更新しました。
中高生時代に飲んだ夏の瓶ソーダのような作品になったと思います。

来週に遅ればせながら七月の定例会をするつもりです。









 飽きるほどに踏みならした家周辺の路地が妙に新鮮と思えるのは、煌々と照らす夜空の月や星のせいだけではない。
 何かを脱ぎ捨て開放感を得ると同時に、纏っていたものを失って初めてわかる心細さもある。卒業とはそういうものなのだろう。
 夜中の十時を越えての帰宅だったが両親からの叱責は無い。ただ一言、「卒業式お疲れ」とだけ声を掛けてくれた。
 部屋に戻るとベッドに身体を投げ出す。目を瞑ると二次会や三次会の様子が瞼に焼き付いていた。何の変哲も無いクラスでドラマチックな出来事なんて皆無だったが、これで彼らの大部分とはもう顔を合わす事も無いのだろうと思うと胸が締め付けられた。
 携帯を取り出すとカラオケで撮った集合写真を画面に映す。
「……これで俺も大学生か」
 余韻と感慨に耽っていると、待受画面が友幸から着信を通知した。
『もう家に帰ったか?』
『おう。どうかしたか?』
『実はだな、渚が学校に忘れ物をしてしまったらしくてな、今から取りに行くと言ってきかんのだ』
『何やってんだかあの馬鹿』
『それでもう学校の守衛さんには今から訪問する旨を連絡したんだうが何分こんな時間だろう? 俺が同行するつもりだったんだが家庭の用事で急用が入ってしまってな。マサキの手が空いているなら頼みたいのだがどうだろう?』
 普段の俺ならにべもなく『明日にしろよ』と面倒臭がったが、今日ばかりは少し事情が違った。
『わかったよ。しゃーねーな』
『すまないな。恩に着る』
 通話を切ろうとすると友幸が言葉を続けた。
『マサキ』
『あ?』
『大学でもよろしくな』
『おう。お前が勉強見てくれたおかげだよ。ありがとな』
『渚にも言ってやってくれ。あいつも最後の最後までマサキが合格するか気を揉んでいたんだ。マサキにはそんな顔を見せなかっただろうが』
『夏休みが終わってお前の手が空いてからは、あいつずっとゲームしてたけどな』
『わっはっは。三人でああいう風に過ごせる時間はいつか終わりが来る。出来るだけ満喫したかったのだろう』
 今度こそ通話を切ると、家族に事情を話して再び夜の街に繰り出す。玄関先で母親に、「そういや友幸君と渚ちゃんって結婚しないの?」と尋ねられたので、「今のところはまだ聞いてない」とマジレスしておいた。そう遠い話ではないだろう。



 春先の夜の空気は少し肌寒い。
「もう二度と着ないと思ったのにな」
 渚がブレザーの裾をちょこんと摘まんで持ち上げながらそう言った。見慣れたカーディガンに紺色のハイソックスもこれで見納めかと思うと少しは寂しい。
「俺なんてもうゴミ袋に入れてたのを引っ張り出してきたんだぞ」
「残さないんだ?」
「男の制服なんて残しても使い途ねーだろ」
「別にあたしだって無いけど」
「いずれ使う時が来るから大事に保存しとけ」
「友幸って別に制服フェチとかじゃないよ?」
「将来倦怠期になった時にコスプレが有効と聞いた」
「そんなもんなのかね」
「倦怠期といえばお前らって結婚しねーの? さっきオカンにも聞かれたわ」
「ん~。まだ具体的な話は無いよ。でも大学在籍中に同棲くらいはするかも。それに、あっ、やっぱこれはいいや」
「なんだよ言えよ」
「……実はですね、昨日……しちゃいまして」
 珍しく渚が恥ずかしそうにゴニョゴニョと言葉を逃がす。視線を向けると街頭に照らされた渚の頬はうっすら紅潮していた。ただの恥じらいではなく、淡い幸福が入り交じった染まり具合とはにかみ。
「なに?」
「……初めて友幸のを中に出してもらった」
「マジか。まぁもう卒業だし、いつ出来ちゃっても良いもんなお前ら。家的にも」
