【名門であろうとなんであろうと,原発事業進出で失敗した東芝】

 【会社は永遠ではないし,多分,東芝もそうでありうる】

 【原発は要らないし,実際にもう要らなくなっている】


 ①  1979年2月1日,ダグラス・グラマン事件の捜査を受け自殺(他殺説も根強い)した日商岩井(現双日)常務島田三敬常務の遺書
    社員の皆さま

 日商岩井の皆さん。男は堂々とあるべき。会社の生命は永遠です。その永遠のために,私たちは奉仕すべきです。私たちの勤務はわずか20年か30年でも,会社の生命は永遠です。それを守るために,男として堂々とあるべきです。今回の疑惑,会社のイメージダウン,本当に申し訳なく思います。責任とります。
  〔1979年〕1月31日夜 島田三敬
 戦争中は産業戦士と呼称されたこともあったけれども,敗戦後は企業戦士と呼称されるようになった日本のサラリーマンであった。その度合(会社に対する忠誠度)があまりにも高く・強い(ひどい?)ので,あげくは〈社畜〉などという蔑称まで生まれていた。この社畜的な感性によって精神面の中枢を支配されるようになっていたサラリーマンが,前段のような名台詞を吐いたのは,いまから40年近くも昔のことであった。

 当時はまだ日本が高度経済成長時代を突っ走っていたころである。つまり,1974年の石油危機を克服する時期を過ぎて,1990年ころに到来するバブル経済の破綻は,まだ予知できる時期ではなかった。「人間の寿命にはかぎり」があるが「会社の生命は永遠だ」といって自死した,会社忠誠心を溢れさせた商社幹部の事件は,そこまで企業のために滅私奉公する価値があるらしかった日本のサラリーマンの存在を,世界にしらしめたといえるかもしれない。

 東芝という日本の有名会社がある。1904〔明治37〕年に株式会社芝浦製作所として設立され,1939〔昭和14〕年,重電メーカーのこの芝浦製作所と弱電メーカーの東京電気が合併し,東京芝浦電気として発足した。
東芝日曜劇場コマーシャルソング1981年テレビ画面
出所)東芝日曜劇場「光る東芝1981」のテレビ広告画像,
https://www.youtube.com/watch?v=SZLoDTpaV8U

 日本の暮らしてきた人びとは,東芝の企業イメージソング『光る東芝の歌』(ひかるとうしばのうた,作詞・峠三四郎,作曲・越部信義,1956年発表)の冒頭歌詞を,しらない中高年の人はいないと思う。日本の電気機器総合産業として,そのよう広告にも反映されているごとき歴史と伝統を誇る東芝が,いまでは青息・吐息の経営状態に追いこまれている。
      『日本経済新聞』2017年2月15日朝刊東芝記事『日本経済新聞』2017年2月15日朝刊東芝図表2
出所)『日本経済新聞』2017年2月15日朝刊。

 その原因はなんといっても,原発事業の産業領域において大儲けをもくろんだところが,21世紀における時代の流れ,なかでも「3・11」を契機に発生した東電福島第1原発事故,しかも4基あったここの原発のうち3基までが核燃料の溶融事故を起こすという大事件の発生に影響されて,その「大儲けのための原発部門」がいままさに,この名門企業だといわれてきた東芝の足下を,大きくぐらつかせる要因になっていた。

 ② 3回の重大・過酷な原発事故

 本ブログ内ではすでに,前世紀から今世紀にかけて起きた原発の大事故については,なんども話題にしてきた。とりわけ,原発という装置・機械を大々的に開発・稼働させてきたアメリカは,この★-1「スリーマイル島原発事故」のせいで,原発の新設をためらうようになっていた。

 さらに,★-2「チェルノブイリ原発事故」がその方向性を維持させていたところに,くわえて,★-3「東電福島第1原発事故」も発生した。このためにアメリカの実情でみると,最近になってようやく新設された原発が数基稼働しはじめる程度の状態でしかない。同時に,アメリカにおいては,既存の原発がみな老朽化している実情もある。

