久しぶりのブログ投稿です。
前後編です。
後編は来週金曜投稿予定です。












 適当に入った大学を卒業して、これまた適当な理由で入社した社会人になってから三年が経った。
 その三年間の適当な仕事っぷりは説明するまでもないだろう。
 けして仕事が出来ない方ではないとは思う。でも俺は昔から大体こうなのだ。勉強もスポーツも、友人関係も恋愛も、何でも要領良くそこそここなしてしまう。
 だから何に対しても、最低限のコストで済ませてしまう癖がついてしまった。いつだって収支のプラマイがゼロ。もしくはマイナスでも許される範囲。それが俺の生き方。
 社会に出ても外面の良さで上手くやり過ごせていた。爪の甘い仕事をしても、時には真摯に謝り、時にはおどける事で、「篠塚は仕方ないなぁ」と思わせる事に成功していた。
 待遇も良く定時にも帰れる中々に優良な会社なので、このまま定年までのんべんだらりと居座りたいというのが俺のささやかな野望である。

 しかしそんな俺の本質を見抜き、快く思わない人物が居た。
 笹原香織課長である。女性という事を抜きにしても、三十三歳という若さにしては出世が早い。
 よくよく見ると結構な美人なのだが、その見た目を利用してのし上がったなどと口にする者は居ないだろう。
 シャープな輪郭に釣り上がった瞳は、「美しい」よりも先に「鋭い」という印象を与えがちだ。
 肩に掛かるかどうかくらいにセミロングの黒髪も、軽くシャギーが入っていて、到底男性をほんわりと包み込むような母性は感じない。
 常にパンツスーツではっきりとはわからないが、中背で痩身そうな体系はストイックな内面がそのまま体型に出ていた。

 笹原課長の仕事っぷりはその見た目通り神経質なほどに整っていた。経営陣や部下の信望も厚い。
 しかしそれは手腕を買われているだけであって、人格的に慕われている、という感じではなかった。
 口早に罵倒を捲し立てるタイプではないが、とにかく一挙手一投足が冷たく厳格なのだ。
「全然駄目ね。やり直しなさい」
 俺の作った報告書を素早く一瞥すると、背もたれに背中を深く預け、書類をゴミのように机に放り投げた。
 直立したままの俺をじろりと睨み上げるその目つきは、もはや同僚への叱咤ではなく、獲物を値踏みする鷹の凄みを連想させる。下手に動けば喉元を食いちぎられそうだ。正直ビビる。
「篠塚君。貴方何年目?」
「三年目です」
 背筋を伸ばしてハキハキと答える。対課長の振る舞いではなく、同僚に対する、「篠塚は課長の前でも無神経だなぁ」という道化のアピールである。
「こんなふざけた仕事していて恥ずかしくないの?」
 同時に課長も部署全体に呼びかけるように言う。居室の温度と気圧が明らかに下がった。気の弱い女性社員は眩みを覚えて転属願いを出す事も珍しくない。
「申し訳ありません」
「私が聞きたいのは謝罪じゃないの。それくらいなら貴方でも理解出来るかしら?」
 明らかに「貴方でも」じゃなくて、「貴方のようなボンクラでも」と言いたそうだった。
 とにかく高圧的で傲岸不遜。自分以外の人間は全て見下していそうな物言い。しかし能力は伴っているので、我々平民には陰口で憂さを晴らす事しか叶わない。その上色白ですらりとした美人ときている。人の血さえ流れていれば完璧な人間だっただろう。
「以後精進致します」
 無駄に大声を張り上げ踵を返す俺に、「……木偶ね」という小声が届いた。流石にはっ倒してやろうかと思ったが、女に手を上げる事は信念が許さない。上げられる事は多々あった。手が上がるだけならまだしも、刃物を持ち出される事もあったので、社会人になってからは、女遊びは程々にしている。
