「ナナハよ」に触発されて、もし自分がRPG作るならこんな感じのお話にするかなぁと思いながら、ブログの間を埋める為にもサクサクっと書きました。

そういえば上記の作品のスタッフロールに「mayo」って名前があったんですが、
たまにそのHNで書き込まれる方居ますがただの偶然でしょうかね。

あ、USBいまだ見つかりません 。
中身には名前と住所が書かれたテキストファイルが入っているので、拾った方は届けて下さいね(´・ω・`)




タイトル未定





プロローグ



「らめぇっ!!!」
 やや裏返った掛け声と共に俺の手の平から火の玉が迸る。
 真っ直ぐ射出されたそれが目の前の巨木に衝突すると、炸裂音と硝煙を伴い拳大の黒いシミを作った。
 ぷすぷすと音を立てる幹を満足そうに見つめる。
「……ふぅ。こんなもんか」
「アホか!」
 額を拭おうとすると、何の前触れも無く後頭部を衝撃が襲った。俺は前のめりに地に伏すと、そのまま何度か前転して巨木にぶつかった。
 後頭部を地面に着け、背中は巨木の幹に預け、両脚をだらしなく開いて胯間を天に晒している。いわゆるまんぐり返しの状態で空を見上げると、そこには見知った顔が眉間に皺を寄せて俺を見下ろしていた。
 チューブトップにホットパンツの道着を着たおさげの少女。幼さを残した目鼻立ちは疑いようもなく愛らしいが、その見た目に騙されてはいけない。
 彼女は片足を自身の頭より高く上げたままだった。どうやら俺は彼女の回し蹴りを後頭部に喰らったらしい。それにしても片足立ちだというのに、惚れ惚れするほど綺麗な立ち姿だ。体幹にブレが無いのは足腰の鍛錬を怠っていない証拠だ。ぱっと見はやや小柄で、華奢な少女にしか見えないが。
「何やってんのよ! こんなとこで火の魔法なんて使ったら山火事になるでしょ!」
「……ミナこそ不意打ちで人の頭を蹴り飛ばすなよ。お前の手足は凶器なんだから」
 後頭部の痛みに耐えながらも、恥ずかしい体勢のまま冷静に指摘する。
「手加減したに決まってるでしょ」
「そりゃそうだろうな」
 武闘家のミナが無防備の背中を攻撃すればそれは即会心の一撃に繋がる。それは即ち魔法使いの俺の防御力など軽く貫通して、下手をすれば頭蓋仡を粉砕しかねない。それが恥辱のポーズを晒す程度で済んでいる。ミナにとっては撫でるような蹴りだったに違いない。ただでさえ赤子の頃からの付き合いなのだ。突っ込みの加減は互いに心得ている。
「でもさ、おババ様の予言ではそろそろなんだろ?」
「だからって今更気合入れても仕方無いでしょ。勇者様があたし達を迎えに来る前に村を全焼させられたらたまんないっての」
「そんな事言われてもじっとなんてしてられないよ。ミナはもう免許皆伝の腕前だから良いけどさ、俺はまだまだ初級魔法しか使えない見習いだし」
「別に良いじゃない。最初は誰だって弱いわよ。どうせ伝説の勇者様ったって似たようペーペーでしょ?」
「お前なぁ。そんな言い方してたらおババ様にどやされるぞ」
「はっ。別に仲間になる事が運命づけられてるからって、付き人になるわけじゃないんだから関係は対等でしょ。へーこらする必要無いっての」
「そりゃそうだけどやっぱり物語の主役といえば勇者だろ。いったいどんな人なんだろうな」
「意外と鈍臭い奴かもよ? アキラ。あんたよりもね」
 ミナはそう言うとにっしっし、と屈託の無い笑顔を浮かべた。
 まだ見ぬ伝説の勇者を相手にこの言い草。怖いもの知らずのミナらしい。なんだかんだで緊張を隠せない俺からすれば頼もしくもある。
 俺達が生まれる前よりずっと遥か昔から、この世界の半分は魔王によって支配されていた。
