【若者を未来に向けて育てていくための奨学金制度,とくに日本学生支援機構のそれが「この国のための人材」を育成させるためにではなく,むざむざ半生殺し状態に追いこんでいる実情】

 【低金利の時代にとって金融機関の貴重なお得意になっている「日本学生支援機構」,そして「貸与奨学金の受給者」との一方的な悪循環が栄えるこの日本国に未来はあるのか?】



             


 ①「奨学金破産,延べ1.5万人 親族半数,連鎖招く 5年で」(『朝日新聞』2018年1月12日朝刊1面)

 1)前論としての予備知識が必要
 このニュースに接したとき唖然・呆然・失望した。あらためて日本というこの国において,安倍晋三政権はいったい,いつになったら自国の教育,それも高等教育体制のたいせつな一環である「奨学金の制度」をまともに整備できるというのか,より深刻に憂うほかなくなった。

 アメリカの大学の授業料が非常に高額である点や,隣国の韓国が日本に似た事情にある点などに関しては,直接にはただちに比較の材料にしにくい要因もあるので注意しておきたい。ともかく,この記事を読む前に,つぎのような関連する解説を聞いておきたい。

 --『RISEMOM.(リセマム)』2016年11月29日に掲載されていた「6か国の大学費用比較,無料国ある一方で日本は高額かつ奨学金に課題」という題目の記事を,ここに引用しておく。

 文部科学省は〔2016年〕11月28日,「諸外国の教育統計」2016年版を公開した。大学の学生納付金を,日本,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,韓国の6か国で比べている。日本と韓国を除く国では,入学料や授業料を課さない大学が目立つ。

 「諸外国の教育統計」は「教育指標の国際比較」の後継資料として,日本,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,中国,韓国の教育状況を統計データによって示したもの。私立学校の割合や就学前教育・義務教育後中等教育・高等教育の該当年齢人口と全人口,高等教育在学者の人口千人あたりの人数などの統計が公開されている。

 ◆-1 フランス・ドイツは入学料・授業料なし
 大学の学生納付金によると,2015年(平成27年)における日本の

  国立大学の学生納付金平均は,授業料53万5800円,入学料28万2000円の合計81万7800円。合計金額は2012年から変化なし。

  公立大学の平均は授業料53万7857円,入学料39万7721円の計93万5578円。

  公開されている平成26年(2014年)における私立大学の平均をみると,授業料86万4384円,入学料26万1089円,施設設備費を示す「その他」が18万6171円と,合計131万1644円。
      各国大学学費比較表
  出所)この図表は年度が2013年になるが,ほぼここの議論にも使える(大差ない図解である)。http://www.asyura2.com/acpn/k/kn/kns/kNSCqYLU/100059.html
 国内国公立・私立大学の納付金を他国と比べると,アメリカは州立大学と私立大学で大きく異なるが,4年制の州立大学の州内学生の全学年についての全国平均額は2012年時点で8070ドル(約63万4000円),同じく4年制の私立大学では2万4525ドル(約192万7000円)。

 2014年におけるイギリスの国立大学は,授業料9000ポンド(約157万1000円)。授業料はイングランドの上限額を参照している。

 フランスとドイツは入学料と授業料が課せられておらず,2013年におけるフランスの場合は学士課程に係る年間学籍登録料と健康保険料を合わせて183ユーロ(約2万3000円)を支払う。2016年度冬学期データを参照すると,ドイツは,学生バス代および学生福祉会経費の合計271.97ユーロ(約33万5000円)を支払うのみ。

 欧米諸国と比較すると,日本の国公立・私立大学は高額であるように思えるが,同じアジア圏内でも差がある。韓国の2014年における国公立大学学生納付金平均額は425万8200ウォン(約41万9900円),私立大学は810万6200ウォン(約79万9300円)。ただし,国公立・私立問わず入学料・授業料およびその他の額は大学によって異なる。

 ◆-2 日本以外は「給付型奨学金」完備-異なる公的支援の実情-
 単純に比較すると,日本よりも学生の負担額が大きくみえる国もある。しかし,政府が用意する奨学金制度を比べると,また違った側面がみえてくる。2012年におけるアメリカ,2014年におけるイギリス,2013年におけるフランス・ドイツ,2015年における韓国をみると,日本以外はすべて給与型奨学金を設置している。