「出来る限り計画的にはしようとはしてるんだけどね、やっぱりほら、両想いだとさ、衝動的になっちゃう時もあるから」
「若いねぇ」
「いやぁお恥ずかしい限りで」
「もしかして危ない日だったり?」
「結構」
「まぁお前らの家ってどっちも裕福な方だし経済的にも問題無いじゃん。むしろどっちの親も早く孫欲しがってるくらいだろ」
「よくご存じで」
「この前犬の散歩してたらお前の親父さんに出くわしてさ、『マサキ君も早く友幸君みたいに渚のような嫁を捕まえろよ』って言われたわ」
「そうなんだよね。うちのお父さんの中であたしってもう既に嫁にいってるんだよね」
「友幸にもお義父さんって呼ばせてんだろ?」
「冗談じゃなくてガチな感じでだからね。それ」
「うける。それでさ、『俺が言うのもなんだが渚は丈夫な赤ちゃんを沢山産むぞ。なんたってケツがデカイからな』とも言ってたわ」
「オーケー-。帰ったらあのクソオヤジのケツを蹴飛ばしてやる」
「フォローするわけじゃないけど別にお前ってそんな尻でかくないよな」
「そうかな? 結構気にしてんだけど」
「全体のバランスからしたらむしろ細い方じゃね? ジョギングが習慣になってるのは大きいよな」
「褒めつつお尻触るのやめてくださーい」
「このつんと上を向きつつも揉み甲斐のある肉厚の……」
「やめろっつってんの」
 肘が脇腹に刺さる。
「いやぁ、この尻をスカート越しに触るのも今日で最後かと思うとついつい手が、ね?」
「ね? じゃないっての」
「ていうか何忘れたんだよ」
「大したものじゃないよ。いや本当に」
「じゃあ明日で良かったじゃねーか」
 答えのわかってる問いを投げかける。
「なんていうか飛ぶ鳥後をなんちゃらみたいな? ちゃんと今日で締めたいっていうかさ。そんな事言うならマサキがついてきてくれるのも意外だった。絶対面倒臭いって断ると思ってたのに」
 渚も答えがわかっているのに尋ねる。お互いにそれがわかる。それでもあえて会話にする。そうじゃないと俺達の間にはそもそも言葉なんて必要が無くなるので、それはそれで寂しいから口に出すのだ。
「普段ならな」
「やっぱ学舎の見納めっすか?」
「そんな感じ」
「マサキ二次会とかもでも結構泣いてたもんね。まだ目が赤いぞ」
 茶化すような声色と共に渚が人差し指で頬をつついてくる。
「退屈でしょうがないって思ってたのにな。我ながら勝手なもんだ」
「それが若いって事じゃないっすかね」
 人生は長い。
 それでも制服を着て学校に向かうのはこれが最後だろう。三年間の思い出を一つ一つ噛みしめるように、渚とどうでも良い話をしながら通学路を往く。



「悪いんだけど少しの間本社に戻らないといけないんだ。二時間くらいで戻ると思うけど。それじゃ。」
 警備のおっちゃんはそう言い残すと、俺達を置いて行ってしまった。
 無人の学校は当然のように静まり返っていた。上靴も持って帰っていたので、裸足で歩くがそれでもペタペタと音が反響する。
「恐かったら手を繋いでやろうか?」
「別に。あたし恐いのとか大丈夫だし」
 渚はそう言いながらも、差し出した俺の手を握る。
「じゃあこの手はなんだ」
「それはそれとして、マサキの手を繋ぎたい気分だった」
 手を繋いだまま教室に向かう。性交渉以外で握る渚の手は改めて小さく感じた。
 教室につくと渚は自分の机の引き出しから何かを取りだし、それをポケットにいれていた。手帳か何かだろう。俺はそれを自分の席に座って見届けていた。教室の窓から差し込む月の光が明るくて、照明をつける必要すら無かった。俺達の卒業を祝うかのように爛々と輝く月光は、教室の床に机や俺達の影を落としていた。
「黒板の寄せ書き消されてるな」
 頬杖をつきながら言う。
「ね。寂しいね」
 渚は立ったまま伸びをすると、「夜中に付き合わせちゃってごめんね。帰り何か奢るよ」と言った。