 城壁に囲まれた巨大都市ならいざ知らず、俺達の住む山奥の人里では魔物による被害も少なくない。ついこの前も畑を荒らされて、俺とナミで何とか追っ払った。
 この村には魔物と戦える人間は俺とミナしか居ないのだ。
 要請さえすれば都市から兵隊さんを呼ぶことも出来るが、常勤として雇い続けるにはそれなりの報酬が必要になってくる。細々と農業を営むこの小さな村ではどだい無理な額だ。
 そんな村で俺とナミは産まれ育てられた。
 いずれ勇者様と共に魔王を倒す旅に出る運命を背負わされて。
 とはいえそれは栄誉な事なので、悲劇だと嘆いた事など一度も無い。それはミナも同じだ。ここでひっそり暮らせればそれはそれで幸せな日々を過ごせるのだろうが、やはり健全な若者としては人並みの野望や好奇心だってある。
 この村のおババ様が若い頃は都市で名を馳せた占い師で、王様からも信頼が厚かった。そんな彼女がある日水晶に映した光景が、この村で育った俺とミナを勇者様が迎えに来る、という未来だったのだ。
 占い通り俺とミナが勇者様のお供として旅立った暁には、常勤の兵隊さんを派遣してくれるとの約束を王様と結んでいるようなので、尚更俺達二人に課せられた責任は重大だ。
「ま、来なかったら来なかったでどうでも良いけど」
 ミナはそう嘯く。
「だったらずっとこの村で静かに暮らす事になるぞ?」
「それはそれで良いじゃない。あたしは好きよ。この村。静かで、暖かくて」
「折角習った武術が宝の持ち腐れだ」
「棒術応用して畑耕すわよ」
「同世代の男は俺しか居ないから、嫌でも俺んとこに嫁入りすることになるけど」
「ま、しょうがないわね」
「嫌じゃないのか?」
「なによ? アキラは嫌なの?」
「別にそういうわけじゃ……」
「はっきり言いなさいよ」
 ミナは腕を組んで仁王立ちの構えを取ると唇を尖らせて、依然としてまんぐり返しのままの俺を睥睨した。
「俺は、ミナの事ずっと好きだったし」
「知ってるわよ」
「あ、そう」
「幼馴染みなんだから当たり前でしょ」
 ミナは頬を紅潮させながら視線を横に泳がせた。
「そっちはどうなんだよ」
「……言わなきゃわかんないわけ?」
「はっきり言えって言ったのお前だろ」
「そっちも幼馴染みなんだから、あたしが意外と照れ屋な事くらい知ってるでしょ」
 堂々とそんな事を言う。
「その上で言わせたい」
「くっ……この隠れドエス」
「ほれほれ」
 情けない格好のままミナを追い詰める。
「あーもう! わかったわよ!」
 ミナは耳まで真っ赤にすると、右足で大きく地面を踏みつけた。
 身体が跳ね飛ばされるほどに森が激しく揺れる。
 勿論ミナのように平均的な体格の少女にそんな筋力が伴うはずもない。たまに入浴を覗きに行って確認する手足や腰つきなどは、村の中年が都市から取り寄せた卑猥な本に載る少女よりも細い。筋張ってもおらず、むしろ筋肉など付いているようにすらみえない。それでいて出ているところは出ているのだから堪らない。
 話が逸れた。とにかく彼女は筋力ではなく体内に流れる気を利用して、その尋常じゃない膂力を発揮する事が出来る。
 震動によって地面から突き上げられ、空中に放り出された俺は、何とか体勢を整えて着地する。
 目の前には両手をぎゅっと握りしめて、耳まで真っ赤にしているミナが上目使いに俺を睨んで……いや、見つめていた。
「……た、旅が終わったらあたしをお嫁さんにしなさいよね! わかった!」
「いやわからん。ちゃんと言ってくれ」
「このド腐れドエスがぁ!」
 ミナの正拳中段突きが俺の胸板を押すが、気が乱れている彼女の拳など、年相応の少女の攻撃力しか無い。文字通り痛くも痒くも無い。
