【日本の政治社会をさらに堕落させ,汚濁していくだけの現政権】

 【日本の民主主義を破壊してきた現政権】


 ①「佐川氏ら10人,不起訴不当 森友問題,検察審が議決 大阪地検,再捜査へ」(『朝日新聞』2019年3月30日朝刊1面)

『朝日新聞』2019年3月30日朝刊2面森友検察審査会3
 1)1面記事の
引用
 学校法人森友学園(大阪市)への国有地売却や財務省関連文書の改ざんなどをめぐる問題で,大阪第一検察審査会は〔3月〕29日,有印公文書変造・同行使などの容疑で告発され,大阪地検特捜部が不起訴処分とした佐川宣寿(のぶひさ)・元同省理財局長(61歳)ら計38人のうち,元局長ら計10人について「不起訴不当」とする議決書を公表した。議決は15日付。(▼2面=改ざん「言語道断」,37面=議決要旨,39面=申立人ら評価)
 『朝日新聞』2019年3月30日朝刊2面森友検察審査会1『朝日新聞』2019年3月30日朝刊2面森友検察審査会2
 検審は議決で「本件のように社会的に注目を集めた事件には,公開の法廷で起訴する意義は大きいのではないかと考える」とした。地検は議決を受けて再捜査,元局長らを罪に問えるかあらためて判断する。だが,強制起訴につながる「起訴相当」議決と異なり,再び不起訴とした場合は2度目の審査はおこなわれず,捜査は終結する。

 不起訴不当とされたのは,国有地売却問題をめぐる背任容疑については,当時の財務省近畿財務局管財部次長と統括国有財産管理官,上席国有財産管理官,国土交通省大阪航空局職員の4人。公文書改ざん問題をめぐる有印公文書変造・同行使容疑などでは,佐川元局長,理財局の当時の次長,総務課長,国有財産企画課長,国有財産審理室長,近畿財務局管財部長の6人。

 財務省近畿財務局管財部次長らは,ごみの撤去費用8億円余りを値引きした1億3400万円で国有地を森友学園に売却して国に損害を与えたとして背任容疑で告発されたが,特捜部は「撤去費の算定は不適正とまではいえず,故意に損害を与える目的があったとは認められない」として不起訴としていた。

 議決は撤去費用について「業者の見積もり費用ほどの工事が必要か検証がなされていない」と指摘。森友学園前理事長の籠池泰典被告(66歳)からのクレームにさらされていた統括国有財産管理官が自己保身のため,学園側の希望価格に近づけるために売却価格ありきで値引きし,国有地を売り払ってしまう方向に動いたと推認できるとして再捜査を求めた。
 【参考画像資料
週刊文春2018年3月1日号籠池夫婦写真
註記)この写真は,籠池泰典が当該国有地の購入交渉にさい,
きわめて強力な効能を発揮していた。
 佐川元局長らが国有地売却に関する決裁文書から安倍晋三首相の妻昭恵氏らの名前を削除するなどした有印公文書変造・同行使などの容疑では,特捜部は当初の文書から根幹が変わったとは認められないなどとしたが,「社会的常識を逸脱し,相当大幅な削除がなされたことにより,原本が証明していた内容が変わってしまった」と指摘。改ざんなどの指示を否定する元局長の供述には信用性がなく,責任は重大だとした。また議決は,財務省が廃棄した学園側との交渉記録について,「公用文書と認められない」とした検察の判断を否定。公用文書毀棄(きき)罪にあたる疑いがあるとして,佐川元局長らの不起訴を不当とした。

  ※「〈視点〉検察の捜査不足,鋭く指摘」※

 佐川・財務省元理財局長らを不起訴とした特捜部の処分を「不当」だとした今回の議決は,検察の捜査不足を鋭く指摘した。弁護士や大学教授らが相次いで申し立てた審査を担当したのは,有権者からくじで選ばれた11人の市民たちだ。だが独自に調べることはほぼなく,主に検察側の証拠資料を根拠に議決を導かねばならない。

 議決書には起訴をうながすような厳しい言葉が並びつつも,判断材料が足りないことへのもどかしさが感じられる。たとえば国有地売却では,大幅に値引きされる根拠となったごみの撤去価格が妥当だったかは,検察の検証不足だと批判した。

