【人類の愚かさ,人間の浅慮,日本は原発にもっともふさわしくない国】

 【NHK特番「日本列島誕生」から,小松左京のSF小説『日本〔列島〕沈没』へ】


 ① NHKスペシャル「列島誕生 ジオ・ジャパン 第1集,第2集」-2017年7月23・30日放送

    2017年7月23日と30日のそれぞれ午後9時00分~午後9時50分に,NHKスペシャル「列島誕生 ジオ・ジャパン 第1集『奇跡の島はこうして生まれた』」,NHKスペシャル「列島誕生 ジオ・ジャパン 第2集『奇跡の島は山国となった』」が放送されていた。出演者などは,神戸大学教授巽 好幸,劇団ひとり,指原莉乃,【キャスター】和久田麻由子。

 第1集の番組内容「詳細」は,こう解説していた。
   絶景の国・日本。島国にして山国という奇跡の大地は,どんなドラマを経ていまの姿となったのか? シリーズ第1集は,奇跡の島の誕生物語。もともといまの日本列島の位置には,陸地はなかった。そこから3000万年に及ぶ日本誕生という「想像を超えた大地のドラマ」が始まる。ここで起こった奇跡の4大事件とは? 絶景×タイムトラベルCG × 絶品和食で,列島誕生の謎に挑む。
 註記)http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2017-07-23&ch=21&eid=23074&f=46
 第2集の番組内容「詳細」は,こう解説していた。
     絶景の国・日本。島国にして山国という奇跡の大地は,どんなドラマをへて今の姿となったのか? シリーズ第2集は,日本が山国へと変貌する物語。1500万年前の日本列島には,山がほとんどなかった。そこに地球全体を揺るがす大事件が起こって… 最新科学にもとづくタイムトラベルCG × 絶景 × 絶品和食で,日本列島誕生という大地のドラマをスペクタクル体感。
 註記)http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2017-07-30&ch=21&eid=28095&f=46
 以上2つのNHKスペシャル番組はネット上で検索すれば,ユーチューブ動画でもって,別途にいつでも鑑賞できる。じっくり視聴したい人は,それをあらためて視聴してほしい。問題の焦点は「日本は絶景の国」であり,この「島国にして山国という奇跡の大地」が「どんなドラマを経ていまの姿となったのか」と説かれているところにあった。

 しごく簡明にいってしまえば,2011年の「3・11」東日本大震災が発生し,21世紀の記録として人類が忘れられない,つまり,東京電力福島第1原子力発電所4基のうち「稼働中であった3基すべて」が核燃料を溶融させる大事故を発生した事実については,その「絶景の国:日本」の「奇跡の大地」が形成されてきた歴史が深くかかわっている。

 NHKの前段特番を解説する文句には,3000万年とか1500万年という歴史の非常に長い時間が話題になっていた。つまり,その間というか,それからいままでもこの日本列島は,「奇跡の大地」と呼ばれるほどに「大地の変動」を,それも連続的に起こしてきた。「3・11」に発生した東日本大震災も,その自然現象のひとつとして,この地球の表面において発生していたのである。

 要するに,NHKのこの特番は,「日本が山になった秘密を,最新科学にもとづく大実験で表現!」し,「千数百万年に及ぶ日本列島誕生のタイムトリップCG映像」で再現していた。この日本「列島誕生」は「奇跡の島が山国となった」地球の歴史を解説していた。

 ② 東日本大震災の原因-地球自然史-

 しかし,われわれは「3・11」,つまり,東電福島第1原発事故を発生させたあのマグニチュード9の大地震は,その「日本列島が奇跡の島」である〈歴史的な事実〉の「たまたま一環の事件(現象)として発生していた」点に注意を向ける必要がある。

 「東日本大震災」を解説する記事はいくらでもみつかるが,ここでは『東日本大震災』( http://www.geocities.jp/sherpa_pochi/EJ-jisin.html )を参照する。いちいち詳細に参照できないので,一部分のみ引用することになるが,この記述は震災当時に報道されていた新聞各紙を資料に構成されていた。このなからとくに「2. 東日本大地震の特徴」を引照してみる。これは ① のNHK特番「列島誕生 ジオ・ジャパン」がまさに説明した内容の一コマであった〔に過ぎない!〕。

 1)海溝型地震が連動した
 東日本大地震は,地球を包むプレート(岩盤)の境界域で起こる海溝型地震が短時間の間に連続して起こった地震といえる。日本列島は,北米プレートとユーラシアプレートに乗り,東側から太平洋プレートとフィリピンプレートが潜りこんでくる場所に位置している。プレートが潜りこむメカニズムは,地震を引き起こす原因となる歪み溜まりやすく,一気に北米プレートが跳ね上がって地震が起きた。

 しかも,複数の地震が短い間隔で起こった「連動型地震」であった。地震を起こしたプレートの範囲は,北は岩手県三陸沖,南は茨城県沖までの南北500Km,幅200Kmにわたり,この範囲で6分間以内にプレート間の大きなずれ(断層破壊)が3回連続して起こった。

 まず,宮城沖の震源で始まった最初のずれは約100秒続き,その約50秒後から始まった福島県沖の2回目のずれが約100秒,次いで茨城県沖で3回目が約100秒続いた可能性が高いと思われる。そのずれは3Km/秒の速度で進み,海と陸のプレート境界で発生する巨大地震が,ひずみの溜まった境界面がつぎつぎにずれを起こしたと考えられる。しかし今回の地震は,最初にずれた領域と重なる場所で,つぎのずれが始まった可能性がある。

