【「3・11」から8年が経ち,原発の無用性・有害性のみがめだつ時代になった】

 【原発事故の後遺症は日本国の脊柱に多大な損傷を与えてきている】

 【2020東京オリンピック開催で少しでも原発による自然・人工災害を忘れていたい歴史健忘症のうかつ】


 ①「福島原発,廃炉なお難路  デブリ接触も全容見えず」(『日本経済新聞』2019年2月28日朝刊13面「特集」)
『日本経済新聞』2019年2月28日朝刊原発2

 東京電力福島第1原子力発電所事故からもうすぐ8年となる。炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機では溶け落ちた核燃料(デブリ)のとり出しに向けた調査が進む。2月にはデブリに直接触れる調査を初めて実施した。使用済み核燃料の取り出しも3月から始まる。ただ,いずれも廃炉に向けた入り口に過ぎず,事故の全容解明にはほど遠い。30~40年かかるとされる廃炉の道のりは険しい。
 補注)ハナから「鼻白む実例」(通常の廃炉問題に関する話題)を指摘しておくが,イギリスではある原発が廃炉にしてから30年が経過した時点で,残りの作業を終える見通しについて「あと70年かかる」と展望されていた。したがってそうなると,大事故を発生させていた東電福島原発事故現場について,あと「30~40年かかるとされる廃炉の道のりは険しい」などと表現するのは,呑気さにもほどがある。

 しかも通常の廃炉工程だけでなく,それ以前に爆発事故を起こした原子炉の「圧力容器と格納容器」に対する作業にとりかかろうとしているが,現在においてはまだ「その調査作業の最中である」というに過ぎない。「通常の廃炉」に関する作業工程は,なにも着手できていない。その意味では,ロシア(旧ソ連)のチェルノブイリ原発事故現場が石棺化され,すでに2代目の石棺までも建築されていて,その事故現場の惨状を覆いかくた(封印した)ままの状態にある事実を思いおこすとき,いったい,東電福島原発事故現場ではこれからなにがなされるというのか,実際になにができるというのかを考えただけでも,非常な困難・労苦を予想するだけである。。
『日本経済新聞』2019年2月28日朝刊原発1

 〔2019年〕2月13日の午前7時すぎ,2本の指をもった調査装置が2号機の原子炉格納容器のなかに差しこまれ,数センチから8センチ程度の小石のような堆積物をつかみ,もち上げることに成功した。東電は記者会見で「デブリとり出しがなり立つひとつの証明になった」と成果をかみしめた。
 補注)この報告はたしかに喜べる〈成果〉である。しかし,「数センチから8センチ程度の小石のような堆積物をつかみ,もち上げることに成功した」といっても,ここに至るまでいったい何年と何ヶ月の年月が費やされてきたのか。経済産業省資源エネルギー庁のホームページには,2017年10月時点における関連の解説として,つぎのように状況説明をおこなっていた。
2017年経済産業省資源エネルギー庁中長期ロードマップの時期区分
 これは,経済産業省資源エネルギー庁の「2017-10-24 福島第1原発廃炉に向けたロードマップ:燃料デブリ取り出しの今」という文章のなかにかかげられていた図解であった。

 〔記事に戻る→〕 この「第3期 廃炉完了までの期間」は「30~40年後」と記入されているが,より正確には「30~40年後・以上(もしかすると無限大に近い)」であり,まさしく「予定は未定にして確定にあらず」の典型・実例である。

 結局,つぎのようにも説明している。要するにこのたぐいの予定は,いくらでも未来に向けて長期化する可能性が大であると,いまから宣言というか, “予防線を張っている” かのような文言になっている。
          ★ 廃炉作業はなぜ難しいのか ★

 福島第1原発の原子炉建屋のなかは,高い放射性物質濃度によって,人が立ち入って作業することが困難な状態にあり,内部の状況を正確かつ詳細に把握することがむずかしくなっています。

 このような環境で廃炉をおこなわなければならない福島第1原発の廃炉作業は,これまで世界で経験のない困難なとり組みであり,すべての状況が把握できる通常の工事などに比べて,不確実性を内在したプロジェクトであるといえます。

