【日米原子力協定の束縛から逃げられない日本の原発体制】

 【原発体制は,再生可能エネルギー普及に逆行する事情など】



 ①「猛暑でも節電要請なし 取り組み定着,余力9.1%」(『朝日新聞』2016年7月1日朝刊)

 a) この夏は,6年ぶりに政府による7~9月の「節電要請」のない夏になる。東京電力福島第1原発事故後,企業と家庭の節電のとり組みが着々と進んだことが大きい。再生可能エネルギーや異業種による新電力の普及も進む。稼働する原発は全国で2基のみだが,猛暑になっても電力需給は十分な余裕があるみこみだ。

 政府の見通しでは,沖縄を除く大手電力9社の今夏の供給余力はピーク時でも 9.1%あり,必要とされる3%を大きく上回る。このため,東日本大震災後に続けてきた節電要請(2013年以降は数値目標なし)の見送りを5月に決めた。

『日本経済新聞』2016年6月29日朝刊 猛暑の予測があっても余裕をみこむのは,企業や家庭での節電の定着などで電力の需要が減っていることが大きい。経済産業省の想定では,2010年夏と比べたピーク時の電力需要(大手9社の合計)は,気温の上昇や経済規模の拡大の影響を考えても約14%減って1億5550万キロワットになるとされる。
 註記)右側記事画像は『日本経済新聞』2016年6月29日朝刊からのスクラップであるが,引用中の『朝日新聞』と同じ主旨の記事といえる。東京電力とこの管内における電力需給関係を報道した記事である。電力の生産・販売は4月から自由化されており,新電力も電力市場に参入した現状を考慮に入れた内容になっている。

 b) 電力消費の多い企業などの「大口需要家」は,とくに節電に積極的だ。経産省が昨〔2015年〕夏に実施したアンケートでは,大口需要家の93%が節電に協力し,うち95%が「来〔2016年〕夏も継続する」と答えた。理由のうちもっとも多かったのは「コスト削減」で,利益を重視した行動だ。

 24時間営業の多いコンビニ業界では,最大手のセブン―イレブンは全店舗の9割以上で照明をすでにLED化しており,今後も進めていくという。ローソンも,冷蔵庫のフィルターをこまめに掃除したり,エアコンの設定温度を27度にしたりする「省エネ10か条」を今夏も継続する。

 大手メーカーも,業務に支障のない範囲での節電は続けるところが多い。日立製作所は国内グループの主要拠点に,全従業員が電力の使用量をリアルタイムでみられるシステムを導入しており,例年どおりに節電を促す。三菱重工業は電力消費の多い設備の稼働を夜間や休日にシフトする操業調整を〔20〕13年からとりやめたが,正午に消灯するなどの節電は続けるという。

 一方,同じ経産省のアンケートで昨夏に節電に協力した家庭は54%とまだ伸びしろがある。

 製薬大手の武田薬品工業は震災後,「エレベーターを使わずに階段で上り下りすれば5ポイント」といった社員の節電などのとり組みに応じてたまる「タケエコポイント」を導入。国内の従業員と家族に節電を促している。

 c) オール電化PR着々。九州電力の川内1,2号機を除いて原発は止まったままだが,太陽光や風力など再生〔可能〕エネルギーの普及も余裕を後押ししている。ただ,大手電力には別の危機感がある。4月に始まった電力小売りの全面自由化で,新規参入の事業者は電気を多く使う家庭ほど割安感が高い料金プランを打ち出し,顧客を囲いこむ。

 こうした動きに対抗し,大手電力は自粛していた「オール電化」のPRを復活させ始めた。四国電力は4月からテレビCMを流し始め,中国電力や関西電力も再開した。九電も7月から始める予定だ。

 むしろ,節電を訴えているのは新規参入組。東京急行電鉄系の東急パワーサプライは,猛暑日の昼間に顧客が電車に乗ると,買い物に使えるポイントがつくキャンペーンを始める。自前の発電所をもたずに卸取引市場などで電気を調達するが,夏のピーク時には値段が高くなりがちだ。契約者が節電すればコストを減らせる利点がある。

 d) この夏の電力需給の見通し(2016年8月)。「電力会社 電力余力の割合」は,つぎのとおりである。この電力余力の割合はピーク時で,カッコ内は昨夏の予備率である。なお,この記事で沖縄電力は出ていない。