 静岡県沖を震源とする「東海地震」と,中部地方の沖合を震源とする「東南海地震」,四国沖の「南海地震」の3つの地震は連動する可能性もあり,連動したさいにはM9を超える巨大地震となる恐れがあると予想されてもいる。
参考画像資料
 東日本大震災図解1 東日本大震災図解2(本文より)
  出所)左側は,http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_jishin-higashinihon20110313j-06-w440
 なお,20世紀後半から記録された「観測史上の巨大地震」は,以下のとおりである。

  ※-1  1960年5月  「チリ地震     Mw 9.5」
  ※-2  1964年3月  「アラスカ地震   Mw 9.2」
  ※-3  2004年12月 「スマトラ島沖地震 Mw 9.1」
  ※-4  1952年11月 「カムチャッカ半島地震     Mw 9.0」
  ※-5  2011年3月  「東日本大地震    Mw 9.0」

 補注)東日本大震災については当初,この「モーメントマグニチュード(Mw)」は小さい数値で公表されていたが,最終的にこの 9.0に定まった。観方はいろいろあるが,この数値をなるべく大きく表現できれば,為政者側の災害対策や対応における「不備や欠落の問題」を「合理化(弁明)できる材料」に利用できる余地が生まれうる,という事情も背景にあった。

 〔記事に戻る→〕 さらに「津浪が発生した点」や「長周期地震動」「液状化と側方流動」など,関連して起きた被害について,ここでは言及しない。ともかく,「日本列島は,北米プレートとユーラシアプレートに乗り,東側から太平洋プレートとフィリピンプレートが潜りこんでくる場所に位置している。プレートが潜りこむメカニズム」を直下にかかえた地球地理的な特性をもっている。すなわち,「奇跡の大地」の上に長い歴史を重ねてきてできたのが,この「絶景の国:日本」だといわれていた。

 2)地震国でもあるこの「絶景の国:日本」が「奇跡の大地」である事情
 だが,この日本が自然災害としての地震が非常に多発する国である事実は,いうまでもない点であった。つぎの2点の画像資料をみながら論述する。( ↓  画面 クリックで 拡大・可,より鮮明に映る)
  世界地震地図画像
    1900~2015年まで起きた主な大地震画像
  註記)そして,以下の記述は「ネパールだけじゃない こんなにある世界の地震頻発地帯」『THE PAGE』2015.05.23 13:0 を参照している。上の画像もここから。

 最初の図は,1900年以降に起きたM5以上の世界の浅い震源の分布を示している。震源が帯状に連なっているが,これが地震帯である。その地震帯で囲まれた領域がひとつのプレートになっている。

 a)「地震が発生するのはどんな場所か」  地球の表面はこのようなプレート(卵でいえば殻のようなもの)10数枚で覆われている。これらのプレートがそれぞれ違った方向にゆっくり動いているため,隣りあうプレート同士でぶつかったり,こすれたりするときに,地震が起きる。

 b)「日本周辺で起きた地震」  まず,日本付近では2011年3月11日の東日本大震災(M9.0,死者・行方不明者数1万8958人)を起こした大平洋プレート(海のプレート) が,関東地方から東北,北海道の下に東側から滑りこんでいる。

 東日本の陸のプレート(北米プレート) と滑りこんだ大平洋プレートが接触している面がプレートの境界面で,地震が多く起きている。2003年十勝沖地震(M8.0,1人)もそのひとつであった。東北地方と北海道は,日本海側からもその下に別のプレートが滑りこもうとしている。
 補注)東日本大震災の犠牲者数は,2016年2月10日現在の警察庁のまとめによるとこうである。……一連の余震での死者も含め,死者 15,894人(宮城県 9,541人,岩手県 4,673人,福島県 1,613人,茨城県 24人,千葉県 21人,東京都7人,栃木県4人,神奈川県4人,青森県3人,山形県2人,群馬県1人,北海道1人),行方不明者2,562人。また,2016年3月1日現在で消防庁がまとめたところによると,震災関連死を含めると,死者は19,418人に上る。
 註記)https://ja.wikipedia.org/wiki/東日本大震災における死者・行方不明者の推移


 日本海東縁に沿って新しいプレート境界面ができつつある。1983年日本海中部地震(M7.7,108人)や1993年北海道南西沖地震(M7.8,202人)などが,この境界面付近で起きたとされている。関東地方には,南側からフィリピン海プレートが滑りこんでいる。この境界面で起きた大地震が,10万人以上の犠牲者を出した1923年関東大震災(M7.9,10万5000余人)であった。

 西南日本の下(ユーラシアプレート) には,南からフィリピン海プレートが滑りこんでいる。静岡県の駿河湾から愛知県,三重県,和歌山県,高知県の下とその沖合にかけて境界面があり,そこでは21世紀の半ばまでに巨大地震が起きると予想されている(南海トラフの巨大地震)。このほか,陸のプレートのなかでも規模は少し小さくなるが,地震が起きている。1995年兵庫県南部地震(M7.3,6437人)などがその例であった。都市のすぐ下で浅いところに震源断層があると大きな被害を引き起こすことになる。
 註記)https://thepage.jp/detail/20150523-00000005-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-74.59YB6KxJS6-oVPGhgabD7Q.1

 c)「海のプレートが陸に沈みこむ場所」  さて,ヨーロッパからアフリカプレートをぐるっと囲むように,太平洋や大西洋,インド洋のなかに長くつづく地震帯が明瞭にみえる。ここではマントルから新しくプレートが生まれて,両側へ広がっているところである。ときどき大地震を起こすが,陸から離れているので被害はほとんどない。唯一例外はアイスランドで,ここでは陸域で活発な火山噴火とともに地震も起きている。

