【原発の発電単価が一番高くなっている事実をみたくない日本国原子力村の幻想的なエネルギー感覚】

 【時代は再生エネルギーの開発・利用の方向に向けて,完全に切りかわっているにもかからず,いまだに原発にこだわる「原子力村的な日本のエネルギー政策」のアナクロさ加減】


 ① 前論の言及

 本ブログは,昨年(2017年)11月19日に記述した文章の題名を,「日本経済新聞の摩訶不思議,『原発コストが一番安い』と報道してきたが,本日の記事には原発コストが『一番高い』と表現する図表をかかげた記事が出ている」と付けていた(これは次段で参照することにする記事)
 註記)リンクはこちら,⇒ http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1068823255.html

 この記事の本文は,再度引用する必要を感じないので,ただひとつ,そのなかに掲示されていたつぎの図表のみ紹介しておく。
『日本経済新聞』2017年11月19日朝刊3面原発コスト
出所)日本経済新聞』2017年11月19日朝刊3面

 ②「基幹電源へ風力大型化 シーメンスやGE,原発を代替」(『日本経済新聞』2018年3月21日朝刊15面「企業総合」)

 本日朝刊のこの記事は全文を紹介するのではなく, ① の内容に関連する段落を主に抽出しておく。「風力発電が原発に代替する」という話題であるゆえ,原発推進派にとっては穏やかではいられない報道である。こう解説しているが,不評の折れ線グラフの趨勢はすでに原発コスト「安価説」の敗北を教えている。前段の表と併せて観察しておきたいものである。
『日本経済新聞』2018年3月21日朝刊風力発電画像
 --風力発電機の大型化競争が激化してきた。独シーメンスは2020年代前半に,出力1万キロワット以上の洋上風力発電機を発売する方針を決めた。出力が現在の主力機種の1.5倍以上の大型機を洋上に並べて大規模な風力発電所をつくり,原子力や火力を代替する狙いだ。米ゼネラル・エレクトリック(GE)なども大型化をめざしており,風力を基幹電源に育てる動きが広がってきた。
 
 風力は従来,環境負荷の低い分散型電源と位置づけられてきた。しかし,タケ氏は「もはや原子力と同等の出力規模の発電所が作れる。将来はもっともコスト競争力のある電源になる」と語った。実際に,〔2018年〕1月に建設が始まり,同社が7000キロワットの風力発電機を174基納める英国の洋上風力発電所の出力は合計約120万キロワット。原発1基分に相当する。400平方キロメートルと東京23区の3分の2の広さの海域に風力発電機を建てていく。

 他の重電機器メーカーも大型化を急ぐ。GEは4億ドル(約420億円)を投じ,1万2千キロワットの新機種を開発中で,2021年に出荷を始める。GEは2015年に仏アルストムの電力機器部門の買収で洋上に参入したが,新機種でシーメンスを追う。三菱重工とヴェスタス(デンマーク)が折半出資するMHIヴェスタス(同)は,現時点で世界最大の風力発電機(出力9500キロワット)を開発済みだが,さらに大型化を進める。日立製作所も大型機を開発する方針だ。
 補注1)本日〔3月26日〕の『日本経済新聞』朝刊1面には,「三菱商事,英蘭で風力発電参画 合計で原発1.5基分」との記事も出ていた。途中になるが,その記事の関連で3面に掲載されていた「解説コラム」から引用しておく。
★「〈きょうのことば〉洋上風力 欧州,
原子力に代わる電源に」★


  ▽-1 海上に設置した風車が回転する力で発電する技術で再生可能エネルギーの一種。陸上に風車を設置する通常の風力発電に比べ,海の上は周辺住民への騒音の影響がほとんどなく,大型の風車を多数並べて大規模な発電所が造れるメリットがある。

 洋上には一年を通じて安定的に風が吹く場所も多いため,遠浅の沿岸部をもつ欧州を中心に急速に広がっており,世界風力会議によると2017年の世界の洋上風力の発電規模は1881万キロワットと5年間で3倍以上に増えた。
        『日本経済新聞』2018年3月26日朝刊面洋上風力発電
  ▽-2 三菱重工業とヴェスタス(デンマーク)の折半出資会社や独シーメンス,米ゼネラル・エレクトリック(GE)などが発電機の主力メーカーで,大型機の開発でしのぎを削っている。欧州では発電コストが原子力発電所を下回るなど原子力に代わる基幹電源になりつつある。

