【日本の安倍晋三政権では,環境相が原子力防災担当相を兼ねていたという奇怪な兼任形態】

 【東電福島第1原発事故現場が放出したがっている「トリチウムの危険性」】

 【原子力発電の導入・利用は,人類・人間にとって手痛い失策であった】

 【前回の内閣改造の時には「在庫一掃内閣」なんてからかわれていたけれども,今回はさしずめ「閉店投げ売り内閣」ってところか(『くろねこの短語』2019年9月11日)

 【なぜ〔小泉〕進次郎が環境大臣なのか。ズバリ原発対策だ。おりから原田環境相が退任記者会見で原発汚染水は海に流すしかないと発言した。小泉進次郎は就任早々それを否定し,原発処理を最優先する。

 つまり,小泉進次郎の役割は,親ばか小泉純一郎と二人三脚になって,ガス抜きに徹し,反原発の野党の攻勢をかわすことなのだだ。おもてなしの伴侶と一緒になって東京五輪の成功ムードを盛り上げることだ(『天木直人のブログ』2019年9月11日)

 【そのあとは2025年の大阪万博を,横浜でカジノをやりながら迎えるとなれば,またそのあとの日本は,実質「沈没必至」】 

 【お子さま内閣の《なれの果て》は,すでに慢性的に既往症「化」】
                   

 ①「原発汚染水『海に放出しかない』 原田環境相,会見で『意見』 地元『軽率すぎる』」(『朝日新聞』2019年9月11日朝刊26面「社会」)

 この記事は前日〔9月10日〕夕刊4面「社会総合」に報道された記事が,本日〔9月11日〕の朝刊26面「社会」において更新された内容として掲載されていた。以下に引用するが,原田義昭環境相は10日の内閣改造で環境相の座を降りている。
 補注)このたびの改造内閣では,環境相に「世襲政治家4代目の小泉進次郎が38歳で就任した」。だが,いったい,とくにめだった業績もなく,というか,とりわけ目につきそうな手腕すらもちあわせていないような,この「親の七光り」的なだけの国会議員に大きな期待はしないほうが無難である。

 〔記事に戻る→〕
 東京電力福島第1原発の事故を起こした建屋などから発生し,処理後に溜まりつづけている汚染水について,原田義昭環境相兼原子力防災担当相は〔9月〕10日の記者会見で,「思い切って,(海に)放出して,希釈するほかにあまり選択肢がないな」などと発言した。
【参考画像】
       東電福島第1原発事故汚染水
  出所)https://pictaramium.com/media
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  補注)この「3年後満杯」という指摘は2019年8月になされていた。
 処理後の汚染水への対応は,国の小委員会で検討が続いている。原田氏は「意見」だとしたが,福島県の漁業関係者は「閣僚として軽率過ぎる」と批判,菅 義偉官房長官は会見で「現時点で処分方法を決定した事実はない」と話した。

 環境省は放射性物質に汚染された土壌の処理を担う。会見で原田氏は汚染水処理は所管外だと前置きしたうえで,「安全性,科学性からすれば,どうも大丈夫なんだ」と語った。

 報道陣から再三,発言内容の確認を求められたが,「はっきりいってそれ(海洋放出)しか,方法がないなというのが私の印象」などと述べた。一方,「風評被害とか漁民の皆さんのご苦労とかについて,国が補完することもきわめて大切」とも話した。
 補注)ここでの原田の発言は無責任そのものである。安全性・科学性のなんたるか,その放射性物質に関する基礎的な知識すらもたない国会議員が,その点をみずからあえて暴露(ゲロ)していた。なにか特別の意図でもあったのかと勘ぐりたくもなる。

 ともかく,ただそれだけのことであった「環境省大臣」の,しかも大臣職を辞めるさいの「こうした無責任な言動」は,それこそ論外の発言であった。しかし,問題がはたして「風評被害とか漁民の皆さんのご苦労」にだけ限定されるものでない事実,その理由の詳細な「専門的な説明」については,後段で言及する論点となる。

 福島第1原発1~3号機の原子炉では,核燃料を冷やすための注水で汚染水が生じる。タンクに溜まった処理済みの汚染水は約115万トンに上り,1日150トン前後増え続けている。東電は,敷地の制約からタンク設置は限度があり,2022年夏ごろにタンクは満杯になると主張している。国の小委員会では,長期的に保管する議論に加え,保管場所を原発に隣接する中間貯蔵施設用地に広げて増設する意見も出ている。

