【小魚は追いまわせるが,大魚にはあしらわれる日本の言論界の愚】

 【安倍晋三の内政・外交がこの国を弱体化させ衰退させている事由に関して】



 ① 金子 勝「天下の逆襲」の安倍晋三風「政治・経済」批判など

 1)「 “やってる感” で糊塗も限界 成果ゼロ
で惨めな『安倍外交』」(『日刊ゲンダイ』2018年10月3日)

   〔2018年〕9月26日の日米首脳会談で,安倍首相はトランプ大統領から農産品を含むすべての関税について2国間交渉入りに押しこまれた。安倍は「FTA(自由貿易協定)とはまったく異なる」と強弁し,限定的なTAG(物品貿易協定)だと主張する。

 だが,共同声明には「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果が生じうるものについても,交渉を開始する」「他の貿易・投資の事項についても交渉をおこなう」とある。どうみてもFTA交渉と変わらない。

 AP通信やロイター通信をはじめとする海外メディアは〈安倍首相がFTAを受け入れた〉〈トランプ大統領は大喜び〉などと報じている。にもかかわらず,NHKをはじめ大手メディアは安倍の主張を垂れ流しているだけだ。

 必死で糊塗するのはなぜか。安倍がトランプを翻意させTPP(環太平洋経済連携協定)に引き戻すと繰り返し,2国間交渉入りを断固否定してきたからだ。 焦点の自動車についても「交渉中の高関税発動を回避すると確認された」と手柄のように伝えられているが,交渉中なら当たりまえのことだ。

 肝心の共同声明には,自動車に高関税をかけないとはどこにも書かれていない。農産品の市場開放に関してもTPP並みの水準で合意したかのようだが,トランプにしてみれば,TPP以上の果実を手に入れなければTPPを離脱した意味がない。自動車とてんびんにかけられ,間違いなくギリギリと詰められるだろう。

 安倍は国際社会でかぎりなく存在感が薄い。日ロ首脳会談ではプーチン大統領から2時間半も待ちぼうけを食らい,東方経済フォーラムの全体会合で「年内に無条件の平和条約締結」をブチ上げられた。国連総会における安倍の一般討論演説は,昨〔2017〕年同様に会場はガラガラ。おまけに演説中に「背後」を「せいご」と読み違える始末。大手メディアが喧伝する「外交の安倍」とやらは,いったいどこへいったのか。

 安倍政権は外交も内政もほぼ成果ゼロなのに,メディアによる “やってる感” キャンペーンはあまりにひどい。大手メディアが真実を伝えなければ「国益」が大きく損なわれるところまできた。国民もそのことに気づかなければいけない。
 註記)https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/238637
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/238637/2

 2)「APEC首脳会議の歴史的決裂の真の敗北者は安倍首相の日本だ」(『天木直人のブログ』2018-11-20,http://kenpo9.com/archives/4445)

 APEC首脳会議が,米中の激しい批判合戦の結果,首脳宣言を採択できずに終わった。それを報じる報道は,あたかも米中双方が悪いといわんばかりだ。しかし,習 近平とペンスの演説を聞きくらべてみればいい。中国を一方的に批判するペンスと,米国第1主義にもとづく保護主義は誤りだと世界に訴える習 近平のどちらが正しいかは一目瞭然だ。

 そもそもトランプがAPEC首脳会議を重視するなら,なぜみずから出席してお得意の暴論を世界に訴えなかったのか。中国は嫌いで米国は好きだといってしまえばそれまでだ。安保と経済は切り離せないといってしまえばそれまでだ。自由貿易主義が間違いだったのだ,と開きなおるのならそれまでだ。

 しかし,少なくともAPECは国際経済の拡大を目的とする会議だ。日本は,GATTに加盟して以来,自由貿易主義の原則を唱え,自由貿易主義からもっとも利益を享受して来た国のはずだ。その日本がいま,米国がみずからつくったGATT(WTO)を,米国の都合で壊し,米国の良いようにルールを変えるといい出した。

 トランプの米国の一方的な方針転換とその強引さが,今度のAPECの決裂の最大の原因であったことは,いまや世界がしっている。本来ならば,日本が率先して決裂を防ぐ役割を果たすべきなのに,安倍首相の出番は,報道をみるかぎり皆無だ。