  ▽-3 日本では大規模な洋上風力発電所の建設を促す新法が近く成立する見通し。ただ発電に適した東北や北海道の日本海側は送電線が不足しているなど,本格普及には時間がかかるとみられる。
 補注2)「いよいよ全世界で30万台を突破! 急増する風力発電」(『SOLAR JOURNAL』2017/12/11)という記事は,つぎのように謳っていた。

 世界の風力発電の累積導入量がついに5億kW(500GW)に達した。これは原発約500基分に相当する数値であり,再生可能エネルギーが切り拓く新たな時代の到来を予感させた。本記事では世界の風力発電の累積導入量の推移を紹介する。 

 註記)https://solarjournal.jp/windpower/20818/   なお「 1GWとは1000kW」である。また2017年現在,全世界にある原発は全部で439基。そのうち日本にある原発は「世界3位の42基」(以前は50基以上あった)。この小さな島国の日本1カ国に「世界の原発の約10%が集中している」計算になる。( ↓  画面 クリックで 拡大・可)
  日本の原発配置図2011年
 出所)これは2011年,https://www.benricho.org/map_energy/img/00-genpatsumap-all.png

 〔記事に戻る→〕 洋上風力は先進地域の欧州で,既存の電源に匹敵するコスト競争力をもちはじめている。英調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の調べによると,欧州の洋上風力の発電コストは2017年は1キロワット時当たり16.8円だった。3年前に比べ4割下がった。

 すでに同21.1円の原子力のコストを下回っている。石炭火力は同9.6円とまだまだ安いが,英国では20年前後に洋上風力が石炭火力を下回るとの予測もある。欧州でも,5年前には洋上風力はもっともコストの高い電源だった。各国政府は非常に重い風力発電機の積み下ろしに耐える頑丈な専用港など関連インフラを整備。商業ベースで運営できる大規模な洋上風力発電所の開発を後押しした。

 BNEFの試算では,2017~2040年の世界のエネルギー投資の32%は風力が占め,電源別ではもっとも多くなる見通し。天候で発電量が変動する弱点はあるものの,原子力・火力の合計28%を上回り,基幹電源のひとつになる。日本でも大規模な洋上風力発電所の建設を促す新法が近く成立する見通し。しかし,発電に向く風が吹く東北や北海道の日本海側は送電線が不足し,専用港の整備も遅れている。本格普及にはまだ時間がかかりそうだ。(引用終わり)

 さて,この記事を引用してみたが,最後でまた “日経風の奇妙な指摘(論評)” が頭をもたげていた。「日本でも大規模な洋上風力発電所の建設を促す新法が近く成立する見通し。しかし,発電に向く風が吹く東北や北海道の日本海側は送電線が不足し,専用港の整備も遅れている」。

 そして「本格普及にはまだ時間がかかりそうだ」というわけであるが,それらの地域では〔東北や北海道以外ではとくに〕既存の電力会社が「送電線の不足」を偽っていた事実もあった。だが,その「送電線の不足」などは,やる気(そのための設備投資意欲)があるのであれば,5年・10年単位の視点で考えればなにも困難はない。

 思うにましてや,「発電に向く風が吹」かない「東北や北海道の日本海側」以外の地域についてであるが,現状までにおいて「風力発電の可能性」,いいかえれば今後における開発・利用の見通しがどうなりうるのかについて具体的に触れないままの報道には,疑問を抱くほかない。「発電に向く風が(十分に)吹く」地域は東北と北海道だけなのか? つぎの図解をみたい。
     風力発電開発可能性地図
  出所)http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1403/20/news016_2.html

 この図解(右側海上風力「賦存量」)については,つぎのように解説されてもいる。
日本周辺風資源図解
  出所)「規制・制度改革に関する分科会 第2ワーキンググループ」(資料3-1),一般社団法人『日本風力発電協会』(http://jwpa.jp)2011年12月16日,13頁。http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2011/energy/111216/item3-1_1.pdf
 こういうことになる。「洋上になると日本中の近海で平均風速が6メートル / 秒を超えて,どの海域でも風力発電を実施できる可能性がある」。そして「そのなかでも北海道から東北の北部,関東の南部,九州の南部から沖縄にかけては,8メートル/秒を上回る海域が広がっている」。すなわち「環境に与える影響を適正なレベルに抑えることができれば,洋上風力発電の拡大余地はきわめて大きい」といった解説が添えられていたのが,前掲の図解であった。

