【2018年に実質賃金は上昇したのか否か,そう簡単には判断できない】

 【にもかかわらず,アベノミクスはウソノミクス的に正規社員層にかかわる現象だけを誇大にとりあげて賃金は上がったといい,それも1点豪華的にいいつのった】

 【だが,それは労働経済全体の趨勢・動向を総合的に判断した意見ではなく,牽強付会だけの勝手なアベ的な解釈】


 ①「2018年実質賃金かさ上げ 不適切統計問題,実態は非正規増え,下落圧力」(『日本経済新聞』2019年2月7日朝刊5面「経済」)


 「毎月勤労統計」の不適切調査を受け,足元の賃上げの評価のむずかしさが一段と鮮明になった。2018年の物価変動の影響を除く実質賃金の伸びが実態よりかさ上げされていたことが発覚。民間の独自試算でも2018年の1人当たり実質賃金は大半がマイナスだ。だが非正規の働き手が増えるなど,全体をならした賃金水準には下落圧力がかかっている。雇用者増や賃上げの効果をすべて否定する議論も乱暴だといえる。
『日本経済新聞』2019年2月7日朝刊5面賃金統計

 連合によると,2018年労使交渉による賃上げ率は全体で2.07%。中小だけでも1.99%と20年ぶりの高水準だった。それでも野党は国会論戦などで2018年1~11月の実質賃金のうち9カ月分で前年を下回ったと主張する。賃上げをしているのに,なぜ1人当たりの実質賃金は下がるのか。

 厚生労働省がもともと公表していたデータで実質賃金が前年を下回るのは6カ月分だった。野党の試算は同じ事業所を比べる「共通事業所」ベースで,物価上昇率を使って名目値から割り戻したものだ。みずほ総合研究所の独自試算でも2018年1~11月のうち8カ月分が前年比マイナスだ。
 補注)以上のなかからあらためて注目点を書き出すと,こうなる。政党・民間企業の研究機関・政府官庁によって,「同じ賃金の問題」がこのように異なっていた。
 ※-1「野党」は「2018年1~11月の実質賃金のうち9カ月分で前年を下回ったと主張」

 ※-2「みずほ総合研究所」は「独自試算で」「2018年1~11月のうち8カ月分が前年比マイナス」

 ※-3「厚生労働省」の観察は「実質賃金が前年を下回るのは6カ月分」
 人びとは,物価の動きと自身の懐事情を勘案しながらモノやサービスを買うかどうか判断するので,実質賃金は消費者心理を分析するうえで重要な指標だ。ここで無視できないのは,1人当たりの実質賃金に低下圧力がかかる構造的な要因だ。

 総務省の労働力調査によると,2018年の女性の就業者数は前年比で3%増え,男性の1%増を上回った。65歳以上の就業者数も2018年は前年比7%増えた。女性や高齢者は非正規で働く人も多い。このため賃上げをしても,1人当たりの賃金にならすと,下落方向への圧力が働きやすくなる。

 その一方で,たとえばこれまで夫だけが働いていた世帯で新たに妻も働くようになれば,家計全体としての所得は増えることが多いだろう。安倍晋三首相が「総雇用者所得は名目も実質もプラスだ」と主張するのも,消費を支える家計全体の購買力を意識したものだ。
 補注)安倍晋三は「『総雇用者所得は名目も実質もプラスだ』と主張するが,経済の実態に関する理解・認識とはだいぶ離れた「観念の立場」から発言するこの首相のいいぶんは,ほとんど信頼が置けない。なにせ「嘘をつく行為」に関してなれば,1冊の本になるくらい,それも解説本が必要になるほど「ウソをつきつづけてきた」この人の発言である。

 この総理大臣は,なにをいっても信用されず「またうそですか」という受けとめ方でしか聞いてもらえない御仁になりはてている。野党でなくとも,政府機関・民間研究機関などがそろって2018年中における実質賃金の上昇は過半〔以上〕の月々でなかったと分析している点があっても,この安倍晋三君の解釈にかかると「かえってウソあつかい」されかねないとなれば,さすがにトンデモ首相のウソというものは,みごとに透徹した意見だと皮肉るほかない。