 政治家らの働きかけの影響は,不起訴の証拠だけでは「判断しがたい」として再捜査を求めた。さらに,公文書改ざんは社会的常識を逸脱した行為だと断じて,特捜部と市民感覚の「ずれ」を浮き彫りにさせた。

 国民のものであるはずの国有地や公文書がどう扱われたのか。特捜部は審査員の過半数が検察の判断に「ノー」を突きつけたことで導かれた今回のメッセージを正面から受け止め,再捜査を尽くすべきだ。(引用終わり)

 2)つぎの2面における記事の引用と議論
   「〈時時刻刻〉文書改ざん『言語道断』市民感覚,検察捜査に不満 森友問題」(2面)の解説記事について「本文」は引用せず,以下の見出し文句のみ紹介しておくが,ただ「検察審査会」の用語解説については引用することにした。

  ★ 8億円値引き「疑問残る」
  ★ 佐川氏の供述「信用できない」
  ★ 「起訴相当」出ず,検察に安堵も
  ★ 野党「国会で真相究明」

『朝日新聞』2019年3月30日朝刊1面森友検察審査会 「検察審査会」(キーワード)とは,検察官の不起訴処分が正しいかを審査する。有権者からくじで選ばれた11人の審査員で構成され,審査は非公開おこなわれる。6人以上が不起訴が妥当だとすれば「不起訴相当」,6人以上がさらに捜査が必要だとすれば「不起訴不当」に,8人以上が起訴すべきだとすれば「起訴相当」になる。

 不起訴不当の場合,検察官が再捜査し,起訴か不起訴を判断する。起訴相当の場合は,再捜査の結果,再び不起訴になっても2回目の審査が実施され,あらためて8人以上が起訴すべきだとすれば強制的に起訴される仕組みだ。(引用終わり)

 さて,森友学園問題は加計学院問題とともに安倍晋三関連の事件「性」についてであるが,前者の問題に対しては安倍自身が当初,つぎのように国会で発言していた。なお引用中に適宜,改行個所を入れた。
 平成29〔2017〕年2月17日の衆議院予算委員会において,安倍首相は学校法人森友学園に対する大阪府豊中市の国有地譲渡等及び当該学校法人の小学校新設に係る設置認可に関する質疑において,

 「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに,もちろん事務所も含めて,一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば,これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから,それははっきりと申し上げたい,このように思います。」,

 また「繰り返して申し上げますが,私も妻も一切この認可にも,あるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして」,さらに「繰り返しになりますが,私や妻が関係していたということになれば,まさにこれはもう私は,それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい。全く関係ないということは申し上げておきたいと思います」と答弁していた。
 註記) “第193回国会(常会)質問主意書,質問第七七号「総理大臣をやめる」との首相答弁に関する質問主意書『「総理大臣をやめる」との首相答弁に関する質問主意書』右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。平成29年4月6日,山本太郎,参議院議長伊達忠一殿” から引用。
 補注)この安倍晋三の答え方は,自分が図星である核点を突かれたとき必らず示す反応を,正直に反復するかのように「語っていた」。「繰り返し」という文句や「一切」「はっきり」という副詞的な表現にも,その気持がすなおに出ている。
 「安倍1強〔凶・狂〕」政権下における「森友学園問題や加計学園問題,そして公文書改ざん問題の展開」は,常識的に考えればそれこそ「首相の首などいくつあっても間に合わない」ほど,数多くの政治的な醜聞をばらまいてきた。しかしこの政権が,第3者からみたらまさしく厚顔無恥である事実とは無縁のまま,しかも完全に開きなおったかっこうで,いまもなお権力をにぎっている。

 この安倍政権のデタラメさ加減の程度(いわば定評のある「ウソのウソによるウソのための為政」のこと)と来たら,現在ではこの国をほぼ完全に溶融させている,といってもいいほどに悪質である。その深刻な,とくに内政面において表面化させてきた病的な症状は,とりわけ「世襲3代目の政治家」として国家統計さえも,手前勝手に改ざんするといった〈自家中毒的な欺瞞行為〉によって,さらに重篤化してきた。