 しかし,たとえそうした不確実性があったとしても,安全に,確実に,万が一の出来事にも対処できるように,また現場で働く人びとに負荷がかからないように,慎重に作業を進める必要があります。

 そこで,この中長期ロードマップは,策定時点で新しく判明した現場の状況や最新の知見,研究開発成果などを反映するなど,その時その時の状況に最適化されたものにすべく,適宜見直しがおこなわれています。
 註記)http://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/fukushima/roadmap.html
『日本経済新聞』2019年2月28日朝刊原発3 〔記事に戻る→〕 廃炉は原子炉建屋内から核燃料をとり出し,施設を解体すること。福島第1原発はデブリのとり出しが廃炉の最難関だ。1~3号機は推定で約900トンのデブリがあるとされるが,これまで情報があるのはほんの一部。〔2月〕13日の調査も平べったい堆積物はもち上がらなかった。

 1986年に事故を起こした旧ソ連のチェルノブイリ原発はデブリのとり出しを断念。建屋ごとコンクリートで覆う「石棺」方式を採用した。いまも放射線量が高いためで,福島第1原発も環境はきびしく,とり出しは困難をきわめる。〔最終的に〕「すべてのデブリをとり出すのはむずかしい」とみる専門家もいる。
 補注)この「石棺」方式による事故現場の閉鎖・密封のやり方(ネコババ式の始末の要領)は,日本の場合,原発事故の被災者たちの猛反発があって,当初から採用できない方式に決まっていた。原子力工学の専門家たち,とくに原発推進派である彼らにおても当然のように,この石棺による事故現場の処理をもって,当面の難題を片付ける構想があった様子がうかがえた。だが,猛反対を受けて立ち消えになっていた。

 そのために東電とこれを支援する国家政権側は,国民の血税を多額に費やしながら原発事故の後始末作業を,いまの方式(予定)で実施してはいるものの,はたして,1世紀もの長い時間をかけてでも最終的に,原発事故現場を更地に戻せるかといえば,いまの時点でそれを確実に請け負える専門家はいない。「事故現場」の後始末としての片付け作業から区分されるつぎの「廃炉工程」に,いつ入ったといえるか時期が来るのかの判断についてさえ,いまのところは確たる考えを示しえないでいる。

 政府と東電は今回の調査結果を踏まえ,2019年度内に1~3号機のうち,最初にデブリをとり出す号機を決める。2021年内のとり出し開始に向け,とり出し方法も具体化する。
 補注)以上でも記事の引用中に本ブログ筆者は,青字でゴタゴタとたくさん批評を入れているが,チェルノブイリ原発事故の場合,核爆発事故を起こした原子炉は1基だけであったのに対して,福島原発事故現場は2基あった。事故じたいの規模を比較してウンヌンする以前に,この4基全部が原子炉とその建屋が爆発事故(水素爆発も含めて)などで破壊された点は(3号機はMOXを燃料に使用していたため「核爆発」になってもいた),それこそ未曾有の大事故であったと形容するほかない。

 一方,使用済み核燃料プールに残る燃料の搬出は遅れている。東電は〔2019年〕3月末,事故時に運転していた3基のうち,まず3号機から搬出を始める。廃炉工程表では「2018年度中ごろ」とされていたが,燃料を運ぶクレーンのトラブルなどで延期を繰り返した。作業員の被曝を最小限に抑え,1,2号機でも2023年度ごろの開始めざす。
 補注)「使用済み核燃料」の事故現場からの搬出は,デブリのとり出しよりもはるかに難度の低い作業であっても,このようにベタ遅れになっている実情が報告されている。これだけでも事故発生から10年以上の時間が経過してから「開始」を「めざす(めざした)」と,正直に表現されている。ここまでの記事の「昧読」だけでも,それもとくに爆発事故を起こした原発の後始末(廃炉工程に入る以前の段階)の工事(後始末)ですら,このように非常な困難を背負いながらの作業である。

