【過去における外国人労働者問題史になにも学ばぬこの国の外国人労働者政策】

 【世紀は違うが「この道はいつか来た道」?】

 【超高齢少子社会である日本の国家力が急激に衰退していく現状】


 ①「技能実習・特定技能1号の期間,永住要件に算入せず 法務省方針」(『朝日新聞』2018年11月7日朝刊1面)


 この記事を今朝読みびっくりさせられた。要は技能実習生であっても,日本に滞在している期間の意味,いいかれば「存在している事実」じたいを認めない,在留している期間として計算に入れないと宣告している。技能実習生が現状において体のいい単純「労働力」に利用(転用・悪用)されている実態に,お墨付きを与えるような制度を正式に置くという発想である。

 日本は過去(旧大日本帝国の時代)に,植民地出身者たちを国内においてどのように奴隷的に使役してきたかを思いださざるをえなくなる。その〈非常に悪い印象〉がよみがえってくるような「実際に日本に合法的に暮らしている技能実習生」(技能実習・特定技能1号「案」)に対する処遇のしかたである。問題がありすぎる。この点を以下に考えてみたい。つぎにこの記事を参照したい。この記事に添えられていた画像資料を,さきに出してから引用する。
『朝日新聞』2018年11月7日朝刊外国人労働者問題図表

 --外国人労働者の受け入れ拡大のために在留資格が新設予定であることを踏まえ,法務省が永住許可のガイドラインをみなおす方針を固めたことが,関係者の話で分かった。

 現在は永住権を取得するためには日本に10年以上暮らし,このうち5年以上は「就労資格」などをもっていなければならないが,技能実習生や,新たに創設予定の「特定技能1号」で滞在している間はこの5年に含めないなどの方向で検討している。(▼3面=新資格に厳格)

 より技能が熟練した外国人を対象とする「特定技能2号」は,就労資格とみなすことを検討している。ただ,特定技能の在留資格は人手不足が前提で,不足が解消した場合には在留できない可能性もある。就労資格と認める場合でも,こうした特性を踏まえる方向だ。

 出入国管理法は,永住権を取得するために,(1) 素行が善良,(2) 独立の生計を営むに足りる資産や技能がある,(3) 永住が日本の利益に合する,の条件を課している。法務省はガイドjavascript:void(0)ラインを策定し,これらの要件について具体的に規定している。滞在期間の規定は (3) に関するガイドラインとして決めている。(引用終わり)

 日本「国籍」人に以上の「 (1) 素行が善良,(2) 独立の生計を営むに足りる資産や技能がある,(3) 永住が日本の利益に合する」を当てはめて考えてみるのも一考であるが(この要件に外れる日本国籍人がけっこうな数いるはず?),それはともかくとして,いったい,それでいていまさらどうするのだ,と訊いて(反問して)みたくもなる以上の要件3点であった。

 以上の「疑問(?)」についてはもちろん,「日本国籍の有無」が判断を分ける決定的な境目:区分となっているゆえ,別に不思議に思う筋合いなどはないのかもしれない。しかし,それにしても奇妙に感じるほかないのが,つまり「技能実習・特定技能1号の期間」を無化し,その日本在留期間はゼロ年としか認めないという方針そのものの,まったくの無法的な粗雑さである。そして,実に奇妙とうか珍妙でもあると形容するほかない〈立案の具体的な条項〉である。

 したがって,『朝日新聞』もつづけて報道する解説記事(つぎの ② )のなかでは,こう分析・批判している。

 「単純労働」用に外国から調達したい外国人(現に日本社会は「彼ら=戦力」がいなければうまく動かなくなっている事実がある)を,在留資格の次元では彼らが「存在していても」「年数としてはその期間を計算に入れない」といったふうな(彼らは幽霊か!),まことにみみっちくもひたすらに小賢しいだけの〈策術的な方針〉を立てたうえで,この点を実際に法律化しようと,現在開催中の国会にその具体案を提出している。

 だが,それでいて,日本の労働社会が今後どうなっていくのかという肝心な問題点を,少しは事前にまともに検討しているのか? つぎの ② が適切に議論している。

 ②「永住許可,新資格には厳格 来日敬遠される恐れも」(『朝日新聞』2018年11月8日朝刊3面「総合」)


