【原発によるエネルギー調達政策が完全に失敗であった事実,国策民営エネルギー事業の責任を誰もとらない「スーダラ節電気産業」のデタラメ三昧】

 【廃炉問題で四の五のいいぬけている原子力村体制は,廃炉事業では「自分たちがだけ放射能を浴びない」で,焼け太り】

 【原発のコスト安価も技術安全もエネルギー確保安心もすべてウソであった出発点を,あらためて確認させたような,「日本の原発」の後始末のための「廃炉工程は永遠です!」の空虚な結論】

 【産業技術に関するムダ・ムリ・ムラを典型的に体現してきた原発産業のお粗末な顛末】



 ①「高速炉『急ぐ必要なし』原子力委,経済性を疑問視」(『朝日新聞』2017年1月14日朝刊)

 この記事は見出しの文句だけみても,完全に「ずっこける」ものであった。

 もんじゅという高速増殖炉は,1967年10月に動力炉・核燃料開発事業団(動燃」が設立されて以来,1992年12月に性能試験開始,1994年4月に臨界達成,1995年8月に発電開始したが,同年12月にナトリウム漏洩事故を発生させてから,いまだに商用化の段階に至るどころか,それ以前の実験・開発段階でもたもたするばかりでなく,結局「その計画をとりやめる」しだいになっていた。

 その間すでに半世紀もの歳月が経過した。ところが,この報道は見出しのなかに,もんじゅに替わる「高速炉『急ぐ必要なし』」という文字があるのだから,これを読んだ者がびっくりしないわけがない。ともかく,この ① の記事を紹介する。

 政府が高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃炉にし,新たな高速実証炉の開発を決めたことに対し,〔2017年1月〕13日の内閣府原子力委員会で,委員から「現状では経済性がない」「急いで開発する必要はない」などの意見が相次いだ。

 政府は今〔2017〕年,開発の工程表づくりを始める方針だが,政府内の組織が注文を突きつけた。原子力委員会は,国の原子力政策について独自の見解を出す役割をもつ。この日の会合で,政府の方針に対し,「ビジネスとしての成立条件を検討して目標を設定する必要がある」などとする見解をまとめた。
核燃料サイクル事業画像『東京新聞』
出所)https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/genpatsu/kochira/27/

 これまでの高速炉開発では「研究の視点が強調され,実用化が考慮されてこなかった」と指摘。実用化に向けて費用を下げる必要があるのに「現状では建設費も高いとされる。東京電力福島第1原発事故や電力自由化といった競争環境の変化も踏まえるべきだ」と釘を刺した。

 プルトニウム消費については,ウランと混ぜたMOX燃料にしてふつうの原発で燃やすプルサーマル発電が,現在では唯一,現実的な手段だとしている。岡 芳明委員長は「(原発の燃料となる)ウラン資源は枯渇せず,現状で高速炉に経済的な競争力はない」と指摘。阿部信泰委員は,いまも高速炉を開発しているのは中国やロシアくらいだとし,「市場経済の国では難しい。米英独も諦めた」と語った。

 また,政府が,高レベル放射性廃棄物の量や放射能を減らす意義をかかげていることについても,阿部委員は「何度も再処理することになり,経済性がないのは素人でもわかる」と疑問視した。原子力委員会は原子力工学者らで構成される。かつては原子力政策の基本方針を決める司令塔だったが,福島事故後の法改正で2014年に位置づけが変わり,現在は経済産業省のエネルギー基本計画で基本方針が定められている。

 --この記事の内容は実に陳腐である。はたしてニュースになる価値があるのか,このような内容として報道する必要がある中身なのか強い疑問を抱くほかない。報じられているもんじゅ関連の情報は,既知も既知のものばかりである。なにゆえ,このような記事が新聞に掲載されるのか不思議と感じるほどに奇妙である。「いまも高速炉を開発しているのは中国やロシアくらいだ」が,完全に商用化できている段階にはない。