 汚染水やがれきなど「ごみ」の問題も影を落とす。「原発構外には運び出せない。このスペースはすべてごみ置き場になる」。東電の阿部賢治グループマネージャーは構内地図の半分近い範囲を指さし困り顔を浮かべた。
 補注)いわゆる通常の産業廃棄物には仲間入りができない “放射能汚染ゴミ” の処分は,それこそ「処分の困る(困りはてる)シロモノ」である。とくに,すなわち「安倍晋三が “under control” である」などと,一世一代の大嘘をついていた地下汚染水の浄化・処理も,併せて難題を突きつけきた。

 原子炉を冷やす水が汚染水となり,1日100トン前後ずつ増える。浄化しても放射性物質のトリチウムは残り,風評被害への配慮から構内のタンクにためつづける。原子力規制委員会などは薄めて海に流すのが合理的とするが,処分方法は決まらない。
 補注)「1日100トン」(それも汚染水)といったら尋常ではない分量(大量)である。とっかかりから,1ヶ月や1年の単位での話ではなかった。1ヶ月で3万トン,1年で39万トン……。「トリチウム」の処分方法についても周辺の漁業者からは猛反対が巻き起こっていた。このトリチウムのあつかいについては解決できるめどが立っていない。

 津波や水素爆発で生じたがれきや廃炉作業で汚染されたごみも日々発生する。東電の予測では,発生量は2018年3月時点の約43万立方メートルから2030年には約77万立方メートルまで増えるみこみ。減容処理や処分方法の検討が急務だ。(引用終わり)

 原発は《悪魔の火》を燃料に使い,しかも単に熱湯を沸かし,これでタービンに送って発電をさせる装置であるが,この火力燃料の後始末がたいそうな難儀を強いられる。通常の廃炉工程であってもたいそう面倒な作業が要求されているのに,さらに事故を起こしてしまった原発の周囲にはくわえて,

 その悪魔「性」に由来する有毒な害悪が,時間的にも空間的にも長期的にわたり,かつ広範囲に多くばらまかれている。この事実はチェルノブイリ原発事故(1979年3月28日),東電福島原発事故(2011年3月11日)が実証した。

 昔の「覚せい剤やめますか?  それとも人間やめますか?」という標語をもじり,それでも「原発をやりますか?  それとも人類をやめますか?」と,21世紀風に問わねばなるまい。

 ② 遅々としか進まない「東電福島原発事故現場」の後始末に関する報道の仕方

 『日本経済新聞』はかつて「原発推進派」である「財界・経済団体」を代弁する立場で,原発問題を報道してきた。いまでは,それはともかくとして,先月〔2019年2月〕下旬(『日本経済新聞』2019年2月25日朝刊13面「科学技術」)には,つぎの解説記事を掲載していた。その見出しは「デブリ,取り出しへ一歩 福島第1で初の接触調査 量や分布,全容解明は遠く」とつけられているが,読んだだけでも感じる1点は,われわれの気が遠くなるような内容である。

 a) 東京電力福島第1原子力発電所事故からまもなく8年。東電は〔2月〕13日,炉心溶融(メルトダウン)を起こして原子炉の底に溶け落ちた核燃料(デブリ)に接触する調査を初めて実施した。デブリとみられる石ころのような堆積物をもちち上げることに成功し,少なくとも一部はとり出せる見通しが立った。だが,デブリの全容はいまだつかめておらず,廃炉の先行きは不透明だ。
『日本経済新聞』2019年2月25日朝刊原発表
 「まだまだ序盤とはいえ,(堆積物に)触れたことは大きい」。原子力規制委員会の更田豊志委員長は20日の定例記者会見で,東電の接触調査に一定の評価を示した。

 東電は〔2月〕13日の調査で2号機の原子炉格納容器のなかに専用装置を入れ,デブリとみられる小石状の堆積物をつかんでもち上げた。ただ,つかめない堆積物もあった。実験やシミュレーション(模擬実験)からデブリの多様さは想定されていたが,とり出しには複数の工法が必要であることがあらためて浮き彫りとなった。

 東電は2019年度に2号機や1号機から少量のデブリをサンプルとしてとり出す計画だ。1~3号機のうち最初にデブリを本格的にとり出す号機を2019年度中に決め,2021年の作業開始をめざす。