 ミナは恥ずかしさが頂点に達してしまったのか背中を向けてしまった。少々苛め……いや、可愛がりすぎてしまったのかもしれない。
「と、とにかく、あんたは来るかどうかわからない勇者様の事よりも、未来のお嫁さんの事を気にしてなきゃ駄目なの!」
「はいはいわかったよ」
「そ、それといい加減お風呂覗くの止めてよね!」
「あ、バレてたんだ……」
 完璧な隠密を心掛けていたのに。
「当たり前でしょ! こちとら武闘家だっての!」
 ミナは可愛らしく足下の小石をコツンと蹴り飛ばすと、「い、言ってくれたら……普通に見せてあげなくもないのにさ」と蚊が止まりそうなほどか細い声で呟いた。
 俺は男らしくはっきりと言葉を返す。
「いや。そこはこっそり覗きたい」
「このド変態!」
「ま、冗談抜きでさ、今のうちにしっかり鍛錬しといて、勇者様や世界の平和だけじゃなく、ミナの事も守ってあげたいから」
「……なんか無理矢理話すり替えられた気がするんだけど」
 不満そうな声を漏らすミナに背中を向けると、火の魔法の練習を再開する為巨木に向き直った。
 すると今度は優しく、上着の袖を引っ張られる。
「……あたしだって、アキラを守る為に強くなったんだから。そりゃ勇者様も大事だけど、一番はあんたなんだから」
「うん。ありがと。俺も一緒だよ」
 背中から伝わる温かい気持ちを胸に納めると、俺は手の平に魔力を集中させる。
 手を大木に向けると大声で叫んだ。
「らめぇっ!!!」
 ドカン、と火の玉が爆発する。
 ミナは溜息をつくと、俺から少し離れた場所で腰を下ろした。
「火事になりそうになったら、あたしがこの周辺の林全部薙ぎ払ってあげるわよ」
「そりゃ助かる。氷雪系の呪文はまだ苦手なんだよな……らめぇっ!!!」
「前から思ってたんだけど、その呪文詠唱って合ってんの?」
「そりゃ合ってるだろ。この古文書通りなんだから」
 俺は懐からボロボロの書物を取り出した。
「あたし古代文字読めないからわかんないんだけどさ、なんか違う気がするんだけど」
「違わないだろ。こうしてちゃんと魔法出てるんだし。ちなみに上位魔法の『見ちゃらめぇっ!!!』も習得済みだ。最上位の『マゾらめぇっ!!!』はまだ難しいけどな」
「なんか絶対違う気がするわ。反対から読んでるとかない?」
「だからこうしてちゃんと発動してるんだから間違ってはないだろ。よく見てろよ? 一回溜めるのがコツなんだ。こうやって…………ら、らめぇっ!!!」
 再度巨木が爆発で揺れた。木の葉がひらひらと舞い落ちる。
 俺は満足気にそれを眺めていると、ミナが突然立ち上がった。
「お。ようやく俺の魔法の凄さに気付いたか?」
「ちょっと黙って」
「え?」
「何か近付いてくる……」
 そう言われても俺には風が木々を揺らす音と、鳥の鳴き声くらいしか聞こえない。ここは山奥の村からさらに離れた森の中。本来ならば人が立ち入る場所ではない。
「まさかまた魔物か?」
 俺は辺りを見回しながら、ついこの前追い払った、畑荒らしの魔物を思い返す。
 ミナは一切の気負いが見られない立ち姿で目を瞑る。一見花を摘みに来た少女にしか見えないが、落ち着き払った雰囲気は歴戦の武道家を連想させる。
「それはまだわからないけど否定は出来ないわね」
 意識を集中したミナの五感は何よりも信頼出来る。
「近付いてくる。東の方角」
「前来た魔物も東からだったな」
 村は西。ならここでせき止める事が出来る。俺は右手に魔力を集中させた。
「遂に俺の『見ちゃらめぇっ!!!』が実戦で火を噴く時が来たか。ふん。右手が疼きおるわ」
「ちょ、うるさい」
「すいません」
「……この歩調は……人間?」
「え?」
