2008年04月21日

James Taylor / Sweet Baby James

普段、パンクやらオルタナやらエモやらガレージやら言っていても、やっぱりこういう音をしみじみと聴くのも好きだ。

Sweet Baby James本作は70年代初頭に活況を呈した“シンガーソングライター”ブームを象徴する作品であり、現在でも多くのリスナーに愛され続けている“名作”である。また、不慮の死を遂げた女友達に捧げた曲で彼を一躍表舞台に押し上げたヒット曲「Fire and Rain」を収録する作品としても知られている。

「オルタモントの悲劇」が60年代の終焉を告げ、Beatlesが解散し、Jimi Hendrix、Janis Joplin、Jim Morrison、Duane Allman等が次々と他界し、ヒッピー文化の共同幻想が崩れつつあったこの時代にあっては、よりパーソナル且つ内省的な表現をロックに求める流れが発生したのも当然のことと言えるのではないだろうか。

特に、そのような時代のひとつの潮流を象徴し代表していたのが本作『Sweet Baby James』であり「Fire and Rain」でもあるのだが、他にもCarole King『Tapestry』、Neil Young『After The Gold Rush』、Simon and Garfunkel『Bridge over Troubled Water』等々優れた作品が数多く生み出されている中で、何と言っても、John Lennonの『John Lennon/Plastic Ono Band(ジョンの魂)』がこの時期の空気を分かり易く伝えているのではないかと思う。

では、上記の同時代の名作群に劣らず、本作が現在に至るまで愛され続けている理由とは一体何であろうか?
包容力のあるJamesの声や、情緒過多に陥らないながらもしっかりとした説得力を持ったメロディーラインは無論のこと、元Peter&GordonのPeter Asher(プロデュース&コーラス)、Flying Machine時代以前からの盟友であるDanny Kortchmar(ギター)、本作発表の翌年(71年)に全米1位を獲得することになる「You've got a friend」の作者であるCarole King(ピアノ)等による献身的なサポートが本作に慈愛に満ちた輝きを与えていると言ってもよいのではないかと思うのだが、やはり何といっても、James自らによるアコースティックギターサウンドも大きな役割を果たしているのではないだろうか。
実際、カントリー、フォーク、ブルースを素材にしていながらも、土臭さをあまり感じさせずに、それどころか都会的でモダンな佇まいすら漂わせているのは、その独創的ともいえるギターフレーズによるところが大きい。特にフォスターでお馴染みの6曲目「Oh, Susannah(おお スザンナ)」における個性的なテンポの解釈は特徴的だ。

このように、本作に代表されるこの時期のトレンドが、ロックに哲学的な側面をもたらすとともに洗練されたアプローチを提示したことは言うまでもないが、『What's going on』制作直前のMarvin Gayeが本作を愛聴していたという事実も、同時代の“ニュー・ソウル”の流れを考えれば実に興味深い話だ。

「Fire and Rain」


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beerks880311 at 01:02│Comments(6)TrackBack(0)clip!ロック 

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この記事へのコメント

1. Posted by FUJIMIROCK   2008年04月22日 23:08
お邪魔します。
そうですね。JTは,アコースティックな作品でもすごく都会的な音を出していますよね。アレンジも洗練されていますし。
マーヴィン・ゲイが本作を愛聴していたなんて,面白いですよね。
2. Posted by コハゲ   2008年04月22日 23:36
銀色の声、ジェイムズ・テイラー。
このアルバムは昔からずっと聴こう聴こうと思いつつも、未だ聴けずにいます(泣)。

そういえば彼の近影もニック・ケイブと同じく・・・
3. Posted by ケニー   2008年04月22日 23:54
>FUJIMIROCKさん

コメントありがとうございます。

時代背景に関する表現は、FUJIMIROCKさんの記事と似た感じになりました。やはりSSWブーム到来の必然性について説明しようとすると、この辺に言及する必要はありますよね。

いずれにせよ、ようやく本作を手元においてじっくりと聴くことができました。後押ししていただき、ありがとうございます。
4. Posted by ケニー   2008年04月22日 23:58
>コハゲさん

おぉ!近影をご覧になりましたか!
Nick Caveとはだいぶ違って、かなりサッパリした感じになってますよね。

それにしても、未だにコンスタントに活動しているのは偉いです。
5. Posted by kura_mo   2008年04月24日 02:19
その後のセクションとのバンドサウンドに比べると、純然たるソロ作というたたずまいが感じられる作品ですね。カントリー色が強いのも今作ならではの特徴です。
歌詞も含め非常にパーソナルな側面のある作品であるが故、ハマった人にとっては特別なアルバムとなるのでしょうね。

JTの他のアルバムに比べると愛聴度は低いのですが、12月1日には必ず聴きますね。

6. Posted by ケニー   2008年04月27日 20:56
>kura_moさん

コメントありがとうございます。

そうですね。この自分を中心とした“半径1m”の感覚が、この作品の存在感を特別なものにしていますよね。

流石に日本(東京辺り)では暖冬で、12月の最初の日に雪が降り積もることは珍しくなりましたけれども、こんな子守唄も良いですね。

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