 ただ,高速増殖炉は読んで字のごとく当初は,核燃料が拡大再生産できるすばらしい原子炉だという触れこみであったのだが,実際の開発・利用は,いったいいつになったら本格的に可能になるのか全然判っていない。だから「市場経済の国では難しい。米英独も諦めた」のである。ロシアでは「高速」増殖炉が運転され近隣に電力を供給しているが,市場の論理=経済的な採算性に則して稼働させているわけではない。

 ともかく,この ① の記事は半世紀をかけてもダメな結果のままである日本の高速増殖炉の開発・利用問題について,それでも「高速炉『急ぐ必要なし』」と,なにやら「肯定的に否定している」だけであった。しかも,もっと時間をかけて悠長にじっくりいきましょうなどといったふうにも聞こえるような,原子力規制委員会側の基本姿勢が報道されている。それもこれも「原子力村の一隅における」「のどかな田園風景ならぬお花畑」状態であるというほかない。

 もっとも高速増殖炉もんじゅの場合は,商用化にまでは至らない段階で半世紀もの長期間,低速どころか,ただ足踏みしてきた「夢のそのまた夢みたいな原発」であった。ところが,「3・11」のときに原発事故を発生させ,それも人類史の記録に特筆大書されるほかない核惨事となった東電福島第1原発事故の場合は,4基のうち稼働中だった原発3基がすべて,溶融に至る事故を起こしていた。それだけでなく,事故発生以来5年と9ヵ月が経っているにもかかわらず,デブリ(溶融した核燃料)の後始末は全然できておらず,その事後処理の見通しについても全然ついていない。

 そのうえで,東電福島第1原発事故現場の後始末に関する先行き,つまり廃炉を完全に終了させるためにかかる「年月の見通し」もさっぱり把握できないでいる。環境経済学者宮本憲一は,こう断言している。
★ 原発事故は公害 ★
=「〈戦後の原点 民主主義のちから〉公害対策
 市民が動いた,環境経済学者 宮本憲一さん」
『朝日新聞』2016年12月4日朝刊 =

 公害との闘いは未完である。2011年3月に東京電力福島第1原発の事故が発生した。「環境汚染のせいで多くの住民が強制疎開させられ,ふるさとを失った。明治期の足尾銅山鉱宮本憲一画像2毒事件以来のことで」あった。

宮本憲一によれば,「公害とは,企業や政府が環境保全への十分な用意をしなかった結果,生活環境が侵害され,健康障害や生活困難が起きる社会的災害である。福島の事故は公害以外のなにものでもない。「福島の事故を戦後最大の公害ととらえ,環境民主主義を前進させること。それは現代の私たちの課題なので」ある。
 出所)画像は宮本憲一,http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=39036
 最新の論稿が指摘するように,原発の基本的にかかえる技術的な困難性は,こう表現できる。「原発はその安全性を実験で確証することができない技術である」。つまり「科学や技術には不可知の領域があり,技術的対策では巨大事故を完全に防ぐことなどできない」。ところが,「福島原発事故において,規制当局や専門家たちが利益共同体の一員として振るまい,安全性をないがしろにしてきた」のである。
 註記)井野博満「脱原発の技術思想」『世界』2017年2月,191頁下段,197頁下段,同頁上段。

 そうであるかぎり,本ブログ筆者が常用してきた決まり文句でいえば「原子力は《悪魔の火》だ」というほかない。人間が原子力の利用に関して,悪魔との技術競争に対等に渡りあえてはおらず,ましたや勝利したことなど一度もない。結局,敗北の連続であった。しかも,その後始末においてもいつも,「技術の敗北」が確実に予見されているような昨今の事情もある。

 ②「核心予定調和の福島廃炉計画 6年間の現実,直視を」(『日本経済新聞』2017年1月16日朝刊7面,編集委員 滝 順一 )
 『日本経済新聞』2017年1月16日朝刊原発廃炉記事
 東京電力福島第1原子力発電所の事故から6年を前に事故対応のあり方が重要な転機を迎えている。経済産業省は昨〔2016〕年12月,廃炉や賠償などに必要な費用を大きく見直した。これまで11兆円と見積もられてきたが,ほぼ2倍の21兆5千億円になるという。