 包丁を突き出された経験は俺の胆力となり、社会人での生き様を容易にしてくれるかと思っていたが、上には上の恐怖が存在するものだ。笹原課長に睨まれると、天井からつららが落ちてきそうな錯覚に陥る。被弾箇所を狭くしようと自然と背筋も伸びる。
 俺の後に資料を提出したとある女性社員は、更に執拗に不備を責められ、ついにはさめざめと涙を流した。俺が英国紳士ならばその背中にそっとダッフルコートなんぞを羽織らせてあげて、ハンカチーフで目元を優しく拭ってあげたのだが、生憎生まれは広島なので、誰かの出張土産で配られたもみじ饅頭を頬張りながら愛しの故郷に想いを馳せていた。
「泣けば済むと思っているのかしら!?」
 課長の怒声が響き渡る。刺々しいどころか剣山のような存在感の課長だが、ヒステリックになる事はそれほどない。月に一度くらいだ。女性社員が泣くと、大体そうなる。あと生理とか夫がゴミ出しを忘れていたとか、そういう条件が重なるとそうなるに違いない。多分。
 泣かされている女性社員はどちらかというと気が強い方だ。人前で泣いた経験など皆無だろう。しかし課長の前では人並み程度の気丈さなど藁葺の壁も同然だった。
 ぐずぐずと嗚咽を漏らし続けようが容赦はない。
「それで同情を引けるのは学生までよ。仕事の話が出来ないなら今の貴女がここに居る価値は何かしら?」
 女性社員は何か謝ったようだが、「聞こえないわ」と一喝する。
 ただでさえ冷たく気圧の低い居室に、更に肩にズシンと圧し掛かる重力が加わった。
 そんな中俺は、泣かされている女性社員が中々好みだったので、後で慰めてあげて、あわよくばお近づきになれれば良いなと考えながらもみじ饅頭を熱いお茶で流し込んでいた。

 さて、そんな件の女子社員には彼氏が居たが、それはそれとして何度かラブホテルで親睦を深める仲にはなれた。が、結局彼女は課長の重圧に耐えきれなくなって会社を辞めてしまった。
 課長のおかげで抱けて、課長の所為で疎遠になったのだから、俺的にはこれまた丁度プラマイゼロで清々しさすらあった。
 そんな変わり映えの無い日常の中、社内ではちょっとしたお祭り騒ぎがあった。
 我が部署が非常に大きな取引を成功させたのだ。
 それは社史に刻まれるレベルの偉業とも云える成功だった。
 勿論笹原課長はその中心であり、船頭でもあった。
 ホテルを借りてまで行われた社長を含む重役までもが顔を出した慰労パーティーでは、教科書通りに「部下のおかげです」とはスピーチしていたが、内心では自分のおかげだ俺たちには足を引っ張られたと思っているに違いない。
 とにかくそんな場だからなのか、彼女は珍しくお酒を口にしていた。まず彼女が飲み会に出る事が無いし、出ても飲酒しているところを見た事が無かった。呑めないのか好きじゃないのか、はたまた管理職として無様な姿は見せられないという自己管理なのか、とにかく俺は初めて彼女がお酒を口にしている姿を目にした。経営陣からお酌されれば断る事も出来ないだろう。ついでに俺たち部下には見せた事もない白い歯も見せていた。
 そんなお祝いの場もやがてお開きとなる。
 何も大仕事を終えて浮かれていたのはお偉いさん達だけではない。俺がほんの気まぐれで風俗にでも寄ろうかと裏路地に足を踏み入れると、そこには信じがたい光景が広がっていた。
 鉄の女の異名を持つ笹原課長が、飲食店裏に置いてあるポリバケツに寄りかかって腰を下ろしていたのだ。おそらくそのバケツの中には吐しゃ済みだろう。どうやら弱いのに、重役を相手に少し無理をして呑んでいたらしい。いや、呑まされたというよりかは、いくら彼女でも流石に浮かれていたのかもしれない。
 改めてこの女すげえなと感心したのは、そんな醜態を現在進行形で部下に晒しておきながら、少しも恥じる様子も無く、「……篠塚君。お水を買ってきなさい」と居丈高に命令してきたのだ。
