【二重国籍である日本人(片親が外国籍)がどのくらいの数いるのか。いちいち調べてどうなるのか。日本政府法務省は世界中の二重国籍「問題:事例」をすべて管理・監督・統制できているというもいうのか】

 【「偽装日本人」? 二重国籍をもつとそうなるといえるのか。相手国側からもそういわれたら(「偽装▽▽人!),当人の立場はそれこそ立つ瀬がない】

 【日本政府の二重国籍問題に対する姿勢は不徹底,中途半端であいまい,ごまかしもある】


 ①「蓮舫氏,戸籍を一部開示『二重国籍』批判に反論」(『朝日新聞』2017年7月19日1面)

『朝日新聞』2017年7月19日朝刊蓮舫二重国籍問題 民進党の蓮舫代表は〔7月〕18日の記者会見で,国籍法にもとづく日本国籍の選択宣言をしたことを証明する戸籍謄本の一部などを開示した。党内外で出ている台湾との二重国籍批判をかわす目的だが,出自にかかわる個人情報を公党の代表が開示する姿勢が前例となり,差別を助長しかねないとの批判の声が出ている。(▼3面=民進迷走,4面=問題点は,34面=悪影響を懸念)
 補注)この報道に出ている場面だけですでに「差別を助長」させている。それも政治がらみで,民進党代表である蓮舫に打撃を与えたい人びとが,いやに力をこめては “ああだこうだ” といいたがっている。日本国内における差別といえば「とくに戸籍の問題」(部落差別:裏返せば天皇・天皇制問題),「アイヌ民族(ウタリ)差別」,「在日韓国・朝鮮人差別」,「沖縄差別」,「女性差別」,「障害者差別」などの問題があるが,蓮舫にかかわる今回の問題はそのいくつかが輻輳させられている特性があるところに特徴が出ている。

 なにせ,元台湾人(中国人?)である女性政治家の蓮舫が民進党代表を務めている時代である。純ジャパのつもりを信じこんでいる日本人(日本民族?)たちが,二重国籍である〈疑い〉を材料に,必死になって蓮舫という存在じたいが,もとから問題であるかのようにあげつらっている様子は,いささかならず見苦しい。

 特定行政書士の中井正人は「重国籍者への行政手続実務」という解説のなかで,こう言及していた。2014年における推定話である。「大雑把ではあるが,国内外に居住する日本と外国籍の重国籍者は毎年,出生によって3万人から4万人近く増え,現在の総数は70万人から80万人前後ではないかと推定する」。
 註記)https://www.tokyovisa.co.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/2016/10/LexisNexis-重国籍者への行政手続実務.pdf


 今年は2017年〔の7月時点〕であるから,前段の数値にはさらに10万人ほどを足しておく必要もありそうである( ③ に関連する内容が出てくる)。国際結婚が一番多かった時期には6%台(2006年に約4万5千組み)にまでなった年もあった。その子どもたちが逐次誕生していき,いまでは,いわゆる「混血児」が日本社会のなかで珍しくなくなっている。ごく単純に考えて,この2006年結婚組みの夫婦が子どもを1人ずつ儲けていれば,4万5千人である子どもの誕生になるゆえ,日本の出生数においても無視できない数値である(出生率平均で計算するともっと増え,6万5千人くらいになるか)。

 日本の相撲界で注目されているが,最近,大関に昇進した高安はフィリピン人の母親をもつ。そのほか,テレビにおいて露出度の高い芸能人・タレントのなかには「混血児」が目立っている。とはいえ,このごろはそのような事実をいちいちとりたてておおげさに話題にするような状況ではなくなっている。

 ただ,蓮舫のように政治利害・打算がなにかと絡んでくると,あちこちから,なにやかや文句をつけてくる場合も発生する。とくに蓮舫の場合は当初,自民党側から攻撃の材料にされていた。ところが,自民党内にも二重国籍を保有する議員もいたりして,いささかならずやぶ蛇の事態にもなっていた。