 アメリカの公的な奨学金は,連邦および大学のほか,民間金融機関が用意する奨学金だけで約6種類。そのうち3種類は給与型で,もっとも受給者の多い「ベル給与奨学金(学部)」は1人あたり年間平均3579ドル(約28万1000円)を援助する。年間経費32,061ドルは連邦が負担している。

 フランスの公的な奨学金はすべて給与型。種類は中等教育機関在学者と高等教育機関在学者の2種類。いずれも給与額は家庭の所得額,家族構成などにより決定されているが,高等教育一般給与奨学金第7種では5500ユーロ(約68万4000円)を給付している。さらにフランスは,国の公的奨学金のほかに地方公共団体を事業主とする奨学金も用意されている。

 ドイツも同様に給与型奨学金を主とし,奨学金額は請求可能額から本人や親,配偶者の所得および財産等による控除額を差し引いた額が算出されている。給与型の場合,疾病保険手当および介護保険手当金額(月額73ユーロ)が付加される点は特徴的だ。

 日本同様に入学金・授業料を課す韓国も,給与型の国家奨学金Ⅰ・Ⅱ(学部・短大)を韓国奨学財団が用意している。所得水準によって変動はあるものの,67.5~520.0万ウォンを給付している。奨学金は韓国奨学財団のもの以外に,成績優秀者を対象とする政府奨学金制度も設けられている。

 世界各国の奨学金制度を参考にしながら,日本でも2017年度から給付型奨学金の導入が議論されているが,国の財源を主とする制度であるため,今後の検討内容が注目される 補注)
 註記)https://resemom.jp/article/2016/11/29/35204.html
 補注)なお,関連するその後の事情について日本学生支援機構は『平成29年度「給付奨学金」の採用状況について』2017年10月13日で,こう説明していた。要は「弥縫策」とみるほかない給付型奨学金制度の追加措置が講じられていた。次項 2)  に引用・記述する。

 2)弥縫策的な新制度の設置
 今〔2017〕年度,経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするため,大学(学部),短期大学,専修学校(専門課程)に進学した者,及び高等専門学校3年次から4年次に進級した者を対象とした「給付型」の奨学金制度が創設されました。

 日本学生支援機構では,平成29〔2017〕年度に大学等に進学(進級)した者の募集,及び各大学等からの推薦受付を,4月から8月にかけて行いました。この度,平成29年度の採用者を以下のとおり決定しましたので,お知らせします。
               = 記 =

 1.制度概要(詳細は,機構ホームページをご参照ください。)

  (1)対象 平成29年度に大学等に進学(進級)した人であって,以下のア又はイのいずれかに該当する人

   ア.私立の大学等に自宅外から通学する住民税非課税世帯(市町村民税所得割額が0円)又は生活保護受給世帯の人であって,十分に満足できる高い学習成績を収めている人
     ※平成30〔2018〕年度進学者(進級者)からは,本格実施として,進学・進級後の学校設置者(国・公・私),通学別(自宅・自宅外)を問いません。

   イ.国公私立の大学等に進学した人であって,社会的養護を必要とする人(18歳時点で児童養護施設等に入所していた人,又は里親等のもとで養育されていた人)

  (2)支給額 月額4万円 (私立・自宅外通学の場合)。(1)のイに該当する場合は,別途一時金として初回振込時に24万円を支給。

 2.採用結果(平成29〔2017〕年10月1日現在)

   区 分     推薦受付数    採用者数 〔うちの の者〕
  大学(学部)    1,735人   1,671人    〔164人〕
  短期大学       201人    195人    〔 49人〕
  高等専門学校       6人     6人     〔 6人〕
  専修学校(専門課程) 688人    630人    〔131人〕
   合 計      2,630人   2,502人    〔350人〕

  ◇ 大学等から推薦された者のうち,要件を満たすことが確認された者全員を採用決定しました。
   註記)http://www.jasso.go.jp/sp/about/information/press/1270353_5022.html
 また,この「奨学金の制度(給付型)」の趣旨(目的)は,「経済的に困難な状況にある低所得の生徒に対して,大学等への進学を後押しすることを目的としています」と断わられている。
 註記)http://www.jasso.go.jp/sp/shogakukin/kyufu/index.html