「別に良いわそんなん」
「それじゃ女がすたるってもんよ」
「じゃあパンツ見せてくれたらそれでチャラで」
「え~」
「今更それくらいでそんな嫌がらなくても」
「今日一番やらしいの履いてきちゃってるから恥ずかしい」
「あぁ、もしかして友幸とする予定だった?」
「だった」
「俺が見たこと無いやつ?」
「無いよ。ていうか友幸も見た事無い。完全なおニュー」
「見たい」
 渚は逡巡すると、少し唇を尖らせて顔を窓の方に向け、両手でスカートの裾を左右持ち上げた。月明かりが白い太股と黒いショーツを妖艶に浮かび上がらせる。
「レース?」
「あい」
「控え目のフリルが確かにアダルティーだがそこまでやらしいか?」
「……これ、真ん中開いてんだよね」
「そちゃエロい。校則違反だわ」
「もう卒業してますし」
「どうなってんのか見たい。ここ座って」
 俺の座っている席の机を叩く。
「やです」
「座って」
 バンバンと叩く。
 本来渚は落ち着かない場所での性的な行為や行動を好まない。しかしここまで同伴してもらった弱みもあるのだろう。渚は不承不承とした様子で、俺に正対して机に腰を下ろす。
「M字開脚で」
 渚はわざとらしくため息をつくと天井を斜めに仰いで、膝を立てた。確かにショーツの真ん中に布は見当たらず、縦に線の入った陰唇だけが露出していた。
「自分で広げて」
 俺の言葉に対して無言のまま、両手を太股の裏から通し、ショーツごと陰部を左右に広げた。月明かりだけでも膣口の桃色が綺麗に映えているのと同時に、頬が真っ赤に染まっているのが確認出来た。
「舐めて良い?」
 渚が恥ずかしそうにこくりと頷く。
「友幸の精液まだ入ってるかな」
 顔を近づけるのを一旦中断しながらそう言うと、「うちの彼氏は誰かさんみたいに、一日経っても垂れてくるほど出さないっての」と返した。
 背を丸めて、顔を渚の胯間に埋める。布の切れ目は丁度陰核にまで届いていた。
「……んっ」
 小豆ほどのクリトリスを包皮から出すように優しく吸う。
「あっ……はぁ」
 舌で単年に転がす。
「やっ、あっ……んっく……」
 最後に秘裂の下端から派手に舐め上げると顔を離して渚を見上げる。
「勃ってきた」
 渚はとろんとした顔つきで俺を見下ろしていた。
 俺が椅子を後ろに引くと、渚は机から降りた。
 俺がスラックスのチャックを開けて勃起した陰茎を取り出している間に、渚は机を前に詰めてずらした。
 無言のまま段取りが進む。
 椅子に座った俺に、渚が対面座位の形で跨がってくる。俺が右手で屹立した男根を固定すると、渚は両手を俺の肩に置いて、そのまま腰を沈めてくる。男を受け入れる為に開いたショーツと陰唇が肉槍を呑み込むように包んでいく。
「学校でするのって、文化祭のキャンプファイヤーしてる時に屋上でした時以来だっけ?」
「年明け前に体育倉庫でしたでしょ」
 にゅるん、と一気に根元まで入る。渚の体重を直に感じる。両手を恋人繋ぎにすると、ちゅ、ちゅ、と挨拶代わりにキスをした。
「……今日は危ない日だからね?」
「うん」
 夏休みが終わってからは、生挿入は絶対に安全日のみで、それ以外で生でしたくなっていた時はアナルで済ましていた。
 卒業の開放感が俺達を唆す。
 腰を振る、というよりは押しつけ合う。大きな摩擦は生じにくいし、スカートで結合部分は見えないが、男根を包む熱めのお湯のような温もりが渚の中に入っているのだという現状を雄弁に物語る。
「んっ……んっ……」
 椅子の滑り止めが床と擦れてキュムキュムと鳴る。
「あっ……はぁ……んっあっ……」
 性器を擦り合う事が主目的ではない結合。互いにきつく抱擁し、唇を交わし、その結果として生まれる微かな震動によって奏でられる嬌声は消え入りそうなほどに儚いが、激しいセックスとはまた違った蕩け方を見せた。