 ② 電力業界における自由競争化が発電コストを下げていく

 1)「〈ビジネス TODAY〉電力・ガス 首都三つどもえ 東電,日ガスに3%出資 自由化2年,消耗戦色濃く」(『日本経済新聞』2018年3月23日朝刊15面「企業総合」)

 旧来の日本における電力業界は,「地域独占企業体制と総括原価方式」によって「国策民営会社としての絶対的に有利な経営管理体制」を保障されてきた。だが,あの「3・11」東日本大震災によって誘発された東電福島第1原発事故が,その国策として擁護されてきた疑似独占体制を破壊していく糸口を提供した。

 あのような世界史にも大きく記録されるような深刻で重大な原発事故を起こさなければ,日本の電力業界は,2050年ころまでには原発による電力供給を「50%以上までその比率を高めていく」計画を抱いていた。これは,率直にいってキチガイざたというほかない原発依存症である原子力村利害関係者の高望みであった。「3・11」が発生していなければ,本気でいまもその路線を突きすすんでいたかもしれない。

 「3・11」以前であっても,本日の話題である風力発電のみならず,ほかの再生エネルギーであってもその開発・利用は,外国では増大傾向を明示していた。にもかかわらず,日本国内ではそうした世界の趨勢にはあえて目をつむっていて,いつも「原発,原発,…… へ!」とひた走るだけのつもりであった。このエネルギー「感」の時代錯誤性が,なんとか「3・11」の発生によって阻止された。たいそうな不幸中の幸いとはいえ,けっして悪くはない好ましい顛末が生じていた。

 さて,この 1)の記事を引用する。

 --東京電力ホールディングス(HD)は〔2018年3月〕22日,液化石油ガス大手の日本瓦斯(日ガス)に出資すると発表した。提携関係を深めて首都圏の都市ガスと電力販売の競争力を高める。首都圏では中部電力と大阪ガス,関西電力と東京ガスも連合を形成している。電力小売り完全自由化から4月で2年。国内最大市場で「電力・ガス連合」による三つどもえの攻防が熱を帯びてきた。
『日本経済新聞』2018年3月23日朝刊電力自由化記事
 「関東エリアのエネルギー市場におけるシェアを拡大,奪回する」。東電HD傘下の小売事業会社,東京電力エナジーパートナー(EP)は〔3月〕22日,出資の狙いをこう説明した。東電EPが30日までに日ガスの発行済み株式の約3%を約65億円で取得する。日ガスに取締役1人を送りこむことでも合意した。

 東電と日ガスは電力ガス販売ですでに提携関係にある。今回の関係強化は共通のライバルの東ガスを意識してのことだ。東ガスは2年前の自由化を受け家庭向け電力販売に参入。ガスの供給先を中心に東電の牙城を切り崩し,顧客数は110万件を突破した。東電と日ガスも1年遅れで全面自由化された家庭向けガス小売りに参入したものの,顧客数は合計25万件弱。系列企業分を含めても60万件と,東ガスに倍近い差を付けられている。

 現在,日ガスは単なる東電の販売代理店のため料金プランなどには手をつけていない。今後は日ガスがより自由な価格設定で電力を売れるようにし,電力とガスのセットで販売量を増やす算段だ。東電の顧客を日ガスに奪われる可能性もあるが,東電幹部は「東ガスにとられるよりはまし」と話す。

 迎え撃つ東ガスも静観はしていない。これまでターゲットとしてきた電力使用量が多い世帯に加え,4月には単身世帯など使用量が少ない世帯に照準を合わせた料金プランを導入。料金を東電より最大で約10%安くする。同じく首都圏の攻略を視野に入れる関西電力との共同の取組みも広げる構えで,「具体策は競争環境が変化するなかで検討していく」(関電の岩根茂樹社長)。

 4月には中部電と大ガスも首都圏で電力ガスの販売を担うCDエナジーダイレクト(東京・中央)を新設。中部電の勝野 哲社長は「首都圏でのシェアを1割程度としたい」という。当面はこの3陣営が競争の軸になるが,もちろん構図が固まったわけではない。JXTGエネルギーなど電力以外の業界からの家庭用ガス小売り参入も本格化するはこれからだ。