 〔記事に戻る→〕 総雇用者所得は1人当たり賃金と雇用者数をかけあわせた値だ。2018年1~11月の総雇用者所得は実質で前年比1.0~3.6%増えた。第一生命経済研究所の星野卓也氏は「実質賃金が下がっても,暮らしが悪くなったとはいい切れない」と指摘する。消費動向を判断するため〔には〕,所得の総量を重視するという説明には一定の説得力がある。
 補注)だが,この星野卓也の指摘で不審に感じる点がある。それは「実質賃金じたいが支出される問題の状況,その中身」のありようについてである。消費者側の実際生活においては,ひとつとして「物価水準の “めだたないけれども,じわじわ押し寄せてきている上昇”  」の傾向があり,もうひとつとしては,その裏返し的な現象となり浸透してきた「商品内容の実質的な容量低減〔による値上げ現象」とが,それこそ “合わせ技的” に発揮されて「物価の上昇」に反映(=表現)されている。

 したがって,逆に「実質賃金が下がって(上がっても)も,暮らしが悪くなった(良くなった)とはいい切れない」労働者層もいる,というふうに付けくわえておく余地があった。一般庶民が消費者としてふだんどのような購買行動をしているのか,そのさいスーパーでする買い物の関連で,諸物価がどのような動向を記録しているのかという点は,必らずしもこの関連を意識することなく提示された前段の意見だとしたら,なお問題を残す。

 百円ショップで頻繁に買い物をする消費者の立場に即して考えてみたい。「実質賃金が下がっても(つまり上がらないでも),暮らしが悪くなったとはいい切れない」などといっておくとき,以前であれば当該の消費者がスーパーやホームセンターで買い物をしていた部分を,この百円ショップでの買い物に変えた消費者としての行動変化をとらえて,「この人は」「暮らしが悪くなったとはいい切れない」とまで「いい切る」のは,まさしくいい過ぎである。

 もしかすると「第一生命経済研究所の星野卓也氏」にとって,百ショップでの買い物に日常の消費生活のかなりの部分を依存している庶民の生活実態を,はたして,十全に踏まえた観察・分析をしているのかといったたぐいの疑念を抱きたくもなる。統計資料の分析・判断・解釈に関して「要らぬ疑問」が湧いてくるのであった。

 〔記事に戻る→〕 むろん,低収入の働き手ばかりが増えて1人当たり賃金が伸びなければ,消費全体は勢いづかない。実質賃金がマイナスでも賃上げ効果をすべて否定できないのと同じく,総雇用者所得の増加だけで消費の先行きを安心できるわけではない。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「消費者はみた目の名目賃金でまず賃金動向を実感する。実質にくわえ,名目も合わせてみるべきだ」と,丁寧な議論の必要性を訴える。

 民間エコノミストのあいだでは,独自に賃金動向を分析する試みもある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎 浩氏は日銀のアンケート調査などを使って分析。2018年の賃金は上昇基調とみる。

 第一生命経済研の星野氏は雇用保険のデータから1人当たり賃金を算出し,2017年度の実質値はマイナスだった。2018年度分のデータはまだないが「物価上昇率が鈍く,2018年度の実質賃金は上がっている可能性がある」という。(引用終わり)

 ところで,正規社員層と非正規社員層との関連において,仮に「物価上昇率が鈍く,2018年度の実質賃金は上がっている可能性がある」といわれる場合であっても,たとえば「正規社員で年収600万円の労働者」と「非正規社員で年収250万円の労働者」のあいだでは,その「実質賃金は上がっている可能性」の意味は大きく異なっているし,くわえて「物価上昇率が鈍く」という動向に関してとなればほとんど意味をもたず,影響も微弱である。

 前段でたとえてみたように,「百円ショップ」の利用頻度に関心を向けるとすれば,両者群において一定の差が生じうる可能性もあるとなれば,この「消費者行動の違い」の意味に注目しないでいいわけがない。

 たとえば,年収500万円の世帯(夫か妻のうち片働きで,子ども2人としておく)では,賃金が2%を超えて上昇しないと,現状と同じ水準の実質可処分を維持できないといった「安倍第2次政権下の消費生活」が現実にある。この場合,労働者・サラリーマンたちの世帯における勤労意欲は水を差されることはあっても,その逆〔であるよい〕方向には向かいにくい。

