高齢者の活用を含めた自前主義で労働力は維持できるか。人材の国際開放を真剣に考えるときだ。
 補注的議論のまた補注3) この記事は奇妙な論調である。もうすでに古証文に化けつつあるアベノミクスじたいのアベコベ性を,いまさら擁護することはできないからか,このように「金融緩和依存から成長戦略重視へのリバランス(再均衡)である」などと,現実経済の生きた動向に対して,観念論一辺倒のそれも「軽くて乗りのよい,だから現実からは滑りやすい」提言を繰りだしている。
☆ 今後は消費税10%,携帯電話税,
パチンコ税…増税ラッシュ ☆

 「給料が上がってる以上に物価が上がっているというお話なんです」が,景気回復の実感ない。「最近いろんなモノ(の値段)が上がってますよね。なにからなにまで。そうなると実質賃金減っているな,となるかもしれませんね」。

 2014年〔時点の話であるが〕「9月に入り,円安,原油高や天候不良などを理由にした値上げラッシュになっている。今後は消費税の10%増税,携帯電話税やパチンコ税の新設などが検討されており,経済ジャーナリスト・萩原博子氏は『税金も上がり,家計がピンチになるのではないでしょうか』という」。

 「水島宏明(ジャーナリスト・法政大学教授)〔の話〕,『非正規の労働者も増えてるし,そうしたところを手をつけていかないと,賃金が上がるという実感はもてない人は多いんじゃないかな』」。「これがアベノミクスの実態というわけだ」〔という実感は2015年10月になっても,一般庶民の生活次元では変わっていない〕。
 註記)http://www.j-cast.com/tv/2014/09/04214986.html 〔 〕内補足は引用者。
 『日本経済新聞』じたいもすでに,こういう報道をしていた。

 ☆-1 2015年10月20日朝刊「〈本社討論会〉景気 不透明感強まる」のなかには,「非正規〔労働者層〕が増え 賃金低迷」というきびしい指摘があった。

 ☆-2 さらに,同紙の10月23日朝刊は「物価2%上昇 2割超す」「食品など値上げ品目増,生活実感は脱デフレ?」との見出し記事を出していた。

 なんといっても,労働者・サラリーマン諸氏の懐具合にじかに効く程度にまで賃金は上昇していないのだから,庶民の経済生活が従前にうすら寒い状況であることに変わりない。
『日本経済新聞』2015年10月23日朝刊記事画像
 ☆-3 また『日本経済新聞』10月23日朝刊は,別面の記事で,見出し「ベア 来年は視界不良」「連合,2%程度要求を発表」「経営側,景気にらみ慎重」と伝えていた。

 だが,その2%というものがいまだに希望・期待する程度でしかない事実,つまり,労働側が財界側に「要求している程度」のものになお留まっている現状にこそ,アホノミクスが当初,鳴り物入りで喧伝していた「インフレターゲット2%」の実体をみいだせばよいことを教えている。

 ☆-4 とくに「新3本の矢の名目国内総生産(GDP)600兆円という目標」については,『朝日新聞』2015年10月24日夕刊「素粒子」が嘲笑して,こう揶揄していた。

   新アベノミクスでめざすは「GDP600兆円」。
   それって【GDP】=がんばっても・できっこない・プラン?
     『朝日新聞』2015年10月24日夕刊素粒子
 もともと,エコノミストや経済学者が首をひねらねばならないのが,この「名目国内総生産目標の600兆円」目標であった。

 〔コラム本文に戻る→〕 環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意は前進だが,グローバル戦略としては不十分だ。中国がくわわる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)と結合して初めて,アジア太平洋の成長基盤ができあがる。法人税率の引き下げや規制緩和とあわせて,成長戦略をグローバルな視野から練りなおすことが肝心だ。
 補注的議論のまた補注4) アベノミクス「旧・3本の矢」のうち,その後はうやむやになっているのが「成長戦略」である。だが,ここでは再び話題にとりあげられている。そして「グローバルな視野から練りなおすことが肝心だ」などと指南されている。しかしながら,その後,2年と10ヶ月も経過してきたアベノミクスは,実際のところでは「機能不全を発症させている」。その指南をもってすれば,アホノミクスが再起動させうるというわけではあるまい。

