【祖父岸 信介はそれでも,戦後体制を少しでも日本寄りに修正させようとした。けれども,その孫は米日間の軍事同盟・上下関係を高度に進化させ,より堅固・不動にした】


 ①「米軍ヘリ,小学校上空飛行 普天間で防衛省確認 米側が謝罪」(『朝日新聞』2018年2月24日朝刊)

『朝日新聞』2018年2月24日朝刊米軍ヘリ記事 〔2月〕23日午後3時半ごろ,米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に隣接する普天間第二小学校の上空を,米軍ヘリ1機が通過した。政府関係者によると,防衛省の監視員が目撃し,学校に配置したカメラでも確認。米側は上空飛行を認めた。

 防衛省によると,ヘリは普天間飛行場を離陸したMH60。米側に再発防止の徹底を申し入れた。在日米軍は「米軍のヘリが不注意に学校上空を飛び,遺憾だ。再発防止のため,すぐに事実関係や状況の調査を始めた」と発表した。

 関係者によると,飛行したのは米海軍機とみられる。米側は「普天間所属機ではないので,小学校の上空を飛んではいけないとしらなかった。本当に申しわけない」と日本側に謝罪したという。普天間第二小では昨〔2017〕年12月,米海兵隊の大型ヘリCH53Eの窓が校庭に落下する事故が発生。その後,海兵隊は「すべての学校の上空の飛行を最大限可能なかぎり避ける」と説明していた。
 補注)在沖米軍関係全軍がこの「小学校の上空を飛んではいけないとしらなかった」という程度にしか,命令・指示を受けていなかったという事実は,それも「すべての学校の上空の飛行を最大限可能なかぎり避ける」という意向での注意事項であったとすれば,このように「飛んではいけないとしらなかった」といいわけしつつも,実際に飛んでしまったら “ゴメンナサイ” (昔風に表現するとサルにでもできる謝罪方法)と口先だけでいうことなど,しごく簡単である。そこを飛んでしまえれば,それはそれでそれまでのことで,あとは一言謝ってやればいいのだ,という始末であるかのような様子である。

 〔記事に戻る→〕 しかし今〔2018〕年1月18日にも海兵隊ヘリ3機が普天間第二小の上空を通過したのを防衛省が確認。政府は米軍に抗議したが,米側は上空飛行の事実関係を認めていなかった。学校は事故以降,1カ月半にわたり校庭の使用を中止した。

 普天間飛行場の運用をめぐっては,日米は1996年に「できるかぎり学校,病院を含む人口密集地域上空を避ける」と合意したが,2004年に市内の沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落。運用時間も,騒音防止のため午後10時以降の飛行制限を日米で合意しているが,深夜の飛行が頻繁に確認されている。(引用終わり)
     『朝日新聞』2018年2月24日朝刊米軍ヘリ問題
  註記)この紙面の画像は,この朝刊「13版」には出ていた記事の部分であったが,最終版の「14版」から削除されていた。
 そんなこんなであって,在日米軍基地の集中する沖縄県,それも小さな島に相当数の米軍関係の諸施設が集中するこの県である。しかも,軍事基地における軍用機の日常的な訓練のための運用であるから,事故が一定の高い確率で起きて当然という認識が,前提に置かれた話題になるほかない。それゆえ「できるかぎり……」という留保を付けた制限にとどめている。それ以上は「できないし」,「できるわけもない」というわけである。つまり努力目標でしかない。

 沖縄県が公表している米軍基地関連の事故発生に関する統計図表から,つぎの2点引用しておく。前者(その1)は少し古いが,いまも基本では変わらぬ趨勢が表記されているはずである。(画面 クリックで 拡大・可 ↓  )
   ◆ 沖縄県における米軍基地関連統計:その1 ◆
数字でみる沖縄県の米軍基地画像資料
  出所)http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/tyosa/documents/p32.pdf

沖縄県米軍基地関係事故統計
  出所)http://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/h293toukeisiryou.html
 次項 ② は,① で朝日新聞が報道した同じ内容(対象)を,日本経済新聞が報道すると,対照的にこういった具合にごく小さく,控えめに,つまりベタ記事でしか伝えようとしない。この経済新聞の親米ぶりをみずからよく表現させるあつかい方になっていた。字数をさきに教えておくが,70字ほどであった。「これ以上くわしくは,とくに触れたくない」という姿勢が露骨である。