 安倍晋三自身に特有である「子ども感覚的な世間に対する政治認識」に集約的に表現されている「基本的な政治姿勢」は,この国の未来に暗雲を呼びこむための「与件」にしかなりえていない。この点は,悲劇的な諧謔にもなりえないほど無残な惨状を表わしている。
       
 今回,森友学園問題に対する検察審査会の「判断:不起訴不当」は,いまの安倍晋三政権下においてであれば,それでも最大限に表現しえた「審査の結果」であった。この問題の本質はそもそも,市民感覚から遠くにかけ離れた “安倍晋三政権内の「文書改ざん」問題の発生” に求められる。

 市民によって構成される検察審査会の判断は,検察捜査の「結果」に不満を示すほかなかったものの,権力支配側だけの「公僕」になり上がっている(?)この検察庁から提供された捜査資料だけに頼って結論を出すほかなかった。

 前後において参照している本日の『朝日新聞』朝刊は,社会面(39面)の記事の見出しを,「『再捜査,地検に重い責任』申立人ら評価『検察審,踏み込んだ』 森友問題,不起訴不当議決」「近財局OB『まっとうな判断』」と立てて,それなりに評価する見地を表明していた。

 しかし,問題が安倍晋三夫婦にまで関連する「出来事:事件」であっただけに,事後において,検察庁側の政権・権力側に対する「忖度」の具合が影響を与えないという保証はない。むしろ,「地検は議決を受けて再捜査,元局長らを罪に問えるかあらためて判断する。だが,強制起訴につながる『起訴相当』議決と異なり,再び不起訴とした場合は2度目の審査は行なわれず,捜査は終結する」(1面)のだとすれば,このさきにまともな期待ができるはずもない。

 つぎに,『朝日新聞』朝刊における「社会面(39面)の記事」からは,つぎのごとき識者の寸評を引用しておく。これは記事の引用である。
 ※-1「検察の結論変わらない」(元検事の郷原信郎弁護士の話)
 不起訴不当でとどまった以上,検察が起訴に踏み切るとは思えない。検察は,検察審査会が判断理由として挙げた事実関係も把握したうえで不起訴の判断をしており,再捜査で結論がひっくり返ることはないだろう。ただ,公用文書毀棄(きき)の容疑について財務省のトップクラスが不起訴不当とされた。法解釈の問題であるだけに,今後,裁判所の判断をあおぐために起訴すべきだという声が出てくれば,検察には不起訴の詳しい理由について説明責任が求められる。

 ※-2「市民目線で判断の印象」(検察審査会で審査補助員の経験がある吉田繁実弁護士の話)
 市民目線の判断という印象が強い。背任容疑については,再調査すべき点を「政治家らによる働きかけの影響の有無」などと具体的に注文をつけており,検察も無視できないのではないか。一方,公文書の変造や毀棄(きき)については,外形的な事実が相当程度明らかになっているなか,刑事責任を問えるかを地位やかかわり方から素朴に判断している。ただ,これは事実の評価の問題なので,検察官の新たな結論につながる期待はあまりもてないと思う。  
 この2人の識者はともに「再捜査で結論がひっくり返ることはない」「検察官の新たな結論につながる期待はあまりもてない」といった見解を述べており,今後において森友学園問題がさらに深く追及される可能性は低い。とはいっても,世間が森友学園問題や加計学園問題,公文書改ざんをみつめる目線には,いままでそうであったように持続的になおきびしいものがある。

 前述したように「1強政権」でなければ,間違いなく「政権のひとつやふたつくらい簡単に空中分解してもおかしくない」現政権の不祥事が,実在していた。いいかえると「安倍晋三政権的には」けっして底が深いのではなくて,初めからみえすいていた「政治を舞台とした醜聞事件」が,司法によってまともにとりあげられないままこれからも放置されていくとしたら,現在と未来における「日本の政治社会の汚染度」は計測など不能なほどにさらに悪化する。

