銀座四丁目その日暮

仕事場は銀座四丁目。気ままに日々ビールビールしているコピーライター日暮真三(ひぐらししんぞう)。「西武」「ぴあ」「リクルート」「キリン」「小学館」「TOTO」「劇団四季」、「無印良品」のネーミング、「日清オイリオ」等を手がける。作詞はNHK「おかあさんといっしょ」の「こんなこいるかな」「ともだち8にん」「夢のなか」「あいうー」「アイーダアイダ」、世界卓球選手権テーマソング「ネットを越えろ」、松田優作ラストアルバム。著書に黒田征太郎絵「怒る犬」岩波書店、宮沢りえ絵「ふたりの12のものがたり」木楽舎がある。東京コピーライターズクラブ賞、同特別賞、ニューヨークADC賞金賞等を受賞。とまあエラそうに書いていますが、相変わらずのその日暮らしです。


ミニシアターで、前の席におおきな男がすわった。頭でかくれてスクリーンの下のほうが見えない。指定の席だけれど空いているので、ふたつとなりに移動した。予告編の途中に入ってきた若者がいて、ぼくがいた席にすわった。スマホを隠すようにしてのぞいている。席を確認しているようだ。ぼくが移動した席が彼の席だと思って、声をかけようとしたが、こちらをチラッとも見ない。スマホをしまうとしばらくそのまま前を向いていたが、決心したように立つと、左前方の席にだまって移っていった。映画がはじまってしばらくして、大男も身をかたくしてすわっていることに気がついた。

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こころのページをめくりながら
世界の涯まで行ってきま〜す

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歌にも絵本にも、なにかのときに寄り添ってくれる、ふしぎなちからがあるんだね。そんな歌がつくれたらいいな。気負わずに、じぶんらしく。それが案外、むずかしい。どこかで、なにかを、外したい。いつまでたっても、びっくりさせたいという欲があるんだ。

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少し暑さが和らいだので電車に乗って15分。吉祥寺へ。マルイの脇をまっすぐ。井の頭公園の階段を降りて池の真ん中の橋を渡って黒門に向かう通りに、一年間住んでいたことがある。三十代の前半で夜も昼もない多忙な時代だった。そのうえ一年のうちの半分は海外ロケに出ていたので、土地にあまりなじみはなかったはずだけれど、ひさしぶりに再訪してみると様々なことが思い出された。雪の日の朝、桜のころの夜の散策、季節があざやかにうつりかわっていく。日々の贅沢な風景に、ずいぶん元気をもらっていたことに、いまさらながら気がついた。緑陰と水辺。都市の中にぽっかりと存在するひとつの記憶。下北沢と銀座を往復する暮らしのなかで、忘れていたことがたくさんあったんだなあ。足元を見よ。しっかりと歩いていけ。

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すべすべの木肌をみればわかる。サルもすべる。さりげないおかしみがあって、ほらね、という余裕のある樹名に、なんだかホッとする。最近は、店名にしてもなんにしても、いかにも、というネーミングが多い。名前で気を引こうとする意図がみえみえで、奇をてらいすぎではないか、とも思う。だからだいたいは一過性で終わる。「無印良品」のネーミングは、たまたまモノづくりの考え方から生まれてきたことばだったから、それなりに長生きをしている。でも、サルスベリにはとてもかなわないな。そういえば樹木や虫や鳥たちの名前には、おう!と思わせられる傑作が多いなあ。自然発生的に、学者たちの必要から生まれた名前だからだろうか。

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