 ②「米軍ヘリ,普天間の学校上空飛行認める」(『日本経済新聞』2018年2月24日朝刊4面「総合3」)
         『日本経済新聞』2018年2月24日朝刊4面総合3ヘリ記事
 「在日米軍司令部は23日,声明を出し,米軍ヘリの普天間第二小上空飛行を認めた上で「遺憾の意」を表明し,再発防止のための調査を始めたことを明らかにした」。
『日本経済新聞』2018年2月24日朝刊ヘリ記事2
   出所)これはウェブ版。
 ③「米軍ヘリが普天間二小の上空飛行 窓落下後の回避合意ほご」(『東京新聞 TokyoWeb』2018年2月24日 00時30分)

 ① は朝日新聞の報道,② が日本経済新聞の報道であったが,これに対して共同通信社が「配信した当該の」記事を掲載した東京新聞の場合,以下のように伝えていた。
普天間飛行場と宜野湾市『東京新聞 TokyoWeb』2018年2月24日
 〔2月〕23日午後3時半すぎ,米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に隣接する市立普天間第二小の上空を米海軍のMH60ヘリコプター1機が飛行した。在日米軍が認めた。

 昨〔2017〕年末に起きた同小運動場への米軍ヘリの窓落下事故後,日米両政府は学校上空の米軍機の飛行を「最大限可能な限り避ける」と合意しており,防衛省は米側に再発防止の徹底を申し入れた。米軍は調査を始めた。

 沖縄県などは小学校上空の飛行中止を求めており,地元住民は反発。在日米軍司令部は同日の声明で,今回の飛行に「遺憾の意」を表明した。(共同)
 註記)http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018022301002289.html
 いずれにせよ,沖縄県・民側の怒りは昔から無限大にまで達してきていた。いまに始まった米軍関係の事故や迷惑ではない。その怒りのやり場さえがどこにもみい出せないでいるような在沖米軍の傍若無人ぶりは,以前より『半国家』とも形容されている日本国の対米従属性の具体的な現象であって,とりわけこの沖縄県においては集中的(しわ寄せ的)に顕現させられている。

 安倍晋三君はこれまで盛んに,この日本国は「戦後レジームからの脱却」を成就させねばならないと,くどいくらいに強調してきた。けれども,2012年12月に彼が首相になった第2次政権発足後,それにまったく逆行した動向しか記録できていない。その最終的ともいえるような「対米従属国家:日本」を「米日安保関連法」(2016年3月末施行)によって完成させていた。

 現状は「戦後体制の現実(それからの脱却などどだい不可能だったが)」を,ほんのわずかも否定できていない。それどころか,とてもなくトンデモないことには,その逆方向での総仕上げに貢献する働きを,この日本国総理大臣は,しかもアメリカのためだけに果たしてきた。そういった〈怪・挙〉をなしとげた。

 要するに,それらの成果は「日本・民」のためではなくて,「アメリカ様」のために尽力したすえにこそ実現できていたものであった。安倍晋三は本来いっていた。この日本を「美しい国へ」と導き,「ふつうの国」に変えるのだと。だが,国際政治面を通さねば達成が不可能であったその〈その狙い〉は,究極のところ,奴隷的な根性に満ちた基本路線であって,この本質をあらためて赤裸々にさらす顛末になっていた。その点をみごとなまで,彼自身が証明した記録があった。次項が説明する。

 ④「首相の米議会演説の全文」(nikkei.com  参照)

 a) 2015年4月29日(米国東部時間)のことであった。アメリカを訪問した安倍晋三首相は,「希望の同盟へ」と題した演説をおこなう機会を,米上下両院合同会議において与えられた。この演説の内容全文は紹介できないが,日本経済新聞が掲載したその内容(文相)に付けた見出しだけをさきに,以下に一覧しておく。
  安倍晋三米国上下院議会演説2015年4月29日
   出所)https://www.youtube.com/watch?v=HpLDJ_J-V88