   北海道 20.2%( 8.7%)  東北  7.3%( 5.5%)
   東京   8.1%(11.0%)  中部  6.7%( 4.9%)
   関西   8.2%( 3.0%)   北陸 11.1%( 6.4%)
   中国  13.0%( 7.9%)  四国  5.8%(12.1%)
   九州  13.9%( 3.0%)  合計  9.1%( 7.0%)
 補注)参考にまでつぎの図表もかかげておく。これは原発の不要性を逆証するような中身(四国電力で)になっている。(画面 クリックで 拡大・可)
2016年夏8月電力予備率予想
 出所)http://www.kantei.go.jp/jp/singi/electricity_supply/20160513/taisaku.pdf

 ②「自民党が原発をやめられない理由」(『ビデオニュース・ドットコム』2014年02月15日 19:22)

 a) 安倍政権はいったいぜんたい,どんな展望があって再び,原発推進に舵を切ろうとしているのだろうか。東京都知事選で自民党が推す舛添要一氏が,脱原発を主張していた宇都宮・細川両候補に勝利したことで,安倍政権は懸案だった原発再稼働へ向けて動き出した。事実上原発推進を謳ったエネルギー基本計画の策定作業も,速やかに進めるという。

 当初,政府は2030年代末までに原発ゼロを謳った民主党政権のエネルギー基本計画を破棄し,原発を重要なベース電源と位置づけた新たなエネルギー基本計画を〔2014〕1月中に閣議決定する予定だった。しかし,原発ゼロをかかげる小泉純一郎元首相の後押しを受けた細川護煕元首相の都知事選出馬で,にわかに原発問題が注目を集めはじめたとみるや,選挙後まで閣議決定を先延ばしにしてまで,原発が都知事選の争点となることを避けてきた経緯がある。

 選挙から一夜明けた〔2014年2月〕10日の予算委員会で早速,安倍首相はエネルギーの「ベストミックス」をめざしたエネルギー基本計画の策定を進める意向を示した。ベストミックスというのは経産省が考え出した霞ヶ関文学で,要するに,これからも原発を継続することの意思表明にほかならない。
 補注)時代の流れは「原発をベストミックスのための基盤」に据える電力観を完全に否定している。「自然再生可能エネルギー」を活かすための,原発抜きでする,なんらかの「ベストミックス」=電力源構成観であれば,まだ分かる。だが,ただ「木偶の坊」のような発電装置である原発をその主軸に据えるのは,すでにアナクロ・エネルギーの立場でしかない。

 政権中枢を含め原発推進が主流を占める自民党内にあって,一貫して脱原発を提唱し続けている衆議院議員の河野太郎氏は,そもそも現在のエネルギー基本計画の原案では,自民党の選挙公約に違反していることを指摘する。自民党は政権に返り咲いた2012年の衆院選で原発を,あくまで「過渡期の電源」と位置づけ,できるだけそれを減らしていくことを約束していた。いまになって原発を「重要なベース電源」とするのは公約違反になるというわけだ。

 b) 河野氏が代表を務める自民党脱原発派のエネルギー政策議員連盟は,政府のエネルギー基本計画の原案に対抗するかたちで,原発の新増設・更新はおこなわず,核燃料サイクルも廃止して「40年廃炉」を徹底することで緩やかに脱原発を実現するための提言を策定し,政府と自民党に提出している。

 しかし,河野氏は,自民党内では実際に脱原発の声をあげられる議員の数は党所属国会議員409人中せいぜい50人前後ではないか。電力会社やその関連会社,電気事業連合会と経団連,そして電力会社に依存する企業群や関連団体などからなる「原子力ムラ」は,脱原発を主張する議員に対して,激しいロビー活動を仕かけている。多くの若手議員から,「原子力村から脅された」となどの相談を受けているが,本心では原発をやめるべきだと考えている議員の多くが,こうしたロビー活動のために身動きがとれなくなっている実態があると指摘する。
河野太郎山本太郎画像
出所)このような写真もあったが(画面 クリックで 拡大・可)……,
https://www.taro-yamamoto.jp/national-diet/5448