 なんという情けない日本の首相だろう。誰もいわないから私がいう。こんどのAPEC首脳会談の歴史的決裂の真の敗北者は,安倍首相の日本である。(引用終わり)

 なかんずく「安倍晋三の(得意だいわれている)外交」とは,文字どおり「〔国へ〕〔びにいく〕」ことしか意味しえないでいる。しかも安倍は,日本(自国)の国会開催中であっても,海外出張だと理由をつけては,その間,国外に一時逃亡していた。つまり,国会議事堂における議論の舞台で,安倍自身の「脳細胞の痴的水準」が晒される場面は,なるべく回避していたいのである。

 以上は,安倍晋三が「得意な外交」だという方面における拙腕を批判した「識者の議論」を紹介してみた。つぎは,経済問題に対する “例の聞きあきた” アベノミクス(アホノミクス・ダメノミクス・ウソノミクス・サギノミクス……)に対して,金子 勝が「天下の逆襲」という連載コラムに書きこんでいた批判に聞いてみたい。

  ③「金融危機再来でアベノミクス『見せかけ景気』は剥げ落ちる」(『日刊ゲンダイ』2018年10月17日)

 問題は,ひとたび金融危機が起きれば,国債も株も大量に買いこんでいる日銀には打つ手がないことだ。日銀の資産が巨大な損失に化ければ,最終的には政府が買取機関を設けなければいけなくなるかもしれない。年金の損失も含め,結局は国民にツケが回される。

 トランプ減税で財政が悪化する米国では,FRBが利上げに動くしかない。金利上昇はバブルを崩壊させる。米中貿易戦争による世界経済の減速懸念が拡大している。欧州は英国のEU離脱やイタリアの財政危機などの火種を抱える。こうしたリスクが発現した場合,円安株高依存の日本経済はもろい。そのとき,アベノミクスによる「見せかけの景気」が一気に剥げ落ちるのだ。

 10月11日の世界同時株安で市場に衝撃が走った。株価暴落は今〔2017〕年2月に続いて2度目のことだ。8月10日には,米国の対トルコ経済制裁をきっかけに新興国の通貨暴落が起きた。市場のボラティリティー(株価変動率)がしだいに高まってきている。

 その背後にいるのが,CTAと呼ばれる先物取引専門の投資ファンドだ。情報工学とAIを応用し,株式・債券・商品・為替などの先物に関する膨大なデータを収集し,スパコンを利用してミリ秒単位で売買注文を出すハイ・フリークエンシー・トレーディング(超高速・高頻度取引)という手法で損失を回避する。

 このCTAは経済実態とも株価水準とも連動しない。相場のトレンドだけで動き,上げるときは猛烈に買い上げ,下げるときは真っ先に売り抜くため,オーバーシュートを引き起こしやすい。

 こうしたファンドが日米の金融市場で圧倒的な力をもち,とりわけ歪んだ日本市場を格好の餌食にしている。日銀によるETF投資は21兆円を超え,ETF市場の4分の3を占める。GPIFや共済年金などは2017年度末時点で日本株54兆円,外債74兆円以上を保有する。

 日銀マネーや年金基金が円安株高を誘導する日本市場は,外資系ファンドにとって動きを読みやすく好都合だ。相場が下がれば日銀が買い支えるので売り抜けられるし,空売りを仕かけて大儲けもできる。日本市場は外国人投資家の食い物にされているといっていい。
 註記)https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/239596
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/239596/2

 本ブログ昨日:2018年11月20日の記述は,題名を「日産会長カルロス・ゴーンの悪さ(脱税)は10億円単位,日本国首相安倍晋三の悪政(国費の乱用・無駄遣い)は10兆円単位,たそがれ国日本の悲哀的な実情を政権批判に転じる意識」(http://blog.livedoor.jp/bbgmgt/archives/1073197750.html)としてあった。金子 勝が以上のように解説し批判した「アホノミクスの実体」を,真正面からみすえた議論が必須である。