 そして小走りでコンビニを行き来し、彼女の元へ水を運ぶ俺はまさに忠犬だった。
 彼女は口をゆすぐと、一応「ありがとう」と感謝の言葉を述べた。これほど心の籠ってない「ありがとう」が、俺の口から以外も出るものなのだと驚いた。
 彼女に肩を貸して歩き出し、「旦那さんに迎えに来てもらいますか?」と尋ねる、首を振るのも億劫そうに微かに左右に振りながら、「今日は実家の用事で家に居ない」と、と簡潔に応えた。
 その短い文言からでも、彼女が夫に対してだけは敬意を抱いている事が理解出来た。もしこれが俺たち部下なら、「今すぐ実家から出社しなさい。使えないわね」と冷徹な指示を出したに違いない。しかしそんな空気は先程の声色から全く感じ取れなかった。弱っているからではないだろう。どうやらこう見えて愛夫家らしい。そういえば結婚指輪も律儀に嵌めている。
 課長の受け応えや足取りは、彼女の鋼鉄の精神で何とかそれっぽくは維持している。しかし実際はもう意識混濁の酩酊状態なのだろう。一歩一歩は重く乱れ、ろれつも少し危うい。耳元に聞こえる息遣いはずっと浅いままだ。
「少し休んでいった方が良いですって」 
 そう言って手近なラブホに連れ込み、ベッドに寝かせる。俺は出来る限り下心を隠してはいたが、課長が現状をどれだけ鮮明に認識しているかは定かではなかった。
 少なくともベッドで仰向けになった課長は、身体的に楽になれた事に安堵しているようには見えた。
「服、脱がしますね」
 あくまで介抱の為ですよ、という感情を声色に過剰な程込めた。
 それが奏功したのか、もしくは酩酊でそれどころではないのか、抵抗の素振りは一切無かった。
 黒いパンツスーツを脱がすと、その下には透き通るような白い肌が姿を現した。大学の時点で抱いた女は三桁を突破していたが、それでも太ももの付け根から爪先まで、すらりと伸びた脚には目を奪われた。
 能ある鷹は爪ではなく美脚を隠していた。
 ただ細いだけではない。股間を締めたら、股の下だけ僅かに隙間が出来そうな程には、太ももに肉はついている。そしてそれも瑞々しい張りを保っている事は、その質感から明らかだった。
 ただの芸術的な美しさだけでなく、男を煽る肉付きを有した脚線美だ。
 あれだけ常に気を張っているので、身体の細胞もそれにつられているのだろう。
 しかしまさかショーツが黒のレースとは思わなかった。大事なパーティーが予定されていたから気合を入れていたのか、もしくは普段からこういう趣味なのか。旦那さんは元々家に居なかったので、夫婦の営み用というわけではないのだろう。
 そんな事を考えながら俺はほぼ無意識に彼女の足の指を舐めていた。性急すぎたかと思ったが、課長は「……んっ」と吐息を漏らしているだけだったので継続した。
 それほど匂いはしなかったし、足の指には透明のマニキュアが丁寧に塗られ、当然ムダ毛などというものは見当たらない。
 これは今日のパーティーに備えての特別な準備ではなく、普段から自己管理を厳格に行っている結果だろうと、職場の彼女の振る舞いから容易に想像できる。
 ヒステリックなまでに完璧主義者らしいおみ足の指をしゃぶり、そして指の間も丁寧に舌を這わせていく。
 足の指舐めには特に自信がある。この前退社してしまった例の彼氏付きの同僚も、最初はくすぐったそうに笑っていたものの、最終的には指舐めだけで自ら陰唇を開かせおねだりさせた。
 とはいえ課長の酩酊具合は割とガチなので、どこまで通用しているのかわからない。
 時折「んっ」とか「はぁ」と吐息を漏らしているが、それがどこまで性的な意味合いを持っているのかは判断つきかねない。
 しかし十本全ての指を舐め終わる頃には、黒いレースの下着には縦線のシミがじっとりと浮かんでいた。時々上半身を揺らす仕草も明らかに肉欲が混じっている。