  ★-1 1979年3月28日,スリーマイル島原発事故。 
  ★-2 1986年4月26日,チェルノブイリ原発事故。
  ★-3 2011年3月11日,東電福島第1原発事故。

 ところが,東芝は2006〔平成18〕年1月,英国BNFLから,ウェスティングハウスを54億ドル(約6370億円)で買収し,原子力発電装置の世界三大メーカーの1社になっていた。2011年3月に★-3が発生した。なかでも,2015〔平成27〕年5月になると,決算発表延期および配当見送りを発表し,原発事業部門のために経営の基盤が緩んでしまった事情が明るみに出た。
今村真東芝不正会計表紙
註記)毎日新聞出版,2016年1月発行。
この書名どおりに東芝の苦境は継続している。

 以上はざっと粗い話である。いずれにせよ,日本を代表する電気機器製造メーカー:東芝が,いま苦境に立たされている。東芝は,当初は有力な事業部門になりうると判断してウェスティングハウスを買収した。経営戦略論でいえば, “cash cow”(金のなる木)にできるに違いないともくろんで,同社を傘下に収めていた。

 ところが,その5年後に「3・11」によって東電福島第1原発事故が発生し,そのもくろみは裏目に出てしまった。したがって,いまでは原発部門は「金のなる木」どころか, “問題児” になりつつある。端的に観て,いまの場合・状況では「問題児」になったといってよい。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
BCG戦略論概念図
  出所)これはBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が考案した企業戦略対象の分類的な観察法である。http://keieikanrikaikei.com/history-of-strategy-013

 結局,東芝は,エネルギー産業としての原発事業を,自社の業務にとりこむ企業戦略の計画・実行において錯誤を犯したことになる。東芝はしかも,この結果,企業会計面では粉飾行為とみなすほかない対応を余儀なくされた。経営情報・会計数値の情報公開に関する社会的責務:アカウンタビリティーをないがしろにし,現在は非常な難局に対峙させられている。

 ③「〈天声人語〉名門企業の巨額損失」(『朝日新聞』2017年2月16日朝刊)

 本日〔2017年2月16日〕のこの「天声人語」,つぎのように東芝の1件を語っていた。

 先月末に公開された福島第1原発2号機内部の写真には,溶け落ちた核燃料とみられる塊があった。きわめて高い放射線量のために人は近づけない。きょうから小型ロボットが調査に入る予定で,その機体には「TOSHIBA」のマークがある。

 ▼ 東芝は廃炉作業の最先端を担う一方で,米国の子会社を通じて海外の原発建設も進めてきた。その原子力事業で7125億円の損失が出そうだとの発表が一昨日あった。生き残るためには利益を生む事業を切り売りするしかなく,会社のかたちは大きく変わりそうだ。

 ▼ 損失の遠因は,福島の事故である。より安全性を追求しなければと,世界で原発の規制が強まった。東芝が米国で手がける4基の原発の工事も,予想よりはるかにお金がかかることになった。事故の影響を甘くみたといわれても仕方なかろう。

 ▼ 川崎市の東芝未来科学館をのぞくと,日本初の電気冷蔵庫や洗濯機,掃除機などがずらりと並んでいた。世界初という携帯型パソコンもあった。高い技術を誇った名門企業の凋落(ちょうらく)はいつまで続くのか。

 ▼ 海外メーカーをみると,独シーメンスは福島の事故後に原発事業から撤退し,仏アレバは不調が伝えられる。東芝の巨額損失は,原発ビジネスがもうかる時代は終わりつつあることをあらためて示した。

 ▼ 廃炉への道のりは険しい。会社に逆風が吹くなか,現場でとり組む人びとの胸中を想像する。事故から間もなく6年。起きてしまったことの重さと向きあわねばならない日々が続いている。(引用終わり)

 ウェスティング・ハウスの原発事業は,アメリカなどでの生産・販売活動に限界があったゆえに,東芝に売却されていた。ところが,東芝はこの企業買収においては,戦略的な計慮以前の失策を犯していた。ネット上では,こういう記事が読める。