 だが,国立大学の学生であれば,関係してさらに既存の制度があったゆえ,この説明はやや奇妙である。さて「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」( http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16/H16F20001000016.html )という制度があり,実際に運用されてきた。それは「経済的負担の軽減のための措置」と題されており,こう規定している
   第11条  国立大学法人は,経済的理由によって納付が困難であると認められる者その他のやむを得ない事情があると認められる者に対し,授業料,入学料又は寄宿料の全部若しくは一部の免除又は徴収の猶予その他の経済的負担の軽減を図るために必要な措置を講ずるものとする。
 註記)「授業料免除選考基準の運用について」,http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20010328001/t20010328001.html
 以上の説明を借りたが,この記述をしていた論者は,こうも付言していた。「各国立大学は授業料等の全額免除,半額免除の制度を用意している。『事前に対象になるかわからない』という声があるかもしれないが,基準も公開されているので,本人,家族が対象になりうるか,事前に検討してみることもできる。世帯の人数,課程に応じて,金額が増加するようにかなり丁寧に設計されており,半額免除制度の対象になる人の範囲はかなり広いと考えられる」。(画面 クリックで 拡大・可 ↓  鮮明にみえる)
国立大学減免制度日本学生支援機構奨学金
出所)http://www.janu.jp/news/files/20150818-wnew-youbou1.pdf

 上の図表(2014年度までの統計だが)が,分かりやすく「関係の事情」を表示している。国立大学では以前から,このような学生の納付金を減免する制度を設けて実施しており,私立大学などの学生たちとはかなり違った奨学制度の教育環境にある。この事実は重要である。ただし,あくまで「経済的理由」に依った申請の応じるための予算設置である。

 すなわち,即座に把握できる事情となるはずであるが,国立大学の学生向けには既存のこうした減免制度(経済的な理由)があるところへ,さらに前段のごとき「国家・政府」が新たに設けた「給付型奨学金制度」が,ごくわずかな人数とはいえ,国立大学生を対象にも入れて開始されていた。

 だが,この新制度は国公立と私立などの区分をしていない形式で募集されていて,既存の国立大学の学生向けの減免制度に対してさらに上乗せさせている。ある意味では国立大学と私立大学のあいだにさらに “相対的に不平等的とりあつかい” を付加したといえなくもない。

 つまり,国立大学の学生に向けてはさらに,この新しい給付型奨学金制度が利用できる状況(ごく少人数がその対象であっても)が,つまり追加的に用意されたことになる。こちらの新制度じたいが弥縫策的な対処方法であった問題はさておいても,なぜ国立大学の学生がこの制度の場合には「あえて適用が排除されずに,いっしょの対象にされていた」のか,こういう疑問がひとまず提示されてもなんらおかしくはないはずである。

 この新制度の概要をもう一度読んでみると,奇っ怪にも感じられる文章になってもいた。「1.制度概要」の」「1)対象」の「ア.」でいわく,「私立の大学に……」と書かれているが,なんだかんだ条件を付けながらも,結局は国立大学に通う学生も対象に入れている。

 つづいては,制限事項である「住民税非課税世帯(市町村民税所得割額が0円)又は生活保護受給世帯の人であって,十分に満足できる高い学習成績を収めている人」(学生)がその給付対象になる資格を有するというかたちで,この給付型奨学金を支給する対象を定めていた。そこで「十分に満足できる高い学習成績を収めている人」という条件(限定)は当然にしても,既存の制度であり,国大生に対して全面的に幅広く適用・運営されている減免制度との関連が明快になっていない。つまり,納得のいくように相互間の性格を橋渡しするための説明がない。

 安倍晋三政権が教育の無償化を大声で叫んで訴求してきた手前,ともかく給付型奨学金制度を設置しなければならない点に,それもかなり吝嗇気味に応えたその制度なのかもしれない。だが,しょせん「ないよりは多少マシだ」という以上の意義はみいだせない。この点はとくに先進諸国における奨学金制度と比較考量すれば,ただちに理解できる日本の奨学金制度に関するお寒い事情・実態・体制である。

 要は,国家・政府による給付型奨学金制度そのものの貧弱さ(民間における育英・奨学制度はひとまず論外にしておくが)は,他のまともな先進国における教育支援体制に比較するまでもなく “非常に不備・弱体”であって,この国は本気で「若者を育てる気があるのか」と,疑わせるばかりであった。
    
 3)「日本の教育への公的支出をOECDで最低とし教育無償化に逆行して私費負担も増加させた安倍政権」(国家公務員一般労働組合稿『BLOGOS』2017年09月14日 11:44)の関連する批判