 この夫婦の場合,幼い子どもが2人いて,しかも保育所や幼稚園に通わせる年齢だとしたら,妻のほうがパートに出て稼ぐにしてもこれは大変な負担となる。また,その稼ぎで子ども2人の通園にかかる経費が出せるとしても(おそらく少し足りない),この妻の生活過程における負担は,夫の全面的な協力があったと併せて仮定してみても,生活全体のやりくりには恒常的に過重な負担がかかっている。

 ところが,前段のごとき実例の説明はあくまで,夫婦の片方が正規労働者であることを前提していたゆえ,これが夫婦2人とも非正規労働者だった場合,そしてこの夫婦間にも2人の子どもがいると想定したら,この世帯・家庭の日常生活における「時・空」双方のやりくりは相当にきつい。家計的には「火の車」状態になる可能性が大である。

 現状,日本の労働者全体における平均的な年収(単純平均だと4百数十万円水準)を念頭に置き,これを必要かつ十分に考慮したかたちで,民間研究機関の研究者たちが議論をしているのかと問われたとき,いささかならず疑問をもつほかない。

 ② 玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』慶應義塾大学出版会,2017年4月


玄田有史表紙画像 本書の概要と目次構成は,つぎのとおりである。

 【内容説明】

 働き手にとって最重要な関心事である所得アップが実現しないのは,なぜ? 22名の気鋭が,現代日本の労働市場の構造を驚きと納得の視点から明らかに。
 付記)画像には「Amazon 広告」へのリンクあり。

 【目 次】

  人手不足なのに賃金が上がらない3つの理由
  賃上げについての経営側の考えとその背景
  規制を緩和しても賃金は上がらない-バス運転手の事例から

  今も続いている就職氷河期の影響
  給与の下方硬直性がもたらす上方硬直性
  人材育成力の低下による「分厚い中間層」の崩壊

  人手不足と賃金停滞の並存は経済理論で説明できる
  サーチ=マッチング・モデルと行動経済学から考える賃金停滞
  家計調査等から探る賃金低迷の理由-企業負担の増大

  国際競争がサービス業の賃金を抑えたのか
  賃金が上がらないのは複合的な要因による
  マクロ経済からみる労働需給と賃金の関係

  賃金表の変化から考える賃金が上がりにくい理由
  非正規増加と賃金下方硬直の影響についての理論的考察
  社会学から考える非正規雇用の低賃金とその変容
  賃金は本当に上がっていないのか-擬似パネルによる検証

 以上の目次構成をみただけでも,この玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』2017年4月が論じている目的・意図は 伝わってくる。要は,当面において日本の労働経済問題としての賃金構造とこの水準は,21世紀のこれまで蓄積され構造化してしまった「現状の特性:あり方」を根幹から改革させないことには,日本の産業経済・企業経営そのものの活力をこれからも奪いかねない〈基本的な要因〉を意味している。

 この本に関する「アマゾンのレビュー」が今日(2019年2月7日)までで15件投稿されていた。このなかにはたいそう参考になる指摘をおこなっていた投稿もある。そこで,そのいくつかを紹介しておく。新聞などに報道される関連の記事を読んでも判りにくい「問題の本質や背景」が,これらを一読することでだいぶ明るくみえてくるはずである。15件のうちとくに読むに値すると判断した以下の5件を引用しておく。

 ※-1「Amazonのお客様」-「5つ星のうち 5.0,とても興味深い論文集」2018年3月20日

 完全雇用状態にある現在の日本で賃金が上がらない理由を経済学的に分析するという,ありそうでなかった本。大変興味深く読むことができた。分析方法や用いられている用語には経済学特有のものもあるが,経済学をしらなくてもわからない用語を読み飛ばして,各章末のまとめを読むことで十分に理解することができる。

 現在の日本で賃金が上がらない理由は複合的な理由による。このことは本書を読むことでよく理解できる。新聞・雑誌でよく書かれているのは,低賃金の派遣労働者,高齢者が増えているから,あるいは飲食業など生産性の低いサービス産業の影響が大きいといったことだが,それらだけではないことを本書で理解することができる。

 私がもっとも興味深く読んだのは,第13章の「賃金表の変化から考える賃金が上がりにくい理由」だった。ここでとりあげられている「ゾーン別昇級表」が及ぼす影響はもっと注目されるべき。〔この〕「ゾーン別昇級表」が世の中で普及すればするほど,「春闘で〇%賃上げ」といったことは意味がなくなり,単に臨時金の意味合いで給料が上がるに過ぎないことを論じている。