 ④ 東芝問題-中島 茂弁護士インタビュー(1)-

 「ウェスチングハウス買収が東芝不正の最大要因だ」(『経済プレミア』2016年1月22日,編集部稿)という記事に聞いてみると,つぎのように解説・分析していた。

 歴代3社長が関与して利益水増しをしていたことがわかった東芝。その不正会計問題を,リスク管理の専門家であり企業法務の第1人者である中島 茂弁護士はどうみていたか。経済プレミア編集長の今沢 真がインタビューした。3回に分けて報告する。(この 中島茂弁護士画像④ ではその1回目のみ紹介する)
 出所)画像は中島 茂,http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160121/biz/00m/010/029000c

 東芝は,委員会設置会社という,米国型の先進的な企業統治制度を日本で最初に導入しました。経済界では優等生といわれていました。それなのに,どうして会計不正がおこなわれたのでしょうか。

 ◆「中島茂弁護士」 私は,2006年の米原子力大手ウェスチングハウスの買収が最大の要因だと思っています。東芝は少し無理をして買ったんだと思います。同業他社の人に,買収価格は「2000億円ぐらいではないか」といわれているところを約5400億円で買った。追加融資もしていて,総投資額は6000億円を超えています。東芝の年間の経常利益は,当時1000億円前後でしたが,その数倍の買い物でした。長期的な戦略や展望をもって買収したけれど,不幸にも,2011年の福島第1原発の事故が起きた。東芝の原子力事業は非常にダメージを受けた。
 補注)本ブログは,2017年02月13日に「原発産業というババを引いた東芝の経営失敗,アメリカ企業が手を引いた原発事業に進出した日本企業の失策など」という題名で記述している。要は,東芝がババをわざわざ引くようにして,ウェスティング・ハウスを買収したところにすでに,今回において経済事件となるような原因があったといえる。

 買収のときに「のれん」という資産が発生しています。わかりにくい概念ですが,ウェスチングハウスの正味の資産が2000億円程度として,それを5400億円で買収した。その差額分を「のれん」として東芝の帳簿で資産に載せているんですね。ブランドイメージなどのれん説明図画像から,将来それだけの収益力が期待できるという意味です。現時点では3441億円になっています。
 出所)右側画像は,http://www.yutorism.jp/entry/noren

 原子力事業が非常に有望だということで投資し,「のれん」を背負った。それが原発事故で変わるんですね。「のれん」という資産の収益力が低下したのではないか,それなら「減損処理」といって,資産価値を下げなければならない。

 東芝の経営陣は,そのことが分かっていたと思います。ただ減損すると巨額の赤字になってしまう。だから,他の部門で利益を徹底して出して,減損に耐えられる体質にしようと思ったのではないでしょうか。そのため利益計上,予算必達がきわめて重要な課題となった。
 補注)のれんの会計問題を説明しておく。前掲の図表をもう一度みてほしい。「のれん」というと,蕎麦屋さんの入り口などにかかっている「のれん」を連想するが,会計上の「のれん」はまったく別物である。「のれん」は,企業を買収したときに発生する。

 たとえば,純資産100億円の会社を300億円で買収すると,差額の200億円が「のれん」として,貸借対照表に計上される。この「のれん」の本質は,買収対象会社のブランド価値である。つまり,「のれん」200億円分だけ,買収対象会社には特別の魅力・ブランド価値があるということになる


 要するに,純資産100億円の会社を買収するとき,単にその会社がもっている資産だけがほしいのなら,100億円で手に入るはずである。ところが,それをわざわざ300億円で買うというのだから,買収対象会社には特別の魅力があるという評価をしたことになる。つまり,「のれん」200億円は,ブランド価値という目にみえない資産を意味する。
 註記)http://e-actionlearning.com/chiebukuro/qa5.html 参照。