 俺が問い返すと同時に、俺の耳にも森を掻き分ける足音が聞こえて来た。
 二人緊張した面持ちで森林の闇を見守る。
 木陰から顔を出したのは、俺達とさほど年の変わらない青年。
 やや長めの茶髪で、うっすらそばかすが残る、見るからに意地が悪そうな目つきの若い男だった。
 彼は俺達を品定めするような視線を向けると、露骨に残念そうに顔をしかめて口を開いた。
「お前達が武道家と魔法使いか? 俺が勇者だ。話は聞いてんだろ? とりあえず村まで案内しろや」



一話



 ミナと肩を並べて、村へと繋がる獣道を下っていく。
 ミナはちらりと後ろを振り返ると、俺に「なんだか思ってたのと全然違うね」と耳打ちしてきた。
「そういう事言うなって」
 後ろを着いてくる勇者様に聞こえないよう小声で返す。
「だってさ、別に精悍って感じでも正義漢って感じでもないし」
「見た目で判断するなよ」
「おい。何くっちゃべってんだ。いつまで歩かせんだよ。もうだりいよ」
 背後から掛かる慇懃無礼な言葉にミナは唇を尖らせた。
「……中身も推して知るべしって感じ」
 不満そうに肩を竦めるミナを視線で宥める。
 振り返って「もう少しなんで」と作り笑いを浮かべた。
「あっそ。ところでお前ら年いくつ?」
「二人とも十八です」
「マジで? ガキじゃねーか。こんなの頼りになんのかよ。ったく。おい。村着いたらまず酒場連れてけよ」
 ミナのこめかみに青筋が浮かんで歯軋りの音が聞こえた。俺は必死に取り繕う。
「いやうちの村そういうところ無いんで。それにまずおババ様のところに顔を出してもらわないと」
「げー。酒場も無いとかマジかよ。しけた村なんだな。王様の言うことなんか無視してこんなところ寄るんじゃなかったぜ。あいつゴミみたいな装備と端金しかよこさねーし。マジふざけてるよなぁ」
 ミナの怒りは有頂天に達しようとしていた。俺はなんとか話題を逸らそうと苦心する。
「装備、とは? 随分軽装のようですけど」
 軽装どころか一般人の普段着そのものといった出で立ちだ。都市から来ただけはあって、自分とお洒落な服装ではある。しかし武具に関しては一切何も纏っていないように見えた。剣の一振りどころか木の棒すら持っていない。完全な徒手空拳である。
「んなもん速攻売っちまったよ。そんで女買って終わり。それも外れでさぁ。最悪だったよ。パネルと顔が全然違うでやんの。そういえばおい、そこの。おい。お前だよ武道家。お前よく見ると顔は良いな。ロリの趣味はねーけどまぁまぁだな。ちょっとケツ振ってみろよ。乳でけーわりにはケツは小せえなお前。へっへっへ」
 ぷつん、と何かが切れた音が隣から聞こえた。まずいと思った瞬間にはもう遅い。
 ミナは足を止めて振り返ると、「黙って聞いてりゃさっきから失礼ね。大体あんたはいくつなのよ!?」と勇者様に人差し指を突き立てた。
 勇者様は片手の小指で耳をほじりながら、億劫そうに「お前らと一緒だよ」とだけ答えた。
「はっ。じゃああんたもガキじゃない」
「あんたあんたっててめぇな。俺にはユージって名前があんだよ」
「あたし達にだってアキラとミナって立派な名前があるのよ! おい、とかお前、とかじゃないっての。言っとくけどあたし達の事を従者か何かだと思ってるんなら勘違いだからね! あくまで一緒に戦う仲間。主従関係なんかじゃないんだから!」
「ピーチクパーチク五月蠅い女だな。伝説の勇者に対する礼儀がねってねぇぞ」
「それも本当かどうか怪しいところね。全然強そうに見えないんだけど」
「あ? じゃあ試してみっか?」
「上等じゃない」
 二人が交える視線で火花が散る。ミナがこうなったら止める手立ては俺には無い。