 それでも課長の意識はぼんやりと不明瞭なままだし、身体的にも立ち上がる事すら億劫そうに見えた。
 こんな状態で性行為してしまえば、今のご時世において準強姦罪は確実である。そして笹原課長の気の強さは言うまでもない。泣き寝入りなど絶対にしない。
 しかしそれが普通の痴漢やレイプなら、の話だ。
 俺には彼女がこの事を他言しない確かな勝算を抱きながら、ショーツをはぎ取ると、自身のスラックスも脱いでゴムを装着した。
 課長の黒のスーツを纏った上半身はそのままにしておいた。俺のワイシャツも同様だ。どうせならまずは出来る限り、普段の上司と部下の姿のまま楽しみたい。
 課長の陰毛は濃い目だったが、やはり無造作に生い茂っているという感じはしない。ここも処理しているのだろう。
 じっとり濡れた陰唇はそれなりの経験を積んで肉厚ではあったが、汚らしいビラビラという感じは一切しない。陰唇を軽く左右に広げると、桃色の膣口が有象無象の男など断固拒否と言わんばかりにピッチリと口を締めていた。
 しかし濡れているのは濡れているので、左右の人差し指を同時に挿れて、こじ開けるように横に広げてみた。
 その際にまず指の腹で感じたのは、課長にとって温もりという概念は、全て膣内に集中しているんじゃないかと思える程に暖かかった。熱いとすら感じた。この熱を少しでも心に分けてくれればと、一部下として切に願う。
 そして更に指の腹を愉しませてくれるのは、つぶつぶとした感触である。
 開いた膣壁を奥まで覗き込むと、桃色で柔らかそうな肉壁が、糸を引くようにぬめりを伴っていた。その色も質感も、課長から受ける印象とは程遠い。
 課長らしくないと言えばその肉穴はやはり整然とした彼女ならば、配管パイプのように平坦なのだろうかと思いがちだが、予想に反して洞窟のように複雑な起伏を見せていた。
 挿入する前から五つ星確定の肉壺である。期待感で陰茎の根本がググっと強張り竿が反り返った。
 陰部を接写で数枚、そして彼女の顔も一緒に映るように写真や動画で記録しておく。
 瞼を閉じたままやや息苦しそうな課長の膝を、両手で持って左右に開くと、腰だけで挿入位置を調整する。
「課長。それでは失礼致します」
 大袈裟に真面目ぶった声色と会釈を済ますと、自慢の巨根を挿しいれる為に腰をぐっと突き出した。どれくらい自慢かというと、例の泣かされて退社した女が、あまりに良かったからと記念写真を撮影したいとせがんできた程だ。
 そんな我ながら逞しい肉槍をにゅるりと挿入する。
「んっ」
 気が強く傲慢な課長に似つかわしい肉壺だった。ただでさえ窮屈なのに、男性器になど負けるかとぐいぐい吸い付いてくる。
 きっと今までも男社会に屈するかと気勢を吐くような生き方だったに違いない。しかし女性の象徴でもある膣はどうしても柔らかく暖かい。どれだけ威圧するように巻き付いてこようが、男性器への快楽にしか繋がらない。
「マジで五つ星っすわ。笹原課長」
 思わず頬が緩む中、腰をゆっくり前後させる。
「んん……ふぅ……くっ……うぅん」
 単調な起伏とは程遠い、うねうねした膣壁による摩擦感も極上モノだった。
「はぁ……はぁ……んっ……あぁ……はっ……あぁん」
 まだまだ意識が不明瞭のままだが、課長の声色には糖分が混じり始めていた。
「んっ、んっ、やっ、あぁっ、んっく」
 ピストンが加速すると、性器同士がくちゅくちゅと音を鳴らす。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
 課長の口から出るそれはもう完全に嬌声だった。
「あっあっあっ、だめっ、来るっ♡」
 あの笹原香織課長と同じ声帯から出ているとは思えないような甲高い声。録音して同僚に聞かせても、誰一人正解者は出ないだろう。