 〔引用の記事に戻る→〕 経営者が「予算必達」というのは本来,当たり前のこと。東芝の不正会計問題を調べた第三者委員会が昨〔2015〕年7月にまとめた報告書で,歴代3社長が「チャレンジ」「予算必達」と言って部下に過度の利益かさ上げを求めていたことが明らかになりました。

 ◆あれ以降,私はいろんな経営者の方に聞かれるんです。「予算必達といってはいけないんですか」と。私,昨〔2015〕年10月,経営者向けのあるセミナーで「予算必達というのは経営者として当たりまえのことです」と申し上げました。株式会社というのは収益を上げて株主に配当するためのシステムですからね。

 ただ,東芝の場合は意味が違っていた。3500億円近い「のれん」を減損処理しなければいけないことが目にみえていて,それに耐えられる体質ではない。それで,とにかく必らず利益を出せというのが,私は一番大きかったと思います。

 無理をしてでも投資しなければならないという経営判断をするときはあると思うんです。東芝の場合,「選択と集中」をかかげ,当時の西田厚聡社長や執行役常務で原子力事業を担当していた佐々木則夫氏の判断で,ウェスティングハウスの巨額の買収を決めた。そして取締役会に諮って決議した。
 註記)http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160120/biz/00m/010/021000c

 東芝はそのように,どうやら背伸びをしすぎ,原発産業に手を出した『結果』になってしまった。この結果が事前に少しでも予見できて,躊躇する〈余裕〉をもてればよかったはずである。しかし,それもこれもすべて「後の祭り」。東芝は,つぎの ⑤ ような原発産業の可能性に賭けていた。けれども,その後におけるエネルギー産業の基本動向は様変わりしつつある。

 ⑤「2025年の世界の原発勢力図」の読みは?

 以下に紹介するのは,ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社の情報提供資料(2010年8月)であり,る「2025年の世界の原発勢力図」『読得』№17に記述された文章である。

 原子力発電所(原発)の受注競争で,日本勢が敗退するというニュースが相次ぎました。昨〔2009〕年12月にアラブ首長国連邦(UAE)の原発受注では韓国勢に敗退し,今〔2010〕年2月には,東南アジア初の原発となるベトナムで,ロシア企業への発注が決まりました。日本の新聞では,日本勢敗退やその要因が記事としてとりあげられがちですが,「新興国を含む世界中で原発利用の動きが加速している」ことが背景にあります。

 世界原子力協会によると,原子力発電によって生み出される電力量は,2025年には,現在の約2.4倍になると予想されています。2025年の中国の原発による発電量は,欧州全体に匹敵する可能性もあります。先進国のほか,ロシアやインド,中近東諸国,東南アジア諸国,南アフリカなどが原発施設の建設を計画しています。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
2025年原発需要予想画像
 経済成長に伴うエネルギー消費の拡大がみこまれる新興国では,電力供給の増強が重要な課題になっています。さらに,地球温暖化問題への関心の高まりから二酸化炭要な課題になっています。さらに,地球温暖化問題への関心の高まりから,二酸化炭素(CO2)の排出が少ない原子力発電を見直す動きが世界的に広がっています。新興国の原発建設をめぐり,日本やフランス,ロシア,韓国などのあいだで激しい受注争いが当分続きそうです。
 註記)http://www2.goldmansachs.com/japan/gsitm/funds/pdf/yomitoku_17.pdf 途中に掲示の図解もここから。

 この文章はあいもかわらず,原発からは「二酸化炭素(CO2)の排出が少ない」(「少ない」と形容している点がミソであるが,以前は全然ないかのように強調していた)と記述しているが,これは完全に間違いで,むしろ温暖化の原因としては有力な影響要因のひとつでもあるのが,原発である。

 まるで常識であるかのように説かれるこの話法,原発は「CO2)の排出が〔少〕ない」という決まり文句は,欺瞞的な非常識を地でいく「説明論」であった。

 それはさておいても,この「2025年の世界の原発勢力図」という2010年時点における文章の意味あいは,当然のこと「3・11」のもたらした重大な影響を受けて,その後においては変化を余儀なくされている。新興国においては,原発を新設する動きがなくなったわけではないが,日本における2011年3月11東日本大震災によって起きた東電福島第1原発事故の影響は非常に大きい。