 福島第1の廃炉費用は2兆円から8兆円に膨れあがった。福島第1の現場はいまも汚染水の処理にてこずり,本格的な廃炉作業はまだだ。にもかかわらず6兆円ものコストアップである。その根拠は大ざっぱ。あたかも明細なき請求書だ。
 補注)ここでは「あたかも明細なき請求書だ」と形容されているけれども,その実質においては「あたかも金額欄の数字記入がない白紙の請求書だ」とまで極論しても違和感がない程度にまで,東電福島第1原発事故現場における〈被害の惨状〉が明らかになりつつある。その具体的な請求額がこれからもさらに,膨らみつづけていくことだけは請けあえる。逆にそれが減額される希望などは,それこそ「完全に想定外だ」と断言できる。

 1979年3月の米スリーマイル島原発の事故で溶融燃料(デブリ)を取り出し処分場まで運ぶのに約10億ドル(約1千億円)かかった。福島のデブリはスリーマイルの約6倍。デブリが圧力容器から落ちて飛び散っているため取り出しはより難しい。費用は最大で25~30倍程度になるとみて,さらに物価上昇を勘案し50~60倍の約6兆円をみこんだと,経産省の資料にある。

 注意が要るのは,これがデブリ除去までの費用の最大値とされている点だ。スリーマイルでも約1%の燃料の取り残しがあり,2030年以降の原子炉解体では被曝を避ける慎重な作業が必要になる。福島第1ではデブリが1カ所に固まっていないので,きれいに取り切るのは容易ではない。通常の原子炉よりはるかに大きな費用が解体にかかるとみるのが自然だ。「作業の進め方の工夫で費用は節減できる」と廃炉事情に詳しい関係者は話すが,はたしてどうか。
 補注)この記事の内容にかぎらず,東電福島第1原発事故現場に関する理解では,デブリが格納容器内にまだ収まっているという〈仮定〉での議論になっている。格納容器じたいからさらに溶融が進み,建屋の床面や地下にまでデブリが落下・浸入していないとは,誰も保障できていない。つぎのような記事があるが,これを否定できる専門家はいるか? 少し長いが重要な論及なので全文を紹介する。
◆ “フクイチ” で新たな恐怖!
 海外の研究者や政府関係者が不安視,
苛立つ最悪の「地底臨界」危機進行中? ◆

  =『週プレNews』 2015年4月28日 06時10分 (2015年5月24日 12時02分 更新)=

 〔2015年〕4月3日から福島第1原発2号機の格納容器の温度が約20℃から70℃へ急上昇し,2日後には88℃に達した。それと連動するように,原発周辺の「放射線モニタリングポスト」が軒並み高い線量を記録。復旧したての常磐自動車道・南相馬鹿島SA(サービスエリア)で通常の1000倍にあたる毎時55μSv(マイクロシーベルト)を最大に市街地各所で数十倍の上昇が見られた。(前編記事→http://wpb.shueisha.co.jp/2015/04/27/46919/)

 これはいったい,なにを意味するのか? 考えられるのは,原発内の核燃デブリ(ゴミ)が従来の注水冷却工程に対して異なった反応を示す状態に変化した可能性。たとえば,デブリが格納容器下のコンクリートを突き抜けて地盤まで到達(メルトアウト)し,地下水と接触するなどだ。
メルトアウトの想像図画像
 福島第1原発1~3号機では,巨大地震直後に圧力容器内の核燃料がメルトダウンし格納容器の下部へ溜まった。それは昨〔2014〕年4月から7月にかけて名古屋大学が2号機で実施した,宇宙線から生じる物質貫通力が強い「ミュー粒子」を利用した透視撮影で明らかになった。さらに,同じく1号機格納容器内の底から約2m上の作業スペースでおこなったロボット調査でも,数千℃の超高温デブリが圧力容器を溶かして落下した痕跡が撮影された。だが,デブリの正確な位置は特定されていないし,ミュー粒子画像に映った格納容器の底は平坦にみえた。