 ④ 日産会長カルロス・ゴーンを血祭りのように報道して喜ぶかのようなマスコミ報道

 1昨日〔2018年11月19日〕夕刻・晩から報道が開始していた日産会長カルロス・ゴーンの脱税問題事件は,要するに,安倍晋三政権の現状における立場からすると,この事件が永田町に向けて発揮しうる副作用,いいかえると,政局に対する〈煙幕的効果〉が非常に好ましい事象として登場した。安倍が現在まで日本国首相としてその「黒・手腕(?)」を振るいえてきた結果が,どうなっていたかといえば,国民生活のために役立っているものはなにもなかった。

 日産会長カルロス・ゴーンが,私企業体制のなかでワンマン的な経営者ぶりを発揚してきて問題になったとすれば,日本国首相が専制的独善の独りよがりの一国運営をしてきた,これまで6年間の「この国の大負債・国民たちの大損害」は,もはや回復しがたいほどに深刻である。

 おまけに,旧大日本帝国が敗戦という大失策を犯した明治帝政時代に戻りたいだとか,「戦後レジームから脱却」し,敗戦前であれば「坂の雲の上」に向こう側にあったらしい「美しい国」へと向かう「軍国主義路線」を,それも現代アメリカ風帝国主義に下属した〈みっともない現状〉のなかで推進させている,安倍晋三風の「その内政と外交のかたち」(「安保関連法」の施行は2016年3月)は,愚の骨頂どころかまさに「亡国一路」を邁進する以外のなにものでもなかった(過去形でいっておく)。

 1)「日産,法人も立件へ ゴーン会長報酬,過少記載容疑 東京地検特捜部」(『朝日新聞』2018年11月21日朝刊1面)

『朝日新聞』2018年11月21日朝刊日産ゴーン記事 日産自動車の代表取締役会長カルロス・ゴーン容疑者(64歳)が報酬を約50億円過少に申告したとして,金融商品取引法違反容疑で逮捕された事件で,東京地検特捜部が法人としての日産を立件する方向で検討していることがわかった。有価証券報告書への虚偽記載が長期にわたって続いていたとして,特捜部は法人の責任も重視。法人も罰する「両罰規定」の適用に向けて捜査を進める。(▼2面=1強,統治ゆがむ,8面=手腕に陰り,16面=社説,35面=見えた私欲)

 以下につづくこの記事の本文は「住宅購入,数十億円支出か」という小見出しで記事が続くが,引用しない。

 2)「〈時時刻刻〉ゴーン1強,統治ゆがむ『トップ兼任,権限集中しすぎた』」(『朝日新聞』2018年11月21日朝刊2面)

『朝日新聞』2018年11月21日朝刊日産ゴーン記事02 この記事も最初の段落部分のみ引用する。「ゴーン1強」体制という表現に注意したい。

 日産自動車,仏ルノー,三菱自動車の会長として君臨してきたカリスマ経営者,カルロス・ゴーン容疑者(64歳)の突然の逮捕劇は,「ゴーン1強」体制となっていた日産の企業統治の不全を浮き彫りにした。過度な権限集中が招いた剛腕経営者の突然の失脚に,国内外で波紋が広がった。(▼1面参照)

 この記事はこのあとに小見出し2つを出して構成されていた。そのひとつは「側近だった社長,突き放す」,もうひとつ「強力な権力,長すぎた」である。この記事のなかでは,「現在の代表取締役はゴーン,ケリー両容疑者と西川氏の3人」だと指摘されていたが,

 とくに西川(さいかわ)広人社長は,自分自身の責任も重いことは重々承知のうえで,すでに報道されているように,記者会見の場で「ゴーン」と呼び捨てにする態度をみせていた。事後における保身を意識した演技(パフォーマンス)とみなせる小賢しい言動であった。

 したがって,西川広人のことをつぎのように報じるのは,いささかならず「カッコがよすぎる」「買いかぶり」的な誘導であった。〈時時刻刻〉からの引用となるが,つぎに登場する人物は,その「どっちもどっちだ」としか観察できない。

 --ゴーン会長の側近で,ともに逮捕されたグレッグ・ケリー容疑者については「ゴーンの権力を背景に社内をコントロールしてきた」と述べ,「2人が首謀者であることは間違いない」と言い切った。西川氏も,ゴーン会長とともに日産再建に尽力し,その功績が認められて社長に起用された人物。社内では「ゴーンのお気に入りの1人」とみられてきたが,会見では「ゴーン」と呼び捨てにする場面もあり,長年仕えたカリスマ経営者との「決別」を鮮明にした。
 補注)この呼び捨ての点は解せない言動である。演技ではなくて真剣に本気でそう呼んだのであれば,この広川社長は信頼の置ける経営者とはいえそうにない。この点は後段でさらに関説する。