 この記事からは大学問題に関連した段落を引用する。大学など高等教育への公的支出をグラフにした図表から紹介しておく。(画面 クリックで 拡大・可 ↓  )(なお引用する本文中の図表は不鮮明なので,他所から該当する別表を借りた)
 高等教育公的支出2013年図表
 出所)http://editor.fem.jp/blog/?p=2846 「大学など高等教育への日本の公的支出は6年連続でOECD最下位,33カ国平均の半分以下と突出して低い大学への公的支出は日本の『競争力』低下と連動している」『editor 月刊誌『KOKKO』編集者・井上 伸のブログ』2016/9/16。
 日本の高等教育への公的支出は,2008年から2013年まで6年連続でOECD最下位であった。7年連続での最下位はまぬがれたものの,上記グラフにあるように,日本は最低レベルが続いている。フィンランド,エストニア,オーストリア,ノルウェー,デンマークの3分の1以下という低い水準である。

 安倍首相は「教育無償化へ憲法改正が必要」などといっているが,高等教育における私費負担の割合をこのOECDデータで確認してみると,前回の2013年の高等教育の私費負担割合は64.75%であったが,今回の2014年では65.90%と1%以上増えている(OECD平均は30%)。また,高校までの教育の私費負担の割合も増えている。

 要するに,安倍首相は「教育無償化へ憲法改正が必要」などといっておきながら,実際にやっていることは,教育無償化どころか逆に教育費の自己責任化に拍車をかけている。
 補注)だから前段で説明したごとく,新しく給付型奨学金制度をごく小規模で設置させたところで,チョボチョボとした,ずいぶんみみっちい制度いじりに終始していた。抜本・基礎のところはなにも手を入れようとはしない「国民たちの不満・批判に対する目くらまし」程度の追加措置でしかなかった。

 〔記事に戻る→〕 また,安倍首相は「教育無償化へ憲法改正が必要」などと憲法を改正しなければ教育無償化が実現できないかのようにいっているが,大学授業料が無償であったり,日本よりもはるかに学費が安い国の憲法に「教育は無償にする」とか「学費は安くする」などということは書かれていない。

 教育無償化は政策の問題で,憲法に書かれているかどうかの問題ではない。このことは,実際に教育無償化へ努力している他国の教育政策をみれば明らかである。安倍首相は9条改憲のために教育無償化を口実として利用することをやめるべきである。
 註記)http://blogos.com/article/246135/

 安倍晋三君のやること・なすことがいちいち〈セコイ〉事実は,なにも奨学金制度の問題に限らないが,たいした予算措置も要らないこの高等教育のための奨学金制度の改革に対して,実にお寒い対策しか講じようとしていない。

 そのせいもあってなのか,つぎの ② にようやく引用・紹介することになった記事が,『朝日新聞』2018年2月12日朝刊の1面冒頭に配置されて報じられていた。この記事は,日本学生支援機構の奨学金制度「運用実態」がもたらしている〈教育社会的にみのがせない弊害:負性〉をとりあげている。  

 ②「① の記事」「奨学金破産,延べ1.5万人 親族半数,連鎖招く 5年で」『朝日新聞』2018年2月12日朝刊の1面の引用
『朝日新聞』2018年2月12日朝刊1面奨学金記事
 a) 国の奨学金を返せず自己破産するケースが,借りた本人だけでなく親族にも広がっている。過去5年間の自己破産は延べ1万5千人で,半分近くが親や親戚ら保証人だった。奨学金制度を担う日本学生支援機構が初めて朝日新聞に明らかにした。無担保・無審査で借りた奨学金が重荷となり,破産の連鎖を招いている。(▼2面=「父さんごめん」←これは引照しない)

 機構は2004年度に日本育英会から改組した独立行政法人で,大学などへの進学時に奨学金を貸与する。担保や審査はなく,卒業から20年以内に分割で返す。借りる人は連帯保証人(父母のどちらか)と保証人(4親等以内)を立てる「人的保証」か,保証機関に保証料を払う「機関保証」を選ぶ。機関保証の場合,保証料が奨学金から差し引かれる。2016年度末現在,410万人が返している。

 b) 機構などによると,奨学金にからむ自己破産は2016年度までの5年間で延べ1万5338人。内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で,連帯保証人と保証人が計7230人だった。国内の自己破産が減るなか,奨学金関連は3千人前後が続いており,2016年度は最多の3451人と5年前より13%増えた。