 原子力ムラは政治家にとって命綱となる選挙を,物心両面で支えている。パーティ券の購入や政治献金などを通じた政治活動の支援も,電力会社本体はもとより,関連会社・下請け・関連団体などを通じて,幅広くおこなっている。原発の再稼働を容認しないと発言した途端に,議員の集票や資金集めに支障が出てくるといっても過言ではないほどの影響力があると河野氏はいう。とくにやる気のある新人や若手議員は選挙での支持基盤が脆弱なため,電力会社から「次の選挙では支援しない」といわれれば,政治生命の危機に陥るような議員が大勢いるのが実情だというのだ。

 c) そのような与党内の党内事情と同時に,もうひとつ日本が原発をやめられない明確な理由があると河野氏は指摘する。使用済み核燃料の最終処分場をもたず,また核兵器をもたない日本は,原発から出るプルトニウムなどの核のゴミを処理する方法がない。そのため,日本の原発政策は一度発電に使った使用済み核燃料を再処理して再び燃料として再利用する「核燃料サイクル」と呼ばれる遠大な計画がその根底にある。それがないと,日本の原発政策は経済的にも国際的にも正当化できなくなってしまうのだ。

 ところが,実際には核燃料サイクル事業は高速増殖炉「もんじゅ」の相次ぐ事故やトラブルで何兆円もの国費を投入しながら,まったく動いていないばかりか,2050年までは実現できないとの見通しを政府自身が出す体たらくにある。

 問題は,日本が核燃料サイクル事業を放棄した瞬間に,電力会社が資産として計上している膨大な量の使用済み核燃料がすべてゴミになってしまい,電力会社の経営状況が悪化してしまうことだ。東京電力などは債務超過に陥り,経営が破綻してしまう。

 また,中間貯蔵を条件に青森県六ヵ所村に保管してある使用済核燃料も,燃料の再処理をしないのであれば,各電力会社がそれぞれ自分の出したゴミを引き取らなければならなくなってしまう。もともと,そういう条件で青森県に置かせてもらっているのだ。しかし,日本中の原発に併設された使用済み核燃料プールは,すでに70%以上が満杯状態にあり,どこもそれを引きとるだけの余裕はない。また,原発の近くに使用済み核燃料を保管することのリスクがいかに大きいかは,今回福島第1原発事故の際に,稼働していなかった4号機がどうなったかをみれば明らかだ。

 d) 河野氏が指摘するように,日本が原発をやめられない理由は,実は非常に単純明快だが,問題は日本という国にこの問題を解決するガバナビリティ,つまりみずからを統治する能力がないようなのだ。

 民主党政権もこの2つの問題に明確な解を出せなかったために,脱原発をめざしながら,最終的に策定した計画は「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう,あらゆる政策資源を投入する」のようなやや意味不明なものになってしまった。民主党よりもさらに物心両面で原子力ムラへの依存度の高い自民党では,「止めたければ原発を止められる国」になれるみこみが,ほとんどもてそうもない。

 河野氏が率いるエネルギー政策議員連盟は今回,政府と自民党に提出した提言のなかで,最終処分場問題の解決には明解な答えを出せる状態にないことを前提に,こう提唱していた。

  (1)  核燃料サイクルを廃止し,使用済み核燃料はゴミとして扱う。

  (2)  それが理由で経営が悪化する電力会社に対しては国が送電網を買い上げることで公的支援を注入する(そうすることで自動的に発送電分離が進む)。

  (3)  各原発が六ヵ所村から引きとった使用済み核燃料は最終処分場問題が解決するまでのあいだ,サイト内にドライキャスク(乾式)貯蔵法によって保管することで,地震や津波などで使用済み燃料プールが損傷して大惨事が起きるような危険な状態を回避すること,などを政府に申し入れている。

 現在政府が公表している新しいエネルギー基本計画はあくまで原案であり,自民党内や国会での議論はこれからだ。河野氏は選挙公約に違反している部分については,党内議論の過程で徹底的に反対し,変えさせていきたいと抱負を述べるが,はたして自民党にそれを受け入れる能力があるか。注目したい。

 本心で原発を推進したいのならいざしらず,実は止めたいのに止められないのだとしたら,止められる状態を作っていくしかない。なぜ自民党は,原発を止められないのか,どんな党内事情があるのか,止めるためにはどうすればいいのかなどを,ゲストの河野太郎氏とともに,ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
 註記1)http://blogos.com/article/80437/ から引用。 河野太郎は現在,安倍晋三政権のなかで国務大臣に任用されており,それ以後,自身の持論:立場「脱原発」は保留(喪失?)状態にある。
 補注)河野太郎は2015年10月7日,国務大臣(第75代国家公安委員会委員長,行政改革担当・国家公務員制度担当・内閣府特命担当大臣-防災・規制改革・消費者及び食品安全-)に任命された。以後,彼の脱原発の立場は『色を失った』。