 外国人労働者の受け入れ拡大にあわせて,法務省が永住許可のガイドラインを改定するみとおしとなった。新たな在留資格「特定技能」が永住につながるのではないかという声が,与党内からも出ていることを考慮しての判断だが,要件をあまりにも厳しくすると,日本を敬遠する人が増える可能性も指摘されている。(▼1面参照)
      『日本経済新聞』2018年11月2日夕刊1面単純労働者問題
   出所)これは『日本経済新聞』2018年11月2日夕刊から。
 永住権は入国時の在留資格に関係なく,一定の要件を満たす外国人について法務省が認める仕組だ。許可を受けると「永住者」として滞在が可能になり,参政権などは与えられないものの,就労や在留期間の制限はなくなる。
 補注)戦前・戦中から植民地出身者を中心とする在日外国人(韓国・朝鮮人,台湾・中国人が大部分だった)は,すでに「特別永住」という在留資格をもっていて,いままで,その子孫にも同じに在留資格を与えてきた。元帝国臣民の一員であった彼らの存在ゆえ,当然の処遇であった。

 だが,本当は,敗戦後史のなかで彼らの旧日本国籍を一方的に剥奪していたに過ぎず,その代償の措置を弥縫的にほどこしていた。もちろん「特別永住」者たちに「就労や在留期間の制限はな」く,日本「国籍」人との違いは限りなくない処遇になってはいる。

 だが,元は日本国籍の所有者であった植民地出身者とその子孫から,昭和20年代後半,その国籍を一方的にとりあげたまま,敗戦後73年も経過したいまでもなお,「最近の日本人全体の範疇」のなかでは「すべての平均的な日本人」よりもはるかに日本人らしく「在日する」これらの韓国人3世・4世(以降)に対してでも,いまだに『特別に永住している』者たちだという定義づけ,

 いいかえれば,みえすいた “虚構の概念” を救急絆のように充てつづける格好でもって,「彼らの在留資格」を騙りつづけるためにわざわざ別に「特別永住」者だと規定してきた。特別でもなんでもない在日たちの「在留資格」を,そのように欺瞞の表現を充ててはごまかし続けてきた。

 そこには,歴史的に観て大きな欺瞞と意味のすり替えがなされてきた。前述のごとき「過去の歴史」から「現在の状況」を眺望してみると,在日韓国人たちの在留資格である「特別永住」の問題(その歴史の関連)とどこかで,ごくわずかであっても,間違いなく通底しているかのようにして,今回新しく登場する予定の在留資格である「技能実習・特定技能1号」が控えている。

 敗戦前の大日本帝国時代における植民地出身者も単純労働力として,それも戦時体制期になると,より数多くの者たちが日本国内に引きずりこまれたあげく,半奴隷的な強制労働に従事させられてきた。ところが,こんどは21世紀のいまとなってもなお,実質では戦争中の「彼らの労働実態」に等しい状況を想像せざるをえないのだが,単純労働者の導入を大幅に企図した法律(出入国管理及び難民認定法)の改正(改悪?)が国会で議論されている。

 〔記事に戻る→〕 日本は弁護士や医師,大学教授ら「高度な専門人材」を積極的に受け入れており,永住権申請も可能にしている。現在の法務省のガイドラインは条件のひとつとして,10年以上日本で暮らし,このうち5年以上は「就労資格」などによって在留することを求め,一部の高度人材や日本人の配偶者は特例を設けている。

 一方,技能実習生は在留期間が最長で5年のため,要件を満たすことが想定されず,ガイドラインに記されていない。出入国管理法の改正案で創設予定の新在留資格「特定技能」も規定されていない。

 改正案は技能実習生から特定技能への移行を認めており,「特定技能1号」も最長で5年の在留期間が認められるため,今後は通算10年の在留が可能になる。また,より熟練した人が対象の「特定技能2号」は在留期間が更新制で,さらに長期滞在に道が開ける。