 かかった費用を電力料金に上乗せする総括原価方式と地域独占で潤ってきた電力大手。自由化で地域独占が崩れ,料金に自動的に転嫁できるコストも燃料費と送配電にかかわる費用だけになった。料金設定にも競争原理が入り,この2年で家庭向けの単価は平均5%程度下がったとされる。ただ値下げだけの消耗戦は長続きしない。利用実態に応じた多様なプランなど知恵の出し方が重要になる。(引用終わり)

 以上の記事が触れたように,資本主義本来の原理・原則である自由競争体制が,電力業界で本格的に発走しだしている。もっとも,自由競争にまた特有とされる弊害が今後において逆機能的に出ないとはかぎらない。けれども「3・11」以前であれば「原発依存症」,いいかえると「核発電という麻薬中毒な電力生産」に依存する態勢に向けてひたすら突き進んでいた “日本の電力業界の〈悪の体質〉”が,ともかく阻止され,その方向を全面的ではないにせよ転回できている。この点はともかく評価されてよい実績であった。

 ③「〈真相深層〉節電要請『縮む時代』象徴 東電「ネガワット」で逼迫乗り切る 逆転の発想で設備投資絞る」(『日本経済新聞』2018年3月14日朝刊2面「総合1」)

 この記事は,見だしの文句からしてすでに特定の意味が汲みとれる。それは『原発が不要である1点』をめぐる含意である。これをいいかえて,くわしく説明すればこうなる。要するに「電力需要の変動に対して」は,その肝心となる「操業面における技術的な対応:高下への柔軟な変化」が原発の場合は不可能であって,この点で関して原発はまったく「融通が利かない」のである。

 つまり,原発は一度稼働を開始するとなるや,「100%の操業度のままで電力生産=稼働を維持させていく」ほかない。原発のこのいわば,生産技術面に関する「逆説的にも徹底して不器用かつ不利である操業・稼働の硬直性」,一言でいってのければ「原発に特有である〈でくの坊〉ぶり」「小回りが全然利かない技術特性」が見逃せないと難点してあった。

 記事のほうを引用する。この内容は,たしかに原発の不要性を説明していると受けとって,なんら不都合がないし,誤解にもならない。

 --東京電力ホールディングスが〔2018年〕1~2月,事前契約にもとづいて工場などに時限節電をしてもらう「ネガワット取引」を初めて発動した。記録的な寒波による電力需給の逼迫を切り抜けるのに大きな役割を果たした。日本全体の電力需要が頭打ちとなり,電力会社が設備投資を絞る「縮む時代」を象徴する動きだ。
 補注)日本の経済社会全体が縮小の時代に突入しはじめた昨今の実情は,人口統計じたいの絶対的な現象のみならず,高齢社会という人口構成の質的内容の現実的な変化にも表現されている。

 そうした時代を迎えている現状のなかで,原発をどんどん新増設もしておいて,国民たちに電気をじゃんじゃん消費してもらうといった「旧来の電力・浪費観」じたいが(「オール電化」という製品の販売促進がそれであった),ある意味では「原発との日本国・民との無理心中」を示唆するごとき発想にもとづいていた。


 原発の後始末でみると,しかも爆発事故を起こした東電福島第1原発事故現場の問題となれば,これには法外な経費と労力がこれからも,いったいどのくらい多く発生していくのか,いまだにまともには予測がつかないでいる。通常の廃炉工程でも,その金額の水準がどれほどになっていくのかに関していえば,実は相当の覚悟が要求されている。この事実だけは確実に・徐々に判明しつつある。

『日本経済新聞』2018年3月14日朝刊節電要請画像 〔記事に戻る→〕 東京都心に久々の大雪が降った〔2018年〕1月22日。冬の電力需要は通常,朝と夕方に山が来る「フタコブラクダ」型だが,日中も増えつづけた。晴れなら昼間に最大出力となる太陽光発電もこの日はわずか。東電は夕方を乗り切れないと判断し,ネガワット取引に踏み切った。

 1)コスト減の契約
 「18時半から20時まで,電力使用を減らしてください」。自動車エンジン部品メーカーの理研鍛造(前橋市)は同日午後,こんな連絡を受けた。相手はエナジープールジャパン。東電がネガワット取引の実務を委託する仏社の日本法人だ。待機させていたコンプレッサーを1台とめて約100キロワットを節約した。