 福島県漁業協同組合連合会の野崎 哲会長(65歳)は「小委員会で議論の最中に,閣僚がそのような発言をするのは軽率すぎる。地元としては海洋放出に反対の立場は変わらない」と語った。
【参考画像】
  福島原発とゴジラ画像
 出所)http://blog.goo.ne.jp/izuookawa/e
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 ② 唐突なようで,けっして,そうではない「新刊・文献の詳細な内容案内」

東京五輪がもたらす危険表紙 東京五輪の危険を訴える市民の会著・渡辺悦司編『東京五輪がもたらす危険』(緑風出版,2019年9月,A5判並製 / 216頁,1800円,9月13日発売予定)の内容構成をくわしく紹介する。出版元の宣伝に出ていた目次の案内などである。
 註記)http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1914-0n.html

 本書はまず,宣伝文句としてこう謳っている。「東京オリンピックの開催が,参加するアスリートや観客・観光客にもたらす放射線被曝の恐るべき危険性を警告するための緊急出版!」

 要するに,「東京オリンピックへの福島原発事故の影響は「アンダー・コントロール」されていて「東京には,いかなる悪影響にしろ,これまで及ぼしたことはなく,今後とも,及ぼすことはありません」という安倍首相の発言が,いかに誤りであるかを科学的医学的に明らかにする」

 「東京オリンピックの危険を警告し,開催に反対する科学者・医師・避難者・市民の声!(2019. 9)」なのである。
◆「内容構成」◆

  ふるさとの友へ
  編集者序文
 
第1部 東京五輪の危険を警告して発言する科学者・医師・市民

 第1章 国際オリンピック委員会IOCへの公開状(雁屋  哲,石津  望,渡辺悦司翻訳)

 第2章 2020年東京「放射能」オリンピックを警告する[Tokyo 2020 Die radioaktiven Olympischen Spiele](IPPNW ドイツ支部 梶川ゆう 翻訳(Sayonara Nukes Berlin))

 第3章 ドイツにおける反被曝・反東京五輪の運動(桂木  忍,川崎陽子)

  1 ドイツ人にとっても東京五輪は「放射能オリンピック」
  2 欧州における反被ばく・反東京五輪の活動

 第4章 米カリフォルニアでの東京オリンピック反対の行動(石津  望)

 第5章 真実から目を逸らすことは犯罪である:フクシマ事故と東京オリンピック(抄録)(小出裕章)

 第6章 「今生きている人間のすべてが……」(ノーマ・フィールド 渡辺悦司訳,ノーマ・フィールド監修)

 第7章 アーニー・ガンダーセン著『放射能被害へのぬり薬』紹介(渡辺悦司)

  1 安倍首相は東京オリンピックを福島原発メルトダウンを癒やすインチキ薬として利用している
  2 命かけて走れ・逃げろ東京オリンピック

 第8章 東京オリンピックを返上せよ(村田光平・元スイス大使)

 第9章 オリンピックのために原発事故被害者を切り捨てるな(山田知惠子,岡田俊子)

 第10章 「チェルノブイリ法日本版」と東京オリンピック(柳原敏夫)

 第11章 トリチウム汚染水の海洋放出に反対する科学者と市民の活動(山田耕作)

  1 トリチウムを含む福島原発放射性廃液の海洋投棄に反対する決議
  2 公聴会では海洋投棄反対の意見が圧倒した
  3 決議を巡る議論の重要なポイントについて説明する

 第12章 放射線の見えない脅威(落合栄一郎)
    最後に放射線の不思議について

 第13章 福島原発事故に猛威を振るう「知られざる核戦争」:「放射線による健康被害は一切無い(安倍首相)」の背後に死亡率大量増加(矢ヶ?克馬)

  1 概 説-「放射線による健康被害は一切無い」(安倍首相)のファシズム-
  2 日本の放射能汚染の危険な現状
  3 福島被曝-知られざる核戦争の犠牲
  4 知られざる核戦争〈国際原子力ロビーの役割〉

第2部 東京五輪での被曝が危険なこれだけの根拠

 第1章 福島事故の放射能放出量:ネバダ核実験場の近傍でオリンピックを開催するに等しい(渡辺悦司)