 ウィキペディアは,河野太郎をこう書いている。--日本の原子力発電所には明確に反対しており,「原子力は経済採算性は合わない」「原子炉の新設はしないということを政治主導で決める」と語っている。また,自民党のなかで原発に関する議論をした場合,河野の反原発の主張に対して原発推進派議員からは合理的な説明が返ってこずに「あいつ(河野)は共産党なんだ,共産党の議員が自民党の本部にいるんですか?」「社民党へいけ,お前は共産党だ」といわれ,そういうレベルのやりとりにしかならず,そこで議論が終わってしまうと,河野自身が語っている。

 河野は2015年10月,前記国務大臣に就任すると即刻,ブログの過去記事〔脱原発記事が含まれていたことは当然であった〕を全削除して〈再出発〉していた。メールマガジンの発信もしている。mixi には『河野太郎と語る日本の未来』というコミュニティを開設している。

 ③ 矢部宏治『日本はなぜ,「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル,2014年10月)

 本書,矢部宏治『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を,以下のように要約している紹介があった。このなかに,日本の原発体制がなぜ廃止されえないかに触れている。なお,文章は適宜に補正した。

 1) 本来,近代国家というものは,憲法が最強であり,国内法も権力者もすべて憲法に制約され,国際条約も原則的には,矢部宏治2014年表紙憲法に制約される。近代国際社会では各国家は理念的には対等であり,相互の憲法を最大限尊重することになっている。

 2) だが,実際の日本は,「日米安保」が最強の位置を占めており,日本国憲法を頂点とする日本国内法はすべて「日米安保」に従属している。それゆえ,高級官僚は憲法に忠誠を示さず,「日米安保」に忠誠を示している。

 日本の最高権力者は「日米合同委員会」並びにそのOB(ふつう官僚制度の頂点である事務次官になる)である。「日米安保」補完政党である自民党は政権党で,「日米安保」に異議を唱えた鳩山民主党政権は退陣を迫られた。
 補注)ここで日米合同委員会とは,こう解説できる。--日米安全保障条約第6条に基づく地位協定(施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)の,第25条に規定された,同協定の実施に関する日本,アメリカ両国政府の協議機関である。旧安保条約 (1951年) に伴う日米行政協定などで設けられていたもので,新条約 (1960年) に引継がれている。
 註記)https://kotobank.jp/word/日米合同委員会-109750


 3)原発も日米間の「日米原子力協定」により,憲法による制約より上位にある。したがって,日本の政権は原発を止められないかもしくは止めない。「原子力村」は「安保村」の内部にあり,「安保村」を小さくみえやすくしたものである。

 4)「日米安保」が日本国憲法に優先するのは,日本国憲法の成立じたいに原因がある。つまり,敗戦後において,昭和天皇を戦犯としないために日本国憲法は作られた。そのとき書かれた憲法9条2項は,当時の国連についての理想主義に依存し,その後,国連憲章変質とマッカーサー大統領選敗北により理想主義の基盤を失った。理想主義に代わり,日本国防衛のため,昭和天皇がアメリカに米軍駐留継続を求め,沖縄米軍駐留が現在まで続いた。

 5) 日米安保が憲法に優先する現況を打開するには,憲法9条2項をフィリピン憲法のように「外国軍の駐留を許さない」と憲法に記述するかたちでの改憲が必要であり,もっとも良い解答である。
 註記)http://d.hatena.ne.jp/kamayan/20150107/1420638509 の前半部分を参照。

 以上,要は「安保村全体の問題」⇒「原子力村内の問題」⇒「日本の電力会社の原発問題」⇒「原発再稼働志向」という継起的な関連性を,まず背景に置いたうえで,そしてつぎに,再稼働をめざす各電力会社原発のうちでも,プルサーマル発電による営業運転がなされてきた原発を,以下に一覧しておく。

 ☆-1 既存のプルサーマル原発(プルサーマル発電による営業運転をしてきた原発)