 各号機のデブリの量や分布は詳しく分かっていない。今回は比較的損傷の小さい2号機で堆積物をつかめた。だが3号機では2017年の調査でそれらしき堆積物を確認した程度。1号機ではまったく存在を確認できていない。格納容器に穴が開き,溶け落ちた燃料はその下のコンクリートと反応して塊になったと考えられている。
 補注)つまり1号機では溶融して塊(いわゆる「象の足」)になっているはずのデブリの状態(所在や態様)からして,なにも分かっていないというのだから,なんと形容したらいいのか,まことに頼りない現状である。東電福島原発事故から8年になるというのに,爆発事故をおこした原子炉内部の状態が,まだこのように「全然把握できていない」ものもあるという。

 シミュレーションでは2号機だけで推定189~390トンと,1979年に起きた米スリーマイル島原発事故の約130トンを上回る。1,3号機を含む全体では推定609~1141トンとさらに膨大だ。
 補注)この推定量,3基分のデブリの総量に関する推定値が,はたしてこのままに信じていいのか疑問なしとしえない。一定の根拠があっての推量と受けとれるが,そもそも「推定609~1141トン」の範囲にあるという具合に「ほぼ2倍もの幅があるこの総量の推定」になっている。なかんずく,分からないことだらけである事故現場(溶融した原子炉圧力容器・格納容器)のなかの様子なのである。

 日本原子力学会廃炉検討委員長の宮野 広・法政大学客員教授は「格納容器内部だけでなく全体でデブリや汚染の状況を詳細に調査し,作業の優先順位を決めることが重要。拙速に進めることを心配している」と話す。調査は遅々としている。内部調査は初歩的なものを含めても,1~3号機合わせて10回程度にとどまる。東電はつぎの調査は1号機で2019年度上期に計画するが,どこまで進展するのかは読めない。
 補注)前後する記事の内容は「分からないことがたくさんある」という事実に関する説明であって,今後における見通し:展望に関する “まともな示唆” は全然えられないままである。

 調査が十分でない現状で用意できることは限られる。原発メーカーなどで構成する国際廃炉研究開発機構(IRID)は,現状ではとり出し技術の開発計画に大きな変更はないとの考えだ。サンプル採取に向け,「つかみ取る」「すくい取る」「粘着させる」といった複数手法の機器開発を進めている。
 補注)多少茶化した表現になるが,「ドジョウすくい」ではあるまいに,原発事故現場における後始末のための作業の実際は,このような「つかみ取る」「すくい取る」「粘着させる」といったなどの表現が使われる対象であるとしたら,まじめに聞いていてもなにか “とりとめもなく裏さみしい気分” に落ちこむこと必定である。

 東電は日本原子力研究開発機構と協力し,福島第1原発の敷地内にデブリを分析する研究施設の建設を計画している。デブリが含む放射性物質の組成や硬さといった性質,再び臨界を起こす可能性などの検証に活用する。
 補注)この段落の記述は「原発事故が発生してしまっている現在」において,その後始末作業は完全に『泥縄』(「泥棒を捕らえて縄をなう」対処)の方法であった。泥棒ならばそれでも,いつかは捕まえることはできよう。だが,相手が放射能の害悪だとなっていて,現在までのところ,ほとんど翻弄されつづけてきたと受けとめるほかない。

 今回の調査で東電は放射線量などを測定しており,データを近く公表する。東京都市大学の高木直行教授は放射線量に注目する。溶融燃料からは放射性セシウムが揮発し,格納容器や圧力容器を汚染しているとみられる。デブリに接近したときの放射線量が相対的に高くないと分かれば「強烈な放射線源がデブリの他にあるとはっきりする」(高木教授)。
 補注)この段落はいったいなにに触れようとしているのか,なにをいいたいのか理解しにくい。「強烈な放射線源がデブリの他にあるとは」どういう意味か? この記事を書いた記者はきちんと理解できたうえで,文章をまとめていたのか? その「強烈な放射線源」とは,溶融した原子炉(圧力容器)から落下した「核燃焼そのもの」であり,デブリのほうではない点はすぐに理解できるはずである。

 仮に大部分のデブリをとり出せても,高線量の構造物の解体という難題が残る。廃炉は30~40年かけて進め,8兆円が必要と試算されるが,作業が滞れば期間や費用は一段と膨張する懸念がある。(引用終わり)