  1 福島原発事故による放射能放出量の推計
  2 東電によるヨウ素131 / セシウム137 比率推計:50 倍

 第2章 不溶性放射性微粒子の特別の危険性:1個でも吸入・沈着すると長期にわたるリスクがある(渡辺悦司)

  1 放射性微粒子のいろいろな種類
  2 セシウム137 含有不溶性放射性微粒子の特別の危険性

 第3章 放射線影響の受け易さ・放射線感受性には個人差が極めて大きい(本行忠志)

  1 年齢:若いほど感受性が高くなる
  2 遺伝子の異常
  3 生物学的半減期

 第4章 トリチウムの特別の危険性(渡辺悦司,山田耕作)

  1 汚染水を放出すれば東京方向に流れ茨城沖で渦を形成する
  2 トリチウムの「特別の」危険性について
  3 生体内に取り込まれたトリチウムの挙動
  4 トリチウムによる被害の実例原発

 第5章 原発事故健康影響「全否定」論の新展開とその自滅的本質(渡辺悦司)

  1 原子力規制委員会:致死線量下限までの被曝受忍論
  2 日本政府による「予防原則」の全否定
  3 線量「解釈」引き上げ-「使える核」による核戦争の準備
  4 ICRP・UNSCEAR・BEIR などのリスクモデルは被曝影響が「ある」と認めている
  5 住民帰還政策の ICRP モデルによる分析:住民の「大量殺戮」
  6 ICRP・UNSCEAR は人間の遺伝性影響を認めている
  7 UNSCEAR による遺伝的影響の過小評価と線形応答という誤謬
  8 被曝安全神話により何が起こっているか?

 第6章 政府の「被害なし」主張の根拠;国連科学委員会(UNSCEAR)報告は信用できない(藤岡  毅)

 第7章 被災地の苦悩と「黒い物質」「環境循環」について(大山弘一)

 第8章 首都圏の水道水中のセシウム汚染を測定(鈴木優彰,下澤陽子)

  1 ゼオライト浄水器で首都圏の水道水中のセシウム汚染を測定
  2 東京の水道水の汚染について

 第9章 「放射能でのおもてなし」:東京オリンピックは国際社会に対する犯罪である(大和田幸嗣)

  1 日本版 GAP 認証は EU の GGAP と異なり食材の安全性を担保しない
  2 政府の放射性セシウム基準値は安全値でなく強要値である
  3 低線量内部被曝の健康被害:セシウムの体内蓄積量の増加と共に心電図異常や白内障が増加(ベラルーシの場合)
  4 日本でも心電図異常の増加
  5 複合性先天性心疾患が原発事故以降全国レベルで増加
 
第3部 避難者たちが体験した被曝影響と症状

 第1章 『新ヒバクシャ』に『能力減退症』が始まっている(三田  茂)

  1 2011 年から2016 年
  2  『新ヒバクシャ』とは?
  3  『能力減退症』とは?
  4  『能力減退症』の原因
  5  『能力減退症』の治療
  6  『新ヒバクシャ』の皆さんに
  7 医療者,とくに開業医の先生方に
  8 再び『新ヒバクシャ』について
  9 むすび

 第2章 がん,白血病・血液がん,子供の発達障害の多発(渡辺悦司)

  1 白血病は放射線被曝との関連が極めて高い
  2 国立がん研究センター「院内がん登録統計」での白血病増加
  3 福島原発事故後における各種がん発症も顕著な増加傾向
  4 事故直後の東京東部の被曝状況を思い出しておこう
  5 水道水の汚染
  6 日本政府の白血病労災認定基準と白血病発症
  7 白血病の予後について
  8 児童生徒の精神発達の障害が広範囲に生じている

 第3章 東京電力福島第一原発事故後の子ども達の尿を測定(斉藤さちこ)

  1 尿中放射性セシウムの測定
  2 北茨城市男児の継続測定

 第4章 避難者の被曝影響と思われる症状(福島敦子,羽石敦,下澤陽子,園 良太,鈴木絹江)

  1 避難者として福島原発事故時からの体調をふり返って
  2 私の健康被害
  3 オリンピックをする東京は,私たちの帰れないふるさとです
  4 東京出身の避難者 / 活動家として東京五輪に反対する
  5 東京オリンピック・パラリンピックと福島第1原子力発電所事故
   -障害をもつ身で甲状腺乳頭がんを患って考えること-
 