 関係者によると法務省は技能実習と特定技能について「帰国を前提としており,高度人材とは異なる扱いにする必要がある」と判断。技能実習と特定技能1号は「就労資格」とみなさない旨をガイドラインで明記し,2号は要件を厳しくすることを含め,検討中だ。
 補注)このこすっからい〈すり替えの表現〉,つまり「技能実習と特定技能1号」は「就労資格」とみなされず,それゆえ「在留資格」あつかいまでしないとでもいいたげである。だが,これは根本から矛盾した法規定をあえておこなっている。実質的な就労させている(実際にさんざんさせてきているのだが)技能実習生の存在を「就労資格」(在留資格)とみなさないという理屈は,自家撞着の説明にしかなりえないヘンテコな説明である。

 〔11月〕5日の参院予算委員会で,特定技能2号での滞在が永住につながるかを問われた山下貴司法相は「国益に合するかなどをしっかりみたうえで判断する」と答えた。一方,蓮舫・立憲民主参院幹事長は「決めた期間だけ働きに来てもらう,人が余ったら帰ってもらう,家族の帯同は大きく制限,永住権は本当にハードルが高い」と指摘し,「あまりにも虫の良い法案だ」と述べた。(引用終わり)

 要は蓮舫の指摘するとおりであって,この批判「虫の良い法案だ」という点からいえば,今回における出入国管理及び難民認定法の改定は,今後において予見されそうな禍根を,わざわざ好き好んで用意しているかのように映る。

 関連する議論は,本日〔2018年11月7日午前〕の時点までで,すでに相当の分量になる関連記事の報道などによってなされている。それらをすべて紹介し吟味することはできない。ただ,直近(10以内)でも『朝日新聞』の社説が外国人労働者問題を3度もとりあげていたので,これを以下では参照する記述としたい。

 ③「(社説)外国人労働者『人』として受け入れよう」(『朝日新聞』2018年10月29日朝刊)

 この社説は「外国人労働者」を『人』として「受け入れよう〔ではないか〕」と論説していた。ということは,今回国会に提出され議論が始まっている「出入国管理及び難民認定法」の「改悪」案は,外国人労働者でそれも単純労働力向けに受け入れられる予定の人たちは,「人(多分,人間)」としては「想定されていない」かのような待遇を「在留資格」として予定されているとも解釈できる。以下,この社説の引用となる。

 --深刻な人手不足に対処するため,外国人を労働者として広く受け入れる出入国管理法改正案が,この国会に提出される。社会を大きく変える可能性をはらみ,日々の暮らしや人権にも密接にかかわる法案だ。ていねいで広範な議論が欠かせない。

 ところが政府は,是が非でも会期中に成立させ,来〔2019〕年4月から運用を始めるとしている。あまりに性急ではないか。法案の中身も生煮えの感が強く,疑問は尽きない。制定ありきで突き進むようなことをすれば,将来に禍根を残す。
 外国人労働者雇用統計年次推移
   出所)https://diamond.jp/articles/-/163140(画面 クリックで 拡大・可)
 これまで日本は,外国人の単純労働者を認めない立場をとってきた。だが現実は,知識や技能を習得して母国にもち帰ることが目的の「技能実習生」や留学生アルバイトが,単純作業を含むさまざまな現場で働く。外国人労働者は〔約〕128万人と,この5年間で倍増した。
 補注)この人数のうちには,アルバイトを実際にしている留学生約30万人も含まれている。留学生に労働させてもよいとする規定(1週間に28時間まで)は,留学生に対して「学生の本分」は軽視してもよろしい,そういう学業の状態でも許すと決めているのがこの日本国だ,という定義づけを可能にしている。その意味でこの日本は,留学生に対して “トンデモな役割” を担わせている国家である。

 「留学生は労働に従事(就業)するのは全面禁止」が当然の文教政策の一環となるはずのところが,とりわけ単純労働者が全面的に不足している労働経済の実情のなかでは,彼らが貴重な戦力として動員・活用されている。