 ② 日本の政治社会の未熟さ-先進国としては政治体制に関して遅れをとっている実情-

  いまから半世紀以上も昔の話題になる。1960年に公開された日本の映画作品として,黒澤 明監督になる『悪い奴ほどよく眠る』映画があった。ここでは筋書きを解説しないでも,この映画の主旨は見当がつくはずである。1年前に『ニュース専門ネット局 ビデオニュース・ドットコム(VIDEONEWS)』2018年3月17日が,アメリカの政治醜聞の問題をとりあげ,森友学園問題に関連させる議論していた。この記事の「解説」を紹介したい。
 註記)https://www.videonews.com/commentary/180317-01/

 アメリカの民主主義の成熟度は,けっして満足というには遠い。最近の問題でいえば,トランプ大統領「ロシア疑惑」といった政治問題に表現されているように,歴代の大統領のなかには品性面に関して劣等な政治家が何人もいた。日本に目を向けるとそのたぐいに該当するもっとも典型的な首相が安倍晋三であった。日本の憲政史上「最悪だと指弾されている」のが,この総理大臣である。

 さて『ビデオニュース・ドットコム』(ニュース・コメンタリー,2018年3月17日)に聞く記事の題名は,「森友問題の本質は最高権力をいかにチェックするか,アメリカがウォーターゲート事件から学んだ教訓を参考に」である。

 a) 昨〔2017〕年からウォーターゲート事件とペンタゴンペーパー事件におけるメディアの役割の取材を始めたのだが,ここにきて森友学園問題が新たな展開をみせたことで,この事件が1971年にアメリカで起きたウォーターゲート事件と酷似した面があることに気づいた。

リチャード・ニクソン画像 ウォーターゲート事件では,独立検察官というポストが設置され,ニクソン大統領(左側画像)自身が事件にかかわっていたかどうかの捜査がおこなわれたが,その終盤において,ニクソン自身の事件への関与を示す録音テープの存在がとり沙汰された。そして,世の中の関心は,ニクソンがそのテープを出すのか出さないのかに注目された。

 森友学園問題をめぐり,決裁前の文書の有無がとり沙汰されたり,それを出す出さないで大騒ぎになっているさまは,ウォーターゲート事件におけるニクソンの録音テープをめぐる論争を想起させるものだった。

 ちなみにニクソンは,議会からのテープの提出を求められながら最後までその提出を拒んだために弾劾にかけられ,弾劾決議案が下院本会議で採決させる直前に辞任したため,事件当時このテープが公開されることはなかった。実際にテープが公開されたのは40年後の2013年になってからのことだ。

 b) 国有地の払い下げで不法な権力行使があったことが疑われている森友学園問題と,政敵の政党本部に盗聴器をしかける策謀に大統領自身が絡んでいた可能性が疑われたウォーターゲート事件では,事件の質も内容もまったく異なる。

 しかし,両者はいずれも,民主主義において最高権力をいかにチェックするのかという命題を抱えているという意味において,実は多くの点が酷似している。いや,単に似ているというだけでなく,アメリカがこの事件から学んだ痛くて重い教訓を,今回われわれも森友・加計問題を契機に活かさない手はないのではないか。

 c) 森友問題は朝日新聞のスクープによって財務省による決裁文書の改竄が明らかになり,新たな次元に突入している。
 補注)この指摘は2018年3月時点のものであった。

 一度決裁された公文書を書きかえて国会に提出する行為が民主主義の根幹を揺るがす行為であり,徹底的に真相が究明されなければならないことはいうまでもない。また,もし佐川前国税庁長官が国会で意図的に嘘の答弁をしていたとすれば,それも議会制民主主義の根幹にかかわる重大な背信行為であることはいうまでもない。

 しかし,公文書の改竄も議会での偽証も,「そもそもそれがなんのためにおこなわれたのか」という「そもそも論」を抜きにして,その行為だけを追求するのでは意味がない。森友問題も加計問題も,その本質は権力,しかも最高権力が不当に行使された疑いが生じているにもかかわらず,有権者・納税者が納得できるようなかたちでその真相を明らかにするための仕組が,現在の日本の民主主義に存在しないところにある。

 d) 森友学園に不当な廉価で国有地の払い下げがおこなわれたことの背後に,安倍政権が直接,あるいは間接的に関与していたことを示す証拠があるわけではない。また,加計学園についても,前川喜平元文科事務次官の証言などはあるが,実際に獣医学部が認可される過程で首相の権力がなんらかのかたちで行使されたと断定するに足る証拠が,出ているわけでもない。