 〔記事本文に戻る→〕 開示資料は昨〔2016〕年10月7日付で日本国籍の選択宣言をした記述がある戸籍謄本の一部にくわえ,台湾当局からの「国籍喪失許可証書」や法務省とのやりとりを記した文書など計6通。蓮舫氏は開示理由について「本来戸籍は開示すべきではないが,民進党代表の発言の信頼が揺らいでいるのはよくない。政権への説明責任を求める立場であることを勘案して公表することにした」と述べた。
 補注)この蓮舫本人が申しひらきする理屈が奇妙である。自身の戸籍について「本来すべきではない開示を信頼の問題があって説明責任のためにした」という論理じたいがおかしい。問題はむしろ「そのようにしかみようとしない」「相手側における二重国籍」「観」にかかわる認識具合にある。二重国籍じたいが問題である以上に,民進党代表である蓮舫に対する政治的な攻撃の材料に利用しようとした自民党側の悪巧みが背景にあった。またこれに呼応する民進党内の極右的な発想・思想の持ち主(議員)もいた。二重国籍の問題がはたして,そのような次元・性質としてとりざたされていいのかについては,後段でさらに議論している。

 蓮舫氏は昨〔2016〕年の代表選当初,「私は生まれた時から日本人。(台湾)籍は抜いている」と主張していたが,台湾籍が残っていたことが判明するなど説明が二転三転。台湾籍を離脱し,日本国籍の選択宣言の手続をとった。だが,ネットなどでは選択宣言を裏づける戸籍公開を求める意見がくすぶり,東京都議選での敗北で党内でも問題が再燃。開示に踏み切った。戸籍の開示には党内の賛否が割れ,専門家から批判が相次いでいる。蓮舫氏は「差別を助長しない社会をつくる」と強調したが,さらなる党勢低迷と混乱を招く可能性がある。(記事引用終わり)

 いわゆる「戸籍」はいまでは,日本と韓国と台湾にしかなく,これについては,旧大日本帝国時代に日本が韓国(朝鮮)と台湾に戸籍制度を置かせた〈過去の経緯〉があった。戸籍の問題が「日本社会における差別問題」に対して非常に大きなマイナス材料となってきた歴史は,常識的にもしられている。

 日本政府は実は,この戸籍の制度はすばらしいものだという認識を根っこでは抱いており,原則公開されない公的資料になっていても,これまで日本社会においてはしばしば,なにかと〈差別の原料〉を供給してきた。この戸籍の制度はその意味では罪な制度であった。ついこのあいだまでのことであったが,求職者が仕事をあえるとき「両親がそろって(生きて?)いない」と,お堅い会社は採用しないというところもあった。

 それは,戸籍が社会において人間の位置づけ(価値づけ)を,当人自身の能力や特性とはなんらかかわりなく下す材料に悪用されてきた〈過去の歴史〉を意味していた。大昔の話になる。『新撰姓氏録』(西暦 815年)という書物が,関西地方を中心に五畿七道における日本人の出身別人口統計を編集していた。それは,当時の1182氏を「天皇家より分かれた皇別」「神々の子孫である神別」「漢,百済,高麗(高句麗),新羅,任那からの渡来人の子孫である諸蕃(蕃別)」の3部に分け,さらに出身地域別に配列する内容になっていた。
   京都と五畿(→五畿七道)内出身の,古代の氏の出自を記した書。30巻および目録1巻。桓武天皇の第5皇子,万多親王らの撰。弘仁6〔815〕年朝廷に提出された。奈良時代,各氏族は天皇の祖先との関係の深さに応じて社会的地位を与えられたので系図を詐称する者が多く,桓武天皇はこれを正そうとして果たさなかったが,遺志を継いで編まれたのが本書である。
 註記)https://kotobank.jp/word/新撰姓氏録-82099 なお,桓武天皇の母が渡来人(韓国・朝鮮系)の子孫であった。
 最後の「蕃別」に属した渡来人でなくとも,皇別と神別に属したと申告した人びとであっては,もとをたどれば「渡来人」であった多くの可能性を否定できなかったはずである。要は,途中から「神別」になだれこんで,その後もそう詐称していった人びとの一群がかなり多くいたはずである。以上,推測での話題であるが,日本の姓のなかには渡来人の姓をそのままか,あるいは反映させたものが多い事実からも,そうした推測の方法がけっしてデタラメではなく,確度の高い現実性を保証するものである。

 ②「戸籍開示,迷走する民進『多様性』かかげ結党,内部からも批判」(『朝日新聞』2017年7月19日朝刊3面」

蓮舫画像2 民進党の蓮舫代表が,自身の戸籍情報を開示した。台湾との「二重国籍」状態を解消したことを証明し,党勢回復の足がかりとしたい考えだが,執行部への批判がやむ気配はない。「多様性社会」の実現をめざ指したはずの党は,再生の糸口もつかめずに漂流している。(▼1面参照)