  はじめに    アメリカと私    アメリカ民主主義と日本
  第2次大戦メモリアル   かつての敵,今日の友   アメリカと戦後日本
  環太平洋経済連携協定(TPP)   強い日本へ,改革あるのみ
  戦後世界の平和と,日本の選択    地域における同盟のミッション
  日本が掲げる新しい旗        未来への希望
   註記)https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H1E_Z20C15A4M10600/
      https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H1E_Z20C15A4M10600/?df=2
      https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H1E_Z20C15A4M10600/?df=3

 この演説のなかで傑作なのがとくに,環太平洋経済連携協定(TPP)に関して生じていた。その後において,アメリカ側の態度の豹変があった。大統領がオバマからトランプに替わった瞬間,「オレ(米国)はTTPに参加しない」とのたもうたのである。

 ところが,当初,日本の安倍自民党は自国内の選挙に対面したときにでも,絶対にこのTPPには参加しないと選挙民に強調していたにもかかわらず,その後参加していた。百八十度変えていた。演説のとおりになっていた。ただし,トランプのほうでは最近,「アメリカにとって絶対に得になるならばTPPに参加してもいい」などといいだしてもいたから,いい気なものである。

 ともかくこの演説のなかで安倍晋三は,どう強調していたか。その部分を引用しておく。このように叫んでいたけれども,アメリカ側からはその後, “イイ面の皮”にされていた。赤っ恥……。それでも,いまにおけるこの首相の態度を観察していると,まるで完璧に「カエルの面に▼▼(または▲▲▲▲▲)」なのである。政治家としての彼にあっては,恥だとか外面だとかとは無縁。
   太平洋の市場では,知的財産がフリーライドされてはなりません。過酷な労働や,環境への負荷も見逃すわけにはいかない。許さずしてこそ,自由,民主主義,法の支配,私たちが奉じる共通の価値を,世界に広め,根づかせていくことができます。

 その営為こそが,TPPにほかなりません。しかもTPPには,単なる経済的利益を超えた,長期的な,安全保障上の大きな意義があることを,忘れてはなりません。

 経済規模で,世界の4割,貿易量で,世界の3分の1を占める一円に,私たちの子や,孫のために,永続的な「平和と繁栄の地域」をつくりあげていかなければなりません。日米間の交渉は,出口がすぐそこにみえています。米国と,日本のリーダーシップで,TPPを一緒になしとげましょう。(引用終わり)
 いまでは,アベノミクスという名の,実体はアホノミクス・ダメノミクス・カラノミクスである提唱が展開されてから早,4年近くも経過してきた。だが,その具体的に目にみえる成果などまともに出ていない。それどころか,前段のTPPの目標として力説されているような対象,つまり日本国・民向けとしての標語:「私たちの子や,孫のために,永続的な『平和と繁栄』」など,からっきし達成されていない。それどころが減損している実相にある。

 そのような調子のいい方向はほとんどうかがえないまま,むしろその負的な含意であれば,たしかに発現されてきた。まともな経済学者やエコノミストであれば,アホノミクスとして蔑称するほかない「安倍晋三流(?)の経済政策」は,庶民の生活を低劣にしていくための効果であれば,確実に実現してきた。

 そのアベノミクスと虚称された経済政策の努力目標は,労働者・サラリーマンの立場からすれば実質賃金が “確実に上昇する点”に実現されてこそ,意味を発揮していくものである。ところが経済統計上,つまり表面的に把握できる事象であっても,最近なると「実質賃金 2年ぶりに低下 昨年マイナス0.2% 物価上昇が響く」(『朝日新聞』2018年2月7月朝刊)との報道からも分かるように,その効果はこれまでも目立つものがなかった。この趨勢は民主党政権時代(2009年から2012年)に比較しても,明白にことなる負の傾向になっている。
 『朝日新聞』2018年2月7日朝刊実質賃金図表 com2018年2月8日実質賃金図表2
 出所)左側画像は『朝日新聞』2018年2月7月朝刊。
 出所)右側画像は,https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20180208000286.html