 たとえば,『PRESIDENT Online』(2018.2.5,https://president.jp/articles/-/24356) に掲載された記事,「偽装留学生に頼る『コンビニ弁当』の実態 借金を返すまで母国にも帰れない」は,こう説明している。全文は引用できないので,冒頭と本文の見出しのみ紹介しておく。
 コンビニ弁当の工場,宅配便の仕分け,ホテルやビルの掃除……。いまこうした夜勤の肉体労働は “偽装留学生” なしにはなりたたない。

 ビジネスを拡大したい日本語学校と人手不足の企業が,ベトナムなどから借金漬けで来日する留学生を食い物にする。いくら働いても借金は減らず。学校から失踪する留学生も多い。ジャーナリストの出井康博氏が外国人労働の歪んだ実態を報告する。

   どれも日本人が嫌がる夜勤の肉体労働ばかり
  「日本に行って働けば簡単に返せる」と来日するが……
   日本語学校が「バブル状態」になる理由
   パスポートや在留カードを学生から取り上げる学校も
   新聞は「技能実習生」ばかりで「留学生」を無視
   借金を返すまでは奴隷のように働くしかない
 今回,国会に提出されている「出入国管理及び難民認定法」は,このあたりによどんでいる「在留資格をめぐる現実的な問題」,いいかえれば,弥縫策でもいいから単純労働者不足の解決をめざす方策を準備したいといったふうな, “やりくり・算段” ばかりが露骨,みえみえであった。

 〔記事「社説」に戻る ↓  〕
 外国人に頼らなければ,もはやこの国はなりたたない。その認識のもと,同じ社会でともに生活する仲間として外国人を受け入れ,遇するべきだ。朝日新聞の社説はそう主張してきた。

 1) 虫のいい政府
 だが政府が進めようとしている政策は,こうした考えとは異なる。根底にある発想は旧態依然のままで,「共生」にほど遠いといわざるをえない。新しい制度の骨格はこうだ。

 「特定技能」という在留資格を設け,一定の技能と日本語能力のある外国人を受け入れる。在留期間は最長5年とし,家族の帯同は認めない。その後,熟練した技能をもつと判断されれば,家族を呼び寄せ,さらに働きつづけることができる。

 後者は永住につながるもので,国際基準に照らせば移民にほかならない。だが安倍首相は,外国人受け入れに消極的な自民党内の声に配慮してか,「移民政策はとらない」と繰り返す。つまり思い描く労働者像は「単身で来日し,決められた期間だけ働き,そのまま帰国してくれる人」ということになる。ずいぶん虫のいい話ではないか。

 日本に人を送り出してきた国や地域も経済発展をとげ,人材の獲得競争が激しくなるなか,日本は「選ばれる存在」ではなくなりつつあるといわれる。働く人にとって魅力のある国に転換しなければならないときなのに,この案では日本離れの傾向を加速させかねない。
 補注)外国人労働者関連の統計としては,まずつぎの記述を紹介しておく。「日本は外国人労働者にどれだけ支えられているか? 知られざる現実と課題」『『DIAMOND online』2018.3.13,https://diamond.jp/articles/-/163140

 そもそも政府は,全体でどれくらいの数の外国人を迎え入れる意思と覚悟があるのか,きわめて重大な問題にもかかわらず,それがはっきりしないことも,混迷を深めている。

 就労を認める業種は,数カ月前は造船や農業など5程度といわれていたが,経済界の要望で最近は14業種が候補にあがる。人手不足の状況をみながら,省令で増やしたりとりやめたりするというが,業界と役所任せでは手前勝手で野放図な運用になる恐れはないだろうか。

 2) 未来像を国民に示せ
 さらに,家族を呼び寄せられる「熟練」の判断基準を,誰がどうやって決めるのか,けがや病気になったさいの社会保障をどう考えているのかなど,疑問はつぎからつぎへとわいてくる。

 人口減が進むなか,いかなる日本の未来像を描き,そこに外国人をどう位置づけようとしているのかを,政府は根拠となるデータとともに,早急に国民に示さなければならない。

 理解しがたいのは,法改正後も技能実習制度が継続されることだ。低賃金で過酷な労働を強いるなど数々の人権問題を引き起こし,外国人労働者政策のゆがみの象徴になってきたにもかかわらず,である。