 このような調子でで「大機小機」欄をとりあげ,書いてきたところで感じたことがある。それは,あの安倍晋三の学識水準のことだから,こまかい語感にまで立ち入ったまともな理解は,どうせできないに決まっている,そのように舐めてかかったかのような文章であることである。

 〔コラム本文→〕 もちろん名目成長目標には落とし穴がある。成長による税収増をあてにして,財政規律が緩む恐れがある。成長なしに財政再建は不可能だが,先進国最悪の財政赤字を抱える日本は成長だけでは財政再建できない。

 消費増税と徹底した歳出合理化にとり組むしかない。成長と財政再建を両立できなければ日本の未来は危うい。名目成長は甘い夢より厳しい現実を克服するための目標である。
 補注的議論のまた補注5) 要は「成長と財政再建を両立できなければ日本の未来は危うい」というのであるが,日銀がいまのままを続けてさらに,国債をかかえこんでいくことはできない相談である。いつか止めねばならないときが来る。

 ところが,日本経済は「名目成長」すら思うようになっていない現状に置かれている。アベノミクスの,すでに瓦解した「甘い夢より」も,目前の「厳しい現実を克服するための政策的目標」を,いったいどのように設定・実現させうるのかといえば,安倍晋三が今後において長期政権を維持できたとしても,その見通しは暗い。

 ②「日本の新内閣,バック・ツー・ザ・フューチャー,安倍晋三が組閣したぞっとするほど右寄り内閣が,この地域に悪い兆し」(『The Economist』2013年1月5日号)をめぐる批評〔続き〕

 〔※ だいぶ寄り道してきたが,ここで再び『エコノミスト』本文に戻る→〕 問題は〔下掲の〕写真中央にいる安倍氏が,政府にそのメッセージ発信を続行させられるか否か,にかかる。19人の閣僚を選ぶにあたり,彼はすでにそれを疑わせる理由を,結局のところさらに,彼は疑わせようと望んでいることさえ示した。
安倍第2次内閣2012年12月26日写真
註記)2012年12月26日に発足した第2次安倍内閣,
http://www.nippon.com/ja/features/h00023/

 以下のように考えてみよう。

 a) 閣僚中の14人は「一緒に靖国に参拝する会」の会員であるが,これは東京にあり,戦犯罪として処刑された指導者たちに栄誉を与える神社である。

 b) その13名は「日本会議」といって「伝統的な考え方」への復帰を支持し,戦時の過ちに対する「謝罪外交」を拒否するナショナリスト・シンク・タンクのメンバーである。

 c) その9人は,学校教育で軍国主義時代日本にもっと栄光を与えるよう求める議員の会に属している。彼らは日本の戦時残虐行為のほとんどを否定する。


 このひな壇には新文科大臣・下村博文がいるが,彼は1995年に打ち立てられた道標,日本のアジアへの残虐行為を遺憾とする “村山談話” の撤回を望むばかりでなく,1946年から1948年におこなわれた戦犯裁判判決のとり消しさえ求めている。

 安倍氏は,1946年アメリカが課した日本を平和主義履行の国とする憲法,また安倍氏が愛国心を過小評価すると考える教育法,そして日本が従属的役割を担う安全保障条約という,国の基本的現行憲章中,3法を改訂したいみずからの希望を,いっさい隠していない。


 しかし,選挙民たちはなにを望んでいるのか?

 安倍氏は一般日本人のうち,日本の戦後構造を根から枝まで改造したい彼の願いに同調するものはわずかだとしっている。これからの数ヶ月は経済に専心する良い理由は,ここにこそある。彼の率いる自民党,そして次党である公明党は20121年12月の総選挙で勝利し,日本国会の衆議院3分の2の議席を占めた。


