一般社団法人 日本損害保険協会が作成した「修理工賃単価に関する対話・協議のあり方にかかるガイドライン」について、その詳細を解説します。

1. 作成の経緯

  • (1)背景
    • 車体整備事業者と損害保険会社間の事故車修理費用直接支払いは、顧客利便性を重視した長年の慣行です。
    • 損害保険会社は、自動車ユーザーに代わり修理内容や費用を確認・協議する役割を担っています。
    • 過去には、修理費用の高騰が保険料に影響を与えることが社会問題となり、損害保険会社は適正な保険金支払いに努めてきました。
    • 金融庁の調査などにより、修理工賃単価に関する損害保険会社の姿勢に対し、様々な意見が寄せられています。
    • 顧客目線を第一に、公平・適正な保険金支払いを維持しつつ、車体整備事業者との丁寧な対話が重要であるとの認識から、本ガイドラインが策定されました。
    • 公正取引委員会の「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」も参考にされています。
  • (2)本ガイドラインの位置づけ
    • 本ガイドラインは、金融庁の監督指針や協会のガイドラインに基づき、会員会社が車体整備事業者への保険金直接支払いにあたって取り組むべき事項をまとめたものです。

2. 考え方

  • (1)対話・協議方針の決定
    • 経営陣の関与の下、修理工賃単価に関する対応方針を決定し、社内に周知します。
    • 消費者物価指数だけでなく、他の要素も考慮し、定期的に方針を見直します。
    • 定期的な協議や、車体整備事業者から協議を求められた場合の対応方針を決定します。
    • 現場の取り組み状況を定期的に経営陣に報告し、必要に応じて対応方針を更新します。
  • (2)協議を求められた場合の対応
    • 車体整備事業者から協議を求められた場合には、対話を行い、不利益な扱いをしません。
    • 協議を求められた場合の対応方針やフローを定め、社内に周知します。
    • 実質的な協議が可能な知識や経験を有する者が協議に出席します。
    • 自社の見解を適切に説明できるよう、説明資料を作成します。
  • (3)協議時の丁寧な対話
    • 提示された資料や説明内容を丁寧に確認し、自社の見解を説明します。
    • 根拠資料の提示を求め、車体整備事業者の主張を正確に把握します。
    • 見解が相違する場合でも、車体整備事業者の主張を踏まえ、自社の考え方を丁寧に説明します。
    • 苦情や要請に対しては、本社部門が内容を把握し、適切な対応や再発防止に繋げます。
  • (4)協議にかかる情報収集
    • 平素の情報収集や車体整備事業者との対話を通じて、状況把握に努め、情報を共有します。
    • 車体整備事業者の環境や主張内容を把握します。
    • 説明実施の有無や交渉の合意状況を記録し、検証・確認できるように管理します。
    • 独占禁止法に抵触する行為は厳に慎みます。
  • (5)対話・協議の前提となる関係性の構築
    • 顧客、損害保険会社、車体整備事業者の関係性を正確に理解し、良好な関係を構築します。
    • 損害保険会社の立場や見解を丁寧に説明します。
    • 車体整備の透明性確保に向けた取り組みを支援し、関係性を構築します。

本ガイドラインは、損害保険会社と車体整備事業者との間で、より円滑で建設的な関係を築くことを目的としています。