 つぎに,海のプレートが陸(日本のような島だけでなく大陸のプレート)の下へ滑りこむようなところでの地震が発生する。日本で起こる地震の多くはこのパターンであり,環太平洋のほとんどの場所において,このタイプの地震が起きている。南米チリ沖では,観測史上世界最大の1960年チリ地震(M9.5,世界で5700人,日本で142人)が起きていた。

 そこから中米,メキシコまでつづき,少し飛びはなれてアラスカからアリューシャン列島,カムチャッカ,千島列島,東日本,伊豆・小笠原,マリアナとつづく。そして,ニューギニアから東に連なる諸島にそってニュージーランドまで。またインド洋では,インド・オーストラリアプレートが2004年スマトラ地震(M9.0,22万7898人)の震源域から東の所は,インドネシアの下へ滑りこんでいる。

 スマトラ地震の北側とその西側(ネパール地震のところ)はプレートが衝突しているので後で説明します。ほかにもフィリピンは東側からフィリピン海プレートが,西側から南シナ海がフィリピン諸島の下へ滑りこんでおり,それらの境界面で地震が起きています。ギリシャ周辺で起きる地震も南側のアフリカプレートがギリシャの下へ滑りこむために起きている。

 d)「大陸プレート同士が衝突する場所」  隣りあう大陸プレート同士が衝突している場所にも,地震が頻発している。今回のネパール地震もそのひとつであり,ここでは,大きな大陸を乗せたインド・オーストラリアプレートが,やはり大きな大陸プレートであるユーラシアプレートにぶつかっている。

 そのため押しこまれたチベット側に広大な高原がひろがり,非常に高いヒマラヤ山脈ができた。このプレート境界付近では近年,地震活動がとくに活発で,2005年カシミール地震(M7.7,8万6000人以上)のほか,押しこまれたチベット高原側でも2008年四川地震(M8.1,7万人近く),2010年青海地震(M7.0,2220人)などが起きていた。

 古くは1556年中国陜西省華県地震(M8.2)で,なんと83万人の犠牲者が出たとされている。この活動は,中央アジアからイランとイラクへとつづきている。耐震性の低い煉瓦住宅が多いところでは,2003年イラン・バム地震(M6.8,4万3200人)のように中規模の地震でも大きな被害を引き起こす。規模は小さいが,台湾もまた衝突型のプレート境界のひとつに挙げられる。1999年集集地震(M7.7,2413人)は台湾の中央部で起きた。
 補注)台湾は原発の新設中止と稼働停止を決めていた。「台湾の蔡英文政権は,2025年までに脱原発を実現するため提案した電気事業法改正案を〔2017年1月〕11日夜,立法院(国会)の本会議で,可決・成立した」。この「改正法には『2025年までに原発の運転をすべて停止する』との条文が盛りこまれた。改正法は,原発分の電力を代替する再生可能エネルギーの普及など電力改革をおこなう内容。脱原発が実現すればアジアでは初となる」。
 註記)https://mainichi.jp/articles/20170112/k00/00m/030/068000c


 一方,押しこんでいる側のインドでは,限られた場所であるが大地震が起きている。2001年インド・ブジュ地震(M8.0,2万人余)がその例である。
 註記)https://thepage.jp/detail/20150523-00000005-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-74.59YB6KxJS6-oVPGhgabD7Q.1&page=2&utm_referrer=https%3A%2F%2Fthepage.jp%2Fdetail%2F20150523-00000005-wordleaf%3Fpattern%3D1

 e)「プレート同士が横にずれる場所」  隣りあうプレート同士が横にずれあう境界でも地震が起きる。この例は,米国カリフォルニアやトルコ,ニュージーランドなどである。代表的な地震は1906年サンフランシスコ地震(M8.3,700人または3000人)で,北米プレートに対して南西側の太平洋プレートが北西へ動き,サンフランシスコに大きな被害をもたらした。

 カナダのバンクーバー島から北側の大平洋沿岸もこの型の地震が起きている。1999年トルコ・コジャエリ地震(M7.8,1万7118人)では北アナトリア断層の一部が震源断層になったが,ここでは1960年代から東の方から順次地震が起きてきていて,現在はイスタンブールの南にあるマルマラ海の部分が未破壊域で残っていると考えられている。大地震が将来起きる可能性の高い場所なので注意が必要です。
 補注)「トルコ地震で世界一危険な原発に被害か」(『YUCASEE Media』最終更新:2011年10月30日 19時25分)は,こう記述している。
  「死者580人を出したトルコ東部で発生したマグニチュード7.2の地震で,隣国アルメニアのメツァモール原発が被害を受け,基準値を超える放射能漏れを起こしている,とイラン国営ラジオが報じている」。