 理研鍛造は電気代の割引と引きかえに,要請があれば電力使用を減らす契約を東電と結んでいた。「コスト減になるほか,地球環境問題にも貢献できる」(石橋寿生社長)と考えたためだ。〔この〕ネガワット取引は電力需給の逼迫時に発電量を増やすのではなく,需要を減らすという逆転の発想にもとづく。2010年代初めに利用が本格化したフランスでは現在,原子力発電所2基分に相当する200万キロワット程度の枠がある。
 補注)「日本のエネルギー政策」は,従来の原発の比率を50%以上にまで増やしていくつもりだったゆえ,需要をなるべくたくさん喚起させる,つまりどんどん増大させるのが基本方針であった。だが,時代は変わってきた。そうしたエネルギー「感」じたいが時代錯誤の「発電〈観〉」であった点は,いまどきとなって否定しようもない認識になっている。

 日本では政府の音頭で2017年度に始まり,東電のほか中部電力や関西電力,九州電力が予備電力のひとつと位置づけて導入。東電は数百社と契約を結び,合計で約50万キロワットの需要を抑制する態勢をとっていた。小早川智明社長は「ほぼ期待どおりの力を発揮した」と貢献を高く評価する。

 首都圏のピーク時の電力需要は5000万キロワット程度で,ネガワットの影響は1%にも満たない。とはいえ,逼迫時の需給調整はぎりぎりの攻防になる。東電は1月23日から4日連続で他社から電力融通を受けたが,この量は最大200万キロワット。50万キロワットも貴重な戦力だ。
 補注)原発に比重をかけて,それも意識的に大いに依存させておこうとする電力事情に浸ってきた時代にあっては,1日の電力需要の「ピーク時:電力量」(その頂点となる需要の最大時)だけを念頭に置いたか態勢を大前提に置いたうえで,「だから原発の発電能力」が必要不可欠だと強調されてきた。

 しかし,その「ピーク時:電力量」を特定の数時間だけ,それも数%抑えられるだけで,以上の記事からも分かるように,電力需給関係は調整できるし,きびしい状況を克服できる。その気になれば,ちょっとした努力・協力でそのように対応し,実現できる。だが,こうした電力節約方法は,原発が幅を利かせていた時代にはほとんど無視されてきた。

 ここでは,東京電力が保有する火力発電所関係「電力供給設備」(2016年度末現在)に関しては『東京電力ホールディングス」のホームページを参照されたい。とくに「設計熱効率」の比率(%)に注目しておきたい。
 註記)http://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/electricity-supply/thermal-j.html

 東電は結局,2月22日まで5日連続を含めて合計13回,ネガワットを発動した。顧客に負担を強いるため,連続発動は欧州でも「せいぜい3日」(エナジープールジャパン)とされ,東電の緊迫ぶりが浮かび上がる。

 今回の電力需給逼迫は,供給体制にも原因があった。1月中旬,東電が鹿島火力発電所6号機(茨城県)など予備の石油火力2基の稼働準備を始めたところ,不具合で使えなかったのだ。出力は合計200万キロワット。順調に動いていれば他社からの融通はほとんどいらなかった計算だ。

 東電のある関係者は「老人にフルマラソンを走らせるようなもの。転ぶこともある」とあきらめ顔だ。鹿島6号機は1975年に稼働した老朽機。石油火力は高コストのため使用機会が少なくメンテナンスも後回しにされがちだったという。
 補注)ここでの説明は「原発依存型の発電態勢」が逆機能させざるをえない「現実の問題」を指摘してはいるものの,再生エネルギーの開発・利用に水を差そうとする意見ではあるまい。最近では火力発電でも最新式の装置・機械は熱効率が6割を超えている。ところが,こちらの装置・機械の導入は,原発の稼働を優先させる方針のために怠る態勢があって,「3・11」以前はとくに遅延する傾向にあったのが東電の経営姿勢であった。

 2)ニーズ把握成果
 電力需要は人口減や省エネ技術の普及でピークを越え,2016年の電力小売りの完全自由化で価格競争は激しさを増す。電力大手が10年に1度といったまれな需要を想定して予備の発電所を大量にもっていても,かかったコストをすべて電気料金で回収できた「総括原価」の時代は過ぎ去った。東電が福島第1原発の事故処理を抱え,経営再建中という事情もある。