 ⑥「国際エネルギー機関(IEA)」が「2021年までの中期再エネ市場見通しを15%上方修正」したのは,「各国の再エネ政策の強化とコストダウンを反映」しており,「2021年には発電量の3割近く(28%)が再エネに(RIEF)」なると予測されている(以下の引用は,http://rief-jp.org/,2017-01-06 15:55:57)。

 国際エネルギー機関(IEA)は,2021年までの中期再生可能エネルギー市場報告を修正し,世界全体の再エネ事業の普及が従来予測よりも15%増となる,との報告をまとめた。再エネ普及の上方修正はパリ協定の発効を受けて,各国で温暖化対策の強い政策支援が進むためとしている。

 すでに世界全体でみると,新規導入の発電設備のうち,太陽光や風力などを合わせた再エネ発電規模は,石炭火力発電を上回って,世界最大の発電源となっている。IEAではこれまで2015年の中期市場推計を立てていたが,再エネ発電推進の勢いが広がっていることから,今回の上方修正に踏み切った。

 とくに,市場規模の大きい中国,米国,インド,メキシコでの政策主導の再エネ普及がみこまれている。このうち,米国ではトランプ次期大統領の登場で,温暖化対策への連邦政府の支援策が転換される可能性もある。だが,カリフォルニアやニューヨーク州など州政府の温暖化対策は引きつづき推進姿勢が強いほか,太陽光発電などのコストダウンが広がっており,民間ベースの再エネビジネスが増大していることを評価している。

 再エネ発電のコスト低下は今後も続く。IEAの中期市場見通し期間でも,太陽光発電コスト25%の低下,陸上の風力は15%低下がみこまれる。2016年に世界全体で新規導入された再エネ設備の発電量は前年比15%増の153GWという過去最大水準に拡大している。153GWのうち4割強の66GWが風力発電,3割強が太陽光発電。単純に計算すると,一日平均50万枚のソーラーパネルが稼動したことになる。

 国別では,中国が再エネ最大市場の座を維持した。世界の新規導入風力発電の半分が中国で産声をあげ,再エネ全体でも4割は中国市場で稼動している。中国の場合,1時間平均で3基の風力発電が羽を回しはじめる計算になる。IEAの事務総長の Fatih  Birol 氏は「われわれはまさに,世界の発電市場が再エネによって転換していくプロセスの目撃者になっている。とくに新興国市場で再エネ発電が発電事業の中心に置きかえられている」と指摘している。

 IEAはこうした「発電転換」が急速に広がる要因として,競争の激化・効果的な政策支援・技術革新の進展などを挙げている。また,パリ協定発効による気候変動の緩和策の必要性は強力な再エネ支援のパワーではあるが,IEAは「それだけではない」と分析している。中国やインドのように,大気汚染の悪化の深刻化や,エネルギー安全保障のためにエネルギー供給源を多様化しようという政策なども,とくにアジアの新興国の間では要因となっている,という。

 今後5年間を展望すると,再エネ発電はもっとも成長率の高い発電分野であり続け,全発電量に占める比率も,2015年の23%から2021年には28%へと5%ポイントアップするとみられる。中期的な電力市場の新規増加分の60%以上は再エネ発電で占められ,石炭火力発電との差はジリジリと縮まる。

 2021年時点の再エネ発電量は7600TWhで,現在の米国と欧州連合(EU)を合わせた総発電量とほぼ等しいレベルになるという。ただ,IEAは今回の上方修正が主要国の再エネ支援策の強化を理由としていることから,こうした政策支援が変化するリスクについても指摘している。また現在の活況なグリーン投資が反転するリスクもある。