 「地震は23日にトルコ東部で発生し,その後も余震が続いている模様で,トルコとアルメニアの国境地帯にあるメツァモール原発で,微量の放射能漏れが起きているのだという。現在は,復旧作業を続けているのだという」。

 「メツァモール原発は地震多発地域でもあり,IAEA(国際原子力機関)も世界でもっとも危険なランクに入る原発のひとつだとしている。ただ,隣国のトルコ,アゼルバイジャンと歴史上は長く敵対関係が続き,資源のないアルメニアは原発に頼らざるをえない国情がある」。
  註記)http://media.yucasee.jp/posts/index/9376
 このほか,カリブ海プレートが北米プレートに対して東に動いて起きた2010年ハイチ地震(M7.3,31万6000人)もある。南米大陸側のベネズエラでも1812年に地震(M6.3.2万人)が起きていた。ニュージーランドの2011年クライストチャーチ地震は,プレート境界ではなく東側の太平洋プレートの端の陸域で起きたもので,M6.3と規模は大きくなかったが,都市直下に震源があったため日本人28人を含む185人の犠牲者が出ていた。

 ヨーロッパはユーラシアプレートの西部で,南にアフリカプレートがあり,両者の間はアルプス山脈からアフリカ大陸北岸の間で複雑なプレート境界になっている。この地域も大地震がときどき起こり,大きな被害を出している。

 たとえばイタリアでは,1908年メッシナ地震(M7.1,8万2000人),アルジェリアでは1980年エルアスナム地震(M7.3,3500人),モロッコでは1960年アガディル地震(M5.7,1万3100人),そして,1755年リスボン地震(M8.5,6万2000人)はジブラルタル海峡より西方沖で起きていた。例外的にルーマニアでは,震源が深い1977年バレンシア地震(M7.2,1581人)で被害が出ていた。
  (静岡大学防災総合センター客員教授・石川有三)
 註記)以上は,https://thepage.jp/detail/20150523-00000005-wordleaf?pattern=1&utm_expid=90592221-74.59YB6KxJS6-oVPGhgabD7Q.1&page=3&utm_referrer=https%3A%2F%2Fthepage.jp%2Fdetail%2F20150523-00000005-wordleaf%3Fpattern%3D1%26page%3D2

 f) 以上において長々と,「地球の表面はプレート(卵でいえば殻のようなもの)10数枚で覆われており,これらのプレートがそれぞれ違った方向にゆっくり動いているため,隣りあうプレート同士でぶつかったり,こすれたりするときに,地震が起きる」原因に関して,その地球物理学的な説明がなされていた。

 ③ 日本列島に「原発を置く」のは,ある意味で「狂気の沙汰」

 1)小松左京『日本沈没』1973年は「列島誕生 ジオ・ジャパン」を逆まわしして書かれていた
 この ③ ではさきに,こういう点に触れておく。小松左京(生年 1931年1月~没年2011年7月)執筆になるSF長編小説『日本沈没 上下2巻』が,1973年3月,光文社カッパノベルスの書き下ろしとして,刊行されていた。
   小松左京画像   小松左京表紙
   出所)左側画像は,http://nakaco.sblo.jp/article/47033321.html

 同書は,1974年に第27回日本推理作家協会賞を受賞,第5回星雲賞日本長編部門を受賞し,1976年には米国で Michael Gallagher(en) の抄訳で “JAPAN SINKS” の書名で刊行された。以降,文春文庫(1978年9月),徳間文庫(1983年12月),光文社文庫(1995年4月),双葉文庫(1996年11月),小学館文庫(2005年12月)と再刊されつづけてきた。

 なぜこの科学小説に言及したかというと,小松左京のSF長編小説『日本沈没』は,① のNHKスペシャル番組「列島誕生 ジオ・ジャパン 第1集,第2集」(2017年7月23・30日放送)が解説してみせた「実際の地球自然史:日本編」を,もしかしたら,まるで『早・逆まわしにした』かのような筋書きになっていた。以下にその粗筋を説明しておく。
   小笠原諸島・鳥島の東北東で,高さ70mの小島が振動も鳴動もなく一夜にして海底90mに沈みこんだ(合計160mの地盤沈下)。深海調査艇「わだつみ」が目撃したのは,深度7000mの日本海溝斜面に出現した亀裂からモクモクと噴出する大規模な海底乱泥流の姿だった。日本列島にはなにかが起こりつつあった。最悪の場合2年以内に,日本列島は地殻変動で陸地の大半が海面下に沈没するのではないか( ! ? ) と予測された。

 その当時,超音速輸送機・超高速機関車が登場し,新東京国際空港・関西国際空港・青函トンネル・第二東海道新幹線などの大規模交通再開発,大型コンピュータのLSI化,原子力発電など科学技術革新の推進が目白押しだった。しかし,東名高速の鉄橋崩壊,第二新幹線の工事現場崩落などの大事故が勃発した。天城山・三原山・浅間山の爆発的噴火など関東各地の火山活動が活発化し休火山までが休眠から醒め,大地震が相次いだのだ。

 そしてついに,京都大地震に襲われるに至り,政府は極秘プロジェクト「D計画」を発動した。水深1万mまで潜れるような仏製の深海潜水艇ケルマディックを購入した。「D計画」の本部では,膨大なデータを用いたシミュレーション計算を開始,マルコフ過程に匹敵するナカタ過程と呼ばれる確率理論を導入した。その最中にも,阿蘇山・霧島噴火,箱根山噴火,小諸に強震,三陸沖の浅発性地震・陸中海岸に沈降現象が続いた。