 今回の連続発動は,ネガワット取引が安定供給と効率性の両立という電力業界の課題への解のひとつであることを示した。政府は2030年度までに,ネガワット取引の規模を現在の10倍に相当する1000万キロワット程度まで増やしたい考えだ。日本全体では年900億円程度のコスト削減効果があるとみている。
 補注)それでいて,経済産業省では2030年における原発の依存比率を22~20%に据えおいていて,いまだに執着している。この比率分は,再生エネルギーの開発・利用の導入や活発化に対して阻止する要素にしかなっていない。原発はもともと,ネガワット取引に適合的な発電方式ではない。それにしても,時代錯誤のエネルギー「感」がいつまで経っても捨てきれないでいるのは,関係官庁側の行政姿勢としてきわめて異様な姿である。

 今回の発動で顧客の工場運営などに大きな影響は出なかったようだが,東電には「発動時間帯を限定できないか」「連続発動は避けてほしい」などの声が寄せられた。こうした現場のニーズを把握できたのは今回の発動の成果だ。顧客にとっても,平時の電気代を節約できる利点は大きい。縮む時代の知恵として,電力大手と顧客が二人三脚で仕組を成熟させることが必要となる。(引用終わり)

 この最後の文句「縮む時代の知恵として,電力大手と顧客が二人三脚で仕組を成熟させること」に対してまっこうから逆らっているのが,「原発にまだ依存していきたい」という電力会社側の基本姿勢である。この依存症の問題はもちろん,電力会社が当面する収支問題:営利の観点が深くかかわっている。

 それにしても,たとえば九州電力が「玄海原発3号機 再稼働」に漕ぎつけるまで,なんと7年3ヶ月もの期間を費やしてきたが 註記),その間に「3・11」が発生していたにせよ,原価補償という観点からは,もはや「原発の時代」は終わった,過去の遺物になっているとみなさざるをえない。
 註記)「新規制基準 7基目再稼働 玄海3号機 7年3カ月ぶり」『朝日新聞』2018年3月24日朝刊。

 ④ NOT “under control” である東電福島第1原発事故現場の実態

 『朝日新聞』2018年3月16日朝刊7面(総合)に掲載されている特集記事「東日本大震災7年-復興の途上で-」は,東電福島第1原発事故現場のなかでも,「3号機,覆うだけで2537日 高線量に阻まれ,困難な作業」との見出しで,最後の段落ではこう報告していた。(画面 クリックで 拡大・可 ↓  )
『朝日新聞』2018年3月16日朝刊東電福島現場
 この先も難路が続く。燃料取出しは遠隔操作で2年ほどかかる。格納容器に溶け落ちた燃料(デブリ)の回収はそれからで,その方法はまだ決まってない。福島での単身生活は7年になる。中学生だった息子は大学生になった。〔3号機廃炉作業所長を務める〕岡田〔信哉〕さん〔54歳〕は,「こんなに時間がかかるとは思いもしなかった。できればまた廃炉にかかわっていきたい」と話した。7年間で取り除いたがれきは,25メートルプールで10杯ほど,約3200立方メートルに上った。

 同じ日付の『日本経済新聞』3月16日朝刊は33面「ニュースな科学」で,「福島第1凍土壁完成」したが,「汚染水半減 効果は限定的」であるまま,今後も「巨額の建設・維持費に疑問の声」が上がっていると報じていた。この記事からも最後の段落を引用しておく。
  凍土壁の完成に合わせてまとまった今回の評価結果。汚染水問題の一区切りとみることもできるが,量は減っても日々汚染水が増え続ける現状に変わりはない。30~40年かかるとされる福島第1原発の廃炉作業には,汚染水対策以外にも巨額の費用がかかる。経産省は廃炉費用を現時点で8兆円と見積もるが,今後も膨らむ可能性が高い。国や東電には,廃炉の進捗や対策の効果を国民にわかりやすく説明する責任がある。
 ここでは「福島第1原発の廃炉作業」は「30~40年かかるとされる」と断わられているものの,これはあくまで,暫定的な「仮想の理解」でしかない。つまり「30~40年」で終了させられるというその保障はない。

 『朝日新聞』2018年3月23日朝刊には,「原発避難 7件目賠償判決 6億円 東電に命令」「国の指針上回る傾向」「大半が国の責任認める判決」といいったふうに,見出し・中見出し・小見出しの文句が付けられた記事が報道されていた。

 2011年「3・11」に発生した東電福島第1原発事故は,これからいつになったらその後始末が終了したといえる日が来るのか,皆目不詳である。

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