 またグリーンボンド市場は急拡大しているが,グローバルベースでみると,まだグリーンファイナンスの規模は十分ではない。とりわけ途上国市場でのグリーンファイナンスの確保は課題になっている。また,発電分野では再エネ電力が急ピッチで普及しているものの,暖房等の熱源や,自動車等の輸送面では,エネルギー転換のテンポは緩やかで,さらなる政策支援が必要,と強調している。

 再エネ発電の広がりも地域的な差異もある。アジア地域では再エネ市場は順調に拡大しており,とくに中国だけで世界の新規再エネ発電の4割を占める勢いとなっている。しかし,その中国の再エネ発電でも,国内のエネルギー需要の伸びが大きいことから,新規電力需要の半分をカバーするに過ぎない。一方,米欧や日本などの先進国では,新規の再エネ発電は,国内のエネルギー需要の伸び鈍化もあって,中期的にみると比率を上げていくとみられる
 日本文註記)http://rief-jp.org/ct4/66914
 原文〔英文〕註記)https://www.iea.org/newsroom/news/2016/october/medium-term-renewable-energy-market-report-2016.html
 
 どうやら東芝は,エネルギー問題を先読みする能力に問題があった,もちろん経営陣の意思決定に関するその難点だったということになる。ともかくも「3・11」の様相をみせつけられたドイツは,それまであった〈原発政策の迷い〉を払拭させ,2022年までには原発の全廃を決めていた。ここではつぎの ⑦ の引照をして,本日の記述のための結論部としたい。

 ⑦ 熊谷 徹「ドイツの脱原子力政策決定から4年・ 国民的合意は揺るがない(第1回)」(THE HUFFINGTON POST,投稿日:2015年03月09日 12時44分 JST 更新: 2015年05月07日 18時12分 JST)

 ※ 熊谷 徹は,在独ジャーナリスト(元NHKワシントン特派員)

 ドイツが原子力発電を2022年末までに廃止することを決めてから,今〔2015〕年は4年目になる。日本の選挙では原発の再稼働は,政局を左右する重要な争点になっていない。これに対してドイツでは,エネルギー問題は政局を左右する重要なテーマである。私は25年前からドイツに住んで定点観測をおこなっているが,ときどきあっと驚くようなことが起きる。

 1)エネルギー問題に高い関心
 原発推進派だったアンゲラ・メルケル首相は,2011年3月に福島第1原子力発電所で発生した炉心溶融事故をきっかけに,原発批判派に「転向」した。同政権は,老朽化した原発8基を即時停止し,アンゲラ・メルケル画像残りの9基についても2022年末までに停止することを決めた。
 出所)画像は,http://moogry.com/index.php?req=アンゲラ・メルケル

 原発全廃に関する法律は,福島事故からわずか4ヶ月で議会を通過した。代替エネルギーの主役は再生可能エネルギーで,2014年9月の時点で電力消費量の約28%をカバーしている。ドイツ人たちは,2035年までにこの比率を55~60%に高めることをめざしている。

 元物理学者のメルケルは,かつては緑の党の反原発政策を批判していた。2010年には,電力業界の意向に配慮して,原子炉の稼動年数を平均12年間延長する決定を下したばかりだった。このメルケル首相がエネルギー政策を180度転換した理由のひとつは,「原子力に固執していたら,反原発派である社会民主党(SPD)や環境政党・緑の党に大量の票を奪われる」と考えたからである。

 実際,福島事故から2週間後にバーデン・ヴュルテンベルク州でおこなわれた州議会選挙では,約半世紀にわたって同州を単独支配していたキリスト教民主同盟(CDU)が大敗し,緑の党が圧勝。原発に大きく依存してきた保守王国に,初めて緑の党出身の首相が誕生した。

 ある有権者は,「私は30年間CDUに投票してきたが,福島事故の映像をみて,自分がだまされていたことに気づいた。初めて緑の党に投票した」と語っていた。つまりドイツでは,日本と異なり,エネルギー問題が政治の流れを大きく変える「爆発力」を秘めているのだ。