 編集者あとがき

  1 放射線科学・医学および被曝状況の側面から言えること
  2 道義・人道・人権の側面から言えること
  3 その他の危険性

 謝辞

  著者・寄稿者・翻訳者一覧(アイウエオ順)
 ③ 『原子力資料情報室』のホームページ内で「トリチウム」を検索すると,こういう回答が出てくる。

 本日のこの検索結果によると,原子力資料情報室は全部で54件の項目をかかげていたが,そのなかでも,題目中にこのトリチウムという用語そのものを出している回答は,つぎの5点であった。
 [ CNICトピックス ] トリチウム水問題を考える(※)

 [ CNICトピックス ] 【トリチウム公聴会】発言者のほぼ全員が反対! トリチウム等汚染水の海洋放出

 [ CNICトピックス ]   ブリーフィングペーパー 「トリチウム水と提案されている福島事故サイトからのトリチウム水海洋放出について」

 [ CNICトピックス ]   川村会長のトリチウム水海洋放出発言の撤回と トリチウム水の安全な保管を求める要請書

 [ きほん知識 ]   トリチウム(水素-3,3H)
  以上のうちから,直近の議論(※)を引用しておく。
 
トリチウム水問題を考える
=『原子力資料情報室通信』第532号,2018/10/01 =

 トリチウム水の海洋放出の是非をめぐって,大きな議論になっている。これは,原発を運転すると必らず出てくる放射性廃棄物をどう考えるのか,誰にとっても,しらないでは済まされない難問のひとつである。

 a) かねてより経産省は検討委員会をつくって,トリチウム水をどうするか,5つの案を検討してきた。

  地層注入  海洋放出  コンクリート固化して地下埋設
  水蒸気にして大気放出  水素にして大気放出

などについてだ。長期に保管する案はなかった。技術的課題,処分期間,監視期間,処分費用などが議論されてきた。

 他方,原子力規制委員会の田中〔俊一〕前委員長・更田〔豊志〕現委員長は,トリチウム濃度を告示濃度以下に薄めて海洋に放出せよと発言してきた。

 海に出して捨てていいか,8月末に福島県富岡町,郡山市および東京都内の4会場で,経産省は公聴会を開いた。公述人44名のうち42名が反対の意見を述べた。当室の伴 英幸・共同代表もそのひとりである。

 三重水素ともいうが,トリチウムは半減期が 12. 3年でベータ崩壊をし,ヘリウムになる放射性物質である。いくら薄めるとはいえ,いったん海洋放出されれば海中生物だけでなく陸上の植物や生物への影響がありえる。

 漁業にもダメージを与える。生物濃縮も懸念される。水なので人体に取りこまれて遺伝子を傷つける恐れがある。生命系に対して安全とはいえない。こういう反対意見がつぎつぎ々に述べられた。

 b) 薄めれば安全といえるか。トリチウムに限らず放射性物質に関しては,排液中のその放射性物質の濃度を制限する告示濃度というものが法律で定められている。

 公衆の安全を守るための判断基準である。だが,この基準値をきめることは厳密には不可能なのである。一口でいえば,条件が複雑すぎて,計算できないからである。

 因果関係が一筋縄ではいかないので,はたして信頼できる数値かどうか “誰にも証明できない” 。多分,そのあたりだろうくらいの判断になる。推進する側も努力を重ねるが,疑いのない唯一の数値をうることはできない。

 新しい見方,考え方が出てくれば,また,観測や測定によって新たなデータがえられれば,改訂せざるをえない。それはより厳しい数値へとあらためられる。その作業に終わりはない。

 ある濃度の放射性物質が入っている水を,生まれてから70歳まで飲みつづけると仮定して,1年あたり1ミリシーベルトの実効線量限度に達するときの濃度が濃度限度とされる。

 ただし,放射性核種は1種類であると仮定している。ここで,1ベクレルの放射能が何ミリシーベルトになるか,換算の線量係数という値を用いる。これはもちろん核種によって異なる。

 こう聞いて,たちどころに疑問が湧いてくるだろう。
 他の核種が入っていたら? 被ばくする人の健康状態がいろいろだったら?