 2013年6月に議席をめぐり選挙のおこなわれる参議院は,現在野党に支配され,民主党がリードしている。選挙民たちのほうでは,不安定とはいえないまでも,自分たちの意見表明はしていない。安定した経済の運営がなされていけば,安倍氏は参院をも勝ちとることができる。そうすれば,彼はここ数年来なかった最強の統治権限をもつことになろう。
 補注)ここで有権者たちが「自分たちの意見表明はしていない」という指摘は,いまとなっては当たっていない。現状における把握としては間違いである。安倍晋三政権の登場によって,日本国の庶民たちのあいだには政治意識が高まっている。それも安倍晋三では,この国がめちゃくちゃにされる,いけない・ダメだという声も強くなっている。

 現在のところ,安倍氏は経済への困難なてこ入れをもくろみ,長期デフレの景気沈滞から日本を抜け出させるための道筋として,日銀に対して2%のインフレ目標設定を強く求めていた。

 蔵相の麻生太郎に対しては,貸借制限なしの新しい金融刺激策をつくるよう指示した。だが,国債借款はすでにGDPの200%を超える状況である。ここでいま,いかなる浪費にも抵抗するに違いない財務官僚を抑えられる数少ない政治家の1人が,この元首相の麻生氏と思われる。


 安倍氏は,建設と公共事業に没頭していた過去の自民党の大型消費の時代とは違うと否定する。しかし,新しい金遣いが昔のやり口よりどれほどよいのかは,これから証明してみせねばならない。新しい借款がある時点で突然,鋭い上昇カーブで高利子となってしまい,政府の果たすべき負債返済に影響する危険がある。

 これまでのところ,投資家たちは安倍氏をとりあえずは評価しているが,それは彼の日本銀行叩きが円安を助けているからでもある。株式市場は現在,2011年3月11日の地震・津波のころより,高値をつけている。投資家たちは,エネルギー公共事業や核関連機器の製造業に支持される自民党が,反原発抗議者たちを意気沮喪させ,停止している原発装置にスイッチを入れることを期待している。
 補注)原発再稼働に反対する国民たちの意志(全国民たちの過半数がその意志を明示してきている)を,安倍晋三は平然と無視している。安倍晋三の,民意を平気でないがしろにできる政治家としての感性は,どうみても大人のそれではない。「幼稚と傲慢」である特性を元来有する世襲3代目の彼だったからこそ,そのように粗暴・乱雑な政治・行政をいまもなお継続できている。

 〔『エコノミスト』本文に戻る→〕 海外では,少なくとも参議院選挙までは,注意深く歩むしるしをみせている。元防衛大臣・額賀福志郎氏が2013年1月4日ソウルを訪問して韓国大統領に選出された朴氏と会談することになっており,これは日本では竹島,韓国ではドクトと呼ばれる島をめぐる紛争で怪しくなった関係修復にとって歓迎すべき企てである。

 安倍氏はまた,アメリカとの安全保障関係を強めると約束しており,これは民主党政権下では必ずしも,つねにスムーズでなかった点である。就任にあたり「日本の外交・安全政策の転換がまず第1歩」と安倍氏は述べた。必然的に中国は苛立った。

 公式紙のひとつ『中華日報』は,日米同盟を中国に圧力かけるために使えば,「東シナ海における,日本では尖閣諸島・中国ではディアオユ諸島としてしられる島々をめぐる紛争の緊張を単に悪化させるだけだ」と警告した。

 安倍氏は,中国政府との友好関係(peace-pipe)を構築するための努力をしないで,日本の領土を守る約束についてのみ,ただ表情を固くさせて述べていた。それは,先月〔2012年12月〕,中国偵察機が尖閣諸島上を飛行したとき,これに対して戦闘機8機を緊急発進(スクランブル)をかけたときにも共通する態度であった。1958年に記録が開始されて以来,最初の,日本が管理する空への中国サイドからの侵入があったのである。
 補注)中国が南沙諸島などで埋め立て工事をおこない,飛行場(滑走路)を造成している。日本がこの中国側の政治的な攻勢に対して,国際政治の立場からなにか有効な交渉をおこないえているかといえば,皆無である。

 口先では勇ましいことをよくいう安倍晋三である。だが,国際政治の実践面に関していえば,政治家としてまともな面目はまだなにも賄えていない。その意味でも彼はいまなお〈黄色い嘴〉をもつ「幼い精神の持ち主」であり,世界に対してもまた日本国内において「内弁慶でしかない日本の政治家」である。

