◆11月7日(火)リューティスト、会所幹也さんのリサイタルが行われ、私はその音響PA(SR)を担当させていただいた。きっかけは福田進一さんからの紹介の電話。
◆ギターのコンサートではイクリプス・スピーカー、TD712(12cm)という一番大きいタイプのものを使用することが多いのだが、今回はリュート、しかもルネサンス・リュートということと、会場が335席のフェニックス・ホールということもあって、写真のようにTD508(8cm)という、イクリプスの上から3番目のスピーカーを使用した。
◆リュートと言う楽器は非常に音が小さい。従ってなるべく大きいスピーカーを使ったらよいのでは、と思われる方もおられるかも知れないが、PA(SR)というのは、音が大きければ良いというものではない。私はこのイクリプスというスピーカーを使ったシステムを開発してはみたものの、基本的にはマイク+スピーカーシステムで楽器の音を拡大するということを良しとはしていない。やはりあくまでもギターやリュートの音は生で聴きたい。しかしながら、ホールで音が聞こえない、音が聴き取りにくい、ということになるとこれはもう如何ともしがたい。
◆だとすれば、できるだけ元の音色を損なわないという大前提で、少しだけ音を底上げするしかない。従って、イクリプスを使い、それなりのマイクとアンプを使って、しかもそれぞれの会場の音響状態に合わせてPA(SR)を行うわけである。
◆今回、私は会所幹也という人と始めて知り合い、親しく話し合い、初めて音響をさせていただいたわけだが、その演奏は想像をはるかに超える素晴らしいものであった。
とにかく技術的にも優れているが、奏でるルネサンスの音楽が素晴らしい。素朴な旋律と和声が、心に染み入ってくるようであった。当時の民衆が感じていた感情と同じものを、少しは感じ取れたような気がしたのも、私の生まれて初めての経験だった。
今回彼の演奏を聴き、私にとって、これまでは少し縁遠いものであったルネサンス音楽を改めて身近に感じることができた。
◆コンサートを終えて翌日から今日まで、毎日、これまで買い集めてきたリュートのレコードやCDを聴いているが、これまで聴いてきた音楽とまったく違ったものに聞こえるようになったのは、会所幹也さんのおかげだと思っている。新しい音楽の再発見をしたような気持ちでいる。