 昨〔2017〕年,監督を強化する法律がようやく施行された。ところが今〔2018〕年に入って,日立製作所や三菱自動車といった日本を代表する企業で,実習生に単純労働をさせていたことが相次いで発覚し,建前と実態の間に大きな隔たりがあることが,あらためて浮き彫りになっている。

 就労受け入れに正面から扉を開こうとしているいま,あやしげな「裏口」を残しておく必要があるのか。撤廃に向けた論戦を,国会に求める。

 3) 労働力か,人間か
 「われわれは労働力を呼んだ。だが,やってきたのは人間だった」。移民国家スイスの作家マックス・フリッシュの言葉だ。この当然のことを忘れると,労働者側,受け入れ側の双方に不幸な結果をもたらす。
 補注)前段でも触れたように,日本も過去にすでに同じ体験をしてきたのだが,その「歴史の事実」などすっかり忘れてしまったかのような気分で,またもや「失敗の歴史」を反復するためであるかのごとき〈予定〉を組もうとしている。過去の実績に対する見直しも評価もなにもできないまま,またもや同じ轍を踏もうとしている。愚かである。目先のことしかみようとしていない,考えてもいない。

 喜怒哀楽があり,大切な家族がいて,病気もする。たがいに同じ人間だという認識をもてば,どんな法律や制度にすべきか,逆に,してはいけないかの答えも,おのずとみえてこよう。

 外国人労働者は,消費者でもあり,納税者でもある。異なる文化や価値観はしばしば摩擦を引き起こすが,一方で,気づかなかったことを気づかせ,社会をより豊かで多彩なものに変える契機をもたらすだろう。

 外国人問題を考える。それは,日本に生きる私たち自身をみつめなおす営みにつながる。(引用終わり)

 ④「〈社説〉外国人労働者 見切り発車の閣議決定」(『朝日新聞』2018年11月3日朝刊)

 外国人労働者の受け入れを広げるための出入国管理法改正案が,昨日〔11月2日〕閣議決定された。見切り発車とはまさにこのことだ。社会のありようを大きく変える可能性をはらむ政策である。政府はごまかしやいいのがれをやめ,真摯な姿勢で国会審議に向きあわねばならない。

 先立つ与党審査で,生煮えの提案であることが浮き彫りになり,3年後の見直し規定が急遽追加された。むろんこの修正で問題が解決したことにはならない。それは,ここまでの国会でのやりとりからも明らかだ。どんな業種に,どれくらいの数の外国人を迎えようとしているのか。この根本的な問いにすら山下貴司法相は答えられず,「現在精査している」と述べるのがやっとだった。

 安倍首相も同様だ。移民政策への転換ではないのかとの指摘に対し,移民政策を「一定規模の外国人を期限を設けることなく受け入れ,国家を維持する政策」と独自に定義し,それには当たらないと繰り返した。

 1年以上その国に住めば移民と扱うのが国連などでは一般的だが,首相は「違うから違う」というだけだ。そして外国人労働者の支援策については,「検討を進めている」にとどまる。目の前の人手不足に対処するため,とにかく外国人に来てもらうようにする。だがそれ以上のことは説明できない。要はそういう話ではないか。
 補注)この安倍晋三の発言「違うから違う」という文句は,この首相が傲慢かつ専横であり,くわえて「幼稚で暗愚」である政治家の資質を,あらためてあますところなく物語っている。このような世襲3代目のボンクラ政治家が総理大臣を務めているかぎり,この日本はますます急速に,国家の品位・品格だけどころか,政治・経済の全体までもボロボロになるまで破壊されていく。

坂中英徳表紙3 いまから10年以上前に,坂中英德らの著書『移民国家ニッポン-1000万人の移民が日本を救う-』(日本加除出版,2007年)が公表されていたが,この「1千万人の移民政策」という数値の発想に比較していうと,今回における出入国管理及び難民認定法の改定「案」は,泥縄式以前のドタバタ劇的な騒動を国会の場で演じている。
 付記)画像には「Amazon 広告」へのリンクあり。