 新聞でも「ベースアップ」という言葉が踊っているが,賃金表を書きかえる意味でのベースアップでないと意味がない。このあたり,労使で分かっている人はどのくらいいるのだろうか。
 補注)玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』2017年4月は,以前であれば日本的労使関係における賃金問題を理解するための「鍵概念」であった『ベアという〈用語〉』が,現実的には通用しない,役に立たなくなっている事実を指摘している。とくに21世紀に入ってからこの傾向は,「ベアそのもの」として把握すべき賃金問題の動向そのものが希薄になった事実によって指示されている。

 ※-2「koku」-「5つ星のうち 3.0,カギは非正規」2017年8月5日

 人手不足と賃金停滞との関係(パズル)について,16編の論文を集めたものです。必らずしも,全論文でが筋道立って,きれいに並べられているわけではありませんが,パズルを解くカギは,ふたつあるように思われます。

 まず「人手不足なのに賃金が上がらない」のではなく,企業は「不足している人手を,賃金を上げずに募集しようとしている」が,実態に近いのではないでしょうか。

 そして,賃金を上げなくても非正規社員が集まる,という現実があります。典型的な例では,年金支給額に不安をもつ高齢者や,教育費の負担に悩む主婦層が,低賃金でもないよりまし,と応募してきます。

 これらの人達が枯渇したときに,本当の賃金上昇が始まるでしょう(112頁)。
 補注)最近,政府は「出入国管理及び難民認定法」を改正(改悪)し,とくにアジア諸国から外国人労働者を移入させる政策を方向づけていた。実質においては移民政策ともいいかえていいこの外国人管理体制に関する政策変更は,このレビューの理解では「これらの人達が枯渇したときに,本当の賃金上昇が始まる」という『その期限』を,ともかく当面においてだけは先延ばしようとするためであったと理解していい。

 ※-3「松下重悳」-「5つ星のうち 4.0,異なる視点からの16編の貴重な論文集」2017年7月18日

 賃金が上がらないために個人消費が伸びず,GDPが上がらず,税収が思うほど増えないので,財政問題解決は遠く,あまり遠くない将来に財政破綻の懸念が去らない。そういう重要問題に編者と21人の専門家が正面からとりくんだ16編の論文集だ。編者が最後にまとめているので,それから読んだ方が能率的か。

 企業が強欲で内部留保を積み上げているから賃上げに回らないという床屋談義レベルの話を信じている人も多いが,さすがにそんな議論は出てこない。それぞれ説得力のある16編の切り口は鋭い。惜しむらくは,筆者がいずれも学者で企業人が居ないことだ。企業の現場で苦労した人に語らせれば,つぎのようにいうはずだ。

 国際化だけでなく,オートメやコンピュータや人工知能(AI)の発達で,企業内の作業が縮減したり変質したりしている。Goldman Sacks は Trader を一部クビにしてAIに置換した。

 日本の正社員は,難関を突破して入社したときには優秀だったはずだが,終身雇用にかまけて以降の研鑽を怠る人が少なくない。そのため正社員にはもはや給与に値しなくなった稼働不足人口が多い。役立つ人には昇給で報いるが,過剰待遇人口を抱える以上,全体の賃上げはむずかしい。16編もあれば,誰かこういう視点をもってくれても良かったのではないか。

 さはさりながら,賃金が上がらぬ原因を,筆者それぞれの専門的な立場から,深耕しているのは時宜をえて立派だ。改善策の示唆まである。この分野に関心のある読者には必読の書である。

 ※-4「正義の味方」-「5つ星のうち 5.0,多様な観点から問題への答えに迫った力作」2017年6月12日

 本書は,16組の学者が多様な観点から,「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」という問題の回答を考察した本だ。この問題の原因は,ひとつではなく複合的な要因だ。どれも「あぁ確かにそうだね」と思える理由だ。

 一言で総括するなら,「高齢化による社会保障費を捻出するため,国も企業も個人も,負担が増加しているから」となるだろう。こまかく関連する要因を挙げておくと,こう整理できる。
 イ) 採算ギリギリの会社の場合は,非正規雇用を増やすことで人手不足に対応するから。

