「いい感じに」は事故のもと。鈑金塗装の現場から曖昧な言葉をなくす方法
「このキズ、いい感じに直しといて」 「はい、分かりました!」
一見、何の問題もないように聞こえるこの会話。しかし、この「いい感じに」という一言が、手戻りやクレーム、納期の遅延といった、数々の悲劇を生む火種になることを、私たちは知らなくてはなりません。
今回は、仕事の生産性を著しく低下させる「あいまいな言葉」の危険性と、チームの品質を劇的に向上させる具体的なコミュニケーション術について、深く掘り下げていきます。
なぜ「少し」「ちゃんと」といった言葉が問題なのか?
鈑金塗装の現場では、日々さまざまな指示が飛び交います。しかし、その中に下記のような言葉が含まれていたら、要注意です。
「この傷を少し直して」
「塗装を少し薄めに」
「ちゃんと磨いておいて」
「いい感じに仕上げて」
これらの言葉は、一見すると便利なのですが、人によって解釈が全く異なるという致命的な欠陥を抱えています。あなたの思う「少し」と、部下の思う「少し」は、果たして同じでしょうか?
この認識のズレが、
品質の低下:お客様の期待と違う仕上がりになってしまう。
効率の悪化:無駄なやり直しや修正作業が発生し、時間がかかる。
トラブルの発生:お客様との間で誤解が生じ、クレームにつながる。
といった問題を引き起こすのです。
今すぐ実践!曖昧さをなくす4つの技術
では、どうすれば曖昧さをなくし、正確なコミュニケーションが取れるのでしょうか?方法は4つあります。
【数値化】できる限り、数字で伝える 最も強力なのが、指示を数値化することです。「少し直して」ではなく、「この3cmの傷をパテ埋めして、周辺を研磨してください」と伝える。感覚的な要素を排除し、誰が聞いても同じように理解できる指示を出すことが基本です。
【ビジュアル化】写真や図で、イメージを共有する 言葉だけでは伝わりにくい仕上がりのイメージは、写真や図面を使いましょう。「この写真のツヤ感を目指してください」「この図で示した範囲を塗装してください」と、視覚的に共有することで、認識のズレを劇的に減らすことができます。
【専門用語の統一】チーム内で、言葉の定義を合わせる 「肌調整」や「ボカシ塗装」といった専門用語も、人によって微妙にやり方や解釈が違うことがあります。定期的にミーティングを開き、「この言葉は、こういう作業を指す」というチーム内での共通認識を作っておくことが重要です.
【確認作業】指示は、必ず復唱させる 指示を出した後は、「今の指示を、あなたの言葉で説明してみて」と、相手に復唱させて確認する癖をつけましょう。もし認識がズレていれば、その場で修正できます。これは、部下の理解度を確認する上でも非常に有効です。
結論:具体的な言葉が、プロの仕事を作る
鈑金塗装の仕事において、曖昧な言葉の使用は、品質の低下や納期の遅延に直結するリスクです。
具体的な指示を徹底することは、一見すると冷たく、窮屈に感じるかもしれません。しかし、これこそがチーム全員の認識を合わせ、作業の効率化を図り、最終的にお客様の満足度を高める、プロフェッショナルな仕事の進め方なのです。
お客様とのコミュニケーションにおいても同様です。専門用語を避け、分かりやすい言葉で丁寧に説明することが、信頼関係を築く第一歩となります。
気合を入れていきましょう。
【まとめ】
曖昧な言葉の危険性:「少し」「ちゃんと」といった言葉は人によって解釈が異なり、品質低下や効率悪化の原因となる。
具体的な指示の必要性:お客様の期待に応え、トラブルを防ぐためには、誰が聞いても同じように理解できる具体的な指示が不可欠。
4つの技術:**「①数値化」「②ビジュアル化」「③専門用語の統一」「④確認作業」**を徹底することで、コミュニケーションのズレは防げる。
プロのコミュニケーション:具体的な言葉を使うことは、チーム内だけでなく、お客様との信頼関係を築く上でも非常に重要である。
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