 本日〔11月21日〕『日本経済新聞』「社説」も論題を「私物化で地に落ちたカリスマ経営者」とつけていたが,この表現の方法を真似ていえば,日本国も安倍晋三による「私物化政治」のために,完全に地に落とされた状態になりはてている。

 ところで,ゴーンが日産の社長として「日本」へ乗りこんできたのは,1999年6月のことであった。
 ゴーン氏はいうまでもなく,バブル崩壊後の日本に現われた “黒船経営者” のシンボル的存在。1999年当時,有利子負債2兆円の日産自動車(日産)がルノーの傘下に入ったとき,ルノーがCOO(最高責任執行役)として送りこんできたのがゴーン氏だ。

 仏タイヤメーカーのミシュラン出身の同氏が,ルノー再建のために上級副社長に迎えられたのが1996年。赤字のルノーを黒字転換させて期待に応えたが,その手法は徹底的なリストラだったことから「コストカッター」の異名があった。
 註記)「日産『ゴーン神話』の終焉 最後のコストカットは妻?(上)」『NET IB NEWS』深層WATCH,2010年9月1日 16:41,https://www.data-max.co.jp/2010/09/post_11569.html
 その後,ゴーンは2000年6月に日産自動車の取締役に就任し,さらに2001年6月に日産の最高経営責任者(CEO)に選出された。だが,2005年ころになると,その采配に専制ぶりがめだちはじめていた。経営者のそうした姿に,政治家の安倍晋三の姿を重ねてみればよいのであって,いまにはじまったことではない安倍政権の「専制的独善の独りよがりぶり」は,もとより大企業の経営者ゴーンどころではなく,非常に度の過ぎた「私物化政治」を先行させるばかりであって,完全に〈恣意による為政〉になっていた。

 3)本日〔11月21日・水曜日〕に広告が出されていた週刊誌も,いっせいにゴーンを批判・攻撃する記事を巻頭などにかかげていた。ここでは『日本経済新聞』朝刊8面下に出稿されていた「2誌の広告」を,画像資料で紹介しておく。(画面 クリックで 拡大・可)
『日本経済新聞』2018年11月21日朝刊新潮・文春広告

 いずれも11月29日号の目次である。『週刊新潮』のほうは安倍晋三の「外交批評」を先頭に組み,『週刊文春』のほうはゴーン問題を先頭に組んで,それぞれ編集していた。どっちもどっちであるごとき,この「アベ君」と「ゴーン容疑者」のトップ記事への登場であるが,実際には前者のほうが桁違いに大きな,そして深刻でもある国家的な打撃や実害を与えてきた責任者である。このシンゾウ君に比較するとカルロス君のやってきたことの尺度(スケール)は,まだまだ小さいといえそうである。

 『朝日新聞』本日の「社説」は「ゴーン会長逮捕 企業統治の不全の果て」と題しているが,「西川広人社長はおとといの会見で,『第三者の専門家を入れた委員会を早急に立ち上げ,背景,要因などを掘り下げる』と述べた。必要な措置であり,急いで進めるべきだ。西川社長自身,2005年から副社長を務めてきた立場であり,より客観的な視点での検証が不可欠になる」と指摘されるさい,この西川の立場は「天に唾している点」でいえば,当事者である立場からはけっして逃げ切れていないと評されてよい。

 「日産,集団指導 道険し 西川体制,力量は未知数 次世代技術競争に試練」(『日本経済新聞』2018年11月21日朝刊13面「企業1」)という記事のなかで最初に指摘されていたように,「日産自動車は会長のカルロス・ゴーン容疑者の逮捕を受けて,新たな指導体制の構築が急務になった」わけだが,「キーマンは西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と執行領域ごとに権限を与えられた5人の役員だ」というとらえ方があったとしても,