    『朝日新聞』2018年2月22日朝刊けいざい
 出所)この図表は,アベノミクスの謳い文句のひとつ「トリクルダウン」がどうみても完全なウソの主張であった事実を教えている。 「〈けいざい+〉黒田日銀の課題:中 「好景気」の実感,富裕層どまり」『朝日新聞』2018年2月22日朝刊, https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20180222000334.html
 b) 米上下両院合同会議における安倍晋三の演説については,もう1点,それも最後のほうで語っていた点もさらにとりあげておく余地がある。安倍はこうぶち上げてもいたのである。
   日本はいま〔2015年4月時点のこと〕,安保法制の充実にとり組んでいます。実現のあかつき,日本は,危機の程度に応じ,切れ目のない対応が,はるかによくできるようになります。この法整備によって,自衛隊と米軍の協力関係は強化され,日米同盟は,より一層堅固になります。それは地域の平和のため,たしかな抑止力をもたらすでしょう。

 戦後,初めての大改革です。この夏までに,成就させます。ここで皆様にご報告したいことがあります。一昨日,ケリー国務長官,カーター国防長官は,私たちの岸田外相,中谷防衛相と会って,協議をしました。いま申し上げた法整備を前提として,日米がそのもてる力をよく合わせられるようにする仕組ができました。一層確実な平和を築くのに必要な枠組みです。

 それこそが,日米防衛協力の新しいガイドラインにほかなりません。昨日,オバマ大統領と私は,その意義について,たがいに認めあ」いました。皆様,私たちは,真に歴史的な文書に,合意をしたのです。(引用終わり)
 この安倍晋三のいいぶんは,日本の国会では当時まだ「結論の出ていない議案」についてだったが,アメリカに対してだけはさきに「シンゾウが必らずそういたします」と誓っていた。この人,いったい “どの国の総理大臣でしたかネ” という『根本の疑問=批判』を投じておかねばならない。

 いわゆる「亡国」「売国」「滅国」「壊国「傾国」に向かわせるために存在しているかのような,この国の首相である。なかでもその面目躍如たるべき一点は,以上にように記述した経過が単なる演技(演説にあらず)ではなくして,まったく真剣にたどられてきたところにみいだせる。いいかえれば,師匠(アメリカの猿回し)に命じられるまでもなく,その日本側(の猿山のボス猿)はその方途に走らされていたことになる。

 ここで,話題を沖縄県において米軍ヘリが小学校の上空を飛んだ・飛ばなかったの問題に戻る。この問題を ① のようにそれも朝刊1面の左上紙面を充てて報道した『朝日新聞』2018年2月24日朝刊であった。けれども,その2日まえの「社説」ではこう主張していた。それなりの前後関係:なりゆきがあって,この ① のような報道の仕方になっていた。前述してあったように,『日本経済新聞』はベタ記事で報道していた「記事」であったが。

 ⑤「〈社説〉米軍機トラブル 主権国家としての使命」(『朝日新聞』2018年2月22日朝刊)

 青森県三沢市の米軍三沢基地を離陸したF16戦闘機が,エンジン付近から出火し,燃料タンク2本を小川原湖に投棄して同基地に緊急着陸した。湖ではシジミ漁の漁船約10隻が操業していた。タンクの落下地点から約200メートルしか離れていない船もあったという。パイロットを含めけが人はなかったが,ひとつ間違えば住民を巻き込む大惨事につながりかねない重大事案である。
 三沢基地シジミ漁画像
出所)https://ameblo.jp/aabe/entry-12354340236.html
 米軍機の事故やトラブルは全国で続いている。沖縄県では一昨〔2016〕年12月,名護市沿岸でオスプレイが不時着水に失敗し大破した。昨〔2017〕年12月には米軍普天間飛行場に隣接する小学校の校庭に,輸送ヘリが窓を落とした。この〔2018年〕2月にも,オスプレイが落とした部品が県内の浜辺でみつかった。

 一昨年9月には沖縄本島の東の太平洋で,同年12月には四国沖で,米軍の攻撃機がそれぞれ墜落している。三沢市沖では昨年10月にも,電子戦機が燃料タンクを投棄した。今回の事案を受け,安倍首相は国会で「ただちに米側に安全管理の徹底と原因究明,再発防止を申し入れた」と述べたが,これまでなんど同様の答弁を聞いてきたことか。

 より強い危機意識をもって,在日米軍と米政府に,実効性ある対策を求める必要がある。機体に問題はなかったか,整備は十分だったのか。徹底した原因究明は当然のことだ。米国防予算の削減の影響はあるのか。北朝鮮情勢などで任務が増えていないか。構造的な問題の有無を含め,踏みこんだ検証と分析が不可欠だ。

