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2010年07月20日

<本多法律事務所 本多清二先生>

honda本多清二先生にインタビューをさせて頂きました。

Q1. 弁護士としてお仕事をする上での信条・ポリシーを教えてください。
A1.弁護士の仕事はある意味で小説家に近いと思います。過去の(歴史的な)事実の断片を経験則を用いてつなぎ合わせて、ひとつのドラマにしてそれを裁判官に伝えるのです。いわば極めて現実的な小説家なのです。一般市民が訴訟用の証拠を残しながら暮らすことなどありませんから、偶然残った証拠や当事者の説明などを聞いてそれらをつなぎ合わせるのです。実に面白い作業ですね。

Q2. 弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
A2.実際のところ特にきっかけはなく、友達が勉強していたのに触発されて資格を目指しました。三職から弁護士を選んだことに関しては、受験勉強中は特に こだわりはなかったのですが、修習の中で外で仕事をすることの少ない裁判官や、権力を振りかざすことになる検察官の仕事には私としては馴染まなく、人々と触れ合いながら仕事ができる弁護士を選択しました。

Q3. 弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A3.市民生活における民事関係の一般です。土地の問題や交通事故など普通の民事上の紛争を扱うことが多いですね。

Q4.弁護士になって特に印象に残っている案件(事件)を教えてください。
(A)原告になった場合
1.学区の越境問題がありました。子供の進学を考えた親が、進学実績のある公立中学校に学区外から子供を入学させました。しかし、在学中にこのことが発覚 しました。文部省の指示で市町村は入学を取り消しにし、それに対して訴訟を起こしたのです。敗訴しましたが、この時感じたこととしては(1)子供は何も分からないのに、大人のルールで子供の生活をそこまで変えてしまっていいのか(2)学校当局は越境の事実を分かっていたのに進学コースを充実させたくて入学 を認めたのであって、それが就学途中、入学無効では子供にとって酷すぎるのではないか、ということでした。私自身も若い時期だったので法律でものを処理することの限界を感じた事件でした。学習権といっても、国が機会を与えるだけで、そこには子供が学習環境を選ぶ権利は含まれていないのか、など考えました ね。

2.出産での医療事故に関する事件もありました。生まれる直前までは東京で通院していました女性が、郷里の病院で出産を行いました。結果として胎内死してしまったのですが、病院同士の情報交換が不十分であったという事情がひとつにありました。初産の母親にとっての悲しみと、出産が日常業務となって看護士に かなりの部分を任せていた医師の態度、両者のかい離に直面して、医師の在り方を考えさせられました。

3.新聞の犯罪報道に対して損害賠償請求をした事件もありました。犯罪報道における情報ソースは警察の場合が多い。同一ソースからの報道は結果としてそれぞれの新聞が同じことを報じますから、あたかもそれが絶対の真実のように見えてしまうのです。しかし、これでは新聞が警察のアピールの場になってしまいま す。紙面に弁明の場を設けて批判報道も行うべきです。報道の自由の本質には受け取る側にとっての自由であるはずなのです。

(B)被告になった場合
子供が膝の骨折をして、動脈が切れているのにそれを見落とし単純骨折として治療に当たり、片足切断という結果に至った事件がありました。医療側の訴訟代理 をつとめましたが、医療とは患者から信頼されるところである。しかし、起きてしまった結果は重過ぎました。責任問題以上に、結果の重大性にショックが大きかったです。

Q5. 弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。

A5.ひとつには民事再生などで企業が立ち直っていくのを見ることです。その他では、互いが意地を張って夫婦の実態がないような離婚問題などを解消した時は、依頼者の重荷を解消できた感覚になりますね。
その他、プールに飛び込んでの底に衝突した事故では、和解にこぎつけて、プールの設置者側の弁護人であったものの、被害者の方の一つの人生の悩みを解消する手助けができました。

Q6. 弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。
A6.すっきりしないのは離婚事件に多いですね。
その他では、裁判官に本当のことを伝えきれないときに技量不足を感じてしまいます。というのも、裁判官は弁護士が提供した資料をもとに判断するわけであり、その時には裁判官の個性やクセに合わせて提供する方法や情報量を調節して伝えなくてはならないのです。

Q7. 休日の過ごし方。

A7.仕事は家に持ち帰らないようにしています。事件を抱え込むと、そのことが頭から離れずかなり疲弊します。休息のためにも家ではあえて事件から距離を 置くようにしています。しかし不思議なもので、そうして距離を置いたときに解釈方法や事件へのアプローチの仕方などのアイディアが浮かんでくるものなので す。

Q8. ご依頼者様に対して、特に気をつけていることは何ですか。
A8.依頼者が提供する事実だけで結論を出さないことです。訴訟の相手方ならこの事実をどう見るか、という複眼的な視点が必要です。
もう一つは、「なぜこういう事件が起きたのか」を考えることです。依頼者は弱い状況に置かれていますから、この疑問を依頼者に対して追及しようとするのでなく、それとなく依頼者にそれを自覚させるのです。裁判の勝ち負けに目を眩ませてしまわずに、当事者とともに事件を検証する姿勢が大切です。

Q9. 今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。
A9.弁護士の数が増えると、弁護士が「事件」を作ろうとしてしまいます。訴訟事件をいたずらに増やしてしまうことにどう対処するかが課題です。
修習が一年間になって、法曹三職の間に共通の認識を作ることが難しくなっているように思います。修習が終わってからも、合宿研修など何らかの形で一緒に学ぶ機会を3年間くらいは用意してはどうかと思います。

Q10. 先生の今後のビジョンを教えてください。
A10.引き際は肝心です。これだけ法律が変わる、価値観が変わる、という中で自分がいつまでついていけるのか自信がないのです。例えば、医療事故でもそ のように感じることが増えてきていて、患者と医師の対立項が増えていて橋渡しが難しくなっています。自分の感覚にズレを感じますし、弁護士は引くべきときには潔く引くべきです。若いときそれができるように生活を形成するべきですね。
その他では後進を育てることにもしっかり目を向けていきたいです。

Q11.ページを見ている法曹界を目指している方に向けてのメッセージをお願いします。

A11.ロースクールの未修コースの学生に対して言いたいです。実用法学に特化して勉強しているでしょうが、やはり法哲学や法理学など基礎学はしっかりと 修めるべきです。このような抽象的な思考訓練に一年間ぐらいはやるべきではないでしょうか。与えられた判断基準を機械的に使うばかりの小さい実務家になってしまって、判断基準自体を批判することが出来なくなってしまいます。

<取材法学部生からのコメント>
ひとつひとつ事件についてでも、弁護士の仕事一般についてでも、さらには御自身の仕事への姿勢に関してでも、本多先生はたいへん客観的かつ現実的にお話し て下さったように感じました。そのようなお話の御様子から、本多先生の根本的な姿勢は、遷りゆく社会一般の常識に対して極めて真摯であるように、一市民と して私は感じました。この私の所見は、時代の変化についていけなくなることを先生御自身が危惧していらっしゃったことに矛盾するようにも思えます。しか し、先生が御自身の価値観などを疑っていらっしゃること自体、先生が社会の常識や価値観の変化に対して敏感なアンテナを持っていらっしゃることの裏返しだ と私は思います。本多先生、有難う御座いました。

東京大学法学部3年 我有隆司





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