 安倍氏は中国に対して苛立ちを抑えなくてはならず,しかしみずからのナショナリスト的本能は抑制し,過去の幽霊は自民党の地下倉庫に安全に錠をおろして閉じこめて置かないといけない。このような抑制はつねに困難に突きあたるのだが,安倍氏の新内閣は克服できないでいる。
 註記)以上の原文は,http://www.economist.com/news/asia/21569046-shinzo-abes-appointment-scarily-right-wing-cabinet-bodes-ill-region-back-future 日本語でのこの引用は,http://www.labornetjp.org/news/2013/1357352751621staff01 からであるが,日本語訳が「翻訳ソフト的な直訳」調であり,日本語としての語感がすっきり通らない語句や表現もあったので,引用者なりにできるかぎり補正してある。

 ③ 安倍晋三政権のはてしない時代錯誤性

 以上 ① と ② は,本ブログ筆者による論評をだいぶ挿入してあったが,ともかくも,安倍晋三内閣の〔成立当初からすでに的確に理解されていた〕「ファッショ的な危惧・危険性」を,真正面から論及している。

 論説の題名は,この「日本の新内閣,バック・ツー・ザ・フューチャー,安倍晋三が組閣したぞっとするほど右寄り内閣が,この地域に悪い兆し」(『The Economist』2013年1月5日号)であった。

 『ザ・エコノミスト』が指摘していた諸論点,政治・経済・社会・歴史・教育・文化など各領域において安倍晋三が発揚させている〈反動的極右性〉の造花性は,いまとなってはみごとなまで花盛りである。この日本国における現・光景は,集団的自衛権行使容法人税と消費税関連図画像認・特定秘密保護法・武器輸出禁止3原則の骨抜きや,原発再稼働,教育現場への暴圧的な介入,TPP受容などが織りなしつつ,みせているものである。

 右側の画像資料は,安倍晋三政権が誰を大事にし,誰をないがしろにしているかを闡明にするものである。これは「日本経団連側からの政府に対する要求内容」であるが,このなかに描かれている財界からの要求に対して安倍晋三政権は,前向きに応じてきている。
 出所)http://gossip1.net/archives/1042670597.html

 安倍晋三の反動的な極右性はとりわけ,戦前・戦中体制を郷愁する精神的な特質によって裏づけられている。そのなかには,彼の「幼稚で傲慢」「暗愚で無知」の政治家としての基本資質がさらに注入されている。

 日本国民たちにとってはすでに,安倍晋三の政治・経済は不合格点しか与えられない。にもかかわらず,全有権者の2割台しか選挙(衆議院総選挙)では得票していないこの「自民党」と「プラス公明党」の連立政権が,わが物顔でこの日本国をのっとったかの状態を呈している。

 本ブログではすでに参照してみた最近作,山崎雅弘『戦前回帰-「大日本病」の再発-』(学研,2015年9月)は,「時代錯誤の最先端を進む」かのような安倍晋三内閣の問題を,つぎのように解説していた。
    戦後の日本は,ハードウェアとしての軍隊と,アプリケーションとしての軍国主義を否定することで「戦前・戦中への回帰の道は断たれた」と錯覚して安心しました。

 しかし,国と国民を暴走させた「国家神道」というOSを削除し,民主主義という別のOSを「再インストール」する作業は,不完全なまま中止してしまいました。そのため,完全に消されなかった当時の旧いソフトウェアが,現政権下でいままさに再起動しています。

 では,旧いOSAが再起動することがなんの問題なのか? この質問への答えは,70年前(1945年)の日本人が教えてくれています(12頁)。
 この山崎雅弘『戦前回帰-「大日本病」の再発-』がおこなっていた,「日本の敗戦」という歴史の認識に関する上記の解説は,安倍晋三政権のアナクロ的な暴走状態に関する基本原因を示している。その暴走の結果が,どのように実際に現象してきたかについては,前述に引用していた『ザ・エコノミスト』の記事中に「補注」を挿入しながら,くわしく指摘・説明したつもりである。