 「地球大地のプレート・テクトロニクス説」 その大地はきわめてゆっくりと対流するマントルの上に浮かんでいるが,日本列島の地下深くではマントル対流が急変する兆候があり,激変すれば支えを失った日本列島は海面下に沈む。さらについに,深発地震が関東地方を襲った。マグニチュード8.5,死者・行方不明者 250万人,東京は機能を停止した。「東京大震災」と命名された。

 「D計画」の大幅増強に迫られた。「D-2計画」。政府もいまだ半信半疑ながら日本民族が生き延びるための対策を講じなければならない。社会不安が増幅される。このシミュレーションによれば,大変動発生まで後わずか10カ月。政府は,日本民族救出のため国外に脱出することを決意した。脱出実行が迫るなか,女主人公は富士山噴火に巻きこまれて消息を絶った。

 197X年に「日本が沈む」。日本を救うための国際活動が本格化するとともに,日本沈没後の極東情勢を探るための諜報活動もまた激烈なものとなっていた。日本民族は続々と海外避難を開始した。が一方で,あえて日本列島と運命をともにする道を選択する者もいた。四国を皮切りにつぎつぎと列島は海中に没し,北関東が最後の大爆発を起こして関東地方を未曾有の大地震が襲い,首都東京は壊滅状態,日本列島は沈んでいった。

 帰るべき故国を失った日本民族流浪の歴史が始まった・・・。
 註記)https://ameblo.jp/aauasks/entry-12034139837.html 参照。 
 2)日本に原発を導入した「前世紀の愚」
 有史以前であればもちろんのこと,有史以来も地震の記録が多少でも残されるようになるのは,せいぜい2千年ほどからの出来事であって,以上に説明されたごとき大地震の記録は「20世紀以降でもごく最近の記録」ばかりであった。本日の記述として問題なのは,20世紀の後半から人類・人間が原発を製造し,電気生産のために利用してから現出してきた危険性であった。

 原発という装置・機械も,物理的・化学的に事故を起こすことを完全には避けえない。東電福島第1原発は「3・11」東日本大震災を引き金にしてて,とりかえしのつかない「深刻・甚大な溶融事故」を起こした。原発じたいを運営・管理するなかで事故が起きた場合でも,スリーマイル島原発事故(1979年3月28日)とチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)にあっては,いずれも「マン‐マシン・システム」の不調・不具合・不首尾が事故の原因になっていた。だが,東電福島第1原発事故(2011年3月11日)は,大地震(東日本大震災)が基本原因になっていた。

 要は,日本はとくに原発を置いて利用する国土の特性をもたない点を無視したまま,原発を導入してきた。「3・11」の大事故が発生する前までは,全電源のうち3割を発電するところまで到達していた。しかし,東日本大震災によって誘発されざるをえなかった原発事故は,この国が原発を利用することの恐ろしさ,あえていえばそのバカらしさを,嫌というほど教えてくれた。それでもまだ,「3・11」を契機に一時期は2年近く原発の稼働なしの状態で,電力をそれほど無理なく供給できていたにもかかわらず,またもや原発を再稼働しはじめている「愚かな国家」である。

 なお,2017年6月6日以降,日本で稼動している(商業用)原子力発電所は,九州電力の川内原発1号機・2号機と,四国電力の伊方原発3号機,関西電力の高浜原発3号機・4号機の,計5基である。日本では「3・11」以前,50基以上もの原発が稼働できる電力生産体制にあったのだから,以上のように本ブログ筆者が主張する見地が,けっして見当違いではないことは,たやすく理解してもらえると思う。

 ④「核ごみ処分『適地』国土3割,経産省マップ公表 900自治体に」(『朝日新聞』2017年7月29日朝刊)

 幸いなことに,小松左京の科学小説『日本沈没』1973年はあくまで,この異才である作家が創造した物語:虚構(フィクション)であった。しかし,いまの日本国は沈没などしない状態のままで,原発の出した「使用済み核燃料」というごみを捨てる場所を,国中に置かねばならない見通しとなった。おまけに,経産省の名づけた表現が “ひどい・むごい形容の呼称” になっている。

 ともかく,この記事を以下に引用していくが,事前に率直な感想をいわせてもらうと,トンデモない「原発政策の一環」(後始末であっても「単なるネコババ方式」)である提言になっている。昔風にいえば無数の肥溜めをこのように,日本中のどこでもいいから設置してもらう方法を採ることにしている。

 これでは,まったく冗談にもならないような「原発のその後」になっていた。いいかえれば,「安価で安全で安心」である,この3拍子がそろっているのが原発だと,神話的にも喧伝されてきたけれども,この「原発によった電力生産とその利用」は,いまでは完全に「原発に関する欺瞞の」だったというほかない,その 〈真実のイメージ〉 が露呈されている。

 1)記事の引
 原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下深くに埋める最終処分場の選定に向け,経済産業省は〔2017年7月〕28日,処分に向いた特徴をもつ可能性がある場所を示した全国地図「科学的特性マップ」を公表した。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
『朝日新聞』2017年7月29日朝刊2面核ごみ地図