 気がかりなのは,在日米軍の安全に対する基準や感覚が,日本の住民とかけ離れているようにみえることだ。狭い国土に人口が密集する日本では,本来,米国より厳しい安全基準があっていい。ところが現実には,日米安保条約と地位協定のもとで,米軍にさまざまな特権が与えられ,乱暴な運用が繰り返されている。首都圏上空の巨大な空域の管制を米軍にゆだねているのも,その一例である。

 沖縄県議会はきのう,米軍に対し「沖縄は植民地ではない」と抗議する決議を全会一致で可決した。強大な権限を握る米軍には,それだけ真摯に慎重に運用する責任がある。日本政府はまずそのことを強く訴えるべきだ。同時に,国民の生命と財産を守る観点から地位協定の見直しを求める。それは主権国家としての日本政府の使命である。(引用終わり)

 安倍晋三が提唱していたはずの「戦後レジームからの脱却」とは,このような沖縄県のみならず,日本全国に存在している米軍基地の実情に照らしていえば,その撤去(撤退)でしかありえない。在日米軍には「在日特権」として評価すると,とてつもない程度にまでその特権が付与されている。

 憲法第9条の兼ねあいがあるとはいえ「戦前回帰」を必死になって志向(模索)している安倍晋三が,そのまったく逆方向の関係をもって,在日米軍にとってはまことに都合のよい,それも決定的ともいえる軍事同盟関係に関する処遇=在日特権の改善を,「安保関連法」の実現によって提供できている。「戦前回帰=〈戦後レジームからの脱却〉」など絵空事である。

 この首相,いったい日本国民たちの「なんなのか?」 「いったいなんのために」総理大臣の椅子に座っているのか? 現在は,こういったたぐいの疑問が噴出している最中である。ここまで論旨を進めてくれば,つぎの『日刊ゲンダイ』の記事が意味する点も判りやすいはずである。

 ⑥「山尾氏挑んだ論争に答えられず “勉強不足” 安倍首相の姑息」(『日刊ゲンダイ』2018年2月23日)

 やはり安倍首相は憲法の基本も分かっていないんじゃないか。〔2月〕22日の衆院予算委員会は,立憲民主党の山尾志桜里議員が質問に立ち,注目を集めた。昨〔2017〕年10月の衆院選以降,初めて予算委に登板し,安倍首相に憲法論争を挑んだのだ。

 安倍首相はかねて「自衛隊についての違憲論争に終止符を打つ」といって,憲法9条の1項,2項を残したうえで自衛隊について書きこんだ3項をくわえる改憲案を主張している。山尾氏は「違憲の議論はつねに,自衛権の行使が9条2項に違反するのではないかという関係でいわれてきた。2項をそのまま残すのでは,合憲・違憲の議論の余地はなくならないのではないか」と質問。

 すると安倍首相は,直前に山尾氏が質問した待機児童問題について長々と話し出し,ようやく憲法問題に答えるかと思ったら,「私は内閣総理大臣として(答弁席に)立っている。自民党総裁として憲法改正議論に一石を投じたが,(憲法に自衛隊を)どのように書きこんでいくかは自民党で議論がなされている」とはぐらかしたのだ。重ねて聞かれても,最後まで自分の考えは開陳しなかった。

 自民党総裁と内閣総理大臣の立場を都合よく使い分けるのは安倍首相の常套手段だが,自分がいい出しっぺの改憲案について質問されたのに,正面から答えないのは不誠実だ。山尾氏も「一石を投じた責任者としてあまりに無責任」と呆れていた。

  ※ 憲法学の大家もしらず,発言は矛盾だらけ ※

 まぁ,憲法学の大家である芦部信喜をしらなかったくらいだから,山尾氏とまともに議論するだけの知識ももっていないのだろうが,年内発議に向けて早く党内をとりまとめるようお尻を叩いておきながら,改憲について質問されると「国会でお決めになること」といって逃げる。憲法改正がライフワークというのなら,堂々と論戦に応じればいいのに,やり口が姑息だ。