 山崎雅弘は「大日本病」の再発を心配している。けれども,この病状の一番の重篤患者である当の安倍晋三が,その自覚症状ゼロなのだから,始末に悪い。「戦後レジーム」の否定は単に,うしろしか向けない政治のための姿勢なのである。それも「戦前への回帰」しか念頭にないのであれば,敗戦後70年も経過した現在においては,もともと「未来への展望」をまともにもてるわけもない。それが安倍晋三の政治理念である。

 『ザ・エコノミスト』は冗談半分に「日本の安倍晋三の新内閣」は「バック・ツー・ザ・フューチャー」だなどと,実はけっして,譬えにもならないような論説を書いていた。しかし,その中身は安倍晋三を全然褒めておらず,現在の自民党政権が保守・反動・国粋・極右である特質に,きちんと目を向け,批評していた。

 安倍晋三はともかく,オジイチャンの「業績=過去の栄光」をとても気にしているらしいが,無理をして背伸びするところが,まさしく危なっかしいのである。『怪物』といわれた岸 信介に少しでも,いまの自分の姿を近づかせたいのか?

 だが,安倍晋三が岸 信介を真似しているつもりだとしても,この様子は漫画絵にもなっていない。政治は漫画ではない現実を相手にする。その「現実の相手」からろくに「相手にもされないような人物」が,日本の宰相である。日本国民たちの不幸・不運のゆえんが理解できそうである。もっとも,内弁慶の彼には内政も,そう簡単には任せられない。

 ④ 小林 節「安倍政権は倒せる! 〈第1回〉 幸福の利権を踏みにじる政権を許してはならない」(『日刊ゲンダイ』2015年10月24日)

 --小林 節は,以下のように主張する。

 「政治に無関心だ」といわれて久しかった若者たちを含めて,多数の国民が街頭にあふれて「『戦争法』反対!」と叫んだ夏は終わった。〔2015年〕9月の強行採決であの「戦争法」は成立したが,そこに至る過程で主権者国民は多くのことを学んだようにみえる。なかでも,多数の国民が「主権者」意識に目覚めたことは重要である。

 私たちは皆,縁あってこの時代に生まれ合わせた。そして,各人それぞれに個性的に幸福を求めて共同生活のなかで生きている。そこにおいて国家とは,各人の幸福追求を支援するためのサービス機関であり,政治家以下の公務員たちは,主権者国民から許されて国民に奉仕するために一定任期だけその地位にいることを忘れてはならない。
安倍晋三改造内閣2015年10月7日
 出所)2015年10月7日改造内閣時の記念写真,http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201510/07dai3kaizonaikaku.html

 主権者国民が幸福を享受できる条件は,自由と豊かさと平和である。知る権利,各人それぞれの表現の自由等が不当に制約されてうれしい人などいない。貧しいより豊かな方が楽しいに決まっている。そして「戦争あるいは戦争の危険」(これは「平和」の反対概念である)が存在する状態で,私たちが幸福になれるはずなどない。

 にもかかわらず今回,安倍政権は「軍隊の保持と交戦権の行使」を明文で禁じた憲法9条を無視して,国民世論の反対にも耳を貸さず,さらに国会審議も事実上拒否して「戦争法」を成立させた。

 「中国の脅威」をいい立てて海外派兵を正当化したが,憲法9条のもとでの専守防衛の有効性の議論は,いっさい顧りみようとしなかった。いわば,雇われ社長が社訓に反して,株主の意向を無視して,さらに定款に反して会社を乗っとったような事態である。これは安倍独裁の始まりである。

 いま,街頭は静かになったが,政権によって侮辱された主権者国民の怒りは収まっていない。

 思えば,相対的多数派に有利な現行選挙制度の効果として,4割に満たない得票で7割の議席を獲得して独裁化した現政権に対して,前回でさえ4割以上の票が野党に投じられた,それを糾合できれば政権交代である。それが,主権回復に向けた国の主による反転攻勢の第一歩である。
 註記)http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/167425/1
    http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/167425/2