  要するに「廃炉は30~40年かけて進め,8兆円が必要と試算される」と,現時点ではその年数と経費が予想・概算されている。ただし「時間と経費」がこの範囲内で収まるとはいえず,いまから期待することができない相談である。その年数・金額は大幅に長期化し増大すると覚悟しておいたほうが妥当である。結局。そのように “なんらかの悲観的な予測” をするほかないのは,何十年先に事態がどうなるかいついて,現段階ではつまるところ「よく分からない」の一言に尽きるからである。

 ③「原発巡る発言『表現不適切』 中西・経団連会長が釈明」(『朝日新聞』2019年2月26日朝刊7面「経済」)

 経団連の中西宏明会長は,原発と原爆が混同されて原発の再稼働が進まないと〔2月〕14日に発言したことについて「表現として不適切だった」と,25日の定例会見で訂正した。地元自治体から「適切ではない」との声が出たことを受けた。

 中西会長は中部電力浜岡原発(静岡県)を視察したとき,記者から「再稼働への理解が深まっていない」と問われ,「原発と原爆が結びついている人に『違う』ということはむずかしい」と答えた。これに対して,地元の柳沢重夫・御前崎市長が18日の会見で「地元住民は十分,分かっている」と話した。

 中西会長は「(地元で理解している人に対し)ちょっと失礼だった」と反省の弁も口にした。

 原発全般の再稼働に反対する民間団体,原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟から公開討論を申しこまれ,断わったことについては「反原発を通す団体で議論にならない。水と油だ」としたうえで,経団連として今春,エネルギー政策に関する提言をまとめることを優先する考えを強調した。(引用終わり)

 中西宏明経団連会長のこの話,「原発と原爆が結びついている人に『違う』ということはむずかしい」といった理解は,けっして間違えてはいない。原発も原爆もその基本原理は同じであり,ただその利用の仕方が異なるだけである。中西のこの発言そのものは,けっしてデタラメではなかった要素を含んでいた。その根拠をつぎの ④ の文章を引用して説明したい。

 ④『原爆から原発へ 原発から原爆へ』(2006年7月6日 1:35:18)と題した文章を,少し長いが全文紹介しておく。

 1)原子爆弾と原子力発電所はいたる所で何重にも重なりあっている。
 現在日本で稼働中のすべての発電炉は,ヒロシマ原爆の材料となったウラン235の分裂連鎖反応を用いており,広島市民の上に降り注いだのと同じ死の灰を毎日作り出している。すべての発電炉のなかでは死の灰とともに,ナガサキ原爆の材料となったプルトニウム239が毎日作り出されている。もともと世界で最初の原子炉は,ナガサキ原爆の材料をうるために運転されたのであった。世界最初の再処理工場が運転されたのも,その目的のためであったことはいうまでもない。
 補注)いうまでもないが,アメリカ大統領ドワイト・D・アイゼンハワーが1953年12月8日,ニューヨークの国際連合総会でおこなった演説で「平和のための原子力(Atoms for Peace)という文句を,原子力に対する新しい考え方として提唱したことから,別名でいう「核の平和利用」として原子力発電が始まった。

 第2次世界大戦末期の1945年8月,アメリカが広島と長崎に原子爆弾を投下し,約10万6000人の死者と約11万人の負傷者を出した。その後も1948年,アメリカが太平洋で核実験をおこなった。1949年,ソ連が核開発能力を備えるに至った事実を受けて,アメリカはより強力な水素爆弾の開発を進め,1952年11月に爆発実験を成功させた。

 1953年1月に大統領に就任したアイゼンハワーは,こうした東西冷戦の中での核開発競争が急速に進むことで核戦争の危険性が現実化しつつあるとの危機感を抱き,国連総会において,こうした危険性を訴えようとした。そのなかで関連させて,つぎのようにも提案した。
 
 国連のもとに国際的な原子力機関を設立することを提案し,とくに電力の乏しい地域に電力を供給することが原子力機関の目的のひとつになるとした。それにかかわるべき利害関係国にはソ連も含まれると明示したうえで,アメリカには協力の用意があると述べた。