 「手続きを怠っていたのは事実だが,故意ではない。深く反省する」。蓮舫氏は党本部での記者会見で,みずからの戸籍情報開示に至った経緯について陳謝。「戸籍情報をもとに,たとえば結婚や就職差別が助長されてきた歴史をわが国は抱えている」との認識を示し,「こうした開示は私で最後にしてもらいたい」とも述べた。
 出所)右側画像は若き日;「グラビアアイドル時代の蓮舫」のお写真の1葉。

 蓮舫氏が開示方針を示したのは〔7月〕11日の東京都議選総括の会議。出席議員から「二重国籍問題が党の障害になっている」との指摘があった時だ。その後,逆に開示反対論が噴出すると,蓮舫氏は周辺に「出すにしても出さないにしても文句をいってくる。そんなに心配する話じゃないのに」と漏らしたという。

 野田佳彦幹事長に対しても,リベラル派の議員から「やめたほうがいい。証拠をみせろといわれることが続く」と開示に懸念の声が伝えられたが,野田氏は「そうならないよう配慮して,このタイミングになった」と釈明した。

 民進党は党の綱領などで共生社会の実現をうたい,旧民主党の政権交代前には二重国籍を法的にも認める方針を打ち出してきた。戸籍情報開示がもたらす社会への影響もある。蓮舫氏は会見で「これで終わりではなく,同じような境遇にいる方たちが悩んでいるのであれば,その声に耳を傾けて政策化していきたい」と述べたが,開示は党のカラーにそぐわぬばかりか,かえって党に対する不信を増幅しかねない。
 補注)民進党内には自民党極右議員にも負けない極右的な思想の議員が,一部にだがいる。こういう議員にかぎってネトウヨ的な騒ぎ方を好むが,自民党側からのこの問題を材料にした「蓮舫への攻撃」は,自党内にも複数名,同じような「問題(!)」をかかえている議員がいたことが判明してからは,この二重国籍に対する「自民党側からの騒音発生」は,いつの間にか鎮まっていた。

 
※ 乏しい政策論議,解党論も ※

 党代表が迷走する民進の現状は深刻だ。朝日新聞社が〔7月〕8,9日に行った全国世論調査(電話)によると,安倍内閣と自民への支持が下落するなか,民進の支持も5%と低迷。自民が減った分は無党派層が増えており,党幹部も「どうしたらいいのか,教えてほしい」とぼやく。

 18日まで続いた都議選敗北の総括に向けた会議では,執行部刷新を求める声が相次ぎ,ひな壇の蓮舫氏や野田氏は防戦に追われた。出席議員の1人は「われわれの歴史的役割はもう果たされた。分党あるいは解党すべきだ」と強調。野田氏が「分党,解党という判断はしない」と反論すると,「あなたにそんなことをいう資格はない。幹事長失格だ」などと面罵する場面もあったという。

 党勢回復の兆しがみえないなか,蓮舫氏が局面打開の契機にしようとした戸籍情報開示。だが,これで新たな事実が明らかになったわけでもなく,「党の問題の本質とは無関係」とみる議員が多く,党内の不満解消にもつながっていない。中堅議員は「やることなすこと裏目に出る負のスパイラル」とあきらめ顔だ。
 補注)蓮舫の戸籍公開が公党の代表者としてのそれであったかぎり,今後に与える悪影響は払拭できない。民進党代表の蓮舫さえそうしたのだから,あなただって同じにすればよいという理屈が出てこないともかぎらないからである。

 前原誠司元外相は「なにをやる政党なのかを打ち出して,もう一度,党の主体性をとり戻す」と訴えるが,肝心の政策論議は乏しい。むしろ,総括会議では「政策うんぬんのレベルの話ではない。有権者は党そのものに退場宣告している」との声が上がったほどだ。

 八方ふさがりの状況に,執行部のなかからも「野党再編は避けられない」との声が漏れる。かつての社会党や新進党といった野党第1党もいきづまったすえ,大量の離党者を出し,分裂。中堅の1人は「蓮舫氏の人気が上向くとは思えないが,有力な『ポスト蓮舫』もいない。みんな自縄自縛」と話す。(引用終わり)

 都民ファーストが都議選(2017年7月2日の投票日だった)で大勝ちした最近の政治情勢を念頭に置いての,以上のごとき民進党内の議論と思われるが,都民ファーストの政治体質,その核心(小池百合子と野田 数)は極右そのものであり,本質的には安倍晋三となんら変わりない。いまの時期,民進党のみならず自民党も解体させる事由がりっぱにあると思われるが,問題は有権者の意識のありようにもある。蓮舫の二重国籍問題で,結局は低次元のやりとりに終始しているかのような日本政治の形相は,安倍晋三政権のデタラメさもさることながら,なんら意欲的・前向きな政治姿勢を感じさせていない。