 吸入摂取か経口摂取かの違いは考慮されてはいるが,線量係数は一意的にきめられるか?

 シーベルトで表される被ばく線量は人の被害の程度をあらわしているか?

 そもそも,1年あたり1ミリシーベルトというのは甘すぎるのではないか?
 告示濃度以下に薄めて海洋放出せよとの規制側の考えは,なんと大雑把な考え方かと思う。報道によると,更田規制委員長は,トリチウム水の保管が長引けば長引くほど廃炉に影響が出る,と記者会見で述べたらしい。原子力規制委員会の姿勢がわかる。

 c) 手元に,さまざまな放射性物質のクリアランスレベルの評価値の変遷を示したデータがある。クリアランスレベルとは,原子力施設の解体や運転中に出てくる放射性物質で,これ以下なら公衆の健康への影響は無視できるとされる境界の値のことである。

 〔ここでは〕複数の放射性核種が存在する場合は全核種を考慮に入れる。算定の目安値は,現実的なシナリオに対しての個人線量基準は10マイクロシーベルト / 年,発生頻度の小さいシナリオでは1ミリシーベルト / 年とする。

 ストロンチウム90やセシウム 137などに比べると,トリチウムは格段に基準値が大きい。広く文献を参照し,また,摂取する経路を考えなおし,原子力安全委員会の部会では「 kg 当たり71ベクレル,200ベクレル,60ベクレルと二転,三転してきた」が,結局 100ベクレルとされたのである。

 d) 科学的に考えると,自然界には,宇宙線によって生ずるトリチウムがある。環境中には,核実験と原子力施設で人為的につくり出されたトリチウムがある。原子力発電では,重水を使う CANDU 炉(カナダで開発された)からの放出が大きい。軽水炉では,加圧水型炉のほうが沸騰水型炉よりも多く発生する。再処理工場では桁違いに大量のトリチウムが発生する。

 水の分子式は “H2O” だが,水素Hが1つだけトリチウムTと入れ替わったものが “HTO” であり,これがトリチウム水である。また,有機結合型トリチウムOBTと呼ばれる物質がある。これらの環境中における振るまいいや魚類,貝類,植物,動物など生態系への影響については多くの研究があり,科学論文として発表されている。
 補注)トリチウム水(トリチウムすい,英語: tritiated water)は,三重水素(トリチウム)を含む水である。

トリチウム模造画像 ★-1 水素・トリチウム・酸素各1分子で構成されたもの(化学式HTO)
 ★-2 重水素・トリチウム・酸素各1分子で構成されたもの(化学式DTO),
 ★-3 トリチウム2分子・酸素1分子で構成されたもの(化学式T2O;これは右側の模式画像)

の3つがある。広義の重水の一種ということができる(ウィキペディアの解説)。

 〔記事に戻る→〕 それらは,個々のケースの研究である。おおむね,注意して対処できるとの報告である。しかし,カナダ,日本,ドイツ,アメリカ,イギリスなどの原子力施設近傍の住民に小児白血病・新生児死亡・遺伝障害などの増加が観察されている。

 これらも個々のケースの研究ではある。原子力推進もしくは容認の立場からは,無視されるか,否定的な扱いを受けている。不都合なデータとみなされているふしがある。

 e) このような,評価が分れるケース研究の場合,科学的に明快で統一的な結論をみちびくことは困難である。経験と根拠にもとづき,論理的・体系的に,機序(これは「しくみ」の意味)を明らかにして判断しなければならないからだ。

 実験室内でも条件を厳密に設定することに苦労するが,自然界ではそれが不可能である。因果関係を突きとめようとしても,原因となる要素が無数にあるのが通常のことで,しかも思い及ばない要素もありうる。それぞれの軽重の判定にも価値判断が入る。だが,観測事実を否定するわけにはいかない。

 放射線被ばくの影響を考えるさいの,「直線しきい(閾)値なしモデル」(LNTモデル)は, “いくら低線量であっても,放射線の影響を無視してよいというしきい値は存在しない” という考えだ。

 故アリス・スチュアート博士は「たとえ1本の放射線であっても,ピンポイントに遺伝子を破壊することがあるのです」と明言している。

 f) 海洋に出たトリチウム水が均一に薄められる,という保証はない。出入りの複雑な海岸があり,その沿岸を流れる海水の挙動は多様である。シミュレーションもいろいろである。