 勇者様は億劫そうに首を横に振りポキポキと音を鳴らす。
「生意気な駄犬は最初に躾けとかないとな」
 ミナは獰猛な笑みを浮かべて拳を手の平で包んで同様の音を鳴らした。
「あんたって飼い犬に手を咬まれるタイプでしょ? 動物にすら人望無さそうだもんね」
「見た目は悪くねーから毛並みは揃えてやんよ」
「今のうちに王様に対する謝罪文句考えといた方が良いんじゃない? 僕チン弱いからやっぱり勇者辞退しますぅって」
 熾烈な勢いで売り言葉に買い言葉が交差する。
 これから魔王討伐の旅に出ようってところなのに、最初からこうでは先が思いやられる。
 しかし旅の途中で不満が募るよりは、最初にきっちりケジメをつけておいた方が良いかもしれない。
「あたしが勝ったらあたし達に対する態度を改めてもらうわよ! 負けたらお尻でも何でも振ってやるわよ」
「その言葉忘れんなよてめー」
「あっちの方に滝があって、その付近に開いた場所があるからそっちに来なさい」
 ミナはずんずんと大股で、村へと別の方向に歩いていく。勇者様もそれに着いていった。
 ミナは一度振り返ると、「ごめん。先に村に戻ってて。礼儀知らずの勇者様に世間の荒波教えてやるから」とだけ言い残した。
 勇者様は鼻で笑うと、「酒場は無くても酒の一杯くらいあんだろ? 用意しとけよ三下」と俺に言った。
 森の奥へと消えていく二人の背中を見送ると、俺は特にミナを心配するでもなく一人で村に戻った。むしろ心配なのは勇者様の安全の方だ。 
 勇者様からは魔力を感じる事が無かった。大した魔法は使えないはずだ。少なくとも現時点では俺以下なのは間違い無かった。
 いくら伝説の勇者とはいえ、装備すら皆無の人間相手に、ミナが肉弾戦で負けるとは考えられない。逆上しているとはいえ手加減はするだろう。やや乱暴な過程ではあるものの、勇者様の横柄な態度がこれで改善されるのであれば、と前向きに考えるしかないだろう。
 事情をおババ様に説明すると、「ぶつかって初めて判ることもある……拳を混じり合う事で強まる絆もな……ひょっひょっひょ」とむしろご満悦の様子だった。
「それよりもアキラや。ようやく始まる旅を祝してこれを授けておこう」
 おババ様が差しだしたのは水晶玉だった。
「これって占いの? 俺魔法使いなんだけど」
「魔法も占いも似たようなもんじゃわい。ともすれば年不相応とも言える大局的なモノの見方が出来るお前には、千里眼の才があるとワシャ睨んでおる。興味があれば試してみればええ。ものになれば儲けもん。きっと役に立つ事もあろうて。駄目だったなら魔物に投げつけてやりゃええ。ひょっひょっひょ」
「ありがとうおババ様。大事に使わせてもらうよ」
 水晶玉を受け取って家を出ようとする俺に、おババ様の別れ際の言葉が投げかけられる。
「腕が未熟だと水晶には虚実が入り交じる。時として映し出される無意識の妄想や願望に惑わされる事なく、しかと真実だけを見定めるよう務めるんじゃぞ」

 おババ様の家を後にするとミナと勇者様を待つ為に、獣道から村へと繋がる裏門へと戻った。周りに人気は無い。子供は寺小屋で勉強。大人は農作業をしている時間だ。今頃ミナと勇者様が決闘をしているなんて思えないほど、のどかな空が広がっていた。
 手持ち無沙汰になっていた俺は、暇つぶしがてらに水晶玉を取り出すと、それを両手で抱えるように持って目を凝らしてみた。
 俺の魔力に呼応したのかぼんやりと水晶玉が輝く。
「へぇ。本当にそんな才能もあったのかな」
 小さく驚きながらも何とはなしにミナの事を思い浮かべると、水晶には大きな滝が映った。