 火山や活断層,炭田などがなく,船による輸送もしやすいといった条件を満たす「好ましい」地域は,国土の3割に上った。経産省は今後,処分場に関心がある自治体が現れれば,詳しい調査への協力を申し入れる方針だ。(▼総合5面=処分長期戦,社会面=自治体警戒)
 補注)この文章を読んでみて「これはいったいどういう意味なのか」と,疑問を感じない人はおかしい。ともかく,使用済み核燃料の後始末のための方法なのであるが,どこでもいいから「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下深くに埋める最終処分場の選定」をするための「適地」を選ぶとなると,こうなったと報告している。

 つまり,経産省がすでにまとめたその考え(予定)が公表されたのである。原発の導入・利用じたい,そして東電福島第1原発事故に対する反省や総括などそっちのけにした状態で,こんどは高速増殖炉の利用(商用化)がまったく期待できない現状を踏まえてなのか,このように途方もない「全国各地肥溜め候補地予想図」を公表した。このいいぐさが振るっている。「全国地図『科学的特性マップ』」と称しているが,その本質は「全国地図『使用済み核燃料の後始末』用『肥溜め』候補地予想図」である。

 最終処分場は,使用済み燃料を溶かしてガラスと混ぜた固化体を300メートルより深い地下に埋める「地層処分」をする。ガラスや容器が数万年で溶けても,放射能が地表に影響しないレベルに下がる10万年は閉じこめられるよう,地下水や地盤の変化などの影響が少ない場所を探す。
 補注)① のNHKスペシャル番組「列島誕生 ジオ・ジャパン 第1集,第2集」は,いまから3000万年から1500万年単位で日本列島の地殻変動をとりあげていたが,ここでは10万年単位の話題である。10万年経ったあとは「多分しらない,あとはおぼろ!?」とでもいうわけか。人類・人間史の科学技術発展史のなかで回顧するに,これほどまで無責任な物資のあつかい方は前例がないどころか,想像すらしにくいほどひどい「いい加減さ」である。だからか「全国地図『科学的特性マップ』」などと,欺瞞的な修辞をもちだしている。

  〔記事に戻る→〕 地図は,これまでに公表されていた活断層や火山,地盤などの情報をベースに,日本全国を4色に色分けした。火山から15キロ以内や活断層の近くなど,地下の安定性の観点から好ましくないと推定される地域をオレンジ色,地下に石油や天然ガス,石炭などがあって将来採掘される可能性がある地域を銀色にしている。これらの「好ましくない」地域以外のところを,「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」として緑色に塗った。緑色の地域のうち,海岸線から20キロ以内は「輸送面でも好ましい」として,さらに濃い緑色に強調した。

 面積の割合では,オレンジ色と銀色を合わせた「好ましくない」地域と,緑色,濃い緑色の地域がほぼ3分の1ずつだった。濃い緑色がある自治体は,全国の自治体の半数以上の約900に上り,東京や神奈川,愛知,大阪など大都市圏も含む。経産省は「未知の断層も含め,実際の選定では個別に地質調査していくことになる」とした。

 経産省は今秋から,全国で説明会を開くとともに,濃い緑色の地域の自治体を重点に,処分場のリスクや必要性について対話活動を続ける。20年ほどかけて候補地を絞りこむ方針だ。ただ,事故を起こした東京電力福島第1原発がある福島県と,処分場を造らないことを歴代政権と確認している青森県の自治体には,協力を働きかけないとしている。
六ヶ所村核燃料サイクル施設 補注)ここでの説明は,正直いって「いったい,なんなんだ」という印象を受ける。

 福島県(浜通り地域では東電福島第1原発事故現場があった)と,

 青森県(六ヶ所村,青森県の下北半島太平洋岸に位置するこの村には,原子燃料サイクル施設などの原子力施設のほか,国家石油備蓄基地や,やませを利用した風力発電基地等,エネルギー関連施設が集中している)とには,その適用地を求めないという理屈は,納得がいくようであっても,けっして,たいして納得などできない(屁)理屈である。
 出所)右側画像は,http://www.cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho クリックするとヨリ鮮明にみえる。

 処分場の選定をめぐっては,原子力発電環境整備機構(NUMO)が,2002年から自治体を公募しはじめ,2007年に高知県東洋町が調査に応募したが,住民の反対でとりさげた。(引用終わり)

 2)電源3
 原発の導入に当たっては,以下の3法が準備されていた。これらの法律の主な目的は,電源開発がおこなわれる地域に対して補助金を交付し(「電源三法交付金」),これによって電源の開発(発電所建設等)の建設を促進し,運転を円滑にしようとするものであった。

     ⅰ)電源開発促進税法
     ⅱ)特別会計に関する法律(旧 電源開発促進対策特別会計法)
     ⅲ)発電用施設周辺地域整備法

 1960年代以降の日本の電力は,火力発電所に比重を強めていたが,1973年に起こった第1次石油危機が発生して,火力発電所に依存する日本経済が大きく混乱した。それを受けて,1974年に火力発電以外の電源を開発することによって電力リスク分散をし,火力発電への過度の依存を脱却することを目的として制定された。だが,原発はいまでは「危険である要因」「以外のなにもの」でもなくなっている。

 まさか,こんどは「核ごみ処分地『適地』」であると判断・認定した地域に向けては,その電源3法を逆さまにしたような「核ごみ『適地』促進法」でも作るつもりか? しかし多分,その可能性は大である。全国津々浦々では,だいぶ以前から始まっていた過疎化現象にくわえて,いまでは人口減少もいちじるしく進行中である。関連する事情としては,ついこのあいだに話題になっていたが,すべては「金目でしょ」といいはなった大臣がいた。