 問題は,これだけ問題が大きく,かつ長引いていながら,いまだにイエスともノーとも断定できる証拠が出てこないところにある。これは明らかに制度上の欠陥が露呈しているといわざるをえない。

 明らかに土地払い下げの条件や学部認可の過程に不自然な点があり,その対象となった2つの学校〔森友学園問題および加計学園問題〕では,かたや首相夫人が名誉校長を務めていたり,もう一方では首相自身が「腹心の友」と呼ぶ昵懇の関係にある人物が代表だったことが分かっている。にもかかわらず,安倍政権はみずからがそこに不法行為や違法な取り引きがあったかどうかを徹底調査しないために,いつまで経ってもそれが「疑惑」のまま宙ぶらりんになっているところにある。

 そのあいだ,メディアや野党が,疑惑を単なる疑惑で終わらせないための追求や証拠集めを続けている。しかし,国会では少数派に過ぎない野党や民間企業に過ぎないメディアがもつ権限だけでは,最高権力が不当に行使された証拠を掴むことも,あるいはその疑いを晴らすことも容易ではないのは当たりまえのことだ。

 e) 1972年6月17日,ワシントンのウォーターゲートビル内にある民主党全国委員会本部に盗聴器をしかけるために不法侵入した5人組が逮捕され,5人の中にニクソン政権とつながりが深い人物が含まれていたことが明らかになったとき,アメリカは最高権力者の犯罪をチェックすることのむずかしさを嫌というほど思いしらされる経験をしている。

 アメリカには連邦レベルの警察としてFBI(連邦捜査局)があるが,そもそも常設機関であるFBIの長官は大統領によって任命されているため,FBIは大統領の犯罪については中立的な捜査をおこなえる立場にはないと考えられた。そのためにアメリカは,大統領の犯罪を捜査するために「独立検察官」という制度を導入する。

 司法長官によって任命される独立検察官は,大統領の権力の影響を受けずに事件を捜査することを目的としていたが,とはいえその独立性は,大統領の犯罪を捜査するためには明らかに不十分なものだった。その時点でアメリカでは,そもそも大統領がウォーターゲート事件のような犯罪に関与することは想定されていなかったのだ。

 実際,ニクソンはコックス独立検察官の捜査の手が自身に及びはじめると,大統領権限を使って司法長官に対してコックスの罷免を要求した。特別検察官は大統領ではなく司法長官が任命していたが,司法長官は大統領が任命していたので,大統領の命令には従わざるをえない。

 リチャードソン司法長官は大統領の要求を受け入れる代わりに司法長官を辞任する。するとニクソンは今度は司法省のNO2であるラッケルズハウス副長官に特別検察官の罷免を要求し,副長官も抗議の辞任をしてしまう。それでもニクソンは諦めず,司法省NO3のボーク訟務長官に検察官の罷免を求め,大統領の要求に抗いきれずに訟務長官はコックスを罷免したため,結果的に司法長官,司法副長官,特別検察官の3人が同じ日に辞任をしたり職を解かれるという,前代未聞の事態に発展する。

 f) これが1973年10月20日の土曜日だったため,この出来事はアメリカでは「土曜の夜の大虐殺」(Saturday  Night  Massacre)と呼ばれ,最高権力が濫用された最たる事例として,アメリカ史に名を刻むことになった。同時にこのとき,みずからを自由主義陣営のリーダーであり民主主義の盟主を自認していたアメリカでさえ,最高権力の暴走を防ぐための制度が未整備だったことを痛感させられたのだった。

 ちなみにニクソンはその後,「土曜の夜の大虐殺」が仇となり下院の委員会で弾劾決議案が可決され,下院本会議で弾劾が採決される直前に,辞任に追いこまれている。それまでも暗殺や病気で大統領が任期をまっとうできなかった事例はなんどかあったが,大統領みずからが任期途中に辞任をしたのは,あとにもさきにもニクソンしかいない。