 ただ,機構は,1人で大学と大学院で借りた場合などに「2人」と数えている。機構は「システム上,重複を除いた実人数は出せないが,8割ほどではないか」とみる。破産理由は「調査できず分からない」という。自己破産は,借金を返せるみこみがないと裁判所に認められれば返済を免れる手続。その代わりに財産を処分され,住所・氏名が官報に載る。一定期間の借り入れが制限されるなどの不利益もある。

 奨学金にからむ自己破産の背景には,学費の値上がりや非正規雇用の広がりにくわえ,機構が回収を強めた影響もある。本人らに返還を促すよう裁判所に申し立てた件数は,この5年間で約4万5千件。2016年度は9106件と機構が発足した2004年度の44倍になった。

 奨学金をめぐっては,返還に苦しむ若者が続出したため,機構は2014年度,延滞金の利率を10%から5%に下げる,年収300万円以下の人に返還を猶予する制度の利用期間を5年から10年に延ばす,などの対策を採った。だが,その後も自己破産は後を絶たない。猶予制度の利用者は2016年度末で延べ10万人。その期限が切れはじめる2019年春以降,返還に困る人が続出する可能性がある。

 ※-1「〈視点〉 返還中の人に支援を」
 機構の2015年度の抽出調査によると,延滞3カ月以上の人は大半が年収300万円以下だ。年齢では25歳から39歳までが8割を占める。働いて奨学金を返す時期が,日本経済の低迷した「失われた20年」と重なり,格差が広がるなかで生み出された経済的弱者ともいえる。

 機構は2017年度,所得に応じて返還額が変わる制度を導入した。現在,「新たに借りる人」に限っている対象を「すでに返している人」にも広げてはどうか。この制度は機関保証でしか利用できないため,保証人が苦しむこともなくなる。

 政府は2020年度以降,消費税の増税分から毎年8千億円を教育無償化に充てる方向で検討している。延べ10万人が返還猶予の期限切れを迎え始める2019年春が迫るなか,奨学金を返還中の人への対策も忘れてはならない。

 ※-2「キーワード」
 「国の奨学金制度」 1943年に始まり,現在は日本学生支援機構が憲法26条「教育の機会均等」の理念のもとで運営している。2016年度の利用者は131万人で,大学・短大生では2.6人に1人。貸与額は約1兆円。成績と収入の要件があり,1人あたりの平均は無利子(50万人)が237万円,要件の緩やかな有利子(81万人)が343万円。給付型奨学金は2017年度から始まり,新年度以降,毎年2万人規模になる。

 高校生向けの奨学金事業は2005年度に都道府県に移管されており,全額が無利子の貸与となっている。(引用終わり)

 日本学生支援機構が貸与型で支給する奨学金の一定の原資が,金融機関から調達されている事実は周知の点である。現在のような低金利金融経済のなかにあって,日本学生支援機構は絶好の融資先である。しかも,実質は国家機関であるのが日本学生支援機構(独立行政法人)である。金融機関側としては貸さない手はないといった相手となって,相互の取引関係が成立している。

  つぎにかかげる図表は,日本学生支援機構『平成29〔2017〕年度奨学金貸与事業費の財源内訳(予算案)』であるが,赤数字で記入されている民間借入金に注目したい。安倍晋三君は「教育の無償化の問題」に憲法うんぬん(デンデン)をからめて議論したいらしいが,それよりもまずさきに克服しなければならない難点のひとつがここに指示されている。(画面 クリックで 拡大・可 ↓  )
日本学生支援機構奨学金原資など図表
  出所)http://www.jasso.go.jp/about/ir/minkari/__icsFiles/afieldfile/2017/03/14/29minkari_ir.pdf 

 ④ 議論・吟味

  ところで,当該問題の専門家と思われる石渡嶺司(大学ジャーナリスト)が「新入学予定者が知っておきたい奨学金の『大誤解』~利子比較から就職の話まで」(『YAHOO!JAPAN ニュース』2016/3/11 0:15)で,つぎのように論及していた。「 」が石渡の発言である。〔 〕補足やそれ以外は引用者。

 要は「利子をとるという時点でそれは英語でいうところの loan であって,scholarship じゃないのですよ。Scholarship は,給付型奨学金なのですから」。日本学生支援機構の「無利子の第一種奨学金は,まあ,教育ローンと同一にするのはさすがにいい過ぎかとは思いますが,これも要返済である以上,scholarship ではないですね」。