 ③「重国籍,なにが問題? 解消手続きは? 民進・蓮舫代表,戸籍情報開示」(『朝日新聞』2017年7月19日朝刊4面)

『朝日新聞』2017年7月19日朝刊4面蓮舫二重国籍問題 民進党の蓮舫代表が戸籍情報を開示した重国籍問題。日本政府は重国籍を認めていないが,国際化の進展で珍しいことではなくなった。なにが問題で,手続はどうなっているのか。(← 画面 クリックで 拡大・可)(▼1面参照)

 父母のどちらかが外国人である場合や,米国など出生地によって,ほぼ自動的に外国籍が与えられるケースがある。法務省は正確な人数を把握していないが,改正国籍法が施行された1985~2014年度に生まれた日本国籍のある人のうち,二重国籍をもつ可能性がある人は約83万人いたとされる
 補注)前段にも言及があったが,2017年6月までを推算すると,日本における二重国籍者は90万人くらいは存在すると読むことも可能である。

 日本の国籍法は,努力規定として,22歳までにいずれかの国籍を選択するよう求める。解消には,(1) 外国籍を離脱する,(2) 日本国籍選択と外国籍放棄の宣言をすることが必要だ。蓮舫氏は49歳だった昨〔2016〕年,日本国籍の選択を宣言。金田勝年法相は22歳以降について「国籍法上の義務に違反していた」と述べた。

 この法相見解については異論もある。中央大法科大学院の奥田安弘教授(国際私法)は「外国籍をもっていることに自分で気づくのが難しいことも多い。犯罪者のようにいうのは間違いだ。大臣の発言で不安に思う人もいる」と指摘する。国籍法は法相が二重国籍の解消について「催告できる」とし,催告されて1カ月以内に日本国籍を選択しなければ日本国籍を失うと定めているが,法相が過去に催告した例はない。
 補注)日本における二重国籍保有者に対する基本姿勢が「このような程度」にしか,実際には対応していないなかで,蓮舫の問題が出てきたのを契機に,あの国会・委員会ではろくに答弁もできなかった法務大臣「金田勝年」が,以上のようにそれらしいことをいい,蓮舫が「違反していた」とまで指摘した。

 だが,この批判は二重国籍保有者たちに対する日本政府当局が実際におこなっている対応を完全に無視しており,たまたま問題が露呈した時をとらえては「タメにする発言」をしていた。そこには,問題の様相を全体的に理解する法務大臣の態度は寸毫も感じさせない。


 国会議員については,公職選挙法が日本国籍であることを求めているが,外国籍をもつ人を排除する規定はない。国会議員から指名される首相についても国籍に関する規定はないが,外交官は外国籍がある人を認めていない。このため,内閣のトップとして外交交渉にあたり,自衛隊の最高指揮官でもある首相に外国籍があることは問題との意見もある。名城大の近藤 敦教授(憲法)は「首相や大臣にふさわしいかどうかは,有権者が投票するときに考える問題だ」。

 蓮舫氏の場合は父と同じ台湾籍をもっていた。日本政府は日中国交正常化で台湾と断交し,「二つの中国」を認めていない。このため法務省は,日本の国籍事務では台湾を「中国」として扱っている。外国籍の離脱には外国発行の「国籍喪失許可証書」が必要で,蓮舫氏は台湾発行の許可証を添付して区役所に届けたが受理されず,日本国籍の選択を宣言したと説明している。(引用終わり)

 --もっとも,日本もいまでは「ひとつの中国」しか認めない立場であるゆえ,台湾国籍は存在しないという方針にもとづき関連の法的処理をしている。だが,蓮舫の場合,このように「台湾発行の許可証を添付して区役所に届けたが受理されず,日本国籍の選択を宣言した」という点が事実であれば,これが問題を不要に複雑化させる原因になったといえなくもない。

 台湾籍の問題に関連しては,「朝鮮」籍の問題がある。敗戦後サンフランシスコ講和条約発効後(1952年4月28日からのこと),日本政府は,在日韓国・朝鮮人たちが旧植民地出身者としてもっていた日本国籍を一方的に〔というのは当時の国際法における理解でも無法の措置であったから〕剥奪していた。そのために,それら在日韓国・朝鮮人たちは一夜で,こんどは在日外国人に変幻させられていた。蓮舫は在日台湾人(父が台湾人,母が日本人)の日本人として,前述のような在日韓国・朝鮮人の来歴とは違うかたちで,その後において二重国籍をもつに至っていた。