 2016年7月には,参議院選挙がおこなわれる予定である。半数の議員を入れ替える選挙である。一挙に自民党〔と公明党〕の議員たちを撃滅させることはできないにせよ,とくに自民党の候補者は1名たりとて当選させないくらいの意気ごみが,有権者側には要求されている。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
『朝日新聞』2015年10月21日朝刊13面下部意見広告麻生太郎ナチス発言
出所)『朝日新聞』2015年10月21日朝刊13面下部「全面広告」。

 安倍晋三のような政治家は国民たちがうっかり油断でもしようものなら,まるでナチス・ヒトラーの21世紀的なまねごとを本気でやりかねないし,すでに似たような民主主義的(?)独裁政権運営をおこなってきている。

 安倍晋三とその政権は,哲学も思想もなにもなくカラッポ頭の政治屋集団でしかないが,あるものといえば,ろくに理解すらできていない「戦後レジーム」に対する全面的な否定であり,これに対する破壊行為である。

 かといって,戦前・戦中の軍部独裁的な国家体制がそれほど恋しいのか,民主主義のイロハすら無縁の国家運営を強行中である。

 民主主義というものは,この理念・実施を否定・破壊する思想・主義を抱く者たちの,その思考方式そのものをも,けっして否認も排除もしない〈主義〉である。

 それだけに,民主主義を踏みにじる政治・行政を恥じらいもなくおこないつつある「自民党プラス公明党」連立政権は,なるべく早くに崩壊させねばなるまい。

 人によっては,2016年7月の参議院選挙のさいに,衆議院の解散総選挙が同時に実施されるかもしれないと,観測する向きもないわけではない。このへんの問題は時期が近づいたとき,日本社会が安倍晋三政権に対してどのような対応・評価をしているかによっても決まるはずである。

 憲法学者小林 節のように,われわれ庶民の感覚が「政権によって侮辱された主権者」であるという政治意識を,とことん保持しつづけていくことが大事である。このことは,安倍晋三自身がわれわれに不用意にも教えてしまった「民主主義の原則的なイロハ」のひとつであったのである。

 最後に,小林の安倍晋三「批判」をさらに政治・経済全般にまで拡げて,具体的議論してみたい。

 a) 『朝日新聞』2015年10月24日朝刊は,見出し「社会保障給付 110兆円超,育児 欧州より低水準」の記事をもって,こう指摘している。

 「安倍政権は『新3本の矢』にひとつに子育て支援を盛りこんだ。欲しい子どもの数にもとづく『希望出生率』を2020年代半ばに実現することをかかげたが,財源の確保がカギを握りそうだ」と。

 もっとも,庶民の生活に手厚い経済支援などしたくもない「いまの自民党政権」が,その〈カギ〉を握って離さないでいるような政治の現実的な状況にあるからには,この記事の指摘する期待感のほうは,ほとんどあてにできない。

 b)『日本経済新聞』2015年10月23日朝刊のコラム「大機小機」は,「新・3本の矢」のうち,「2の矢『出生率 1.8 』,3の矢『介護離職ゼロ』も『矢ではなく的では』と首をかしげる人が多い」というふうに,疑問を投じていた。

 つまり,安倍晋三のアベノミクスは,まったくその本来性であるアベコベミクスを地でいくアホノミクスさを高揚させている。

 一言でいえば「新・3本の矢」という提唱は,完全に『的外れ』。いわば,安倍晋三は,目的と手段をとり違えた「経済・社会問題」に対する経済政策の方途を提示しているのだが,それでも得意になってこの「新・3本の矢」を自慢している。

 c)『日本経済新聞』2015年10月20日朝刊が出した「社説」2題のうち1題は,「有権者はおごりに敏感だ」であった。この社説は,安倍晋三に対してこう警告していた。

 昨〔2014〕年,後援会の不明朗な収支を批判されて閣僚を辞めた小渕優子衆院議員については,調査を委託した弁護士らが「小渕氏は全く関与していなかった」との報告書を発表した。