 「脱原子力」と「再生可能エネルギー拡大」というふたつの総論については,国民的合意ができあがっている。原子力政策をめぐり,新聞界の意見が真っ二つに割れている日本とは異なり,ドイツの新聞・雑誌・テレビ局の姿勢は,反原子力という点で一致している。

 ドイツでは,福島事故のはるか以前から,メディアがエネルギー問題,環境問題,特に原子力のリスクについて詳しく報じてきた。このため市民が豊富な知識をもっており,関心も強い。隣国フランスではエネルギー問題,環境問題についての報道がドイツよりもはるかに少ないので,市民の関心も低い。

 福島事故前の日本では,市民やメディアの電力問題に関する関心は非常に低く,ドイツよりもフランスに似ていた。

 2)再稼働に疑問の声
 それだけにドイツの言論界では,去〔2014〕年12月の日本での総選挙の前から,安倍政権が福島事故から4年も経たない内に原発再稼働への道を歩みはじめたことについて,強い疑問の声が上がっていた。

 リベラルな週刊新聞『ディ・ツァイト』のF・リル記者は,2014年10月5日の電子版で「日本では,フクシマはすでに過去のことになっている」と題した記事を発表し,「多くの市民が再稼動について抗議しているのに,日本では原発が再び動きはじめる。日本は,原爆による被害を受けた世界で唯一の国だ。さらに3年前には,福島で深刻な炉心溶融事故を経験した。よりによってそうした国が,市民の反対にもかかわらず原発に固執するのはなぜなのか?」という問いを発している。

 これは,多くのドイツ人が抱いている疑問だ。私自身,多くのドイツ人から「日本政府の態度は,理解できない。なぜ原発を再稼働するのか」と尋ねられる。リル記者は記事のなかで,日本の原発再稼働の最大の動機が,経済界の要請であることを指摘している。彼は,「日本では福島事故以来,化石燃料の輸入コストの負担が増大している。原発推進派は,長引く不況から脱出するには,原発の再稼働以外にないと考えている」と記している。

 ドイツのメディアは,霞ヶ関でおこなわれる市民の反原発デモの映像を時折流す。だからドイツ人のあいだでは「市民の反対が強まっているのに,なぜその意見が政治に反映せず,原発推進派である自民党が選挙で勝つのかわからない」と不思議に思う人が少なくない。

 3)ドイツの原発回帰はありえない(ここからは見出しのみの掲出で,後略……)
 註記)以上,http://www.huffingtonpost.jp/toru-kumagai/nuclear-power-abolition-in-germany_b_6822166.html

 2)のほうで話題になっていたが,日本国における住民たちが原発稼働には過半が反対である。だが,なぜかこの声が民主主義的に日本政府に反映されず,その真逆の原発政策が推進されている。

 また,これは反復する指摘になるが,「福島事故以来,化石燃料の輸入コストの負担が増大している」から,「原発推進派は,長引く不況から脱出するには,原発の再稼働以外にないと考えている」というしごく単純な理屈は,2014年後半からの原油価格の大幅な下落によって成立しえなくなっていたし,現在〔2017年2月時点〕でも基本線は同様である。原発の稼働推進は,いまの日本では「コストの論理」の観点からはだいぶ離れた地点での「国家的な課題・利害」(?)になっている。

 営利計算の見地から評価して分析してみる「原発の事故」や「その廃炉の問題」は,原発をエネルギー電源にしようとした国家の基本政策そのものからして(「3・11」がなければ,原発を50%以上にもする計画を準備していた),完全なる誤謬であった。「過ちては改むるに憚ること勿れ」であってもいいはずなのに,全然すなおではない国家権力・支配体制側の頑迷さが露骨に表面化している。

 というしだいで,いまの日本はなおも原発の再稼働に向けて,それこそ電力会社の立場だけを第1に考えながら,エネルギー政策を推進させている。もっとも,日本でも再生可能エネルギーの開発・利用は,電力使用量の平均値ですでに「15%の水準」にまで到達している。この点については,本ブログの前掲2月13日が言及していたが,日本の原発は実質的(電源比率的)にも不要・無用になっていることが明示されている。