修理工場の視点で解説!なぜ中古車屋は、過去最多ペースで潰れているのか?

今回は、中古車販売店と切っても切れない縁にある、事故修理を行っている立場からの目線でこの問題を解説します!

「ビッグモーターの事件以来、中古車業界って大丈夫なの?」 「買った車が、ちゃんと納車されるか不安…」

最近、そんな声が聞こえてくるのも無理はありません。帝国データバンクの調査によると、2025年の中古車販売店の倒産件数は、過去最多を更新するペースで増え続けているのです。

なぜ、これほどまでに多くの中古車販売店が、経営の危機に瀕しているのでしょうか? インターネットで相場が筒抜けになったから?人口が減って、車が売れなくなったから?それらも一因ではあります。しかし、私自身の経験から見えている「本当の理由」は、少し違います。

今回は、多くの中古車販売店が頼ってきた「最大のドル箱」が、いかにして失われていったのか、その裏側を、私自身の経験を元に解説します。

中古車屋にとって、一番おいしい商売とは?

中古車販売店にとって、一番利益が大きく、しかも楽な仕事は何だと思いますか? それは、「車を売ること」ではありません。実は、**「お客様が事故を起こした車を、修理に出すこと」**だったのです。

どういうことか、説明しましょう。 お客様が、そのお店で買った車で事故を起こしたとします。多くのお客様は、買ったお店に修理を依頼しますよね。すると、中古車販売店は、その事故車を私のような外注の鈑金塗装工場に回します。

ここからが問題です。 彼らは、私のような修理工場に対して**「今回は事情があるから、安くしてくれ」「次にもっと儲かる仕事を持ってくるから」**と、あの手この手で修理代を値切ってきます。特に、私が起業したばかりの頃は、仕事に穴を開けたくないという気持ちを逆手に取られ、無茶な要求を飲まざるを得ないこともありました。時には、「保険で直すんだから、ついでにこのキズもサービスで直しといて」といった要求をされることも日常茶飯事でした。

一方で、彼らは保険会社には、正当な(あるいはそれ以上の)修理費用を請求します。 例えば、保険会社から100万円の修理代が支払われるとします。彼らは私のような修理工場を叩いて30万円で仕事をさせ、差額の70万円を、何のリスクも負わずに丸儲けするのです。実際に、こんなこともありました。これを業界では「中抜き」と呼びます。

車を売るためには、接客や商談、納車準備など、多くの手間と時間がかかります。しかし、事故修理の「中抜き」は、外注先に丸投げするだけで、販売時の利益の数倍にもなる、まさに「ドル箱」だったのです。

なぜ、その「ドル箱」は失われたのか?

しかし、近年、その状況は大きく変わりました。 私のような鈑金塗装工場が、そのような不明瞭で、一方的な要求を**「もう受けない」**と、声を上げ始めたのです。

ビッグモーターの問題をきっかけに、業界全体でコンプライアンス意識が高まったこともありますが、それ以上に、私たち職人が「このままでは、自分たちの技術が安売りされ、未来の技術者が育たない」という強い危機感を抱いたからです。

その結果、どうなったか。 「人のふんどしで相撲を取る」ような形で、事故修理の「中抜き」に大きく依存していた中古車販売店は、**一気に最大の収益源を失いました。**これが、倒産が急増している、私自身が現場で見てきた最大の要因だと考えています。

私のスタンス、そして業界の未来

もちろん、今でも私の工場では中古車販売店からの修理依頼を受けることがあります。しかし、私のスタンスは明確です。 それは、**「レス(キャッシュバック)は、一切行わない」**ということです。

外注先からすれば「お高く留まりやがって」と思われるかもしれません。しかし、私は、自分たちの技術に対して、キャッシュバックという形で値引きをする必要はないと固く信じています。

それは、未来の技術者たちを守るためです。彼らが、自分の仕事に誇りを持ち、正当な対価を得られる業界でなければ、この国の素晴らしい自動車修理技術は、いずれ廃れてしまうでしょう。

結論:正直者が、生き残る時代へ

中古車業界に吹く逆風は、業界が浄化されるための、必要な痛みなのかもしれません。

これからは、情報の非対称性を利用したり、下請け業者を不当に叩いたりするのではなく、お客様との信頼関係を第一に考え、アフターサービスまで含めて誠実な商売をする販売店だけが、生き残っていく時代になるでしょう。

そして私たちのような修理工場が、安売り競争から脱却し、技術力で正々堂々と勝負する。そんな健全な業界になることを、心から願っています。

気合を入れていきましょう。

【まとめ】

  1. 倒産急増の背景:中古車販売店の倒産が過去最多ペースで増加。その裏には、ネットでの価格透明化だけでなく、構造的な問題がある。

  2. 本当の理由:最大の収益源であった**事故修理の「中抜き」**が、私のような修理工場の「反乱」によって困難になったことが、大きな要因。

  3. 現場の決意:私のような正直な修理工場は、技術の価値を守り、未来の技術者を育てるため、不当な値引きやキャッシュバックを拒否している。

  4. 業界の未来:「中抜き」のようなビジネスモデルは終焉を迎え、お客様と誠実に向き合う正直な販売店と修理工場だけが生き残る時代になる。