 となると,100t超といわれる大量のデブリ塊はどこへいったのか? 半球状の格納容器底部の内側は厚さ約3mのコンクリートを敷いて平らになっているが,そのうち深さ70㎝ほどが事故の初期段階で高熱デブリによって溶解した可能性があると,東電はこれまで発表してきた。この推測について,元・東芝の研究員で原子炉格納容器の強度設計を手がけた後藤政志氏(工学博士)に意見を聞くと,「今回のミュー粒子による撮影でわかったのは,格納容器が間違いなく壊されたことで,これは2,3号機にも当てはまると思います」〔と答えている〕。

 しかし,ほぼ地面と同じ高さに感光板を置いた撮影なので,核燃料が実際いまどこにあるのかの判断材料にはなりません。東電のいう70㎝という数字の根拠はよくわからない。コンクリートや建材の金属と核燃料が混ざり合った状態のデブリは,もっと下まで潜りこんでいるとも考えられます。ただし,ほかの物質が混じって時間が経っているのでデブリの放熱量は減り,容器の底の鋼板(厚さ20㎝厚)までは達していないはずです。仮に鋼板が溶けても,下には5,6mのコンクリート層があるため,その内部で冷却バランスを保って止まっていると思います」〔というのである〕。

 もしも核燃デブリが格納容器を突き破れば,メルトダウンから先の「メルトアウト」に進んでいくわけだが,実は先日,調査途中で止まったロボット装置について記者会見に臨んだ東電の広報担当者は,意味深長な感想を述べた。格納容器内では10Sv(1000万μSv)のすさまじい高線量が計測されたが,それでも予想していた10分の1ほどだったといったのだ。その意味するところは,デブリが金属格子の作業用足場からみえるような位置ではなく,ずっと深くまで沈んでいるということではないのか。

  また最近,東電の廃炉部門責任者がNHK海外向け番組で「2020年までに核燃デブリの取り出しに着手する」という作業目標について「困難」とコメントしたが,これも状況が非常に悪いことを示唆しているのかもしれない。「メルトアウト」または「チャイナ・シンドローム」とは,核燃デブリが原発施設最下層のコンクリートすら蒸発させ,地中へ抜け落ちていく状態で,それが現実化するかどうかは後藤政志博士が語ったデブリの温度しだいだ。1~3号機内では4年後のいまも各100tのデブリが4000~5000℃の高温を発し,メルトアウトの危険性が高いと説く海外研究者もいる。

 たとえば,「IAEA(国際原子力機関)」の “不測事態の管理技術会議” は,2012年時点でデブリが格納容器と下層コンクリートを溶かし,自然地層へ抜け出た可能性を指摘している。具体的にはデブリが施設地下6,7mまで沈み,直径10~15mの大穴の底に溜まっているというのだ。この仮説でも地殻を突き抜けるようなメルトアウト現象は否定しているが,代わりにひとつ厄介な事態を予測している。それはデブリの核分裂反応が再び爆発的に加速化する可能性だ。

 通常ならば,原子炉や実験施設内でコントロールされる「再臨界」は自然状態でも一定の条件が整えば起きうる。その条件とは中性子と水,地質。IAEA技術会議のシミュレーションでは,まず原発地下の水流と岩盤層が中性子の反射装置となり,デブリ内のウランやプルトニウムが連鎖的に核分裂していく。そして,膨大な崩壊熱で水蒸気爆発が繰り返され,新たに生まれた放射性物質が地上へまき散らされる。

 琉球大学理学部の古川雅英教授(環境放射線学)は,こう分析する。そうした自然界の臨界現象は,アフリカ中西部のウラン鉱山(ガボン共和国オクロ)で20億年前に起きており,当時の地層が海底にあったことが中性子による核分裂反応を少なくとも60万年間にわたり持続させたようです。その点では,大量の地下水が流れる福島第1原発の地質構造も共通した条件を備えているかもしれません」。