 海水の大循環は自転する地球に大きく影響されている。台風も異常気象も制御はできない。海は静かで無限に広いのではない。当然のことだが,計算どおりにはいかない。

 世界中の原子力施設から一定の濃度制限のもとに放出されたとしても,総量がどこまで増えるだろうか。どこかの濃度がきわ立って大きくなる心配がある。総量に対する規制も不可欠である。

 私たちには,大気が汚染され,川と海が汚染され,公害にひどく苦しんだ経験がある。人為的に作り出された放射性物質は,環境に漏れ出ないように,厳重に閉じこめておくしかないのである。それができないなら,原子力をやめるしかない

 ④ 青山貞一(Teiichi Aoyama)「毎日太平洋に垂れ流されるトリチウムの影響について」(『独立系メディア E-wave』2013年9月6日,http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp0897..html

 この記述は長文である。それだけに,非常にくわしくトリチウムが原発体制とは不可避の問題である事実,つまり,深刻な様相をかかえるほかない関連の事実を説明している。以下の記述は,そのごく一部だけ(最初のほうの段落部分)を拾うかたちで紹介することになる。

 a) 東電,福島第1原発の敷地内から海に漏れ出る汚染水のうち,トリチウムを含む汚染水の影響については,新聞,テレビではほとんどまともな解説がない。ちまたでは「原子力学会が薄めて海に流しても問題ない」報道一色である。

 現在,原子力・原発関係者は,自分たちに都合の悪い情報を公開しません。新聞,テレビなどのメディアは,いわば原子力村からの情報ばかりを記事に報道しています。

 事実,新聞やテレビがトリチウムの影響について,まともに扱った報道は,この間ほとんどありません。しかし,

  トリチウムは,本当に海に流しても問題ないのでしょうか?
  また魚介類などへの影響はないのでしょうか?
  さらに人体への影響はないのでしょうか?

 本論考では,現時点で入手可能な情報,資料をもとに上記の疑問に答えるべく努力してみました。

 b)『フランスのテレビ番組「終わらない悪夢」より』 トリチウムやクリプトン85のような一部の放射性物質を外に出さないためには膨大なコストがかかる。

 ラ・アーグ再処理工場はそのほとんどを環境中に放出することが,フランスの原子力安全機関(アンドレ=クロード・ラコスト委員長)から許可されている。

 c)「トリチウム(三重水素)」とはなにか。 原子炉内では,リチウムのような軽い元素と中性子の反応および三体核分裂によって生じる。

 電気出力 100万kW の軽水炉を1年間運転すると,原子炉ごとに異なるが,加圧水型軽水炉内には約200兆ベクレル(2× 1014Bq),沸騰水型軽水炉では約20兆ベクレル(2× 1013Bq)が蓄積する。

 水素の中に0.015%が含まれる重水素(2H,記号Dで表わす)の中性子捕獲でも生成するが,軽水炉内でのトリチウム生成への寄与は小さい。ただし,カナダで開発されて韓国に導入されているCANDU(Canada Deuterium oxide- Uranium)炉では重水(D2O)を減速材としているために軽水炉の場合より大量のトリチウムが生じる。
 註記)出典「原子力資料情報室」。

 d) トリチウムの人体への影響。 トリチウムは,DNA分子(つまり遺伝子)のなかで結合し,しかもこのDNA分子のなかでは,あとになってから癌に結びつく変化が引き起こされる場合がある。

 その結果,すなわちトリチウムがDNA分子内で起こす変化は,脳腫瘍,赤ちゃんの先天性奇形,多くの臓器でのガンの原因となるゆえ,けっして看過できるような放射性物質ではない。

 トリチウムの人体影響について京都大学の小出氏はセシウムよりも危険性が高いと,つぎのように指摘しています。
 註記)「京都大学の小出氏の証言」,http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=9HRtIBIuDVs

 「とくに生物学的毒性」が比較的小さいことを指摘しているようですが,トリチウム(三重水素)は一種の β 線核種で,一般の γ 線測定器では測れない点,さらには,生物学的毒性としても,トリチウムが水や水蒸気のかたちで人体に入ると99%吸収されます。皮膚からも吸収され,しかも摂取量の2%はDNAに取りこまれます。

