クラシックギターの音響や録音といった「音」に関することにたずさわっていることもあってか、いろんな方から「CDよりもレコードの方がやっぱり音がいいですよねぇ」とか、「レコードというのはやっぱりCDよりも音がいいんですか?」といったお話をもちかけられる。そんなとき「そりゃあレコードの方がいいですよ」と答えれば、相手は理由も聞かずに納得し話はそこで終わる。LPの方がCDよりも音が良いという話はその反対の話より納得しやすいのであろうが、その理由もまた分らないではない。現にこの私もごく最近ある曲のLP(中古)を手に入れ、それまで聴いてきたCDとのあまりの音の違いに、こんなにいい曲だったのかと驚かされたことがあった。デジタル全盛といってよい現代において、「デジタルよりもアナログの方が優れている」という話には反論しがたい何かがある。扱いが面倒で難しかったりするアナログに対し、便利で安直に扱えるデジタルに慣れきってしまっている現代人の、アナログに対する何がしかのあこがれというのか、そういった感情をみな抱いているのかもしれない。
アナログとデジタル、結局どちらがより優れているのか。これを話し出すとかなり突っ込んだことまで話さなくてはならないことになるので、いつも口頭でお話しすることは避けているのだが、実はそれほど単純なことではすまないのである。
結論から言ってしまうと、ことCDやLPの音の良し悪しに限っていえば、CDよりもLPの方が「いつも」優れているとは限らない。LPよりもCDの方が良いということもある、ということになる。原理上、上限が22KHzでスパッと切れてしまっているCDの方がずっと上の周波数まで伸びているはずのLPよりも音がいいはずがないではないかと思うのだが、現実にはそんなことがいくらでも起こっているのである。ではなぜそうなるのか。答えは簡単だ。CDにしてもLPにしても一般に販売されているものの大部分といってしまえば言い過ぎかもしれないが、かなりの比率で安直に製造されているものが多いため、元はまったく同じ録音から作られたにもかかわらず、どちらが優れているのか結論づけられるほど、いずれもベストの状態に出来上がっていないからである。従って安直に製造されたLPよりもしっかりと作られたCDの方がよほど良い音で鳴ってくれるなどということがいくらでも起こってきてしまうのだ。現に私が所有しているものの中でも、昔LPであまりいい音ではないなと思いながら聴いていたものが、最近になってCD化されたものを聴くと「こんなにいい録音だったのか」とびっくりさせられるものがいくらでもある。