 滝壺からやや離れた岩場には、余裕綽々といった様子で立つ、髪一つ乱れていない勇者様が欠伸をしており、その目前ではミナがお腹を抱えて蹲っていた。
『おいおいその程度かよ。ちっ。やっぱり占いなんて当てになんねーな。こんな雑魚が仲間で本当大丈夫かよ』
『……かっはぁっ……うそ……あたしが、素手の人間相手に……歯が立たない、なんて……』
『こっちゃ装備もしてないし魔法も遠慮してやったのによ。大した遊びにもなりゃしねぇ。ま、お前は戦力にはならなくても、充分楽しませてくれそうだけど』
 勇者様はミナの背中を蹴飛ばしてうつ伏せにさせると、腰だけを引っ張り上げて四つん這いにさせた。
『ちょっと、いったい、なにをっ?』
『何って。そりゃ決まってんだろ』
 ミナの下半身を包むホットパンツ型の道着を膝上まで一気にずり下ろした。上半身は元々露出の多い格好なので、殆ど全裸と言っても過言ではなくなる。
 晒け出されたミナの臀部はキュッ小さく引き締まっており、何より色白な肌の質感は水晶越しにも瑞々しさで輝いていた。
『うそっ、やめてっ!』
『暴れんなっての』
 勇者様の人差し指がミナの背中を軽く押した。
『あっぐっ!』
 たったそれだけの接触で、ミナは喉を反り返らせると悲痛な声を上げた。
 ミナは四つん這いのまま身体が硬直してしまったようで、呆けた表情を浮かべたまま顎をぺたりと地面の岩肌に乗せ、だらしなく涎を垂らした。
『……なに……これ』
『おいおい。武道家ともあろうもんがこれくらいの経絡も知らないのかよ。しっかりしてくれよ。パーティだろ俺らは』
 勇者様はニヤニヤと笑みを浮かべながら、自らの下半身をさらけ出しすと、膝を下ろして既に張り詰めた亀頭をミナの臀部に押し当てた。
『生意気な割に陰毛の一本も生えてねーじゃねーか。まんこも可愛らしい一本筋だこと。お前もしかして処女か?』
『……うる、さい』
 憤怒のおかげかミナの表情に力が戻る。
『おほ。ビンゴ。結構可愛いのにその年まで経験無しとか流石田舎。心配すんなって。ちゃんと痛くないようにしてやっから。これ、都市で買った売れ筋商品。毒スライムから抽出されて作られた媚薬入りローション』
 勇者様は懐から小瓶を取り出すと、透明の粘液をどろりと自らの陰部に垂らした。
『これで初めてだろうが、濡れてなかろうがバッチシ』
『やめ、て』
『なんでだよ? 別に良いだろ。減るもんでもない。あ、もしかしてさっきの魔法使いと付き合ってるとか?』
『関係、無い、でしょ』
『正直に言ったら止めてやるよ。俺もさ、鬼じゃないからな。これから運命を共にする仲間同士が恋仲なら、それを重んじてやりたいしさ』
 なんて白々しい言葉。
 しかしミナにとっては、信じる他ない状況だった。
『……そう、よ……』
『え? なんだって?』
 わざとらしく聞き返す。
『あたしは、アキラが……好き……あたし達は……両想いで……魔王を倒したら、結婚すんだから……』
『なるほどなるほど……そりゃ微笑ましい話だなぁ……わかった、じゃあ』
 勇者様は感慨深そうにうんうんと頷くと、にやりと口元を歪ませた。
『……魔法使いくーん。未来のお嫁さんの処女マンコいっただっきまーす』
『なっ! ちょっと! 話がっ、ちが……!』
 粘液でべっとり濡れた亀頭を、陰毛も色のくすみも一切無い、一本の縦筋を通したミナ陰部に当てがうと、彼女の細く引き締まった背中を両手で掴み、一気に腰を押し当てた。
『ひぃっ、ぎっ!』
 ミナの目が苦痛で見開き、口元は耐え忍ぶように歯が噛みしめられている。
 勇者様の下腹部が完全にミナの臀部に押しつけられて、男性器の上で茂る陰毛がミナのお尻の割れ目を隠した。
