<渋谷共同法律事務所 萩尾健太先生><乗杉綜合法律事務所 乗杉純先生>

2010年09月24日

<骨董通り法律事務所 唐津真美先生>

photo_karatsu唐津真美先生にインタビューをさせて頂きました。

Q1.弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
A1.もともと公務員や法曹など女性が長く働ける職につきたいという思いがあり、大学進学時に法学部を選びました。在学当時は男女雇用機会均等法が施行されて数年という頃だったので、企業に女性総合職として就職する友人も多かったのですが、女性を補助的な労働力として位置付けてきた日本企業の体質はそう簡単には変わらないだろうと思い、資格として強く、女性も広く活躍している弁護士を目指しました。


Q2.唐津先生はニューヨーク州弁護士の資格もお持ちですが、取得のきっかけを教えてください。
A2.弁護士業界も男性の占める割合が高いですし、やはり男性の方が仕事上有利だという印象を持っていました。女性弁護士が男性弁護士と対等に仕事をするためには、弁護士資格以外に何か強みを持つ必要があると考え、その1つとして、単純ですが海外留学はしておいた方が良いと思ったのです。
私は帰国子女でもありませんし、それまで英語については学校での通常教育を受けたのみでしたが、海外ロースクールへの留学を念頭に入れて、司法修習中から英語学校に通うなどの準備を進めていました。日本である程度の弁護士経験を積んだ後の方が問題意識を持って留学できると思っていたので、日本で2年強の実務を経験した後、米国のロースクールに留学して、司法試験も受け、ニューヨーク州弁護士の資格を得ました。
留学後5年間ほど、いわゆる外資系法律事務所の海外オフィスと東京オフィスで、外国人弁護士と協働しながら集中的に渉外案件に取り組んだことも、貴重な経験になりました。
 
 
Q3.弁護士になって特に印象に残っている案件(事件)を教えてください。
A3..弁護士になって以来、企業法務を中心に扱ってきたのですが、一番印象に残っているのは、企業法務の案件ではなく、当番弁護士として担当した入管法違反の事件です。
日本に留学中の若い中国人女性が、ビザで認められていなかったアルバイトをしたために拘束され、国外退去命令が出された事案でした。
外国人の刑事事件は初めてでしたし、自分がまだ若手だったこともあり、その分野に詳しい他事務所の先輩弁護士にアドバイスをもらうなど色々勉強もして、自分なりに一生懸命取り組みました。しかし、当初からその先輩弁護士に「これは国外退去を避けられないケースだよ」と言われており、実際、退去命令の取り消しは叶いませんでした。最後に面会に行って国外退去が確定したと話すと、依頼者の女性は泣き出してしまいました。私とのやり取りもすべて日本語で出来るほど真面目に日本語を勉強していた人だったので、やはり日本に残りたかったのだなと思っていると、彼女が『唐津先生に会えなくなるのが寂しくて泣いている』と言うのです。感極まって、思わず二人で収容施設のアクリル板越しに向かい合いながら泣いてしまいました。
この件の成功が“依頼者が日本に残れること”だとすれば、結果を出せず失敗に終わった事件ということになりますが、自分なりに懸命に取り組んで依頼者と良い関係が築けたことは本当に嬉しく、印象に残っています。「どんな状況でも誠意を尽くして案件に取り組まなくてはならない」ということも学びました。

Q4.弁護士としてお仕事をする上での信条・ポリシーを教えてください。
A4.“依頼者にとって本当に役に立つ現実的な解決策”を提案できるよう心がけています。依頼者が今現在抱えている問題に対して表面的な回答をしても、根本的な問題が残ったままでは本当の解決とは言えません。
例えば、コンテンツ制作会社が著作権侵害のクレームを受け、「この件で著作権侵害が成立するのか」と相談してきたとします。この場合、著作権侵害の有無を検討して法的に正しい答えを出すのは弁護士として当然です。著作権侵害の可能性があるならば、依頼者のビジネスと具体的状況に即した現実的な解決策を提示して、初めて合格点でしょう。さらに、依頼者がビジネスにおいて適切な契約を締結しなかったり、確認すべき点を確認していないことが原因となって今回の問題が生じているのなら、依頼者の日々の業務を改善しなければ、根本的な解決にはならないと考えます。
このような依頼者の真のニーズ(依頼者自身が意識していないこともありますが)を理解し、当面の問題解決のその先を見据え上で、実践的で時には創造的な、一歩踏み込んだオーダーメイドのアドバイスをしたいと思っています。

Q5.ご依頼者に対して特に気を付けていることは何ですか。
A5.会議などでは、弁護士だけではなく、依頼者自身にも十分に語ってもらうように心がけています。上で述べたことにもつながりますが、弁護士として的確な対応をするには、まずは依頼者のビジネスや想いを深く理解する必要があると考えています。仕事を進める上で必要な情報を得るために適切な問いかけをするのも、弁護士の重要なスキルだと思います。もちろん、業界の知識などを自分で勉強することも大切ですが、依頼者のことを一番知っているのは依頼者自身だからです。また、案件について最終的に決断するのも、依頼者自身でなければならないと思っています。依頼者が弁護士のアドバイスを十分に理解した上で決断できるように、的確でわかりやすい説明を心がけています。