 ニクソンが大統領権限をフルに使って特別検察官の捜査の邪魔をしたことが功を奏し,政敵の政党本部への盗聴器の設置という犯罪へのニクソン大統領との直接の関係は最後まで立証されなかった。しかし,ニクソンはその行為によって「司法妨害罪」に問われることになる。これは懲役10年以下の重い罪だった。最終的にニクソンは事実上の司法取引によって,大統領を辞任することと引きかえに副大統領から大統領に昇格したフォードによって恩赦されため訴追は逃れている。

 ちなみにアーカンソー州知事時代の利益誘導疑惑で弾劾裁判にかけられたクリントン大統領も,利益誘導そのものは立証されなかったが,やはり「司法妨害」の容疑で弾劾裁判にかけられている。

 g) 最高権力の座にある大統領がその権力を駆使してみずからの不法行為の隠蔽を図れば,捜査機関をみずからの指揮下に置いている以上,犯罪の立証を阻止できるのは当然といえば当然だ。しかし,アメリカの独立検察官のような,最高権力者から一定の独立性を保障された組織が捜査に当たれば,政権寄りか反政権かを問わず,誰もが納得できる事実が究明される可能性が高い。

 日本にも,もしも最高権力者による不法行為が介在していたことが明らかになった場合は,権力者は「司法妨害」の罪を犯して捜査に介入しないかぎり,真相の究明の邪魔をすることはできないような制度が必要ではないか。もちろん,独立した中立的な機関によって捜査がおこなわれれば,なにも不法行為がなかったのであればそれもはっきりとさせることができる。権力の正統性を強化するためにも,権力から独立した権力チェック機能は必要なのだ。

 具体的な方法としては,国会内に与野党合意の上で特別検察官のような制度を作る権限を与えるか,あるいは3条委員会のような独立行政委員会の制度を使って,より中立性を強化させた委員会を設置するなど,いろいろな可能性が考えられるだろう。

 文書の書きかえ問題を含め,今後も現行制度のもとで,さまざまな疑惑の真相解明が進んでいくことを期待したい。しかし,同時にその過程で,現行の権力チェックの仕組にどのような弱点があるかをしっかりとみきわめたうえで,それをつぎに活かしていくという視点をもつことも重要なのではないか。

 h) そもそも一定の権限を与えられた機関がきちんと調べれば簡単に白黒がつくような単純な問題が,いつまで経っても「疑惑」のまま尾を引き,これだけ長期にわたり国政を停滞させ,しかも国政に対する国民の信用を低下させているという事実だけでも十分に,現在の日本には最高権力をチェックするための体制に不備があることを物語っていると考えるべきだろう。(引用終わり)

 安倍晋三が2012年12月26日から今日:2019年3月30日までの長期間(6年と3カ月),日本の政治を実質的に「機能不全」にしたまま,壟断してきた。換言するならば,この国における民主主義をほぼ完全に破壊した。そう断言してもよい顛末をもたらした。

 ビデオニュース・ドットコムのいいぶんは,しごく簡明・単純に「日本の政治」における未熟性を指摘していた。というのも,安倍晋三が政治の中心に位置し,禍根を散布してきた事実にともない発生させてきた諸醜聞は,「一定の権限を与えられた機関がきちんと調べれば簡単に白黒がつくような単純な問題」であるからである。

 この首相が「これだけ長期にわたり国政を停滞させ,しかも国政に対する国民の信用を低下させているという事実」が発生しているなかにあっても,日本国が21世紀においてどのように存続(サバイバル)していくかというきわめて重要な問題が,あの「子どもの〈世襲3代目の政治家〉」の拙政ために実質的に放置された状態を余儀なくされている。

 2020東京オリンピックというお祭り騒ぎが終えてから,その年の冬を迎えるころからこの国は,国家体制のなかのすべての局面・要素が《冬の装い》のままでありつづけていくかもしれない。

 いずれにせよ,まことに情けないことだが,海外の人びとから日本に注がれる目線も含めての話になるが,「百害あって一利なし」の「決定版:政治家」として,万人が認証する人物が「現在の日本において最高権力」に位置している「あの人」であった。

 そのような権力者を排除できていない「現状における『民主主義の状態』」は,日本という国のその未熟度を端的に表現している。民主主義を理想型にまで近づけるには,常時たいそうな努力を必要とするけれども,それを破壊するのは一瞬である。まさしく安倍晋三が披露してくれたように……。