 渚が両腕が俺の背中を抱き寄せる。スポーツが得意といってもやはり女の子なのだなという淡い膂力。俺の肩に乗せた細い顎が動く。
「……やっぱり学校でするのって苦手」
「でも気持ちよさそうじゃん」
「そりゃ気持ち良いのは気持ち良いけどさ……」
「それに今日で最後だし」
「確かに」
 真夜中の教室はどことなく匂いが違う。それでも最後の一年間を過ごした空間には違いない。快楽と混ざり合うようにセンチメンタルな気分が熱を帯びる。
「もうここに来ないって考えると不思議な感じする」
「ね」
 そんな会話を続けながらも、スカートとスラックスの間は控え目にニチャニチャと音を鳴らし、渚の口からは「んっ……んっ」と吐息が漏れ続けている。
「あんまこれって思い出は無いんだけどな」
「でも楽しかったよね?」
「そりゃ勿論」
「でもまさかマサキとエッチする事になるとは夢にも思ってなかった」
「そりゃそうだろ」
 両手でスカートの上から臀部を掴むと、突き上げる動きを強めた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」うん
 抑えた掠れ声を直接耳元で吐かれる。耳がくすぐったい。嬌声のボリュームを絞っているが、その分身体は快楽を求めて膣内を収縮する。学校でする時には渚はいつもこうなる。
「この半年、沢山セックスしたよな」
「う、うん……いっぱい、した……あっやっ、そこ、いい……んっんっ、あっはぁっ、あっあっん」
「正直さ、渚ってめちゃくちゃ可愛いし、スタイルもその辺のグラドルなんか目じゃないし、身体の相性も最高なんだけどさ」
「急にどしたの」
「こんな日くらいは素直に褒めようかなと」
「ほうほう。で?」
「でもやっぱり俺達って友達なんだなって、この半年で改めて思い知らされたっていうか」
「わかる……あっ、あっ、んっあっ、あっあっ……あたしもマサキの事すごく格好良いと思うし、奥まで届くおちんちん大好きだし、エッチも一番気持ち良いからさ……正直最初の方は不安だった。もしかしたら好きになっちゃうかもって」
「なった?」
「全然」
 渚は笑いながら即答する。俺もつられて笑う。
「だよな」
「あたし達の友情すごくない?」
「普通好きになるよなこんなの」
「ね」
 じゃれ合うように唇を啄みあう。ちゅっ、ちゅっ、と軽妙な音が教室に響きわたる。
「でもさ、俺の渚への友情ってもう振り切れちゃっててさ」
「言ってみ?」
 またキスをする。ちゅっ。
「マジで恋愛感情なんてこれっぽっちも無いんだけど、なんつうか友達として、渚に俺の赤ちゃん産んで欲しくなった」
 渚が照れくさそうに微笑む。
「……友達として?」
「うん」
 照れ笑いを浮かべながら視線を一旦横に逃がすと、しばらく逡巡した後、「……あ~、うん……ぶっちゃけ、共感しますね、はい」と言った。
「……じゃあ、作って良い?」
 詰め寄るように亀頭を子宮口に押し当てる。
「……良いんじゃない?」
 それを抱きとめるように、渚の奥底ががっちりと俺の穂先を捉えた。
「ちゃんと言ってくれないとこっちも本腰いれづらいんだけど」
 渚が気恥ずかしそうに指で頬を掻く。その間も子宮口は鈴口を包み込むように連結していた。
「……あたしも男とか女とかじゃなくて、一人の親友として、マサキの赤ちゃんが欲しいって思ってた」
 互いに頬を緩めながら視線を合わせる。そっと顔を寄せると深く唇を押し付け合い、ちゅう、と長く吸い合う。それを号令に、渚の身体を上下に揺さぶる。あくまで友達のままとして繁殖行為なので、舌は入れない。ディープキスをするのは生殖器官のみ。
「もうちょっと奥に来れる?」
 友情の延長としての種付け交尾が始まる。快楽のためのセックスではなく、繁栄のための交尾。