  2009年12月2日  九州電力 玄海原発3号炉
  2010年3月30日  四国電力 伊方原発3号炉
  2010年10月26日 東京電力 福島第1原発3号炉(廃炉)
  2011年1月21日  関西電力 高浜3号炉
    補注)2016年7月1日現在,これらの原発のうち稼働しているものはない。

 ☆-2 フルMOX原発

  2014年11月   電源開発  大間原発
    補注)この大間原発は当初,2014年11月を運転開始予定としていたが,2012年3月時点におけるその発表以後,現在まで未定のままである。

  2014年12月16日 電源開発(Jパワー)が建設中の大間原発(青森県大間町)の新規制基準適合性審査を,原子力規制委員会に申請した。

 ☆-3 事前合意

  2011年夏    関西電力  高浜原発4号炉
  2011年     日本原電  東海第2原発
  2012年2月以降 中部電力  浜岡原発4号炉
  2014年     原電開発  大間原発1号炉
  2015年度まで  東北電力  女川原発3号炉
  未 定      中国電力  島根原発2号炉
  未 定      北海道電力 泊原発3号炉
   補注1)これらは,2011年「3・11」以後の予定であったために,現在までこれら原発ではプルサーマル発電は開始されていない。
ブルサーマル燃焼画像
出所)http://www.japc.co.jp/project/images/cycle_mox01_a.gif

   補注2)「プルサーマル計画」ということばがあるが,つぎのように説明されている。「原子炉で使用した後の使用済燃料を再処理してとり出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を,現在の原子力発電所(軽水炉)で使う計画のことである」。「プルサーマルは,ウラン資源の利用効率が高まり,資源小国である日本においては,重要なエネルギー政策のひとつである。
   出所)http://www.japc.co.jp/project/cycle/mox01.html

 ところが,現在〔今日〕のところまで,プルサーマル発電は再稼働されていない状態にある。高速増殖炉「もんじゅ」の営業運転への見通しすら,さっぱりついていない現況にあることからも,ブルサーマル発電を割り当てられている原発の再稼働が〔どうしても〕不可避とされているわけである。その理由は,次項 ④ で説明されている。

 この ③ の参考資料につぎの画像を観ておきたい。30年以上も耐用してきたオンボロ原発のなかにもプルサーマル発電用に稼働させてきた原発が混じっていたことになる。(画面 クリックで 拡大・可)
『朝日新聞』2016年6月21日原発40年原則どこへ
出所)『朝日新聞』2016年6月21日朝刊。

 ④ 日米原子力協定(1988年版)   

 この協定の「第12条の4」を引用する。

 「4 両当事国政府は,いずれか一方の当事国政府がこの協定の下での協力を停止し,この協定を終了させ及び返還を要求する行動をとる前に,必要な場合には他の適当な取極を行うことの必要性を考慮しつつ,是正措置をとることを目的として協議し,かつ,当該行動の経済的影響を慎重に検討する」。

 この文章は法律家に解説してもらうまでもなく,この「協定」の「停止」そのものを,真っ向から阻止するための条項である。その点は「是正措置をとることを目的として協議し……」という文句によく表現されている。

 問題の核心は,前述にあった矢部宏治『日本はなぜ,「基地」と「原発」を止められないのか』2014年10月に関する要約のうちから,「3)原発も日米間の『日米原子力協定』により,憲法による制約より上位にある。したがって,日本の政権は原発を止められないかもしくは止めない」という基本線から理解できるはずである。

 それゆえ,通常の軽水炉による発電によってできるウラニウム(核燃料のゴミであるが)は,日本の場合「核兵器」への軍事的利用がただちに想定されてはいない。そのために,それを別途,MOX燃料として費消するほかない〈技術的な因果関係〉のなかにはめこまれている。しかも,前段に紹介したごとく,日米原子力協定(1988年版)「第12条の4」のしばりがきびしく,日本の原発全基を廃炉にできない事情・状況のなかで,プルサーマル発電をおこなわざるをえない窮地に追いこまれてもいる。
 
 その意味では日本の原発管理体制は,にっちもさっちもいかない暗礁に乗りあげたかのような始末になっている。しかも,原発を電源とする電力供給は,廃炉工程にまで視野を広げて考えると,もはや「安価・安全・安定・安心」の保証がほとんどありない経路になっており,なおさらのこと,「原発」に手を出した〈愚かなエネルギー政策〉の帰結に陥っている。《悪魔の火》から逃げきれない原発の「魔性」は,すでに原発技術の表層に否応なく露出しており,もはや人間の手には負えない〈諸事象〉が,つぎつぎと起きている。