 ③【参考資料「世界における日本の順位」をいくつか紹介】


 ◆-1「国境なき記者団が報道の自由度ランキング 2018発表」

   1位 ノルウェー
   15位 独
   33位 仏
   40位 英
   43位 韓国(前年63位)
     45位 米
     67位 日本(前年72位)

 ◆-2「日本は男女平等が遅れている国-2018年の日本の男女平等指数」

 世界経済フォーラムは毎年,世界各国の男女平等度合いを指数化した「ジェンダー・ギャップ指数」を発表している。2018年の日本の順位は,調査対象149か国中110位であった。下から4分の1くらいに位置している。日本は世界のなかで男女平等がだいぶ遅れている国ということになる。
    ★ 2018年版 ジェンダー・ギャップ指数(2018年12月18日発表)★

    国 名      総合順位 経済順位 教育順位 健康順位 政治順位
  アイスランド   1         16    39     121       1
  ノルウェー      2       11    41     95       3
  スウェーデン     3           9    52     115       7
  日  本    110     117      65       41     125

    備考)調査対象は149カ国。
    註記)https://www.city.koshigaya.saitama.jp/smph/kurashi_shisei/kurashi/jinkendanjokyodo/column/ggi_column.html
 ◆-3「女性国会議員比率,193カ国中 165位 :  G20諸国で最下位」(『nippon.com』2019.03.07,https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00409/)
  ★ 一院制又は下院議会の女性議員比率 ★

    順位      国 名         比率(%)
    1       ルワンダ       61.3
    5       スウェーデン     47.3
    13      スペイン       41.1
    16      フランス       39.7
    30      イタリア       35.7
    39      英 国        32.0
    47      ドイツ        30.9
    62      カナダ        26.9

    73      中 国        24.9
    78      米 国        23.5
    121     韓 国     17.1
    131     ロシア     15.8
    136     エジプト    14.9
    165     日 本     10.2

 註記)列国議会同盟の公表資料より抜粋  / 緑色文字はG7諸国。
 補記1)ランキングの第1位アフリカのルワンダが(61.3%)で,第2位キューバ,第3位ボリビア,第4位メキシコと中南米諸国が名を連ねた。日本は先進7カ国(G7)のなかで断トツの最下位。20カ国・地域(G20)首脳会議構成国でも最下位だった。
 補記2)衆院の会派別女性議員比率(2019年3月1日)は,総定数 462名中 47名で,10.2%。
 ◆-4「〈きょうのことば〉労働生産性 残業の長さが上昇阻む」(『日本経済新聞』2019年3月30日朝刊3面「総合」) 
『日本経済新聞』2019年3月30日朝刊3面日本は劣る生産性
 経済大国であった日本の残影は,この記事になかでは,つぎのように形容されている。
 「日本の1時間あたりの労働生産性は2017年に47.5ドルで,経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国中で20位だ。2013年から約6ドル上がったものの,順位は1970年代からほぼ変わらない。たとえば日本は接客業のサービスの品質が海外に比べて高いとされているが,求められるサービスの質の国ごとの違いなどの側面を考慮してもランキング上位国との差は埋められないとの見方が一般的だ」。
 日本国総理大臣安倍晋三は,以上の統計数値に表出されている「順位」に少しもこだわっていない様子に映る。はたして,それでいいのか? 当人の口からは「日本スゴイ!」みたいな発言(真相はデタラメが多いのだが)がよくなされてきたが,幻想と虚栄だらけの「アベノミクスのウソノミクス」さに,もともと存在価値はなかった。

 ④【参考記事】

 ※-1「検察審査会が佐川元理財局長を『不起訴不当』とした理由! 『改ざん指示してないという本人供述に信用性ない』の指摘も」『リテラ』2019.03.29 10:33,https://lite-ra.com/2019/03/post-4632.html

 ※-2「森友学園疑獄の公文書改ざんに『不起訴不当』の検診議決・・・なんとも生ぬるい!! タイミングを見計らったかのように新元号発表直前というのも胡散臭い!!」『くろねこの短語』2019年3月30日,http://kuronekonotango.cocolog-nifty.com/blog/2019/03/post-a2a1.html 

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