 問題は,日本政府の二重国籍保持者に対する施策の一貫性のなさ(もともと曖昧で不在である)を,あたかも蓮舫自身における個人的な全責任であるかのように理解(牽強付会)し,そのうえで批判(非難・攻撃)を一方的にくわえるだけでは,この問題にかかわる全体像を適切に認識することはできない。それどころか,二重国籍「論」のイロハに関する知識もないままに,ただネトウヨ的な排外意識まる出しの意識だけが前面にせり出された状態で,この問題が負的に議論されるのでは,こうした価値観のあり方は実はそのまま裏返しになって,日本人自身に跳ね返ってもくる。というのは,相手・国があってのこの二重国籍の問題だったからである。

 ④「『戸籍開示要求は差別』指摘も 民進・蓮舫代表,戸籍情報開示」(『朝日新聞』2017年7月19日朝刊34面)

 民進党の蓮舫代表が〔7月〕18日,「二重国籍でないことを証明する」ため,戸籍の写しなどを公開した。本人も「本来は開示すべきではない」と認める,きわめてプライベートな情報。「公党の代表」としての説明責任を理由として挙げたが,悪影響を懸念する声もある。(▼1面参照)

 1) 身元調査,利用の歴史
 蓮舫氏が公開に踏み切る前から,批判は起きていた。「移住者と連帯する全国ネットワーク」など4つの市民団体は〔7月〕14日,「日本国籍を有していることが明白である以上,国会議員になることや民進党の代表になることに法的な問題はまったくない」としたうえで,「個人情報の開示を求めることは,出自による差別を禁じている憲法の趣旨に反する差別そのものである」と開示しないよう要請。18日午前には大学教授や弁護士が会見し,在日コリアン弁護士協会代表の金 竜介弁護士は「外国にルーツがある人に政治家をやらせていいのか,と必らず波及する」と危惧を述べた。

 懸念の背景には,戸籍制度が背負った歴史がある。明治維新直後の1872〔明治5〕年に作られた「壬申戸籍」には,「士族」「平民」といった記載があり,前科まで記された。被差別部落の出身者であることがわかるような内容もあり,1968〔昭和43〕年に封印されるまで市町村役場で閲覧でき,結婚や就職のさいの身元調査に利用されてきた。

 1970年代には『部落地名総鑑』が出回っていたことが明らかになり,就職の選考で戸籍謄本の提出を求めることは就職差別につながるとして,禁じられるようになった。2000年代以降も『総鑑』の電子版が出回ったり,戸籍情報の不正取得が発覚したりしている。

 部落解放運動にかかわってきた川口泰司・山口県人権啓発センター事務局長は「『差別につながる恐れのある個人情報は開示しない』というのが現在の到達点」と語る。蓮舫氏の説明を聞いて「婚外子など事情がある人ほど,戸籍を出すことが怖い。今回の決断は,『出せないなら,やましいことがある』という見方に屈してしまった。マイノリティーの側に立つ野党としての期待が裏切られた」と話した。

 遠藤正敬・早稲田大台湾研究所客員次席研究員によると,戸籍制度は国民を「個人」ではなく,「家の一員」として管理する,世界でも珍しい制度。「民族や血統といった要素を国家が把握し,差別する役割を果たしてきた」という。その観点からも「二重国籍でないことの証明より,『真正なる日本人』の証しを求める意図を感じる」と,開示を求める動きが気になっている。
 補注)この点がネトウヨ的な観点を支持する考えを発生させる理由になっている。国家主義・全体主義・家族主義。

 今回の開示要求を「マイノリティーが社会進出するときに出てくる,典型的な現象」とみるのは樋口直人・徳島大准教授(社会学)だ。米国でも以前,オバマ前大統領が「本当は米国生まれではないのではないか」という「疑惑」が広がった。現大統領のトランプ氏らがなんども出生証明の開示を求め,オバマ氏も2011年,これに応じて沈静化をはからざるをえなかった。

 「外国にルーツがあるかぎり攻撃する人はいる。蓮舫氏は戸籍まで示し,『真正さ』を競う土俵に乗るべきではなかった」と樋口氏は話す。

 2) 蓮舫氏「公党の代表だから決断」
 「本来,戸籍は開示するべきではない」「私で最後にしてもらいたい」。
民進党本部での記者会見で,蓮舫氏はなんども,戸籍情報の公開が「特例」だと強調した。蓮舫氏が公開したのは,日本の国籍選択の宣言をした日付がわかる戸籍の写しや,台湾籍の離脱が完了したことを示す書類。家族に関する記述や自筆署名の部分は白塗りされていた。蓮舫氏が昨秋から会見などで発言してきたことを裏づける内容だが,目新しい情報が含まれていたわけではない。