 そして,「動物実験でとくに造血組織を中心に障害(白血病等)が生じることが明らかにされ,人が長期間摂取した重大事故も発生している」という人体の影響はきわめて大きいとの報告されるくらいですから,( γ 線核種に比して)死角的側面を加味すると,セシウムよりもはるかに怖い核種だと個人的には感じています。

 e) とくに,F1〔東電福島第1原発〕事故後,東日本を中心に日本全国で相次いだ「魚の大量死」に関しては飲料水などとして大量に(体重に対して数十%以上)摂取すると生体内反応に失調をきたし,30%を越えると死に至る。重水中では魚類はすべて死に,植物は発芽しない。

 個人的にはトリチウム汚染が原因だと睨んでいます。とくに水との区別がむずかしいだけに,水質調査の結果「原因不明」の場合,たいていはトリチウム汚染が原因ですので。また,身体の皮膚からも容易に浸透すること事は前述したとおりです。

 人体の約60兆もの細胞内の60%~70%は水であってトリチウム水(広義の重水)が30%を占めれば即死するということです。だから,とくに海水浴に関し,再三,必死で警告したわけですよ。また,東日本の広域の水道水にも,一定割合,混入している可能性が極めて濃厚です。(引用終わり)

 このあとにも記述はさらに長く続いているが,紹介できない。興味ある人は自分でじかに読んでほしい。リンク ⇒ http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp0897..html

 なかんずく,トリチウムを海に放出していても危険性は生じないかのように,あるいは,その危険性は海のなかに広く拡散されてしまうゆえ,ほとんど問題がないかのように説明していた関係者たちは,「欺瞞と虚偽に満ちた解説」をあえておこなっていた。だがこれらは,けっして信じてはいけない。

 原発からとくに事故を起こした原発からダダ漏れ状態である「各種の核種」がもたらす害毒は,これから先も「人類・人間が体験を迫られるほかない〈未知である有害物質の実物体験〉」として「新しい公害問題」を誘引し,惹起させていく。

 以上の話題は,現実そのものとして事後において必らず発生していく問題を指示している。それだけに,われわれとしては “戦慄させられる思い” をさせられながらも,ともかくも,トリチウムに関するその有害性を認識する努力は怠ってはいけない。

 最後のほうに説明されていたとおり,
 「トリチウムの人体への影響は,DNA分子(つまり遺伝子)のなかで結合し,DNA分子のなかでは,あとになってから,癌に結びつく変化が引き起こされる場合があり,結果として(トリチウムがDNA分子内で起こす変化は)脳腫瘍,赤ちゃんの先天性奇形,多くの臓器でのガンの原因となるとあり,けっして看過できるものではない」
という点が,もっとも懸念されるべき「疫学的な予想かつ病理的な予見,とくにその晩発性の問題」に関する医学的な診断である。

 現状の医療体制では,前段のような症状を発症させる病例がおそらく,トリチウムの直接的な被害の発生となっており,その「原因」である点が見逃されてしまう場合がほとんどである。この点にこそ,このトリチウムの被害が “恐怖をもって” 認識されるべき「必要性:緊急性と切迫性」がある。

 ⑤ 補足のための文献紹介

 ネット上を探索すれば,いくらでも関連する記述がみつかるが,ここでは,牧田 寛稿「東京電力『トリチウム水海洋放出問題』は何がまずいのか? その論点を整理する」(『HARBOR BUSINESS Online』2018.09.04,https://hbol.jp/174094〔~/4〕)を紹介しておく。

 この記述は,つぎのように「長期的な問題点」も指摘していた。それにしても人類・人間は,たいそうな厄介ものをかかえこんでいるとしか形容できない。
 120年保管するとトリチウムの濃度は1000Bq / Lに,240年間の保管で1Bq / Lになりますので,この時点で天然の雨水とほぼ同濃度になります。このとき全ベータ濃度も1Bq / L程度に減衰しています。ここまで減衰すれば捨てることへの異論は少ないでしょう。

 〔しかし〕合衆国のハンフォードや英国のセラフィールドで世代間管理されている核廃棄物は,50年でいちじるしく管理状態が劣化しており,一部はたいへんに危険な状態に陥っています。わたしは楽観視できないと考えています。
 註記)https://hbol.jp/174094/4
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