「これ以上無理じゃね」
 異性だろうが仲が良くなれば回し飲みくらいは抵抗が無くなる。俺と渚による受精は、単純にその続きに存在しており、ごくごく自然な事に思えた。
「まだ入るっぽい……この角度かな」
 試行錯誤するように渚が腰を深く落としたまま前後の位置を調整する。
「やべ、動くと出そうなんだけど」
「もうちょい我慢してよ……どうせなら一番奥で出した方が良いじゃん」
「お前のまんこさ、これから妊娠するって覚悟決めたからか締め付け凄いんだけど」
「マサキのおちんちんだって、赤ちゃん作れるのが嬉しいのかバッキバキに勃起してるし……んっ、こう、かな……」
 男の仕事を努める俺の最前線部隊が渚の大事な部屋に顔を出す。
「入ったな」
「ん……いつでも来い」
「孕む準備万端?」
「オッケ。あとはマサキの精子だけ」
「なんか誓いみたいな事する?」
「病める時も健やかなる時も~みたいな?」
「それそれ」
「……じゃあ、二人で赤ちゃん作っても、ずっと友達で」
「ああ。ずっと友達でいることを誓います」
「んっ」
 ちゅ。
 軽めのキスをする。勿論触れあうのは唇だけ。
 しっかりと抱き合う。
 渚が俺の左肩に顎を乗せて、俺も渚の左肩に顎を乗せる。
 少し肌寒いくらいの真夜中の学校なのに、制服を着たままという事もあってか、額が汗ばむほどに身体は芯から熱を発していた。細胞の一つ一つが沸騰している。遺伝子を紡ぐ熱量に人体の神秘に驚かされる。
「それじゃ、赤ちゃんの素を出しますんで」
「はい、よろしくお願いします」
 互いに照れが残ってるのか、いつものように茶化すような声色。
 子作りの為ならば摩擦無しで絶頂に至れる事を知る。
 尿道を精液が駆け上がり、肉棒が膨脹する。
 渚の両腕により力が入る。
「……いつもみたいに……ううん……いつもより濃いやつ出してよね」
 腰の中でロケット花火に点火されたような感覚。何かが爆ぜて、放たれる。
 どぴゅっ。
「んんっ」
 渚がしがみつく。
 どぴゅっ、どぴゅっ。
 違う、俺も必死にしがみついていた。
 ビュルルルルルッ!
 言い訳も逃げ道も無い、混じりっけ無しの種付け射精。
「渚」
「マサキ」
 互いの名を呼びながら、まるで互いの身体を折ろうとせんばかりに抱擁する。
 ビュルっ、ビュル、ビュルルルルルッ!
「俺の赤ちゃん、孕んでくれ」
「……まかせなさい」
 蕩けた声音に冗談めいた口調で、渚が俺の首に噛みつく。
 びゅっ、びゅっ、びゅううっ!
「んっ、はぁっ…………いつもより熱いよ……マサキ……」
 渚の声はうっすらと耳に届いていたが、最早俺には天にも昇る真っ白な多幸感に身を置くばかりだった。何かに引っ張り上げられ、空高く舞っていく。
「子宮がザーメンで火傷しちゃいそう……流石妊娠用ガチ精液……」
 曖昧模糊とした意識の中で、「……止めた方が良いか?」と機械的に返答する。実際は何の話かすら理解出来ていない程に射精に集中していた。
 渚は俺の首筋に吸い付きながらも首を横に振った。
「……だめっ……一杯にするまで、射精止めちゃダメだからね……」
 渚の太股が左右からぎゅっと挟み混んでくる。ただでさえ俺と渚の境界線が消失しつつある性器の結合部分だが、精液とも膣壁ともわからない灼熱で、完全に男根の感覚を無くしてしまう。
「あたしの卵子が逃げ場を無くすくらい、マサキの精子注いで」
 耳たぶを甘噛みされながらそんな事を囁かれては追加砲撃を行わずにはいられない。
 びゅうっ、びゅうっ、びゅうっ。
 どれだけ精を植え付けただろうか。
 気が付けば俺達からは湯気が上がっていた。汗ばんだ身体にブレザーが鬱陶しい。まだどろりと溶岩のように垂れ落ちる射精は続いていたが、もっと欲望に任せた
「……渚、場所代えよ。もっと思いっきり子作りしたい」