『うっわ。きっつ。身体の力は弛緩しきってるはずなのにギッチギチじゃん。流石は腐っても武道家。しっかり鍛えてるねぇ』
 彼はけらけらと笑いながら腰を引く。
 結合部の脇から鮮血が、その深い赤色と対比するような白い太股を垂れていった。
『それでも前戯無しで一気に根元まで挿入出来るのはこの潤滑油のおかげだな。流石ベストセラー』
『……や、だ』
 ミナの瞳から涙が零れる。同時に再び根元まで一息に挿入される。
『あっ、ひっ!』
『へっへ。どうだ? 軽い麻酔効果もあるから痛くはねーだろ? てかお前の中マジで狭いな。おかげで入れる時の圧迫感半端無いけど。そらっ』
 勇者様の腰の動きに合わせて、ミナのお尻がパンっ、と乾いた音を慣らす。
『んあっ!』
『このぎっちり詰まった肉の中を押しのけてく感触は……おらっ』
『あっ!』
『初物特有の有り難みだよなぁ』
『はっん!』
『あ~でも、お前はそれ抜きにしても特別具合が良いぜ。そこは褒めてやるよ。密度が違うから、しっかり柔肉で扱いてくれるわ、ほらな、はは、すげ、肉の手で握ってるみてーだもん。ほらっ、ほらっ』
『あっ! あっ!』
 勇者様は愉快気にミナの膣内を評価しながら、徐々に注送の間隔を狭めていった。
『そろそろローションもまんこ全体に馴染んできたろ? なぁ? おい』
『やぁっ、あっあっ、知ら、ない、んっ、はぁ、はっ、ん』
『負けたんだから約束通り尻振れよな』
『いっ、やっ、あっあっあっ、もう、やめてよぉ……っ」
 ミナは大粒の涙をぽろぽろと流していた。俺はこんな彼女を初めて見た。こんな声を初めて聞いた。
『へっ。泣いてやがるのかよ。威勢が良いのは魔法使い君の前でだけか? ああ?』
『あっ! あっ! あっ! あんっ……そんなこと、ない……あっはぁっん……』
『良い声出てきてんじゃねぇか。良くなってきたろ?』
『い、言うなぁ、あっあっあっ! やっ、これ、やだっ、あっあっ、お腹の中、痺れて、あっいっ! そんな、出たり入ったり、しちゃダメっ、あっあっあんっあんっ!』
『どうダメなんだよ。あぁん?』
 勇者様は両手をミナの胸に伸ばすと、そのままチューブトップの道着越しに乳房を揉みしだきながら、彼女の上体を持ち上げる。
『お、おちんちん、入ってくるの、やだ……にゅるにゅるって、奥まで、あっ、それ、やだって、言ってるのにっ……! それっ、それっ、あっあっ、だ、だから、それだってば馬鹿ぁっ! それ、やめてっ、あっあっん、はぁ、っくぅ!』
『痛くねーだろ?』
『い、痛いっての……でも、でも……あっ! あっ! あっ!』
『でも?』
『いっいっ、あっ、はぁっ、あっ! うるさいうるさいっ! もういいからっ、さっさと終われゲス勇者っ! お前が魔王だっ!』
 勇者様はくすくす笑いながら、左手は道着の中に滑り込ませて直接乳房を鷲掴みにして、右手はミナの左腕を引っ張った。解放された皆の片方の乳房は、今にもチューブトップの道着からこぼれ落ちんばかりに揺れる。
『ひっでぇ言われよう。でもまぁそろそろ限界かも。つーかお前、まんこが名器なだけじゃなくておっぱいの揉みごたえもすげぇな。気に入ったわ。仲間って認めてやるよ。それじゃお近づきの印を受け取れよ』
 勇者様は腰の動きを止めると、全身を小さく震わせながら、「ふぅ」と満足そうに口元を緩ませた。
 対称的にミナは紅潮しきった顔色のまま、不安そうな表情を浮かべた。
『え? え? うそ、やだっ……ひっ、あっ……あぁ……ビクビクって、これ、出てる、の? うそ、でしょ……』
 勇者様は軽薄な笑みを浮かべたまま答えなかった。
 破瓜の血が垂れるミナの太股の間から、ぼたぼたと垂れる白濁液だけが、ミナの質問に応答していた。