 にもかかわらず,なぜ開示したのか。蓮舫氏は会見で,これまでに「一貫性のない説明をしてしまった」ため「私の発言の信頼性が揺らいでいる」と説明。「より強く説明が求められる公党の代表だから決断した」と述べた。会見では,開示を前例としないための方策を問う声が上がる一方,公開したことを評価し,政治責任について尋ねる質問も出た。

小野田紀美画像 二重国籍をめぐっては,自民党の小野田紀美参院議員=岡山選挙区=が昨〔2016年〕秋,米国籍をもっていたため放棄の手続をしていることを明らかにし,フェイスブックでみずからの戸籍の写真を公開している。小野田氏は今〔7〕月14日,選挙への立候補時に二重国籍の有無を確認する仕組がないことについて「ルーツや差別の話なんか誰もしていない。公選法および国籍法に違反しているかどうか,合法か違法かの話です」などとツイッターに投稿した。(引用終わり)
 出所)画像は小野田紀美,http://tanaka-diary.com/5552.html

 この小野田紀美のいいぶんはおかしい。二重国籍にかかわる問題とこの議論について 「ルーツや差別の話なんか誰もしていない。公選法および国籍法に違反しているかどうか,合法か違法かの話です」と,故意に法律面の次元における二項式に集約させて分ける話法が問題である。そもそも,そこでいわれている「合法か違法かの話」という論法じたいが,この話をする前提のところで,まだなにも論点が整理されていない段階に留まっているにもかかわらず,そのように断定的に結論していた。小野田紀美は,問題の本質を歴史的に理解する努力とは無縁の地点にあって,しかもツイートのなかで軽く・勝手に発言していた。この種の意見はまともに相手にする価値はない。単なるつぶやきでしかない。

 ⑤ 二重国籍に関するくわしい議論-問題の根源にある在日韓国人問題,歴史が放置してきた国籍問題-

 以下は少し長い文章の参照になる。題名は「二重国籍の実態:『ノーベル賞中村氏は日本人』とする安倍首相,『日本国籍を喪失』とする日本大使館」である(『今日もシンガポールまみれ 日本のあっち,シンガポールのこっち』2014-10-10)。二重国籍をめぐる基本的な論点がなんであり,どこにあるのかを教えている記述である。適宜補正しながら引用する。

 1)「アメリカ人」と紹介されたノーベル賞受賞者 中村修二氏
 ノーベル物理学賞の受賞者,中村修二氏がノーベル賞のプロフィールに “American Citizen” (アメリカ人) と紹介されたことで,「中村氏はアメリカ人なのか,日本人なのか」と話題になった。もっとも,中村氏は『研究の予算をうる必要などから米国籍を取得したが,日本国籍を捨てたわけではない』といっていた。ということで,中村氏自身はまだ日本国籍をもっている認識のようであった。
 
 日本政府からは安倍晋三首相が『赤﨑 勇氏,天野 浩氏,中村修二氏に本年のノーベル物理学賞の受賞が決定しました。日本人として20人目,21人目,22人目の受賞を,心からお慶び申し上げます。』というコメントを出していた。首相は,中村氏は日本人との判断であった。

 ところが,在アメリカ合衆国日本国大使館サイトに『自己の志望(帰化申請)により,米国市民権を取得した方は,米国市民権を取得した時点で,日本国籍を喪失したことになります』との説明がある。中村氏は明らかにこのケースに該当する。つまり,日本大使館の説明では中村氏は日本国籍を保持していない。

 2)   安倍首相と日本大使館,どちらが正しいのか?
 安倍首相と在米国日本大使館の見解は矛盾しているようにみえる。私が想定する解釈は3つ。

  a)「首相官邸の間違い」 中村氏の米国籍取得と日本国籍喪失を首相官邸はしらなかった。

  b)「言葉の定義の問題」 安倍首相がいう “日本人” とは民族 / 人種としての日本人であり,日本国籍者以外も含む。

  c)「日本大使館の間違い」 「外国籍取得で日本国籍を喪失する」という日本大使館の説明が間違いで,中村氏はまだ日本国籍を所持している。これであれば中村氏の認識と合致する。