 「安倍首相は自衛隊を憲法に書きこんでも『なにも変わらない』といいますが,それなら憲法改正する必要もない。いっていることが矛盾だらけです。とにかく在任中に自分の手で憲法改正をなしとげたいという野望だけで,憲法の本質を理解する気もないのでしょう。ただ,この政権は,たとえ論理がメチャクチャでもやると決めたら強行する。安保法や共謀罪,いま問題になっている裁量労働制の拡大などもそうです。憲法改正の議論が国会で煮詰まらなくても,数の力で年内に発議までもちこみそうで心配です」(立正大名誉教授・金子 勝氏=憲法)

 生煮えで改憲発議なんて,もってのほか。安倍首相の場合,まずは憲法のお勉強からだ。
 註記)https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/223851
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/223851/2

 この日本国の首相に対して「いまさらお勉強しなさい」といっても,無理難題でしかない。小林よしのりの『BLOG あのな教えたろか。』(2018.02.22)は,山尾志桜里のファン的な立場から,こう解説していた。
◆ 山尾志桜里議員の質問をみて ◆

 山尾志桜里議員の国会質問をみた。やっぱり存在感があり,活舌が良くて,好感がもてる。「2項を削除しないと,自衛隊の違憲論争は終わらない」というのは,安倍首相の痛いところを突いてはいる。

 だが,安倍は「そのような論争は,憲法審査会で」と逃げればいいだけだ。今日の山尾議員の質問は,枝野代表の見解にはベストのかたちで寄り添っている。ただし,わし個人としてはまだまだ不満足だ。
 註記)https://yoshinori-kobayashi.com/15117/
 ⑦ 完全に手遅れである日本国宰相の勉学水準向上策

 いまごろになって安倍晋三がなにを勉強させようとしたところで遅すぎる,いまになっては,彼になにかを身につけるための学習などができない相談である。「漢字の読みとりや書きとり」の能力(本来の実力)から類推してみても,この人は大学まででもいいから,まじめに勉学をしてきたようには,とうてい感じられない。

 それでもこの人,安保関連法を議論しているときに,つぎのように傲慢にいいはなっていた。もっとも,この君は自分がそこまで傲慢になっている〈事実〉すら,実は,よく認識できていない症状がある。いつものことであったが……。

 すなわち,「安倍晋三の発想:〈オレがいったのだから正しいのだ〉」といったごとき,コドモじみたというよりは “ただ大きな幼児みたいなその感性” は,安保関連法が国会で討論されている最中にも飛び出ていた。
   2015年5月20日のことであった。党首討論がおこなわれていたなかで安倍晋三は「われわれが提出する法律についての説明はまったく正しい,と思いますよ。私は総理大臣なんですから……」と断言していた。
 この発言は驚異的に問題であった。そもそも,このいいぶんじたいが論理にはなっていないし,むろん説明にもなっていない。単なる「コドモのダダに相当するいいぶん」であった。このような発言を本気ででき,しかも実際にも口に出していたのだから,こうした事態(国会の舞台での言動)は,もはや〈大人の狂気〉だと形容すると同時に,完全に〈稚児の遊戯〉そのものになっていた。

 安倍晋三君の “首相としての迷演技ぶり” は,精神分析学の対象としてとりあげるのに好例でありうる。また,心理カウンセラーによる治療心理の対象者にもなりうる。そうした事実が確実に示唆されている。安倍晋三という総理大臣の言動に関する分析と吟味が,いままでの政治学や経済学からの批判的な検討とも併せて,その対象領域をもっと奥にまで深めるための議論として要請されている。

 この首相の立ち振るまい,彼をめぐって起きている「周囲の諸事態の進行ぶり」を観るにつけ感じられる問題は,もともと彼個人に特有である小さなみすぼらしい〈人間らしさ〉にのみ留められるものではなくて,一国の経営品質全体に関してすら重大な疑義を惹起させている,つまり彼自身において固有である「最高指導者としての資質(品位・品格,能力・実力)」の領域にもあった。

 そうした安倍晋三という「世襲3代目の政治家」に関する事実認識に照らしていえば,日本国の首相として最低限要求されているはずの基本的な要件は,初めからすでに笑止千万的にかつ迷惑千万にも備えていなかった。この程度の首相がいよいよ,本格的にも,この日出ずるこの国をダメにしはじめている。残念だといって済まされるような問題性ではない。

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