 「西川社長自身,2005年から副社長を務めてきた立場」から,いったいどこまで客観的に,つまり第3者的な立場から公正性ある判断を示せるかといえば,おのずと限界がある。西川は副社長に就いたとき(2005年)から2018年のいままで,ゴーンに向かい「一言でもいい注進なり直言・苦言を,業務上の意見としていった」ことがあるのか? それがいまとなって “ゴーンの首に鎖が巻かれた” のをみて,突如そのように「ゴーン」と呼び捨てる発言をしていた。

 2005年という時期,ゴーンの立場にどのような変化が生じ出していたのか。すでに前段において言及したことであったが,ゴーンは経営者としての〈個人的な心境〉において,いささかならず奢りを発散しはじめていた。その年に副社長に就任していたこの西川広人が,「今回の事件でゴーンが逮捕された」のを,まるでみきわめたかのように “ゴーン” と呼び捨てにしたのである。

 だが,その姿はみぐるしい。事件になってゴーンが逮捕されたとはいえ,最低限の敬称は付けて語ったところで,なにも不自然なことはない。ところが,意識的にも感じられるのだが,そのように呼び捨てにした点には〈なんらか特定の作為〉が感じられる。

 4)本日〔11月21日〕の『日本経済新聞』「社説」はなぜか,西川広人の肩をもったかのように読める書き方である。引用する。

私物化で地に落ちたカリスマ経営者 ★

『日本経済新聞』2018年11月21日朝刊13面日産ゴーン問題 カリスマ経営者の隠された暗部が明らかになり,世界のビジネス界に驚きが広がっている。日産自動車を再生に導いたカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反の疑いで東京地検に逮捕された。

 名声をほしいままにしたリーダーがなぜ転落したのか。ゴーン会長自身の倫理観や順法精神に欠落があったのは争えないとしても,トップの暴走を防ぐ歯止めを欠いた日産の内部統治体制にも落ち度があったといわざるをえない。
 補注)左側画像資料の中身のうち,CPLO,CPO,CCO,CQOが分かりにくいので,つぎのようにいいかえておく。CPLOは企画・計画担当,CPOは販売・マーケティング担当,CCOは戦略・対策担当,CQOは生産・品質担当というそれぞれの取締役だというふうに,勝手に解釈しておく。

 逮捕容疑は有価証券報告書の虚偽記載で,ゴーン会長の5年間の報酬を実際より約50億円過少申告した疑いがもたれている。くわえて日産の内部調査によると,会社のカネを私的な目的に流用したとされ,パリなどにあるゴーン会長の自宅の購入費用を会社に肩代わりさせたという報道もある。

 一連の疑いが事実なら,せっかくの名経営者も「会社の私物化」の罪を犯したというほかない。日本の企業トップの犯罪は私利私欲によるものは少なく,かつての山一証券が典型だが,組織の体面や存続を優先するあまり,過去の損失を隠蔽するなど一線を越えてしまうケースが多かった。
 補注)安倍晋三君による日本国「私物化」問題の場合,この日本国の政治トップが「私利私欲(政治的野望としてのそれ)に」先走るあまり,現状のごとき悪政・失政を重ねてきている。こちらの問題が示唆するところは,とてつもなく大きい。

 もっとも,双方の問題がじかにかかわるとはいえないものの,ゴーン会長の事件が「日本の政治」にとって,とうてい他人ごととは思えない。安倍晋三君の姿を並べて比較対照してみたくなるのは当然である。

 本ブログ筆者の観方からすると,前段の「日経社説」風になる論説は,ともかく日本人社長西川広人に対しては,かなり甘めの言及になっている。

 〔記事「社説」に戻る→〕 一方,米欧では粉飾決算のすえに破綻した米エンロンのように,経営者の「私腹を肥やす」型の不正が目立つ。ゴーン会長の容疑は後者の系譜に属するだろう。こうしたトップの暴走を防ぐには,2重,3重の監視体制が要るが,日産の実態は逆で,ゴーン会長に権限が集中していた。

 社外取締役は今〔2017〕年春まで1人だけで,独立した指名委員会もない。経営のお目付け役ともいえる筆頭株主は仏ルノーだが,ルノーの最高経営責任者をゴーン会長が兼任しており,監視の目が届くはずもなかった。