『あたしは、あんななんか勇者って認めない……仲間だとも認めないんだから』
 彼女は乱れた息遣いのまま、依然として自らを後ろから貫く勇者様に向かって悪態をついた。しかしその瞳を潤わせていたのは、屈辱の涙とはまた別の色合いがこもっていたのは明白だった。
『はいはい。まぁ俺はお前を気に入ったからよろしくな。心配すんな。魔法使い君もきちんと仲間として扱ってやっから』
 勇者様が手を離すと、どさりと前のめりに倒れるミナ。
『おいおい大丈夫か? ローション使ったとはいえ初めてで腰ガクガクになるまで感じちゃったか? 武道家なのに鍛錬足りねーぞ』
『くッ!』
 眉間に皺を寄せて勢い良く振り返るミナ。 
 そこで突然映像が途切れた。
 気が付くと俺の魔力が枯渇していた。
 慌てておババ様の家に戻る。
「なんじゃい血相変えて。のんびり屋のお前さんにしては珍しい」
「お、お、お、おババ様。こ、これって、虚実が交じるって言ってたけど……」
 息も絶え絶えに水晶玉を見せる。
「左様。さっきも言ったが、未熟な者が覗くと己でも気づかぬ内なる願望を映し出す事もあるから気をつけるんじゃぞ。ワシでも時折じいさまとの若い頃の思い出を回顧してしまう事があるくらいじゃからな」
「そ、そっか……そうだよな」
 その説明を聞いて再び獣道の入り口まで戻る。胸はいまだ張り裂けそうな思いで満たされていた。
「きっと昨日見たエロ本の影響だな……」
 喉元まで迫り上がった胸焼けを、その独り言でなんとか鎮める。
 間も無くしてミナと勇者様が二人で獣道を下りてきた。その姿を見て心臓が跳ね上がるが、一見変わったところは無い。
 どこか納得がいかないようにぶすっとしたミナの隣で、勇者様は打って変わって気さくな笑顔で俺の肩を叩いてきた。
「彼女強いな。さっきまでの失礼は許してくれよ。俺も色々不安だったんだ。でも仲間が頼もしい事がわかって安心したよ」
「あ、あの……勝負は?」
 勇者様はミナを一瞥すると、「引き分けだな」と笑った。その頬には平手打ちの跡が見えた。
「それじゃ、俺はおババ様とかいう人のとこに挨拶行くから。これからもよろしくな。魔法使い君」
 そう言い残すと、俺の手を何度か握って去って行った。
 俺は恐る恐るミナの方へ顔を向ける。
「……楽勝だと思ってたのにギリギリだった」と不満そうに唇を尖らせた。
「ま、まぁ流石に伝説の勇者だしな」
「……ん。そうね。ま、あたしとアキラの足手まといにはならなさそうかも」
「そっか」
「最悪あいつ置いてさ、あたし達二人で旅しちゃえばいっか」
「そりゃダメだろ」
「あはは」
 無邪気に笑うミナの様子を見て、やはりさっきの映像は、俺が作り上げた虚構だったと確信した。
「あ。あたし汗掻いちゃったからお風呂入ってくるね」
「わかった」
「一人で魔法の練習しちゃ駄目だからね」
「わかってるって」
「……アキラ」
「ん?」
「目瞑って」
「え?」
「いいから」
「こうか?」
 言われた通りにすると、素早くちゅ、と唇に柔らかい感触が押しつけられた。
 思わず目を開ける。
 目の前には恥ずかしそうに視線を逸らし、もじもじと身体を揺するミナの姿。
「な、なんだよ急に」
「べ、別に……ほら、あの……えっと……旅の前途を祝してってやつ? 良いじゃんこれくらい! 何よ! 文句あるの!? そ、それじゃまた後でね!」
 ミナは片手を上げると、逃げるように俺の前から去って行った。
 唇を指でなぞると、ほんのり暖かく、そして甘い匂いが残っていた。
 多幸感でぼんやりした意識の中見届けるミナの後ろ姿は、太股にうっすらと赤い跡が線となって残っていたようにも見えた。



一話と書きつつ続くかどうかは未定