「イっていいっすよ」
 俺のその声に反応したのか、課長がついに薄っすら目を開ける。まだまだ霞が掛かったような意識だろうが、それでも現状を認識したのだろう。ほんの微かにではあるが表情が変化した。
 おそらく彼女のこれまでの人生では、失敗という事象は取るに足らない存在だっただろう。どんな落石や地雷が相手でも彼女は悠然と打ち砕き、踏み歩いて来たに違いない。
 しかし今回の過ちは、その中で最も厄介な事になりそうだという懸念と、自身の油断から生んでしまった事に対して、心の中で彼女が舌打ちをしたのが聞こえた。
 そのタイミングで俺は殊更激しく彼女を責め立てる。
「あっあっあっあっあっ♡ イック♡」
 課長は酩酊で弛緩しきっている背中を浮かすほどにのけ反り、ビクビクと全身を痙攣させた。
 俺はけして英国紳士ではないが、女が絶頂しているのに独りよがりに腰を振るような男ではない。基本的に。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」
 敬愛する上司がアクメで荒ぶる呼吸を整えるのを待つ。快楽の余韻を楽しむはずのその時間、彼女は俺への非難の視線と眉間の皺を維持し続けた。明らかに身体が甘い痺れに覆われているにも関わらずだ。
 そしてようやく口が利けると判断すると、ぐっと呼吸を呑み込んで毅然とした口調で言った。
「明日、警察に被害届を出すわ」
 脅しでも虚勢でもない。まやかしでない本当の強さを持つ女特有の眼差し。
「いやいや。課長がラブホ入って良いって言ったんですって」
 俺はとぼけながら腰を振る。
「んっ、んっ」
 絶頂の痺れはまだまだ色濃く残っていただろうに、奥を無遠慮に突かれようが、課長はきつく唇を縛って、喉からせり上がるあられもない声を押しとどめた。
 まだまだアルコールの抜けない中でのその精神力は、素直に感心する。
 それでも俺が腰を振ると、ベッドはギシギシと軋み、ちんこはニュルニュルと膣を鳴かした。
「んっ! んっ! んっ!」
 真一文字の口元と眉間の皺は険しい。しかし鼻から漏れる吐息は愛らしい程に切羽詰まっている。
 そんな中ですら彼女は、きっぱりとした口調で言い放つ。
「絶対にそんな事言っていないわ」
 記憶は無いだろうに断言する。
 天変地異が起ころうとも、俺とラブホへの同伴など許可しないという絶対的自負心を感じる。その根底にあるのはやはり夫への愛なのだろうが、それと同じくらい感じるのが使えない部下への蔑視である。
 そしてそんな男に、朦朧とした中でとはいえ、絶頂させられた屈辱。
「いや、本当に言ってましたって。勘弁してくださいよ」
 それらの激情が渦巻く課長の肉体を、同等の熱を持つ肉槍で力強く貫く。
「あんっ、あんっ、あんっ♡」
 喘ぎ声を上げてしまった自分を恥じるように益々眉間に皺が寄る。
 しかしそんな自身と俺に向ける憤怒とは裏腹に、雄に愛でられ続けた下腹部はすっかりトロトロに蕩けていた。
 抜き差しの度にぐちゃぐちゃと淫らな音を鳴らし、ほぼ透明のゴムは泡立った白い愛液まみれになっていた。
 再び課長の頭をジンジンと痺れさせる絶頂の予感が覆うと、彼女の頭に昇った血は混乱と共に霧散した。それが彼女に合理的な思考を取り戻させる。
「わかったわ。一旦ここで止めれば、話し合いの余地はあげる」
 膣をぐちょぐちょに濡らして、突かれる度に卑猥な挿入音を鳴らしている女が、こうも上から目線で口を開けるものなのだろうか。正常位なのに俺が見下ろされているような錯覚すら覚えた。位置エネルギーよ。どこへ行った。
 男というか人間に犯されているという意識が薄いのかもしれない。彼女にとってはまさに飼い犬に噛まれたような状況。いや、飼い犬でもない。彼女にとって使えない部下など野良犬だろう。