 アイゼンハワーのこの演説を契機として,国際原子力機関 (IAEA) 設立の気運が高まり,1954年,国連でIAEA憲章草案のための協議が開始され,1956年,IAEA憲章採択会議でIAEA憲章草案が採択された(IAEAは1957年7月29日発足)。また,2003年にはアイゼンハワー主導による「原子力の平和利用」50周年を記念し,世界原子力大学が設立された。
 註記)以上,ウィキペディア参照し,記述。


 この冷戦時代の異形児として生まれたひとつの電源が原子力発電であった。21世紀のいまとなっては,「再生可能エネルギーの開発・利用」を妨害する原発の害悪・弊害が目に余るほどにまでなっている。その悪魔的といえる原発の害毒性は,実際に大事故を起こしてきた結果を介して明白になった。

 結局,原爆は初めから破壊を目的にする兵器として原子力を使い,原発は電気を発生させるためにそのエネルギーを利用するものの,両者の基本原理は同一であるゆえ,これらを決定的に区分する理屈はもとより成立しえない。

 〔記事本文に戻る→〕 イギリスやカナダでの天然ウラン原子炉に対して,アメリカで濃縮ウランを材料とする現在の軽水炉が開発された最大の要因は,アメリカが原爆による世界支配をもくろみ,しゃにむにウラン濃縮の能力を高めたことにあった。この濃縮ウラン能力のはけ口こそ「軽水炉:濃縮ウラン型原子炉」であった。

 さらに,日本の発電炉のほとんど(1基を除くすべて)がそれである軽水炉は,原子力潜水艦の動力機関として開発されたものである。必要とあれば1年でも水中に潜っていたい軍事用潜水艦にとって原子力動力は最適なものであったのである。これに反して,商業用船舶にとって原子力動力など無用の長物である(これについてはすでに結論が出ていた)。むつ開発の真の目的はなんであったのか?

 このように現在日本で使用されている原子力発電の技術は,その生まれも育ちもお里は「原子爆弾と原子力潜水艦という軍事技術」なのである。

 2)現在でもいくつかの国家がやめようとしない原水爆実験は,原子力発電所の環境汚染をおおいかくすための最良の隠れみのになっている。原子力発電所の故障修理,点検時に出てくる多量の放射能廃液は,中国核実験等に合わせて海洋に排出されていることが判っている。

 核爆発実験による大気汚染がないならば,原子力発電所周辺のセシウム137やジルコニウム95による汚染は容易にあばき出されるであろうが,現在は核爆発実験による汚染のかげに隠されてしまっている。現在ではいくつかの原子炉の「鉄あか」中の誘導放射能が,原発に放射能汚染を証明しているだけである。

 いいかえれば,原発による環境の日常的放射能汚染は,核爆発実験による大気の汚染とのかねあいで許容されてしまっているのである。同じことが,潜在的危険性についてもいえよう。原発や再処理施設がはらんでいる潜在的危険性の大きさは,他の工業施設のそれとはまったく隔絶している。

 だから,原発推進派は他の施設とちがい原発施設の一定程度以上の災害は「天災の類」であって設計者や企業は免責されるべきであると主張し,事実,法律によって企業(または保険会社)は60億円を限度としてそれ以上の損害賠償支払いを免責されているのである。もし本気で確率が無視できると考えているなら,いくらでも支払うと胸を張ればよいはずである。

 このような巨大な危険性をはらむ存在物は,本来ならばとうてい,人類社会に許容されるものではありえない。より巨大な危険性すなわち原水爆兵器がすでに存在してしまっているという憎むべき現実が,その比較のもとに原発という巨大な危険物を許してしまっている。

 3)現代を原子力時代と呼ぶのは根本的に間違っている。現代は原水爆時代でしかない(武谷三男『原子力』『核時代』勁草書房)。

 われわれのまわりに存在している「原子力技術」は,原子爆弾の落とし子であり,原水爆時代にだけ許容される軍事技術に過ぎない。原発の巨大な危険性,再処理工場の恐るべき汚染,手のつけようがない高放射能廃棄物,このような存在物は平和な生活には適合しえないものである。