Q6.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A6.現在はアート、メディア、エンターテインメントの分野に関する仕事が多く、業務全体の6割から7割を占めています。企業のクライアントが多いですが、非営利団体やアーティスト個人からの相談を受ける場合も少なくありません。これにIT業界のクライアントを足すと業務全体の8割を超えます。
内容的には、国内契約・国際契約の契約交渉のアドバイスや知的財産権に関する相談の割合が高いですが、その他にも労働関係から入管法、税務、訴訟等の紛争解決に至るまで多岐にわたります。アート、メディア、エンターテインメントは、人の心を動かし、人を幸せにできるパワーを持っていると思います。個人的にも好きですし、プロジェクトや制作活動に参加する一人のスタッフとして、作品を世に送り出すお手伝いが出来ることが嬉しいです。また、日本発のすぐれた作品やコンテンツを世界に向けて発信する手助けもしたいと思っています。
現在でも海外との契約交渉に関わることが多いのですが、日本では業界的に契約に対する意識が高くないこともあり、まだまだ弁護士が関わり切れていないと思います。成長過程にある分野で法環境の変化も著しいので、やりがいを感じています。

Q7.先生の今後のビジョンを教えてください。
A7.日々の業務においては、今までの経験を生かし、引き続き、アート、メディア、エンターテインメントやITを中心とする分野の仕事を中心に携わっていきたいと思います。専門分野の法知識や業界の知識、さらには海外の法制度の知識も強化し、研鑽を積んで、依頼者から良きパートナーとして信頼される弁護士になりたいと思っています。良い仕事を重ねた結果として、多くの作品やプロジェクトに関わっていければ嬉しいです。
また、日本発の作品やコンテンツを世界に向けて発信するためにも、業界全体として法律や契約に関する知識を深めることが有益だと考えています。現在も定期的に企業向けセミナーや企業内研修の講師を務めていますが、今後も様々な形で情報を発信していきたいと思っています。
さらに、弁護士登録時から、通常業務とは別に、弁護士会の活動として、中学・高校に赴き生徒が主役の模擬裁判を指導するなどの法教育に携わってきました。
裁判制度、ルールの意味、正義や公正というテーマは、子どもの頃から考える必要があるものだと思います。実際、法教育については、近年急速に関心が高まってきています。また、子ども時代に実際に弁護士に会うことで「弁護士って恐くないし、普通の人なんだ」と身近に感じてもらえるだけでも意味があると思います。
法教育に関する活動は、ライフワークとして続けていきたいです。日常業務やその他の活動を通じて、“より幸せな未来”のために役立てれば、本当に嬉しいですね。

Q8.ページを見ている方々に対してメッセージをお願い致します。
A8.特に比較的小さな企業の方や個人の方は、弁護士に相談することをためらってしまうのか、実際に相談される時には問題がかなり深刻になっているケースが多いです。「弁護士の仕事は裁判」という印象があるのかもしれません。実際には、裁判の手前でできることは非常に多いですし、日常的に相談していただければ、問題が深刻になる前に回避できるケースがほとんどなのです。是非、あまり身構えず気軽に弁護士に相談して下さい。

Q9.ページを見ている法曹界を目指している方に向けてのメッセージをお願いします。
A9.漠然と“法曹になりたい”“弁護士になりたい”という思いを持っているだけでは、いざ試験に受かった後、進む道に悩むと思います。法律や判例の知識、あるいは論理構成力や交渉力というのは弁護士の仕事道具であり、そのツールを使う分野は社会の中に広範囲に広がっています。弁護士に共通して求められる基礎的な能力はもちろんありますが、その上で更に求められる知識やスキルは、対象となる仕事の分野によって自ずと異なってくると思います。
司法試験の制度が変わり“弁護士の就職難”とも言われていますが、早くから弁護士として何がしたいか意識することが大切だと思います。もちろん、仕事を通じて新しい分野と出会い、方向転換をしていくこともあるでしょう。それでも、長期的な視野を持つことで、目の前の勉強や課題に取り組む姿勢も変わるでしょうし、弁護士を採用する事務所の立場からも、そのような視点を持って努力を積み重ねてきた人材は魅力的に見えると思います。是非頑張ってください。

<取材法学部生からのコメント>
唐津先生はとても物腰の柔らかでお優しい方で、インタビューもとても楽しくさせて頂きました。‘弁護士’というと気難しく厳しい方という印象がありましたが、先生はとても穏やかで品のある素敵な女性でした。また、お子さんもいらっしゃるそうで、同じ女性として家庭も仕事もこなされている先生に憧れを感じました。
唐津先生、お忙しい中インタビューにご協力頂きありがとうございました。
 
東洋大学法学部2年 鈴木美貴子



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