 日産の西川広人社長は日産・ルノー連合の舵とりについて「特定の個人への依存から抜け出し,より持続可能なかたちに見直したい」と述べた。トップの不正を防ぐ仕組づくりにくわえ,ゴーン会長という重しがなくなったあとも,三菱自動車を含めた3社連合の枠組を維持できるのか,注目したい。
 補注)この西川のいいぶん「特定の個人への依存から抜け出し,より持続可能なかたち」というものは,いちがいに悪い(「特定の個人への依存」の点が)とはいえない。この点はゴーンというコスト・カッター経営者にも妥当したし,かつての松下幸之助という経営者に妥当した〈評価の観点〉である。「ゴーン憎し」的なセリフに強調点が置かれた「なにか意図的な発言」に聞こえる。この点はつぎの段落(社説本文のなか)に間接的に書かれている。

 ゴーン会長の功績にも触れたい。最後は残念な結果になったとはいえ,その傑出した指導力があったからこそ,破綻寸前だった日産は復活できた。しがらみにとらわれない系列破壊や生産能力の削減など,ゴーン日産の軌跡に私たちが学ぶべき点はなお多い。

 ⑤ 安倍晋三君の総理大臣としての問題


 本日『日本経済新聞』朝刊5面「経済」の記事,「『平成の30年』借金膨張 財制審,消費増税の必要性訴え 来年度予算編成,試金石に」は,2012年度第4四半期から政権の座に就いていた安倍晋三君が,いったいなにゆえにその後もこのように「借金まみれの日本経済」を堅持(?)してきたのかに関する疑問を,あらためて想起させる。

 --財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は〔11月〕20日にまとめた2019年度予算への提言で,2019年10月に確実に消費税率を10%に引き上げるべきだと訴えた。増税対策に万全を期す必要性を訴えつつ,将来の財政膨張にクギを刺した。一方,財政が悪化した平成の30年間を「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求める圧力にあらがえなかった時代」と総括。財制審には悔悟と無力感が漂う。
『日本経済新聞』2018年11月21日朝刊5面経済問題

 「税財政運営にかかわったものすべてに責任がある」。財制審の榊原定征会長(前経団連会長)は20日,提言したあとの記者会見で,財政再建が遠のく現状に無念さをにじませた。「警鐘を鳴らしつづけながらも,このような財政状態に至ってしまったことは反省しなければならない」とも語った。

 財制審は経営者や学者らで構成し,予算編成など財政運営に関して年に2回提言する。年末の予算編成を前に,社会保障費など各分野の改革案を示すとともに,財制審の体制や運営見直しにも意欲を示したが,とり巻く環境は厳しい。

 各府省が2018年8月末までに財務省に出した2019年度予算の概算要求総額は約102.8兆円と過去最大だ。消費増税に備えた経済対策や教育無償化の予算は別枠あつかいで数兆円規模に達する可能性がある。そのため一般会計で初の100兆円超えとなる公算が大きい。

 借金以外に財源の裏づけがないのに歳出が積み上がる財政構造になって久しい。1989年に始まった平成は国の借金が膨れあがった30年間だった。1990年度に大蔵省(現財務省)の悲願だった「赤字国債発行からの脱却」をいったん実現したが,わずか4年で終わった。国の借金はいま900兆円の目前だ。

 経済の混乱に伴う景気対策などが借金大国に導いた面はある。1990年代のバブル崩壊やアジア通貨危機に伴う金融危機,2000年以降もリーマン・ショックや東日本大震災があった。足元では国債発行額は減る傾向にあるが歳入の3割強を借金に頼る異常な状況が続く。
 補注)「国の借金はいま900兆円の目前だ」という「異常な状況が続く」なかで,安倍晋三君は自分の姓を付した経済政策のことを “アベノミクス” などと称させて,ついこのあいだまでは悦にいっていた感もあった。

 だが,後生に記録されるべき歴史(日本政治史および産業経済史)においては,間違いなくみずからすすんで「〈汚名〉の代名詞」になるような「迷珍のブラック名称」を提供してしまった。それでもまだ,愚かな為政をおこないつづけている。