 ⑤ 原発推進派人士の〈狂ってしまた手遅れの原発感覚〉

 村上朋子(むらかみ・ともこ)という日本原子力村の徒弟がいる。さきに経歴のほうを紹介しておく。まず,専門分野は「企業経済学,企業財務分析/原子力工学」である。

  1990年 東京大学工学部原子力工学科卒業
  1992年 東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻修士課程修了
  2004年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了,経営学修士
  2005年  (財)日本エネルギー経済研究所入所,戦略研究ユニット・原子力グループ・グループマネージャー・研究主幹。

 この村上朋子が「委員として『事故』表現に抵抗感=もんじゅ研究部会で初会合」という発言をしたという記事があった。
   「高速増殖炉『もんじゅ』(福井県敦賀市)のこれまでの成果のとりまとめや,放射性廃棄物の有害度減少をめざす研究計画策定のための議論をする作業部会の初会合が〔2012年10月〕29日,文部科学省で開かれた。会合では,1995年のナトリウム漏えい事故について,委員から『事故という表現に抵抗がある』との発言があった」というのであった。
 註記)『時事ドットコム』2012/10/29-21:15

 だが,「まあ,呆れるというか。ナトリウム漏洩事故という歴史上の事実を,表現を緩めることで,小さくみせようとするというふうに受けとられても仕方がない」対応の姿勢であった。少しでも表現を緩めることで,もんじゅへの抵抗感をなくそうということでしょうか。 
 註記)http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65829832.html
 村上朋子は以上のように,原発の事故それももんじゅという高速増殖炉に発生した事故を,過小に表現したい姿勢を正直に吐露していた。この姿勢は,原子力村の誠実な1員として観れば,きわめて率直な発言であった。この発言は,「共稼ぎを共働き」「女中さんをお手伝いさん」「占領軍を駐留軍」「敗退を転進」「全滅を玉砕」といいかえるような〈単純ないいかえ〉などとは,だいぶ次元を異にするものである。

 原発の事故も,交通事故と同じに事故を起こしているわけであるが,交通事故であったら交通「事象」といえるのか? 人が車にはねられたりひかれたりして,けが人や死人が出ても,交通「事象」と呼ぶことにするのか? どうやら,原発の場合は特別あつかいが必要とされているらしい。ともかく,いじましいまでに「原発擁護論的な態度・発言」である。しかし,原子力村の圏内ではそのような日本語の用法が常識としてまかり通っている(関連する正式文書のなかでは乱発・頻用されている)。

 そうした理屈:論法でいくと,原子力発電所では「事故が起きてもこれを事故といわず」,あくまで「原発で起きる事象」なのであるから,事故そのものが起きる可能性=確率性は,もともとかなり低いことになり,もっぱら事象ばかりが発生することにあいなっている。こういった「事故に関する認識方法」からして問題がありすぎることは,いうまでもない。「事象」重視の観点は「3・11」の〈事象〉」も産んだというわけか?
    村上朋子は2014年4月23日の時点になっても,なお ,『エネルギー選択の視点,「経済効率性の向上」「安定供給性」「環境との適合性」と「安全」の「3E + S」』だといいはっていたが,これは,2014年の段階においていえば,よほどの原発教「信者」でなければ吐けない一言(迷言:世迷い言)である。
 註記)http://www.ene100.jp/原子力を使ってきたのは「3E」をすべて満たすエネ
  村上朋子画像
 いまだに「安全神話」の錯覚,この麻薬感覚的な呪縛から全然覚醒できていない「原発推進派」の人士が存在する。彼ら(彼女ら)に特有だというほかない「原発技術に対する工学的な理解力」は,本当に,この村上朋子の程度でしかないとすれば,東大工学部原子力工学科卒業生の資質は高がしれているというものである。彼女ら(彼ら)に対しては,まずさきに教養科学的な教科目を,よりしっかり・テイネイに履修させることが必要であった(ここでは過去形)。多分,村上が大学に入学した1986年には,4月26日にチェルノブイリ原発事故が起きていた。憶えていないのか?