 飛距離パワーが強く,人体を含めて通過した物質の原子を「放射化」させる中性子線そのものの威力はとてつもない。1999年に東海村の核燃加工場で起きた「JCO臨界事故」では,ウラン化合物約3㎏の連鎖分裂で半径10㎞圏の住民約30万人が屋内退避した。それに対して,質量がケタ外れに多い福島第1原発のデブリが「地底臨界」すれば,東日本どころか地球規模の超巨大原子力災害に突き進む! だからこそ海外の研究者や政府関係者たちも福島第1原発事故処理の不透明な現状に対して不安と苛立ちを募らせているのだ。

 事実,この悪夢のような破局シナリオが決して絵空事でないことは,他の科学的事実からも裏づけられる。そのひとつ,CTBT(包括的核実験禁止条約)にもとづき「日本原子力開発機構」が群馬県高崎市に設置した高感度の放射性核種監視観測システムには,昨〔2014〕年12月から福島第1原発の再臨界を疑わせる放射性原子,ヨウ素131とテルル132が検出され続けている。

 【編集部注】
 a) 当記事掲載号(18号)の〔2015年〕4月20日(月)発売から8日後の4月28日(火),「CTBT高崎放射性核種観測所」は,《昨〔2014〕年12月~今年3月までの「放射性ヨウ素I-131」「同テルルTe-132」に関しては,ND(不検出)とすべきところをMDC(最低検出可能放射濃度)値を表示したので訂正する》との旨を発表した。つまり包括的核実験防止条約に基づく重要監視対象の2核種濃度について,3カ月間もの表示ミスが続いていたという。

 b) また福島第1原発2号機横の観測井戸では,今〔2015〕年に入って新たな核分裂反応の再発を示すセシウム134とトリチウムの濃度が高まるばかりだ。昨〔2014〕年秋に開通した国道6号線の第1原発から第2原発までの12㎞区間でも高線量が続いている。はたして,福島第1原発はメルトアウトで地底臨界という最悪の事態を迎えつつあるのか? 今回の格納容器温度の急上昇,一部地域での急激な線量アップは,原発事故が日本政府の大ウソ「アンダーコントロール」とは正反対の新たな危険領域へ入ったことを示しているのかもしれない。(取材・文/有賀 訓)
 註記)http://www.excite.co.jp/News/column_g/20150428/Shueishapn_20150428_46924.html  以下。
 〔ここで ② の記事引用に戻る ↓ 〕
 やっかいごとのひとつは,建物内の放射能汚染の広がりがつかめないことだ。東京電力は内部を観察するため配管を伝ってロボットを入れようとしているが,配管入り口周辺の汚染が高く作業を阻んでいる。

 「福島の状況はスリーマイルと(1986年4月に史上最悪の事故を起こした)チェルノブイリ原発(ウクライナ)の中間だ」と大西康夫・米ワシントン州立大学非常勤教授はいう。教授は米施設の除染などに長くかかわわってきた専門家だ。放射線を遮る水を内部に張れれば作業は少しは楽になるが,損傷した原子炉を冠水するのは難しいと考えられている。

 計画では,2017年度にデブリ取り出しの基本方針を決め,2018年度には最初にとりかかる号機を決める段取りだ。これから1年が見極めのヤマ場だが,状況がわかるにつれ困難さもはっきりみえはじめた。

 一方,費用負担では廃炉費用の8兆円は東電が利益の一部を積み立てて充てる方針が固まった。廃炉に約30年。単純計算で年間3千億円弱が要る。賠償の費用(東電負担分4兆円)などもあり,年間5千億円を超える利益を東電は計上しつづけなくてはならない。

 送電の託送料が有力な原資にみこまれる。合理化で送電コストを圧縮し利益をひねり出す余地は十分あるらしい。しかし,合理化分を廃炉の積み立てに回したのでは電力自由化で下がるはずの託送料が高止まりする。送電網への前向きな投資もしなければならない。相反する二兎(にと),三兎を追う構想だ。