 ロ)   労働者は,賃金が下がることをひどく嫌う。また,使用者は「賃金の付加逆性」により賃金を上げることをひどく嫌う。労使双方のこうした事情から,賃金は下がりにくく,上がりにくい。

 ハ) 1997年以降の金融危機以降,「ベースアップ」が減り,成果主義が導入されたため。

 ニ) 社会保険料の料率が引き上げられたために,賃金上昇分が食われた。

 ホ) 2010年以降,医療福祉産業が,雇用者数をもっとも伸ばしたが,診療報酬制度や介護報酬制度が価格を抑制したから。

 ヘ) 高齢化により非正規労働力が,供給過剰となったため。

 ト) OJTという教育機会の減少のため。
 ※-5「24KUIPJES」-「5つ星のうち 3.0,この本は経済学者が書いた論文である」2017年8月7日

 この本は経済学者が書いた論文である。著者は全員経済学者か経済研究所などの経済学に関連する者である。そのため,一般人には理解しにくい用語などが使われている。もっと簡単な用語で書けばよいのにと思ってしまうのだが,学者先生方にはこれが当たりまえなのだろう。ひょっとして,わざとむずかしい書き方をして,もったいを付けているのかな?

 んで人手不足なのに賃金が上がらない理由であるが「筆者は,こうした事態が生じた理由は必らずしも単純なものではなく,いくつかの要因が複合的に作用していると考えている」(165頁)と書いている。そんなん当たりまえと思わず本を読みながら突っこみを入れてしまった。失礼!(笑)
 補注)この「批判」は指摘のとおりであるが,そのあたりは前後する文節の展開をふまえたつもりで,多分〔と思われるが〕その執筆者は書いているのである。ただし,専門外の人びとに読んでもらうための工夫・配慮がこの本には「まったくといっていいほどない」。この点は確かに強く感じる特徴であった。研究者であっても専門外の人たちには読みにくい。ともかく,もう一工夫が必要と思われるが,編者の玄田有史の立場からすれば,これだけの「関連する論稿」を集めるだけでも苦労だったと思われる。

 いろいろとその複合的な理由が解析されていて,考えさせられる内容となっていました。ただ,私は人手不足なのに賃金が上がらない最大の理由は,外国人労働者の存在が大きいと思っているのですが,そのことに関しての言及は一言もありませんでした。
 補注)この「外国人労働者」問題に関する指摘は,※-2ですでに言及したところであったが,このように玄田有史の編集では「外国人労働者の存在」「に関しての言及は一言もありません」と指摘されている。このとおりであった。

 いま日本には低賃金で働く外国人労働者がたくさんおり,それらはコンビニエンスストアー,工場,インド料理店やレストランなどの飲食,介護現場などでみることができる。当然安い賃金で働く外国人労働者がいれば日本人の賃金も上がらないわけで次回作があるのであれば,そこんところも解説してほしいと思いました。

 いろいろとウダウダと書きましたが,読んで損はない本だとは思います。

 ③ 関連の記述

 以上,① と ② で言及してきた最近における日本の賃金問題「動向」については,つぎの論稿を参照することを勧めておきたい。玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会)は,2017年4月に発行されており,すでにいくつも批評した論稿が公表されている。ここで挙げるのは以下の3点のみである。

 ただし,はじめの☆-1は「玄田自身の論稿」(同書に関する編者としての解説)であり,つづくふたつが「他者が玄田のこの本をとりあげ議論した論稿」(専門家による論評)である。② の記述に不満を感じる向きには,以下の専門家による批評なども読んでほしい。
 ☆-1 玄田有史「人手不足なのに賃金が上がらない本当の理由とは」『nippon.com』 2017.8.2,⇒ https://www.nippon.com/ja/currents/d00342/#

 ☆-2 早川英男「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか:書評と考察」『富士通総研』2017年6月22日,⇒ http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/column/opinion/2017/2017-6-1.html

 ☆-3 河野龍太郎「コラム:人手不足でも賃金停滞,日本最大の謎」『REUTER』2017年6月6日 / 11:27,⇒ https://jp.reuters.com/article/column-ryutaro-kono-idJPKBN18W0IT
 ------------------------------
    ※ 以下の画像には「Amazon 広告」へのリンクあり ※