 3) 国籍と人種にまつわるアイデンティティ
 下記のマトリクスで, “中村氏” に該当する人と, “日本に帰化した元外国人” に該当する人を,日本人として同胞意識をもてるか?
二重国籍に関する概念図1
 中村氏を安倍首相のように日本人と捉える人も,「日本国籍を捨てたので日本人でない」という人もいる。また,日本国籍に帰化した朝鮮〔韓国〕系の人びとに同胞意識をもてるかも,人による。

 基準軸を国籍と人種だけにしても,感覚は人により違ってくる。これがさらに,「日本人の血がハーフやクオーターなら」,「日本生まれか・日本育ちか・日本語を話すか・日本文化への親和度はどうか」などと,その判断軸を増やすと,解釈は人によりさらにに異なっていく。

 たとえば,両親が日本人だが,外国生まれで外国育ちで日本語を話さない人がいる。中国残留日本人孤児(就籍)がその例。グローバル化の進行で,複雑なケースはさらにに増えている。将来,日本で生まれ育った中国籍がノーベル賞を取得することがあれば,その時代の首相がどうコメントするか,興味深い。
 補注)日本の大学や研究所にはすでに,5千・1万人単位で外国籍の教授職や研究職がいる。この人たちのなかからノーベル賞授賞者が出たとき,仮にその人が日本に20年暮らしている外国籍人だとしたら,どの国の人だということになるのか? 日本国籍を取得している人かどうかも,関連した問題になりうる。

 日本人の範囲に共通認識をもつのは難しそうである。そのなかで,安倍首相が中村氏を日本人として祝ったのは,日本人の範囲に寛容性を示した出来事かもしれない(安倍晋三がそれほど深く考えての話題とも思えないが)。いずれにせよ,どの国籍や民族の人が発明したものであれ,青色発光ダイオードの恩恵に授かれるのは,人類にとり喜ばしいことである。

 4) 中村氏は日本国籍を保持しているのか?
 日本大使館の説明によると,中村氏は米国籍取得で日本国籍を喪失しており,これは中村氏の認識と異なる。首相の認識とも異なる可能性がある。文部科学省の下村大臣からも談話が出ていた。
   赤﨑 勇氏,天野 浩氏,中村修二氏の受賞は,わが国の学術研究の水準の高さを世界に示すものであり,国民全体にとって大きな励みと誇りを与えるものです。
 中村氏の発明当時は米国籍取得前という解釈もあるが,文科省談話では『国民全体にとって』と国民に焦点が寄っていた。安倍首相にしても下村大臣にしても,なぜそのような発言になるのか。理由は,大使館主張と現実の運用にギャップがあるためであった。
   国籍法第十一条  日本国民は,自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは,日本の国籍を失う。
  外国籍を取得したさいの流れは,こうなる。

  1. 外国籍を取得する
  2. 国籍喪失届を提出する
  3. 戸籍が除籍される
     二重国籍概念図2
 論点は,日本国籍喪失のタイミングが外国籍取得の直後なのか,それとも国籍喪失届の前後なのかである(出生により複数の国籍をもつケースは「日本国籍の選択の宣言」があるが,ここでは考慮外)。

 中村氏は国籍喪失届けを提出していないと思われる。となると,中村氏は外国籍取得と国籍喪失届提出の間の段階に留まっており,戸籍は残存している状態であり,パスポートも保持している可能性がある。つまり,二重国籍のグレーゾーンにいると考えられる。

 いくら大使館が「外国籍取得で日本国籍を喪失」と主張しても,戸籍は残存している。国籍喪失届の制度をしっており,メリットがなくてもわざわざ提出するマメな人でなければ,戸籍が残りグレーゾーンにとどまる。戸籍法では,国籍喪失から3ヶ月以内に提出が義務づけられているが,これも実質的に機能していない。
 補注)この関連する法律が実際には「機能していない」点に注目する必要がある。この実質とは別個に,民進党代表蓮舫の場合は形式論だけを先行させて,しかも特定の政治目的のための批判(非難)が二重国籍の問題に向けて放たれていた。あまりにも政治的に過ぎる操作がなされていたゆえ,かえって問題の本質をみえにくくした。
   戸籍法第百三条   国籍喪失の届出は,届出事件の本人,配偶者又は四親等内の親族が,国籍喪失の事実を知つた日から一箇月以内(届出をすべき者がその事実を知つた日に国外に在るときは,その日から三箇月以内)に,これをしなければならない。
 ここで再度,国籍法第十一条をみたい。日本大使館は『米国市民権を取得した時点で,日本国籍を喪失』と書いているが,国籍法条文は『外国の国籍を取得したときは,日本の国籍を失う』であるす。即時を意味する文言は国籍法条文にない。 “時点で” というのは大使館独自の拡大解釈である。すなわち,外国籍の取得から国籍喪失届の提出による日本国籍喪失まで,時間差があることも許容する表現になっている。そしてこれが,二重国籍に関する現実の運用状態である。