「……ラジャです」
 どこか覚束ない挙動で離れる。その際に「ジュプ」と音が鳴り、結合が解除された女性器からどろりと精液が床に垂れた。
「勿体無い」
「ケチケチしないの。男の子だったら零した分また注げば良いでしょ」
 二人とも会話がどこか上擦っている。
 後片付けをささっと済ますと、暗闇の廊下を、手を繋ぎながら早足で保健室に向かう。
 保健室の扉を開き、鍵を中から掛けると、俺達はせかせかと服を脱ぎだした。互いの呼吸が浅いのは早足でも先程の交尾の余韻の所為でもない。少しでも早く再び繋がり子を為したいという焦燥感。
 照明の無い保健室で全裸で向かい合う。渚の視線が俺の胯間に向けられると、半笑いで口を開く。
「……そんなにあたしで赤ちゃん作りたい?」
 その言葉通り、俺の陰茎はもはや勃起という表現では収まらない程に雄々しくそそり立ち、怒り狂うようにブンブンと首を振っていた。どこかうっとりとしたような笑みでそれを見つめる渚の太股には、先程の精液がどろりと垂れている。それを目にした瞬間俺の頭がかっと沸騰した。だめだ。もっともっと、精液を注がないと、子どもが作れない。本能がもたらす衝動は更に怒張を荒々しくさせる。肉槍は制御不能の暴れ角となった。
 俺は渚の問いに首を縦に振ると、彼女をベッドに仰向けで押し倒して、太股を左右に広げる。既に精液で白濁して陰唇は待ちわびるように口を開いてひくついていた。繁殖を目的とした男根をあてがいながら問い詰める。
「渚は?」
 問われた渚は顔をやや斜めにしながら、俺に艶やかな視線を向ける。
「あたしも……マサキの赤ちゃんが欲しい」
 挿入する。
 渚は両手を自らの下腹部に添える。
「マサキのおっきなおちんちん使って、ここで作って……」
 腰を振る。
「んっ、んっ……まだ赤ちゃんの素、いっぱい出せるよね?」
 パイプ脚のベッドがギシギシと揺れる。
「当たり前だろが。もう金玉パンパンで痛いくらいだわ」
「それ全部しっかり奥で出してよね。あたしもちゃんと孕むからさ」
「任せろ。ていうかもう出そう」
「いつにも増して早くない?」
「草食動物然り、繁殖目的の交尾は早く済ました方が効率的なんだよ」
「早漏の言い訳お疲れ様です」
「てめ、こら」
「あっ、あっ、あっ、あっ♡ やっ、はげしっ、あっいっあぁっ、いつもよりおっきいし硬くて、すごっ♡ いっ♡ いっいっ♡」
「出すからな!」
「……ぶっちゃけ早くて助かる。あたしもイキそうだし」
「イケばいいじゃん」
「でもこれ子作りだし……セックスじゃないからそれはそれ、これはこれにしときたいっていうか」
「変なとこ真面目だな。そんじゃあお先に」
「うん、男の子はイカないと子作り出来ないもんね…………あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
 ベッドが心配になるほど軋む。
「あっ、いっ♡ いっあ♡ マサキっ、マサキっ、来てっ、友達ちんぽで、妊娠させてっ♡」
 渚の両手を取り、指を絡めて握る。
「うっ、出るっ!」
「奥で、出して」
 全裸の開放感や激しい注送による刺激は、一発目よりも遥かに圧の高い射精を促した。
 ビチャッ、ビチャッ、とホースで撒き散らすように渚の子宮に新しい精液を注ぎこむ。その感触があまりに甘美なのか、渚は「んっ、ックゥ♡」と甲高い声を上げながら喉を仰け反った。強烈に締まる膣道が男根を根元から精液を絞り取る。
 しばらく肩を浮かして硬直していた渚が、ぱたんと倒れ込むと、「……結局イっちゃったじゃん」と唇を尖らせた。そして「……あっ」と何かに気付いたような表情を浮かべた。
「どした?」
「……多分今、マサキの赤ちゃん出来たっぽい」
「そんなのわかるのか?」
「なんとなく」
「マジか」