 人類は未だ平和な生活にふさわしい原子力技術を手にしていないことだけは確実である。現代を「原子力時代」だと錯覚し,われわれが「原子力技術」を手にしていると錯覚するほど恐ろしいことはない。

 われわれは,なによりも原水爆時代を終らさなければならない。原水爆時代を「原子力時代」といつわり,危険物(原発)と核物質(プルトニウム239)をこの列島に充満させることは,原水爆時代を続ける企みにひとしい。それは,思想や理念のうえで広島・長崎・ビキニの犠牲をないがしろにし,原水爆時代を続けるというにとどまらず,現実に日本の「核武装」の技術的物質的基礎になることによって,原水爆禁止時代を続けさせるのである。1978年に入って,自民党政権は「核武装は憲法に違反しない」と公言しはじめている。
 補注)「空前絶後の大罪を犯した安倍晋三の消せない過去!」という一文は,こう批判している。
 福島は大地震と大津波,そして原発の炉心溶解で地獄を体験した。なぜ,原発の水素爆発を防げなかったのか? すべてはあの男,安倍晋三に起因する。そのことを国民はしらない。
 
 第1次安倍政権当時の2006年,安倍晋三首相は国会で福島原発事故と同じ事態が起きる可能性を指摘されながら,「日本の原発でそういう事態は考えられない」として,対策を拒否した。これが,のちの原発大爆発,放射能の拡散,世界史に残る大惨事につながった。安倍晋三の罪は重い。
 註記)http://www.asyura2.com/18/senkyo250/msg/258.html
    https://85280384.at.webry.info/201809/article_37.html
 〔記事に戻る→〕 つぎつぎと設置される原子力発電所が,原水爆時代を維持させ拡大させているとき,原発問題を棚上げにして原水爆禁止を語ることは,原水爆禁止運動を「夏祭り」におとしめることだ。いまこそ,原水爆禁止と「原子力開発」阻止とが固く結びつけられなければならない。

 なによりも原水爆時代を終らさなければならない。33〔74〕年前の悲惨・残酷・苦しみ,33〔74〕年間続いている悲惨・残酷・苦しみに,固執しつづけよ。原水爆時代を「原子力時代」といつわり,軍事技術を「平和利用」といつわり原水爆時代を維持・拡大している「原子力開発」を告発せよ。
 註記)以上,本文は,水戸 巌・芝浦工業大学教授『広島・長崎~東海村より』から〔公表時期は1978年か?〕。http://www.ne.jp/asahi/nozaki/peace/data/kaku_bakupatu.html

 ここで,さきほどの記事における中西宏明経団連会長の発言に戻る。この中西が「原発と原爆が混同されて原発の再稼働が進まないと〔2月〕14日に発言したことについて『表現として不適切だった』」と認め,原発が立地している地元自治体から「適切ではない」との声が出たことに対しては,これは誤った理解であると批判しておく。

 より正確な理解は「原発と原爆が混同されて」いる点にではなく,「原発と原爆は同一のものである」という点に求められる。表現がかなりつたなかったけれども,本当のところではほぼ正しく事実に触れたに過ぎない “中西自身の原発理解” が,前段に引用した記事においては『二重の意味』で歪曲されていた。

 まず「原発≦原爆」である。だから,完全に「原発=原爆」ではない部分がないわけではない。だが,この意味をもってすべてを理解することは間違いになる。「原発<原爆」としたその「意味の関係の部分」にのみ,自分の「原発理解」を一時的にずらし,「原発と原爆が混同されて」いると発言した自分の真意をすりかえて誤魔化し,排除しておいた中西の対応は,二重の欺瞞をもって弁解したことになった。「答えるべき点に答えない」まま,そしてこの「答えない点をもって」「原発と原爆がいわば本来より混同されている」点から逃げていた。