 「週刊金曜日記事や奨学金批判論者などがいうところの,『サラ金並み』とまではいいませんが,名称〔奨学金という名称のこと〕はちょっとなあ〔無理であり,羊頭狗肉〕」。「教育ローンへの改称がまずければ,教育資金猶予制度とか,なんか適当な名前の方が良さそうと思うのですがどうでしょうね?」

 ともかく「日本学生支援機構の返済猶予制度や告知方法などに問題があるかどうか,などの議論が〔これからも〕続きます」し,「はっきりいえば,相当問題がありましたし,まだまだ改善の余地はあるところです」。各「大学〔が整備して給付している〕独自の奨学金はどう〔いう性格で位置づけになる〕か,というのもあります」。

 「それから,大学授業料の公費負担比率の問題など,まだまだ議論は続くところです。それはそれで大いに議論すべき問題です。なお,私は公費負担をもっと上げるべき,と考えます。ただ,それはあくまでも将来の話のはず」である。
 註記)https://news.yahoo.co.jp/byline/ishiwatarireiji/20160311-00055284/

 この石渡嶺司の発言は “大学ジャーナリストの立場” にしては,ずいぶん悠長な認識状態にある。「公費負担をもっと上げるべき」問題が「あくまでも将来の話のはず」などと説明する発想には,びっくりさせられる。
林修画像
 林 修先生にいわせるまでもなく,日本でも給付型奨学金制度を本格的・大々的に導入する手当を「いつやるか?」といわれれば,「いま〔すぐ!〕でしょ」,そうに決まっているとしかいいようがないと思うのだが?
 出所)画像は,http://www.watanabepro.co.jp/mypage/60000004/

 日本は,奨学金制度においては完全に「後進の位置」をとっている,あるいはまともな先進国の背を遠くに観ながら,トボトボと追随している現状,ある意味では置いてきぼりを喰っている事実にすら,鈍感でいられる国家である。「教育は百年の大計」だからといって,石渡嶺司のように「あくまでも将来の話のはず」などといった理解を示すのは完全に錯誤である。百年の大計だからこそ「いますぐに手を着けなければ」,これからもどんどん遅れをとっていくほかない。

 ところで,安倍晋三君がアメリカの「政府-軍需産業」から買うことにしたF35B1機は,いったいいくら?
   空自が導入するのは空軍仕様のF35Aだが,追加調達分の一部を短距離離陸・垂直着陸が可能で,米海兵隊が運用するF35Bにする案が浮上している。

 海上自衛隊が島しょ防衛用に部隊・物資の輸送を担う強襲揚陸艦の導入を計画しており,F35Bをこの新艦に搭載する構想だ  註記1)

 「F35B1機当たりの価格は180億円に達する」註記2)といわれるが,この価格,10億円単位で簡単に上下に変動するみこみもあるから注視が必要である。
 註記1)https://mainichi.jp/articles/20171231/k00/00m/010/123000c
 註記2)http://blog.goo.ne.jp/stopchina/e/7ff475270db04fc714d5412050547d39
 現在,国立大学生のために用意されている「納付金減免制度用の予算」は3百億円台であった。つぎは,文部科学省のホームページから引用である。

◆ 家庭の教育費負担や公財政による教育分野への支出等 ◆

 「大学・大学院等」「○ 国立大学等の授業料等の減免

 「全ての国立大学等では,意欲と能力のある学生が経済状況に関わらず修学の機会を得られるようにするため,授業料の免除・減免措置を行っています」。

  【平成28〔2016〕年度予算】
    国立大学     320   億円
    国立高等専門学校     4.7億円(計 324.7億円)

  【予算上の免除員数等】
    学部・修士課程  5.4 万人(10.8%)(平成28年度)
    博士課程     0.6 万人(12.5%)(平成28年度)
    国立高等専門学校 0.2 万人      (平成28年度)

  【平成26〔2014〕年度実績】
    国立大学:
     免除実施額計   378   億円
     免除人数(延べ)   18.1 万人

    国立高等専門学校
     免除実施額計     5.2  億円(計 383.2億円)
     免除人数(延べ)   0.4  万人

     註記)http://www.mext.go.jp/a_menu/kyoikuhi/detail/1338251.htm 計の数値は引用者追加。2016年度は減少している。

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 【補  記】  この記述の続編を201年2月16日に書いた。興味ある型は,こちら「本稿(続)」に移動して読んでほしい。

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