 5) 罰則がない国籍法と,罰則がある旅券法
 日本は「国籍単一の原則」から重国籍を原則的に認めていないが,黙認でしか運用できないでいる。これには,国籍法に重国籍への罰則規定がなく,国籍剥奪の強制執行制度ももっていない事情があるためである。

 もしも,重国籍を日本政府がしったとしても,日本政府は「国籍喪失届を出すように」という説得以上のことはできず,国籍剥奪をする術はない。出生による重国籍で,他国公務員に就任したさいにのみ,法務大臣が国籍の喪失の宣言をできるのが唯一の国籍剥奪手段であるが,発令されたことはない。

 国籍喪失者が,国籍喪失により失効したはずの手元のパスポートを使うのは,旅券法により5年以下の懲役か300万円以下の罰金か両方の罰則がある。しかし,旅券法でも罰則のみで国籍を剥奪できず,戸籍が残っていれば日本政府は国籍喪失から判定する必要があるが,この判定制度は存在しない。

 これまで外国籍取得者がパスポートを使ったことで,旅券法違反で起訴されたことは,少なくとも確認されていないはずである。つまり,「外国籍取得時点で日本国籍を喪失」という解釈への司法判断は下されていないし,起訴しない当局もこの判断に触れることを避けているのである。

 こうなってくると,実際に運用できない重国籍を防止しようとする大使館の姿勢が,特異で目立っている。
   旅券法第十八条   旅券は,次の各号のいずれかに該当する場合には,その効力を失う。

    一  旅券の名義人が死亡し,又は日本の国籍を失つたとき。

    旅券法第二十三条   次の各号のいずれかに該当する者は,五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し,又はこれを併科する。
 5) 重国籍はなぜ解禁されないのか?
 2008年に南部陽一郎氏がノーベル物理学賞を取得したさいにも,同様の,重国籍解禁の議論が起きていた。海外へのこれ以上の人材流出を防ぐためであった。しかし,実現に向けて進んでいるようにみえない。これは,重国籍が解禁されると,人材流出の防止以上に,「37万人に及ぶ韓国・朝鮮籍を含む特別永住者」を代表とする「日本への帰化希望者の外国人に焦点」が移るからと推測される。
 補注)本ブログ筆者の個人的な見解では,この「韓国・朝鮮籍を含む特別永住者」に対してはとりあえず,全員に日本国籍を付与すべきである。それは前段に言及してあったように,日本が敗戦後占領されていた時代の経緯を考慮すれば,しごく当然の措置でしかないと考えられるからである。この場合,二重国籍を在日韓国籍人に付与することは当然の前提条件となる。

 その付帯条件は,過去において日本政府が解決を回避してきた在日の「生活と権利:剥奪状態」に対する,せめてもの罪滅ぼしの一環として措置されるべきものであって,特別あつかいでもなんでもない。それが嫌であるならば,時限立法で国籍選択の自由を在日韓国籍人に許すべきである。たとえば,四半世紀の年限を置いてその立法を施行していけば,現状までにかかえてきた「在日差別の源泉」でもあった,つまり「みなし外国籍人」とされてきた在日たち(いまや3世・4世が中心であり,しかも国籍法の関係もあって徐々に減少している)に対する「最低限の形式的な差別源泉」は除去されうる。

 〔引用の原文に戻る ↓  〕
 人材流出防止を,重国籍解禁の狙いとするのであれば,

  ・特別な才能をもっているもののみに,重国籍を認める,

  ・出生により日本国籍を有するもののみに,重国籍を認める,

  ・日本への帰化による日本国籍取得者には重国籍を認めない

などで解決するはずである。しかし「帰化すれば同じ日本人なのに権利を制限するな」という論調が出てくることが予想されるのが,この日本であるため,その実現は厳しいと想定される。
 註記)http://uniunichan.hatenablog.com/entry/Multiple_citizenship 参照。

 二重国籍保有者に対する日本政府の対応措置が不徹底である現状は,この問題に対して本気でとりくめさせえない「法務省や外務省など」の「日本民族優秀説」が,その背景にないとはいえない。

 つぎは参考画像。(画面 クリックで 拡大・可)
『朝日新聞』2016年8月12日朝刊

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