 鉾木雄哉稿「日本,もはや外国人労働者にとってメリットない国に…見放されて産業が維持困難の危惧」(BUSINESS Journal』2017.09.05,https://biz-journal.jp/2017/09/post_20460.html〔~ 2.html〕)は,こう批判していた。こちらも冒頭と本文見出しのみ紹介しておく。
 都心部のコンビニエンスストアや外食産業では,もはや当たり前となっている外国人の店員。サービス業に限らず,農業や漁業などの一次産業,建設業や製造業などの二次産業の現場でも,外国人労働者の存在が欠かせなくなっている。

 しかし近年,この外国人労働者たちが失踪するケースが相次いでいる。法務省によると,外国人技能実習生の失踪者数は2011年で1534人だったが,15年には過去最多の5803人と4倍弱に増加している。

 なぜ,外国人労働者たちは失踪するのか。その原因は,「外国人技能実習制度」にあるという。

  -1 外国人技能実習制度の仕組みは “裸の王様”
  -2 給料は最低賃金,裏にピンハネ同然の構造
  -3 外国人労働者に見放されれば崩壊する日本
 〔記事に戻る→〕 法案どおりに新たな就労資格が設けられれば,日本で10年以上働く外国人労働者が生まれる。移民と呼ぼうと呼ぶまいと,外国人も,そして受け入れる日本人も,ともに安心して過ごせる未来像を,責任をもって示すのが政府の役目のはずだ。

 だが法案を読み返しても,その姿は一向にみえない。法成立後に,簡単な手続で改廃できる省令などで定める事項が,とても多いためだ。政府や産業界の意向しだいでいかようにもなりうる不安定な受け入れ態勢で,就労先に日本を選ぼうという外国人がどれほどいるのか。そんな疑問もわいてくる。

 与党審査では,治安悪化への懸念をはじめ,「いかに管理するか」という視点からの議論が多かった。相手は生身の人間だという当たりまえの視点が,欠けていたといわざるをえない。

 外国人受け入れの影響は,教育・社会保障・税・自治体行政などさまざまな分野に及び,法務委員会の手にあまる。多面的・多角的な検討ができる場を設け,熟議を重ねる必要がある。今国会での成立ありきで突き進むことは許されない。(引用終わり)

 さてここで,『日刊ゲンダイ』に掲載された記事,以上の議論に関連する見出しをつけたそれを3点挙げておく。
 ※-1「外国人労働者流入で賃金25%減…政府がひた隠す驚愕の論文」2018/11/04 06:00,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240977〔~ 240977/2〕

 ※-2「安倍政権で今も増え続ける徴用工…外国人実習生の奴隷制度」2018/11/01 14:50,更新日:2018/11/01 14:50,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240740

 ※-3   高橋乗宣エコノミスト稿「〈日本経済一歩先の真相〉再び禍根も 奴隷同然の扱いで外国人雇用を拡大させるのか」2018/11/02 06:00,https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/240750
 実際,昨〔2017〕年にスイスのビジネススクールIMDが発表した「世界人材ランキング 2017年版」によると,高度な技術をもつ外国人材が魅力を感じる国・地域は,1位がスイス,2位UAE,3位シンガポールとなっているが,一方,日本は63ヶ国中51位。近隣国の中国(34位)や韓国(48位)にも負け,日本は調査対象のアジア11カ国のなかで最下位となっている。

 すでに,世界中に日本は「魅力のない国」と認知されているのに,そのうえ「人権もない,差別がはびこるひどい国」という印象を押し広げる法案を通そうという。まったく正気の沙汰とは思えないだろう。
 註記)『リテラ』「入管法改正をめぐる安倍政権のデタラメ…外国人の奴隷労働拡大を狙う一方で官邸が法務省の外国人共生対策を潰していた!  」『リテラ』2018年11月5日,
https://lite-ra.com/2018/11/post-4353_3.html

 ⑤「〈社説〉技能実習制度 矛盾の温存は許されぬ」(『朝日新聞』2018年11月7日朝刊)

 外国人労働者の受け入れを拡大するための出入国管理法改正案に対し,さまざまな懸念や疑問が噴きだしている。日本で知識や技能を学び,母国で生かしてもらう技能実習制度と,政府が設けようとしている特定技能資格との関係も,そのひとつだ。外国人を使い勝手のいい労働力ととらえる姿勢が,ここにもみえがくれする。