 「住民の反発が根強い放射能汚染土の中間貯蔵施設建設について『最後は金目でしょ』(2014.6.16)と,当時,環境大臣であった石原伸晃がいってのけた。東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土などを保管する中間貯蔵施設の建設をめぐり,首相官邸で記者団に対し,彼が「最後は金目(かねめ)でしょ」と語ったのである。

 いまの話題は「原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)」を「地下深くに埋める最終処分場の選定」の問題であって,経済産業省が〔2017年7月〕28日,その処分に向いた特徴をもつ可能性がある場所を示した『全国地図「科学的特性マップ』を公表したというのである。だが,つまるところ最終的には「金目」はどのくらいつける予定か,そのやり方をいまから十分に理解しておく必要がある。とはいっても,その経費・負担はこれまたすべて「国民の負担:電気料金(や血税)」が財源となる。
 補注1)上段に引用してきた2017年7月29日『朝日新聞』朝刊には,7面に「『最初の1歩まで17年 『適地マップ』核のごみ 長期戦」,27面に「核のごみ 自治体警戒 取り組み加速 求める声も マップ公表」という見出しの記事が報道されていた。
 補注2)自治体が上記の「
最終処分場の選定」のための調査を受け入れると,最初の文献調査で最大20億円,つぎのボーリング調査などで最大70億円が交付金として支払われることになっている。国は,いずれの段階の調査も自治体の意見を十分に尊重し,自治体が反対する場合はつぎの調査に進むことはないとしている。
 註記)「 “核のごみ” 調査可能性地域は」(『NHK(北海道 NEWS WEB)』2017年07月28日 19時08分)。

 3)原発はスゴイ!
 原発のせいで,日本がこのような国柄になってしまったのであれば,小松左京のSF小説風に,197X年に「日本が沈む」ことになっていれば,まだマシだったともいえない。テレビ番組では「ニッポン,スゴイですね」風の放送がまだまだ盛んな様子であるが,前段のような「この国の原発風景」には「見ざる・聞かざる・言わざる」三猿の境地で対するほかないのか? 別の意味でまた「日本の原発はスゴイですね」……。

 最後に『日本経済新聞』2017年7月29日朝刊14面「核のごみ最終処分場『科学的特性マップ』」を,画像資料としてかかげておく。これをあらためてみて思うのは,原発というものはいったいなんであったのか,という点である。《悪魔の火》の「残り火」にひどく苦労させられていく「これからの未来」は,その見通しすら依然つかないでいる。末恐ろしい事態に対峙させられている。
『日本経済新聞』2017年7月29日朝刊14面核のごみ
 「10万年前に列島に人類がいたか。そんな先まで核ごみを埋める。トイレなきマンションを建ててしまった罪深さ」(『朝日新聞』2017年7月29日夕刊「素粒子」)。それでは,はたして「10年後にはこの列島に人類は生きのびているのか? このような疑問も湧いてくる。10万年前も10万年後も,いまのわれわれにとってはずいぶん縁遠い時間帯でしかない。

 『日本経済新聞』2017年7月29日朝刊「社説」は末尾で「国は自治体や専門家らの意見をよく聞いたうえで,候補地の決め方や手順を詰め,事前に示すべきだ。立地段階になって風評被害が広がらぬよう,処分の安全性やリスクについて国民全体の理解を深めることも欠かせない」と述べていた。前途多難どころか,にっちもさっちもいかないかのような様相が,いまからすでに予想できる。

 4)《付説》「福島原発,屋根カバー設置を開始 来年夏の燃料取り出しに向け」(『東京新聞』2017年7月31日 12時24分)

『東京新聞』2017年7月31日12時24分福島原発屋根カバー 東京電力は7月31日,福島第1原発3号機の使用済み核燃料プールからの燃料とり出しに向けて,原子炉建屋上部を覆うドーム状の屋根カバーの設置を始めた。2018年夏ごろの燃料取り出しに向けた作業。

 燃料取り出しのさいに放射性物質が飛散するのを防ぐために設置する。全部で16個の部材に分かれ,そのうち1個が設置された。屋根カバーは完成するとかまぼこのようなかたちになる。今回設置した1個の部材は,高低差が約18メートル,縦約23メートル,横約5.6メートル,重さ約40トン。(共同)
 註記)http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017073101001408.html

 この屋根カバーは「石棺の亜種(もどき)」を建築する作業の一環ではないのか。はたして,本当に「燃料取り出し」が2018年夏ごろに開始できるのか? 格納容器のなかのデブリ(溶融した核燃料などの塊)の形状も,まだろくに把握すらできていない段階において,いまから1年後にその作業が「可能であるかのように」説明してよいのか? いずれ時間が経てば判明する進捗度合である。見落としなく観察している必要がある。
 註記)2017年7月31日午後4時記。

 5)つぎの参考画像資料を出して「人間の生命を軽視する国:日本」を考える
原発事故被災地非難規準
出所)http://useful-info.com/press-freedom-index-2017

 ここでは,つぎの「ふたつの文章」を参照する。とくに a) の発言からはすでに6年以上が経っているが,われわれ1人ひとりがこの問題をどう受けとめ,あらためて考えるかである。

 a)  上出義樹稿「〈メディア・ウオッチ〉小佐古氏辞任から見えるもの-問われるメディアの徹底検証-」(『上出義樹のメディア批評』2011年5月2日)