 けれども,「元秘書ら2人が今月〔2015年10月〕,東京地裁で政治資金規正法違反の有罪判決を受けた」。しかも小渕氏は,事件発覚時に「『政治家として説明責任を果たす』と明言していた」にもかかわらず,結果発表の会見に姿をみせなかった。
安倍晋三内閣改造写真201409032-2
 出所)2014年9月3日内閣改造時の記念写真,http://m.japanese.china.org.cn/japanese/doc_1_26375_69833.html  首相の安倍晋三が女性閣僚たちにかこまれてひな壇を降りてくるところ。(画面 クリックで 拡大・可)

 政治は,主権者たる国民に代わって権力を行使する作業である。信用できない人には任せられない。疑わしい行為があれば,一般人よりはるかに詳しい説明責任が求められるのは当然である。政治家が世の中を甘くみていると感じさせる出来事が相次いでいるのは残念だ。

 これにて一件落着でよいのか。小渕氏が主導した不正でなくとも,秘書を監督する政治的・道義的な責任はあるはずだ。秘書の犯罪が政治家本人の被選挙権停止につながる連座制の適用範囲の拡大を与野党は検討すべきである。

 内閣改造で就任した新閣僚もさまざまな問題が指摘されている。森山 裕農相は談合で指名停止になった企業から献金を受けていた。献金授受の禁止対象の境目がわかりにくいのは事実だが,〔2015年〕2月に似たようなケースで当時の西川公也農相が辞任したのは記憶に新しい。疑わしい献金はあらかじめ返しておくのが,入閣待望組のたしなみというものだ。
『朝日新聞』2015年10月20日朝刊安倍晋三風刺漫画
出所)『朝日新聞』2015年10月20日朝刊。

 島尻安伊子沖縄・北方相の選挙区内でのカレンダー配布も感心しない。うちわを配って閣僚辞任に追いこまれた松島みどり衆院議員の騒動の教訓が生かされていない。

 政府が臨時国会の召集を見送ったのは「野党の追及を回避するため」との見方が出ている。そうでないならば,閉会中審査に積極的に応じ,森山・島尻両氏に国会の場で事情説明をさせるべきだ。

 登場したのは,いずれも自民党の政治家である。「安倍1強」のもとで,多少のことは大丈夫と思っていないか。有権者はそうしたおごりに敏感である。「違法ではない」で済まさないでほしい。

 d)『朝日新聞』2015年10月24日朝刊37面「社会」は,「〈Media Times〉難民批判イラスト,差別か風刺か 日本の漫画家が投稿,国内外で波紋」という記事のなかに,こう記述をする段落を含んでいた。
    英BBC放送(電子版)は〔10月〕8日,「シリアの女の子の風刺漫画は人種差別か」と題して記事を配信。

 9月下旬に訪米した安倍晋三首相が難民支援に約970億円の拠出を表明しつつ,受け入れに言及しなかった点とあわせて報道。

 日本の難民認定率が先進諸国できわだって低いと指摘し,「移民受け入れに対する反対意見は国内に根強い」と報じた。
 米ワシントン・ポスト紙(同)も〔10月〕9日,そのイラストの問題を,日本の難民行政の現状や安倍首相の発言とともに伝えている。

 難民支援にとり組む「認定NPO法人難民支援協会」のコーディネーター,田中志穂さんは「海外では安倍首相の発言とともに,欧米と日本の意識のズレを示す例として受け止められたのではないか」と指摘する。

 e)「余 言」 --「日本政治のダイナミズムがなくなった」。「いまや議員の集合体になった自民党。ここの動きはバラバラだが一見,派閥の時代よりまとまって動いているような印象さえ与える。まさに蚊柱だ」
 註記)『日本経済新聞』2015年10月19日朝刊,論説委員芹川洋一稿「気心と戦略の安倍体制,『蚊柱』の均衡に危うさも」。

 要は,安倍晋三政権のファシズム的な政治体質に対する具体的な特徴づけが,この自民党は蚊柱だという形容に求められている。自民党議員連の「独りひとり」が「1匹の蚊」程度に譬えられているのか? この筆法はおそらく正解である。

 現状における日本政界地図の模様は「一強多弱」だと表現されているけれども,この表現は自民党内部にもそのまま妥当するものである。民主主義の危機的な状況は,日本国の単位における全般的な問題であるが,これは自民党の内部からとくに安倍晋三から発している。