 〔記事に戻る→〕 2018年度の一般会計の歳出総額は1990年度より31.5兆円増えた。その多くは社会保障費で,少子高齢化により20兆円以上も積み上がった。財源は将来世代の借金である赤字国債。2018年度の赤字国債発行額は27.6兆円と歳入の3割近くになる。

 歳入の柱である税収は伸びず,もっとも多かった1990年度の60.1兆円に対し2018年度は59.1兆円をみこむ。予算総額の3分の1を占める社会保障費の見直しは避けられない。
 補注)法人税・所得税をみなおせば,この程度の問題は大半は無理なく起動修正できるわけだが,安倍晋三君はけっしてその方向は採らない。「できることをやらないで,できないことをやろうとする」のが(当然,結果的にはなにもできないのだが),この首相の行動特性である。この点はなにも経済の領域だけでなく,政治の領域でも同じ具合に自分の仕事を反復しつづけてきたのだから,その弊害ぶりというか迷惑さの加減といったら,本当に際限がない。

 もっとも富裕層に対する税対策(節税・脱税や資金逃避の問題)に対する警告が,今回における「東京地検特捜部のゴーン逮捕」には含意されていると観察する向きもみられる。だが,それよりも肝心なのが為政者の政治・経済における失政・失策であって,よほど罪作りな顛末である。権力者の身勝手・恣意が優先されるだけの政治経済体制の欠陥・不首尾は,安倍晋三政権がもっとも典型的に体現させてきた。

 しかし,有権者の反発を恐れる政治の動きは鈍い。残り任期3年の安倍晋三首相は「生涯現役時代」をかかげ,高齢者が働きつづけられる環境整備に力を注ぐ。社会保障の抜本改革は,2019年夏の参院選後になりそうだ。団塊世代が75歳になりはじめる2022年度以降は社会保障費がさらに増す。しかし,財制審が指摘した「税財政運営の要諦は国民の受益と負担の均衡」をめざす絵姿はみえない。
 補注)高齢者は定年退職するのではなく,その後もできるかぎり働きつづけ,年金はなるべく受けとらず,同時にまた,年金の掛け金をその後も「支払いつづけられるように労働をしておれ」というのが,安倍晋三の為政において指示されている「社会保障制度のめざす方向」である。

 高齢者であっても年金のための掛け金を支払えるように働きつづけているのが好ましく,なるべく病気にならないで,できれば “ピンコロでさっさと死んで”くれればいい” くらいにしか考えていない〔に違いあるまい〕。

 30年間で国の借金は5.5倍に増え,債務残高は先進国でも最悪の水準にある。財制審は「平成における過ちを二度と繰り返すことがあってはならず,手をこまねくことは許されない」と強調した。次世代に負担を押しつける悪弊をどう断つか。つぎの時代をにらんだ2019年度の予算編成が試金石になる。(引用終わり)

 この日経記事の署名は「坂口幸裕」とあるが,平成という時代の区切りのなかで,最後の5年間に借金は何%ずつ増えていて,さらに債務残高はいくらになっていったのか,そして,安倍晋三による「アベノミクスの経済政策」がもたらした結果責任は,どのように求められるべきかなど,こららの論点にはいっさい触れない記事を書いていた。結局,これもいわゆる「忖度の記事」か?

 この記者の書いた記事については,読者のほうでいかほどソンタクしてみても,その意図に関して “理解不能の要素” が混ざりこんでいる。安倍晋三「様」自身による経済・財政問題への取組姿勢にあっては要衝であったはずの,いわゆる『アベノミクス』と以上の記事の中身とが,ほとんど関連などないかのように,しかもみごとにその点を回避(迂回?)した論旨になっていた。不・思・議である。

 ⑥【参考記事】

 ※-1「日産ゴーン会長を逮捕した検察の裏!  司法取引を使いたがった特捜部長,ルノーと統合阻止する国策捜査説も」『リテラ』2018.11.21,https://lite-ra.com/2018/11/post-4382.html(~4382_4.html)

 ※-2「『ゴーン一強体制の弊害』を論じるなら『安倍一強体制の犯罪』もしっかり検証しろ!! & ゴーン逮捕を隠れ蓑に入管法審議入りを強行!! & 『安倍内閣が北への軍事行動をするなら支持』(米子市長)」『くろねこの短語』2018年11月21日,http://kuronekonotango.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-ed20.html

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