 新資格は,一定の技能や日本語能力があることを試験で確認できた外国人に与えられる。ただし政府は,3年間の技能実習経験があれば,そうした手続は不要とする方針だ。このまま法案が成立したら,どんな事態が想定されるか。

 政府の考えどおり来〔2019〕年4月に改正法が施行されたとしても,外国にPRする時間は限られる。初年度は4万人程度が新たな資格で働くという試算があるが,技能実習生からの移行組が多くなるとみられる。

 技能実習制度は,長時間労働や賃金の不払い,雇用主による暴力など,数々の人権侵害行為の温床となってきた。国際貢献の看板をかかげながら,安価な労働力の確保策として使われてきたのが現実だ。ここを正さずに新資格と接続させるのは,矛盾の温存以外の何物でもない。

 象徴的な数字が,先日の国会審議で明らかになった。受け入れ先の企業などから失踪した実習生の数が,今年上半期だけで4279人にのぼったという。過去最多だった昨年の7089人を上回る勢いだ。過酷な労働実態が失踪などを生んでいるとして,監督を強化する法律が昨〔2017〕年施行された。にもかかわらず,なぜ改善に向かわないのか。その検証と対策こそを急ぐべきではないか。

 上限5年の実習生から特定技能資格者に移れば,日本で10年間働ける。母国への技術移転という目的はどうなるのか。山下貴司法相は国会で「技に磨きをかけて帰国すれば趣旨はまっとうされる」と答弁したが,いいのがれにしか聞こえない。しかもこの10年間は家族の帯同を禁じられる。あまりに酷な話だ。

 政府は,技能実習制度の反省を踏まえ,特定技能資格者については,同じ職種内で勤務先を変えることを認め,日本人と同等以上の報酬を支払うようにするという。ところが法案にそうした規定はなく,後に省令などで定めるとしている。本気度を疑わざるをえない。

 外国人政策は,経済動向や業界の要望に応じて継ぎはぎを重ねてきた。同じ愚を繰り返してはならない。過去を直視し,筋の通った仕組を整える時だ。(引用終わり)
 
 この国日本は過去になにも学ばず,未来をまともに見通す努力もしないゆえ,必然的に現在においてまさしく,デタラメな出入国管理及び難民認定法の「改悪」をおこなおうとしている。いかにも安倍晋三らしい為政の一環がまたもや披露されている。
 深刻なのは,問題だらけであるにもかかわらず,もはや外国人技能実習制度なしには日本の各産業がサービスの質を担保できなくなっていることだ。

 「日本のように,いたるところに24時間営業のコンビニや飲食店がある先進国は,ほかにありません。農業も漁業も,日本人以外の安価な労働力に頼らざるをえない。こうした現状を日本人がもっと意識して,社会のシステムじたいを変えていかないと,この問題は解決しない」。

 もっとも,その前に「日本が終わる」可能性も否定できない。「各国の経済成長に伴い,外国人が日本に出稼ぎに来るメリットが薄まっている」という。

 日本で就労している中国人は2012年末に11万1000人だったが,2015年には8万9000人に減少している。外国人技能実習制度に支えられている日本は,外国人労働者に見放されてしまえば崩壊の道をたどるかもしれないのだ。
 註記)前掲,鉾木雄哉稿「日本,もはや外国人労働者にとってメリットない国に…見放されて産業が維持困難の危惧」『BUSINESS Journal』2017.09.05。
 ⑥「地方行政の悲鳴」-日本の現状は移民国家である-

   1)「〈天声人語〉アフリカ少年の戸惑い」(『朝日新聞』2018年11月3日朝刊)

 日本人と結婚した母親と一緒に,カメルーンから来たのは4歳のころ。流暢な関西弁を話すようになった星野ルネさんが,マンガ『アフリカ少年が日本で育った結果』で戸惑いの数々を描いている。外国人といえば英語ができると思われる。箸を使うだけで感動される。

  ▼ 運動会の短距離走では,死ぬほど緊張したという。黒人は身体能力が高く,足が速いという「暗黙の期待」がのしかかるからだ。「声を大にしていいたい。黒人全員が超人的に運動神経いいわけではないんです!」