 「主流派」の学者が造反」。 東電福島第1原発事故の対策に当たる内閣官房参与の小佐古敏荘(こさこ・としそう)」東大大学院教授(61歳〔当時〕)= 放射線安全学 = が,政府の原発事故対応を「場当たり的」などと批判して参与を辞任した問題が波紋を広げている。政府の原子力政策を支えるいわば「主流派」の学者による反行動とあって,〔2011年〕5月1日付朝日など各紙がとりあげている。
小佐古敏荘画像
出所)http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-15877

 同教授が〔2011年〕4月29日に発表した辞意表明文は直接には,原発関連の法律や国際的指針などを無視・軽視する政府と,それを安易に容認する原子力安全委員会への強い抗議の意思が込められている。しかし,もうひとつ,同教授は直接言及していないが,これらの問題を厳しく追及しない「マスコミの報道責任」も,今回の辞任表明から読みとるべきだろう。

 新聞やテレビは,小佐古教授が学者生命をかけるかたちで涙ながらに会見し,校庭の放射線被ばくの上限を「年間20mSv(㍉シーベルト)以下」とした文科省の利用基準を指弾。できれば通常の基準の年間1mSv,「特殊な場合でも年間5mSv以下での運用」を主張していることなどを報じている小佐古教授は辞意表明のなかで「年間20mSv 近い被曝をする人は,約8万4千人の原子力発電所の放射線業務従事者でもきわめて少ないのです。

 この数値を乳児,幼児,小学生に求めることは,学問上の見地からのみならず,私のヒューマニズムからしても受け入れがたいものです。年間 10mSv の数値も,ウラン鉱山の残土処分場の中の覆土上でもなかなかみることができない。せいぜい年間数 mSv です」と説明していた。
 註記)http://www.shibuya-west.com/pdf/kamide_110502.pdf)

 この小佐古敏荘の行為に対しては,直後にこういう仕打ちが返されていた。「しかし,小佐古氏はその後,メディアに出てくることもほとんどありません。そして,もちろんそれには理由がありました」。「小佐古氏のゼミに所属していた学生の就職が,あの会見の後に内定取り消しとなる事例があったのだそうです。それも1人や2人ではなかったらしい」。「つまり,小佐古氏は学生を人質にとられてしまったわけですが,東野圭吾氏の映画の件と同様,この話は十分に可能性があると思います」。「というか,そんなことは当たりまえのことで,ニュースにもならないのが,いまの世の中の現状なのでありましょう」。
 註記)「涙の会見の後に小佐古敏荘氏を待ち受けていたのは……」『誰も通らない裏道』2014/07/17,http://fusenmei.cocolog-nifty.com/top/2014/07/201471facebook-.html

 b)「放射線管理区域の基準を年間1ミリシーベルトから5ミリシーベルトに5倍増」(『逝きし世の面影』2016年03月30日)

  ※「現在も進行している非人道的な犯罪行為」※

 表面汚染=60万Bq / m2の基準は,年間被曝量に換算すると,おおむね20m / 年となる。これは,放射線業務従事者という特殊な仕事をする人だけに許した基準である。それを一般の人,赤ん坊や子どもにも許すという政策なのである。民主党政権時代に,「20mSv / 年までは我慢させる」という方針が打ち出されたさい,内閣府参与だった小佐古敏荘が,涙の辞任会見をした。彼は私〔小出裕章〕の論争相手で,あちこちで「被曝なんて怖くない」といい歩いていた人である。

 その小佐古さんが「自分の孫をそんな目にあわせるのは絶対いやです」と泣きながら訴えるくらいの被曝量なのである。放射能をとりあつかう人間にとっても高い基準だし,子どもにはけっして許してはいけない基準である。そんなところに子どもたちを帰すなど,とうていありえない政策である。原発に反対する人たちのなかにも,『美味しんぼ』での鼻血の記載を非難する人たちがいたが,些末なことに目を奪われず,現在進行している犯罪行為そのものに向きあってほしいと願っている。

 そもそも一般市民の被曝上限であるかのごとく政府やマスコミが騙していた『年間20mSv 』とは漫画『いちえふ』にはっきりと描かれているように,原発作業員の雇い止めの被曝限度である。それを福島県では幼児や妊婦にまで適用する極悪非道。言語道断の犯罪行為である。

 いままでマスメディアがけっして口にしなかった年間被曝量1ミリシーベルトの被曝上限の『放射線管理区域』を報じるうようになったが,原因は3・11フクシマから5年が経過して『時間切れ』,完全に限界に達している。不必要な一般人の出入りが禁止されている(小出裕章のような専門家でも飲食が禁止されている)『放射線管理区域』をマスコミもようやく報じるうようになった。

 ところが,こんどは新しく,年間被曝量1ミリシーベルト以上である『放射線管理区域』の被曝基準を五倍増して,チェルノブイリの強制的な全住民の疎開基準である『5ミリシーベルトだ』といい出した。この連中には最初から『真実を伝える』との真面目さが少しもない。石川五右衛門ではないが,この世で浜の真砂と悪事のネタが尽きることがけっしてないのである。
 註記)http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/8b053afea9a71b4d4ccac407b9e69ea1

 ---------------------------