 さらに経産省のシナリオでは,国が負担する除染費用を政府保有の東電ホールディングス株の売却で賄うことになっている。そのために東電の企業価値を7.5兆円にまで高める必要があるという。原発事故前の時価総額の2倍を超える。廃炉や賠償など事故の清算をやり終えないとできない相談だろう。柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働で生まれる利益も計算に入れているが,いまのところ動かせるメドはたたない。
福島第1原発事故処理経費見積もり画像
 廃炉の技術面だけでなく収支の面でも綱渡り。どちらでつまずいてもゆきづまりかねない。実現可能性よりも「実現させねば」との経産省の意図が前面に出る。21.5兆円のシナリオはそんなガラス細工にも似た危うさをはらむ。
 出所)画像は,http://toyokeizai.net/articles/-/149084

 廃炉費用が大きく膨らみそうなことが報道され始めてからスケジュールを根本から見直す意見を耳にするようになった。30年での廃炉は困難とみてより長い期間をかけよという。放射能の減衰を待つ狙いで,チェルノブイリのようにコンクリートで原子炉を固めて封止する「石棺」をモデルとする。

 昨〔2016〕年夏,原子力損害賠償・廃炉等支援機構が作成した廃炉の「戦略プラン」の案に「石棺」という言葉がいったん盛りこまれて福島県などが強く反発した。石棺は帰還をめざす地元の人びととの約束を破るものだ。支援機構の山名 元理事長は「石棺にはしない」と弁明に終始した。

 石棺は合理的に聞こえるが,30年を100年に延ばしたところで放射能が作業を阻むリスクであることには変わりない。建物の耐久性や,東電への支援をどこまで続けられるかを考えれば,長引くのは得策とはいえない。また原子炉の内部を調べて事故の詳細を報告することも原子力を推進した政府や電力業界の使命だ。フタをして済むことではない。

 ただ最善を尽くしても,できないこともあろう。そんな事態も想定する必要がある。予定調和的なシナリオだけでなく,最悪のケースも含めた将来像を福島の人びともくわわって議論する場を設ける時ではないか。専門家や有識者だけでは決められないことだ。(記事引用終わり)

 いまごろになってようやく「福島の人びともくわわって議論する場を設ける時ではないか」などと主張されているけれども,これままでは原発事業に関してはほぼ完全に,それもさんざん「依らしむべし・知らしむべからず」の基本路線で貫いてきた原子力村側の理屈は,調子がよすぎる。「福島の人びと」にかぎらず,日本「全国の人びと」の原発に対する態度は,その過半が稼働に反対である。このことは,多くの世論調査が明確に教えている。

 いまごろにもなってから「地元の人びとにも議論にくわわってもらい」といったごとき,従来の「原発安全神話路線」の表面的かつ宥和的な態度変更ぶりは,うがった観方ではなく,原子力村側が責任を外部に転嫁のために用意した,体のいい便法である。

 ③「福島第1原発2号機,溶融燃料観測なるか 週内にもロボ調査,位置や量が廃炉進捗左右」(『日本経済新聞』2017年1月16日朝刊15面「科学技術」)
 
 東京電力は週内にもf,福島第1原子力発電所2号機で溶け落ちた核燃料のロボット調査に着手する。東日本大震災で1~3号機は炉心溶融が起きた。2号機は建屋の水素爆発を免れたうえ圧力容器内に溶融燃料の多くがとどまっているとみられている。圧力容器の直下にロボットを入れ,溶融燃料を初めてカメラで捉えられるかが焦点となる。30~40年かかる廃炉工程のうち,溶融燃料の取り出しを1~3号機のいずれかで始める作業を2021年に控える。