 ④「再生可能エネルギーの開発・利用」を阻害・妨害する原発の存在

 つぎに紹介する『日本経済新聞』2019年3月2日朝刊(13面「企業2」)の記事は,見出しを「〈ビジネス TODAY〉再生エネ普及 壁は送電線 空き不足が各地で顕在化 東電,増強も工期10年」とつけていた。この記事(本文的な段落)は全文を引用できないので,つぎのように2段落のみ紹介しておきたい。
 再生可能エネルギーが送電線の空き不足でつなげない問題が広がっている。東京電力ホールディングスの管内では茨城県で空きがなくなり,同社は工事費約300億円を投じて送電網の増強を検討している。ただ工期は約10年をみこみ,新たに発電事業をおこなうには長期間,工事の完成を待つ必要がある。東北などでも送電網の空き不足が生じており,再生エネ普及の足かせになっている。

 (中略)

 送電線の空き不足は,需要が少なく送電線が太くない地域で再生エネが拡大したことで表面化している。関東は送電網が整備されている地域とされていたが,実際には再生エネ拡大に耐えられなくなった。洋上風力計画が相次ぐ千葉県でも,多くの送電線の空きが「ゼロ」となっており「茨城のように送電網の増強を待たなければならない可能性が高い」(電力関係者)状況だ。
 この記事に対しては追加の記事も掲載されており,その見出しは「使用権は先着優先 使われぬ『原発枠』も一因」(『日本経済新聞』同上面)とされていた。こう解説していた。

 電力会社や政府は送電網の空きが足りなくなることをほとんど想定してこなかった。政府が再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度をスタートさせ,太陽光パネルを設置する事業者が増えた結果として空き不足が問題となっている。送電網の空きが不足するというのは,必らずしも容量が満杯になるほど電気が送られているという意味ではない。送電の「権利」が埋まった状態を指す。

 発電事業を営みたい場合,送電線を使う権利をえなければならない。権利は先着優先だ。発電していない原子力発電所や太陽光発電所でも権利をおさえている。東京電力が福島県にもつ原発は動いていないが,権利はもっている。東北地方では長く運転を停止していたり建設中だったりする原発が権利をおさえていることに批判があがった。
 補注)東電(東京電力ホールディングス)の場合,福島第1原子力発電所6基,福島第2発電所4基はすでに廃炉が決定しており,柏崎刈羽発電所7基は未稼働(「新潟県中越沖地震」2007年7月16日以降停止)の状態に置かれている。なかでも,未稼働である原発が再稼働することを前提に「送電線の空きを抑えた状態」が維持されている。この状況については不合理な対応があると指摘されている。他の電力会社も同じであり,なかでも,再稼働の原発をすでに4基までにさせえた九州電力は「再生可能エネルギーの開発・利用」を露骨に抑制する態度に出ていた。

 【参考図表】
経済産業省資源エネルギー庁原子力発電所の現状

 出所)http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf
 

 政府は実際に流れる電力量を計算したうえで,原発40基分の空きをつくり出せるとはじいて,非常用の送電線で流す制度の運用を一部で始めた。ただ,つないだ先の送電線が埋まっている場合などは空きを確保できない。

 改善策として,使用枠が確保されている送電線が空いている期間に,他の発電事業者が使える制度が浮上している。ただ,権利をもつ事業者が発電を始めれば使えなくなる。送電線が混雑した場合の金銭的補償については政府が議論中だ。

 ドイツには先着優先でなく,再生エネを優先して送電線につなぐルールがある。それでも送電能力が足りず,発電を抑えるケースが増えている。京都大学の安田 陽特任教授は「送電線の実際の流れに基づく精緻な空きの計算や,使用権を市場取引で確保できる手法を広げるべきだ」と話す。(引用終わり)

 最後に,ドイツの送電線に関する運用規則に言及があったが,日本はこちらの運用問題への取組に立ちおくれている。電力会社は当面する利益が第1であり,現有施設である原発の稼働にこだわるばかりで,将来における電源構成・電力活用に関する本格的な検討は,当面する範囲内では「視野の外に追いやっている」がごとき風景にしか映っていない。

 いまではベースロード電源としてもっともふさわしくなくなった,つまり弾力的・柔軟的に運用が不可能であるとみなすほかない原発の存在が,本来であればそのベースロード電源としてもっとも適格でありうる「再生可能エネルギーの創造的開発・全面的な利用」の前面に立ちはだかり,その発展を妨害している。

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