<東京リベルテ法律事務所 樫尾わかな先生><くれたけ法律事務所 池田清貴先生>

2010年10月14日

<あかつき総合法律事務所 吉成外史先生>

yoshinari吉成先生にインタビューをさせて頂きました。

Q1.弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
A1.私は早稲田大学が好きで、早稲田に入りたいと思っておりました。中学1年の頃、学校に早稲田出身の先生がいて、「早稲田に入れ!」と言われていたのも大きく影響したと思います。ですから、受験時代は早稲田ならどこでも良いと思っていましたし、現に早稲田大学の商学部に進学しましたから、学生時代は弁護士など考えたこともありませんでした。
念願叶って早稲田大学に進学した私は、落語研究会に所属し、学生運動にも積極的に参加しており、授業には殆ど出ていませんでした。
そんな私も就職活動の時期を向かえ、将来のことを考えるようになりました。しかし、元々、サラリーマンにはなりたくないと考えていましたし、当時の就職活動は1年と2年の成績が重視されており、授業に出ていない私の成績は散々たるものでしたから、どうしたものかと悩んでおりました。そんな折、友人が公認会計士を目指していたのを見て、自分も簿記をやり始め、公認会計士を目指そうと思いました。幸いにも、大学5年次に公認会計士第二次試験を合格し、大手の会計事務所である「アーサー・アンダーセン会計事務所」に入所して、会計士として働き始めました。
しかし、経理の仕事は面白みに欠け、仕事にやりがいを見出せませんでしたが、会計士がどういう仕事かということをきちんと知っておく必要があると考えた私は、一定期間は同事務所で働こうと決意しました。
しかし、そんな時でした。実家で営んでいたパン屋が倒産してしまったのです。そこで、倒産処理を地元の弁護士の方にしていただいていたのですが、その仕事がメチャクチャで、とても不快な気分になりました。
そんな事件がきっかけとなり、兼ねてから自由業をやりたいと思っていたことも相俟って、自分が倒産法の弁護士になってやろうと思い立ちました。そこで、2年間勤めた「アーサー・アンダーセン会計事務所」を退職し、パートで会計士をやる傍ら、司法試験の勉強を開始し、大変苦労しましたが、合格することが出来ました。



Q2.どのような学生時代を過ごされましたか、またゼミ活動はどのようなことをなさいましたか。
A2.落語研究会と、学生運動、そしてマージャンに明け暮れていましたね。ゼミでは当時、社会主義が注目されておりましたので、マルクス経済学を学んでいました。

Q3.受験時代に苦労した話や、勉強をする中で工夫したことがあれば教えてください。
A3.一番難しいのは法的センスですね。つまり、法律というのは、まず条文があって、条文を事実に当てはめて、結論を出していくという三段論法が基本です。条文に疑義がある場合には、第一に判例、その後に学説を参照し、それらを事実に当てはめて、結論を導くという場合もあります。更には民法であれば私的自治の原則であったり、信義則であったりを用いて妥当な解決を図っていくということが求められるわけです。そういった技術というか感覚を総称して、法的センスと呼んでいますが、私は商学部出身であったということもあり、それを身につけるのに時間がかかりました。商学では、一つの原理・原則を取ってみても、時代背景や、経済状況によって千変万化しますが、法学は原理・原則は揺らぐことはなく、体系がしっかりしているのでその違いには戸惑いました。
勉強をする上での工夫したことと言いますと、基本書をじっくり隅から隅まで読み込みました。民法にいたっては、我妻先生の教科書を全巻読みきりましたね。それによって、法的センスが身につきました。ですので、早く受かりたいからといって予備校本のような試験のノウハウを身につけるというような安易な勉強はあまりお勧めできません。なぜなら、それで試験に受かることはできても、実務で必要な法的センスが身につかず、実務家として使えないに人間になってしまう危険性が高いのです。基本書は難解なものも多いので、学部の授業や予備校の講義を聞いた後に読むのが良いでしょう。基本書を読み込むのは大変ですし、一見遠回りにも見えるかもしれませんが、実務家として生きていくという観点から見た場合には、一番の近道だと思えます。

Q4.司法試験のために学んだ知識が実務の中で役立ったと思うのはどのようなときでしょうか。
A4.常に役立っています。基本が前提で実務が成り立っていますから、基本的な勉強は極めて重要であると考えています。司法試験の勉強と実務とでは全く矛盾するものではありませんので、試験のための勉強も100%役に立ちます。

Q5.司法修習時代の経験や思い出について教えて下さい。
A5.私は40期の10組であったのですが、非常に仲がよいですし、楽しかったです。今でも年に1回集まって、当時の教官とゴルフにいっています。
修習先は水戸修習だったのですが、修習先の弁護士の先生方にも非常に良くしていただき、弁護士の基本を教わることが出来、今でも役立っているなと実感しています。

Q6.最初に入所した事務所を選んだ理由と、なりたての頃に苦労したことについて教えてください。
A6.最初は、山本栄則法律事務所に入所しました。そこで、権威である山本先生の下で、弁護士としてのイロハを学ぼうと思ったからですね。新人弁護士は、最初にどこのイソ弁になったかで、自分の一生が決まるといって良いでしょう。その事務所のボス弁に3年間は鍛えてもらい、書面の書き方から、弁護士としての生き方まで、あらゆる基礎を学ぶのです。そういった基礎を身につける時期は、とても大変でしたが、あの頃があったからこそ今があるのだと思います。