  ▼ 外国にルーツをもつ人が増えている。外国人,〇〇人と枠にはめるのでなく,人として付きあってほしい。当たりまえの願いがマンガから伝わってくる。

  ▼ 外国人労働者の受け入れを拡大する。そんな狙いの出入国管理法改正案が昨日〔11月2日〕,閣議で決まった。労働力ではなく人として受け入れ,付きあっていく構えは,どこまであるのだろう。

  ▼ 滞在は原則5年とし,家族の帯同も認めない。「それは人をロボット扱いしていることになる」と鈴木康友・浜松市長が紙面で述べていた。外国人の多い自治体からみれば日本はすでに移民国家である。それにふさわしい教育や福祉が必要だが,国は腰が引けている。もっともな批判であろう。

  ▼ いまや30代の星野さんは日本にすっかりなじんだらしい。日本人かカメルーン人かと聞かれれば「心臓と脳みそ,どちらか一方を選べといわれてるよう」と答える。そこまで日本に愛着をいだく人が,ひとりでも増えてくれれば。

 2)「〈論 × 論 × 論〉中北浩爾,遠藤 乾,高端正幸」〔から遠藤のみ引用〕」(『朝日新聞』2018年10月28日朝刊33面「文化・文芸」)

◆ 遠藤 乾(北海道大教授)稿「外国人政策,国が地方に丸投げ」

 高橋幸春「外国人比率トップ群馬県大泉町の悲鳴」(『文芸春秋』11月号)は,外国人受け入れの老舗ともいえる群馬県大泉町の現状を伝えている。

 大泉町は人口約4万1800人のうち約7500人(約18%)が日系ブラジル人などの外国人であり,受け入れに四半世紀以上の歴史をもつ。それゆえ,外国人受け入れを加速させる日本の未来図を暗示する。そして,このルポからみてとれるのは国と地方の関係のゆがみである。

 入国管理は国レベルがおこなう。したがって国は一定の責任を負うべきだが,実態は地方への丸投げに近い。教育や納税,社会福祉など多岐にわたる「大泉町の悲鳴」は,将来における日本の地方の悲鳴となるだろう。

 みずからの都合で外国人を受け入れるなら,きちんと人間扱いし,包摂とセットにしなければならない。具体的には,外国人労働者が一定の割合に達した市町村に対し,門戸を開けた国や利益をうる企業が,住宅や教育,医療関連の政策資源を支援すべきではないだろうか。

 英国がEU離脱を決めた国民投票の前,EU諸国からの労働者が集まる英国の地方を訪ねたことがある。政府は緊縮財政下で不足しがちな住宅・教育・医療などの政策資源を地方自治体から削っていた。結果は外国人に町を奪われたという憤慨と,排外主義的な政党への支持の広がりだった。

 そうした政治的急進主義を防ぐためにもいまから手を打つべきだ。大泉町はその必要を理解する上で格好の事例を提供している。(聞き手・編集委員 村山正司)(引用終わり)

 いまの安倍晋三政権が外国人労働政策としてやろうとしているのは,逆コースである。換言すると,外国人労働者の導入・受け入れ策が「自分で自分の首を絞める」ような国家政策に向かおうとしている。

 ヨーロッパ諸国では移民・難民を大幅に受け入れてきた結果,その反動が現象しているが,日本は難民はともかく,実質的に移民を大勢「入れておきながら」,この移民たちが日本社会のなかに溶け込み,より「まともな住民:隣人」となる生活過程を形成させない方策を狙っている。

 だが,そのような画策・弥縫的な外国人労働者の導入・受け入れ政策の方向は,いずれ日本社会のなかに破綻と混乱をもたらし,さらには摩擦と軋轢も発生させる。なにゆえ,これほどまで分かりきっている「外国人労働問題」を,もっと慎重に構えて議論することができないのか。

 いずれにせよ,さすがは「国難としての安倍晋三」が首相としてやること・なすことであり,その負的な面目躍如の「要因」だけがのびのびと,日本の産業社会を闊歩・遊弋している。

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