 絡めた指をイチャつくように互いで弄ぶ。
「……どう? パパになった気分は」
「感無量です」
「お相撲さんか」
「ていうか、妊娠してもらったわけだけど……」
「うん」
「やっぱり渚は友達だなって」
「ですよねー」
 唇を重ねる。当然舌は入れない。俺達は友達なのだ。
 俺達の間に一切の雑念は存在しない。
 ただの友情。
 どこにでもあるありふれた友人関係。
 俺達は友達のまま、俺達の子どもを作った。それだけの事だ。
 学校を卒業し、一つの青春が終わり、そしていずれ社会に出て行く。
 きっと沢山の事を知り、失い、変わっていくだろう。
 でも俺達は確信する。
 きっとこれからも、何も変わることが無い、宝物のような友情を。



トモハメ おわり

















おまけ



「マサキさんマサキさん」
「はい」
「無事子作りが終ったわけですけど、何やりまだ勃起してません?」
「いやぁ。渚さんの中が気持ち良すぎてですね」
「そう良いながら腰振るのやめてくれません?」
「でもほら、渚さんも気持ちよさそうな顔してるじゃないですか?」
「そりゃあこんなおちんちんで擦られたら気持ち良いですよね?」
「生のカリに弱いっすもんね。ママは」
「ママ言うな……あっ、あっ、あっ、あっ、ねぇマサキ……そういえばカリってさ、他の男の精子を取り除くためのものなんでしょ?」
「もう受精してるんだし良いじゃん」
「まぁそうだけど……でも勿体無い気がする」
「ちゃんと新しく注ぐから」
「……じゃあ良いけど」
 渚の両腕がそっと俺の首に回る。ねっとりと唇を擦り合わせながら正常位を続ける。渚の豊かな乳房は仰向けで潰れながらも、余裕で俺の胸板にふくよかな柔らかさを押しつけるように提供してくれる。腰を動かす度にたぷんたぷんと揺れてそれがまた心地好い。
「そういえばさ、この前紹介してくれたバスケ部の子、デートの約束までこぎつけたぞ」
「あっ、んっ、んっ、ふぅ…………やっと? ていうか夏休みから何人紹介したと思ってんだか……」
「次こそは頑張ります」
「……ていうかさ、今現在進行系であんたの子ども妊娠中だし念押しの子作りも続行中なのに、他の女の子の話するってどうなの?」
「別に良いだろ」
 即答する。
 渚は少し考え込んで、「そうだね、別に良いのか」と納得すると、瞼が落ちて表情が快楽に溶ける。
「あっ、あっ、あっ、やばい、また来ちゃうかも」
「もうこれはただのセックスみたいなもんだし良いんじゃね?」
「そう、だね……じゃあイクね?」
「俺も一緒に出すわ」
「ん、わかった……んっんっ、はぁっあっ、あっあっ、んっあっ」
「そういや確認なんだけどさ、友幸ってどっちが欲しいとか言ってた事あったっけ」
「男の子か女の子?」
「そう」
「なんか、元気だったらどっちでも良いって言ってた気がする」
「どっちでもってのが一番困る」
「あっ♡ 奥っ、あっいっ♡ やっ、そこっ、本当好きっ♡ あっあっあっあっあっ♡」
「それじゃせめて丈夫な赤ちゃん産んでくれよ」
「う、うん、任せてっ、あっあっいいっ♡ マサキの赤ちゃん、しっかり産むから……あっあっあっ♡ いっあっ、イクっイクっイクっ♡ パパのおちんちんで、イっちゃうっ♡」
「あぁ出るっ」
「イック!!!」
 二人して時間が止まったかのように硬直する。どちらも汗だくでまるで真夏のようだった。
「……めっちゃ汗掻いたな」
「だね。赤ちゃん作るセックスってこんな熱くなっちゃうんだって感じ」
「それじゃあ、まぁ、出産とか色々お願いします」
「はいはい。応援よろしくね。パーパ」
 茶化すように言う。
 正常位で繋がったまま、拳をこつんと突き合わせ、そして最後に「ちゅっ」と親愛を示すキスを最後に、俺達は三年間お世話になった学舎を後にした。




今度こそおわり