Q7.ご依頼者様と接する際に、特に気をつけていることは何ですか。
A7.依頼者のために尽力するということは基本ですね。特に、信頼できる依頼者の方とは、こちらも真剣に接するようにしております。例えば、話を聞いてみて、事案としても何とか力になりたいという場合です。
しかし、弁護士を利用してうまくやろうと思っている詐欺師的な輩には協力しないと決めています。
その見極めのためには、きちんと依頼者の方のお話を聞いて、全うな事案かどうか判断することが必要となります。
当事務所のスタンスとしても、金貸しである町金とヤクザには一切協力いたしません。

Q8.休日はどのような過ごし方をしていらっしゃいますか。
A8.35年近く続けているゴルフにいっていますね。健康にも、ストレス解消にも良いのです。

Q9.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A9.倒産法の分野ですね。私の倒産法弁護士としてのテーマは「倒産した会社をどう再生させるか」なのです。このためには、会計士としての経験や知識も必要になってきますし、会計士時代に得たノウハウは非常に役に立ちます。逆に破産させるのは、手続きを踏めば良いだけですから、誰でも出来ることなのですよ。
倒産法という分野は法的センスもさることながら、ビジネスセンスも必要となります。つまり、法的センスとビジネスセンスがマッチングして初めて企業再生を実現できるのです。
ビジネスセンスとは、一言で言えば「どうやって利益を出すか」という感覚に他なりません。企業経営者にとって「善」とは利益(黒字)であって、「悪」とは損失(赤字)であるからです。
ですから、弁護士が企業の中に入っていって、どう企業を生かし、再生させるかが重要なのです。企業を再生させることで、ひいては、企業の株主の損失を防ぎ、債権者の利益を確保し、その家族を含めた従業員の労働を確保し、路頭に迷わせないということが実現できるのです。訴訟のように勝ち負けがはっきりする仕事と異なり、企業再生というのは皆がハッピーになれるのです。そこが企業再生の最大のメリットだと思います。
この場で、私があえて、声を大にして言いたいことは、殆どの弁護士はこういったビジネスセンスを分かっていないと感じるのです。倒産法、民事再生法や、破産法といった法律は企業再生における一つの手段に過ぎないのです。法律が企業の再生のための“One of Them”であるということの認識に欠ける弁護士があまりにも多いと感じます。

Q10.新司法試験制度や弁護士大増員及び、今後の弁護士業界の動向についてどのようにお考えでしょうか。
A10.まず、最も根本的な問題として、3000人もの新人弁護士に対して、きちんとした修習が出来るのかということです。先にも述べましたように、弁護士という仕事は職人と同じで、新人弁護士はイソ弁として弁護士の基本やイロハを学ばなければいけません。それが身につかなければ、仕事は出来ないからです。そういった実務の修習は、ロースクールでは絶対にできませんし、修習先でも不十分です。弁護士として一人前になるには、最低でも3年〜5年は基礎をきっちり鍛える必要があります。
弁護士が増えることは別に悪いこととは思いませんが、現段階の弁護士の質を維持したままで、3000人もの新人を一体どうやって育成しろというのでしょうか。これだけの人数の新人を高い質で育成することは、物理的に無理なことですし、きちんとした育成の場が確保されていないのにも関わらず、弁護士の数だけを増やしても、無意味ですし、このままでは弁護士業界は崩壊してしまうと思います。
能力をつけるのにじっくりと時間をかけ、きちんとした修業をしないと、この仕事は務まりませんし、私もそうやって鍛えられたから、今メシが食えているのです。
この先の新人弁護士は、例えるならば、医学部生が医師免許を取得して、いきなり外科手術を行うのと同義です。このままでは、この業界が弁護士という名の法律を知らない詐欺師ばかりで溢れかえってしまうのではないでしょうか。
その意味で、現在日弁連の会長でおられる宇都宮先生が仰っている1500人というラインは妥当なのではと思います。

Q11.先生にとって弁護士に最も求められると思う力は何でしょうか。
A11.弁護士というのは法律を知っているが故に、誘惑も多いと思います。ですから、弁護士に最も必要な力は常識と正義感でしょう。

Q12.ページをご覧になっている一般市民の方にメッセージをお願い致します。
A12.弁護士も様々で、色々な方がおられるので、弁護士を利用する際には良く注意して選んで欲しいと思います。

Q13.これから、法曹界を目指す学生に身につけておいて欲しいことなど、法曹を目指す学生にメッセージをお願い致します。
A13.先にも触れましたが、基本書は良く読み込んだほうが良いと思います。それによって、法的センスが身につくはずです。司法試験の勉強は、実務に出る上での前提となっていますので、両者は決して矛盾しません。
こういった、法的センスを身につけるという勉強は合格してからでは遅いのです。基本というのは2〜3年やっても身につきませんから。
法曹界を目指されている学生の皆さんには、是非とも一生懸命勉強して、法律とは何なのかということを探求していって欲しいと思います。


<取材学生からのコメント>
出身地も近く、大学も同じということもあり、緊張することもなく取材を進めることが出来ました。
吉成先生は倒産法分野のエキスパートということもあり、その道の「生」のお話は大変貴重でありました。企業再生のあり方、法的センスとビジネスセンスとのマッチングなど普段、机に向かってする勉強だけでは得ることの出来ない知識や実務経験のお話を聞くことが出来、私自身も企業再生という分野に大変興味を持ちました。
また、吉成先生は新試験制度の導入に関して、とても鋭い見解をお持ちであり、その意見に共感すると共に、先生の弁護士としてのあり方はもちろんのこと、新人弁護士に対する厳しさや愛情を垣間見ることが出来ました。
今回の取材は私にとって忘れることの出来ない大変有意義なものとなりました。
最後になりましたが、吉成先生に感謝の意を表し、取材学生のコメントの結びに代えさせていただきます。

早稲田大学法学部3年 葛巻瑞貴





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