 溶融燃料の状態は震災から6年が近づいてもいまだ実態がつかめていない。溶融燃料の位置や量によっては,取り出しが難しくなる恐れもある。今回の調査は廃炉作業の進捗を大きく左右する。東電は週内に先端にカメラを付けた機器を格納容器に差し入れ,ロボットの通り道をたしかめる。投入するロボットは,国際廃炉研究開発機構(IRID)と東芝が開発した。サソリ型をしており,移動中は高さと幅が9センチ程度の棒のようなかたちで進む。圧力容器の真下に来るとサソリの尾にあたる部分をもち上げ,圧力容器の底をカメラで見上げるようにする。

 調査が狙うのは,圧力容器から核燃料が溶け落ちたかどうかの確認だ。カメラの撮影画像から圧力容器の損傷程度や燃料が溶け落ちた様子がわかる可能性がある。溶融燃料の位置や量を絞りこめると,取り出しに使う機器の開発や回収の手順を検討しやすい。圧力容器内に残る溶融燃料が多ければ,格納容器の横からではなく上からの取り出しが有効といった工程を策定できる。
 補注)この記事が書いている内容は,あくまでも技術的な可能性に関する説明だけであって,これが実際に可能な作業となり,それなりに成果を挙げられるかどうかに関する記事ではない。いま東電が福島第1原発事故では「こういう対策をしている」「ああいう試みをしようとしている」といった類いのニュースなのであって,繰りかえしていえば,実際にはまだなにも結果をだせていない「デブリの取り出し作業」をめぐって,ただ今日の時点においてあれこれ議論できそうなことがらのみを,ただそのままに報じているに過ぎない。次段に続く記事もそうした内容である。

 2016年7月には宇宙から2号機を素通りしてくる素粒子「ミュー粒子」を調べ,圧力容器の底に溶融燃料と思われる影をとらえている。2015年の1号機の調査では,初めに入れたロボットが内部の床の溝にはまって動けなくなり,別のロボットを投入する事態となった。放射線量も毎時約10シーベルトときわめて高く,カメラが故障して映像が確認できなくなった。今回はより劣悪な環境が予想されることから,カメラの放射線に対する耐久性を大幅に引き上げた。障害物で止まる危険性を抑えるため,前方と後方の2台のカメラを使って周辺の状況を確認するようにした。2号機と構造が近く,事故の影響が少なかった5号機で模擬試験を重ねたという。

 ただ,調査の成否は見通せない。「やってみないと分からないことばかり」(東電)という。取り出し工法の絞りこみに役立つ情報をえられるかどうかは不透明だ。2号機の調査終了後は1,3号機の調査も予定される。2号機の調査の成否は今後の作業にも影響する。政府と東電は年内を目安として,1~3号機の各号機ごとに溶融燃料を取り出す方法を決める計画だ。

 この記事は要するになにをいいたく,つまり伝えたいのか? 東電さんはあれこれ一生懸命に,福島第1原発事故現場の後始末に努力していますが,いまだに確たる成果は挙げられていませんという報道になっている。結局《悪魔の火》の使い手によくなれるのは〈悪魔自身〉でしかない。この事実だけがより明白になっている。

 しかし,東電福島第1原発事故現場の後始末全体を石棺化の工事によっていったん終えようとする企画は,地元被災民が絶対に許さないという。かといって,今日の『日本経済新聞』記事なども報道するように,東電福島第1原発事故現場の後始末がわずかにでも順調に進捗しているかといえば,けっしてそうではなく,根本のところでは「なにも片づいていない」。
東電福島ゴジラ画像
出所)http://www.k2o.co.jp/blog4/2016/08/4.php

 東電福島第1原発事故現場で演じられている光景は,こう表現できる。原子力村の利害関係集団は《悪魔の火》を使いこなせると慢心していた。だが,いまでは,とうてい手に負えるような相手ではない怪物=原子力そのものに対面させられた,東電当局をはじめ原子力村の構成員たちは悪戦苦闘させられるばかりである。

 映画『ゴジラ』は,映像芸術の世界だけにおける娯楽作品であるが,東電福島第1原発事故現場の問題はすでに,人類・人間にとって「深刻・重篤な公害問題」となっていながら,いったいいつになったらこの問題が解決するのか,その見通しすらつかないでいる。