 とにかく俺は、切羽詰まった様子を演じる。
「でも俺、もう射精そうで……」
「……ちょっとっ!」
 有無を言わさず激しく腰を振る。
 俺の本気のピストンを受けて中イキさせられなかった女は居ない。大抵は潮を噴いて、「おまんこ壊れちゃう♡」とよがる。
 何度も例えに出して恐縮だが、課長に泣かされて退社した女同僚も、彼氏に電話でデートをドタキャンさせた直後に、ガンガン突いて潮を噴かせながら「……お、おまんこ壊れる♡」と腰を浮かせてビクビク痙攣させた。今頃元気でやっているだろうか。次の職場では優しい上司に出会えると良いが。
 ガツガツと腰を叩きつけ、ぎっしぎっしとベッドが揺れる中、課長は歯を食いしばり、俺を睨んでいた。
 しかし徐々に瞼が落ちていく。
 それが一瞬、「んっ♡」という甘い声と共に、ぎゅっと目を閉じた。すぐさま俺を睨み直したが、瞼は半分ほどしか開いていない。
 その瞬間を見計らって、亀頭だけが挿入されているくらいに腰を引く。
 すると課長の陰部が、ぷしゅっ、ぷしゅっ、と俺の腹部に潮を噴きかけた。ワイシャツが瞬く間に濡れていく。
 俺が改めてやっぱりこの女、只者じゃねーなと驚嘆したのは(人格的には到底尊敬など出来ないが)、そんな恥辱の中でも頬を紅潮させながら、俺を睨み続けていた事だ。
 見下しの対象でしかない俺に潮噴きをさせられて、それが俺のワイシャツを濡らしていく光景を目の当たりにしながらも、「ふぅっ、ふぅっ、ふぅっ」と息を荒げつつ、俺から一切視線を逸らさず睨み続けた。
 引いていた腰をガツンと一気に突き入れると、「あぁんっ♡」と可愛げのある声と表情で鳴いたが、そのまま射精に向かって腰を振ると、ぎゅっと顔を引き締めてやはり俺を睨み続けた。
「課長っ、射精ますよっ」
 俺の報告にも勝手にしろと言わんばかりの表情だったが、最後にひと際大きくストロークすると、「んんっ♡」と目を細め、肩をビクンと震わせて俺と一緒に絶頂した。
 息苦しいまでの膣の中で、ドクドクと射精する俺を、糾弾するでもなくただただ睨み続けていた彼女を見て、やはり警察沙汰になる事は無いなと確信した。
 意識が鮮明になった時には、まず反射的に警察に被害届を届けると口にしたが、少し冷静になれば課長は気づくはずだった。
 前後不覚になるほど酒に呑まれ、部下とラブホに入った事自体が自身の汚点だと。そこに同意云々は関係ないのだ。性的な恥辱や傷心よりも彼女が許せない事。それは自身が作り出した隙。完璧に役目をこなせなかった自分。
 俺とセックスをしてしまった事よりも、そうなるような失態を犯した経緯を第三者に知られたくない。有能で、勝ち組の自尊心がそれを許さない。
「課長のおかげで一杯出ました。あざっした!」
 あくまで健気に業務報告をこなす素直な部下を演じながら、外したゴムを持ち上げる。
 未だ俺を睨み続ける彼女の顔の上で、それをひっくり返した。
 アルコールに加え、セックスによる痺れで四肢を動かせないのだろう。
 俺を睨んだまま無抵抗で、ドロドロと糸を引いて垂れる精液で顔を白く染めていった。
 スーツにも掛けてやろうかと思ったがまだ時期尚早だろう。今の段階だとブチ切れられるかもしれない。まだ顔を汚すくらいがギリギリのボーダーラインだ。
 課長は顔がザーメン塗れな事など意にも介してない様子で、「碌に資料も作れない無能でも、精液くらいは出せるのね」と冷たい視線と口調で、最大限の皮肉と侮蔑を俺に向けた。
 さてこれからどんな話し合いが行われるのかと楽しみにしながら、俺の手が課長の上着に伸びる。夏だろうが薄着をしないので気づいている人間は少ないだろうが(そもそも課長に視線を向ける人間が少ない)、結構な逸品が隠されていると俺は踏んでいた。


 後編に続く