2010年10月19日

<国広総合法律事務所  國廣正先生>

photo_kunihiro (1)國廣正先生にインタビューをさせていただきました。

 

Q1.弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。

A1.私が高校生だった1970年代は公害問題やベトナム戦争など様々な社会問題があり、こうした問題に取り組みたいという思いからジャーナリストか弁護士になろうと考えていました。
その後、冤罪事件に関する本を読み、権力や社会悪に切り込んで不正や人権侵害を正したい、チャレンジしたい、という思いから弁護士の道を選びました。



Q2.弁護士になって特に印象に残っている事件を教えてください。

A2.山一證券の破綻原因の調査を行った「社内調査委員会」の事件です。1997年秋、四大証券の一つである山一証券が「飛ばし」「簿外債務」問題で破綻したことを受け、破綻原因の調査を山一に34ヶ月泊まり込んで行い、翌年4月に調査報告書を公表しました。

調査の結果、経営陣による複雑な隠ぺい工作、取締役会や監査役が機能しないコーポレートガバナンス上の問題、さらに証券会社と大蔵省(当時)の不透明な関係も明らかになり、これをすべて調査報告書に書きました。従来、企業の依頼を受けた弁護士がその経営陣の不正行為を明らかにする報告書を公表するなどおよそ考えられなかったわけですが、職を失った役職員の熱意に動かされた徹底した調査で結果を出すことができました。
調査報告書では、「山一は、株主、顧客、取引先、職を失った従業員とその家族など、社会に対する説明責任がある」と述べており、最近注目されるようになった「経営陣のためではなくステークホルダーのために調査を行う第三者委員会」の原型になっています。

この事件をきっかけに、企業法務や企業の危機管理の分野を扱うことになりましたが、「社会や権力の悪に切り込みたい」という思いから企業に対する厳しい姿勢は変えていないつもりです。

 

Q3.弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。

A3.旧長銀(日本長期信用銀行)の経営者らによる粉飾決算として起訴された刑事事件で、東京地検特捜部と10年間法廷闘争を行いました。
経営者側の弁護人として無罪を主張し、一審、二審と有罪判決を受けましたが、20087月、最高裁で逆転無罪を勝ち取ることができました。

最近問題にされている特捜部の「国策捜査」の第一号だったわけですが、特捜部という権力による見込み捜査とそれに追随する刑事裁判官の不見識という実態を明らかにできたと思います。

 

Q4.お仕事の中で大変だと感じることは何ですか。

A4.「社会的に見て正しい解決」が必ずしも依頼者が望む解決とは限りませんが、これが実は依頼者のためでもあるということを納得してもらうことが大変だと言えます。

また、特に企業法務の分野では、弁護士は依頼者とチームを組み一緒に考えながら様々な問題の解決を図ります。そのためには、企業が行っているビジネスを知ることが第一歩です。まずはビジネスの実態を理解し、リスクを知り、その中で法的な観点も入れて対応策を考えていくので、実務を知ることが何よりも重要です。

企業法務とは企業活動の規律ですから、ビジネスを知ることがまず必要です。「まず法律ありき」という発想ではよい仕事はできません。弁護士という肩書はあくまで資格であり運転免許のようなもので、この資格でどこに行くかが問題なのです。

 

Q5.どのような学生時代を過ごされましたか。

A5.学生時代は山登りばかりしており、本格的に勉強を始めたのは卒業間際からでした。
始めるのが遅かったこともあり早く合格したいという気持ちから最初は論点主義で試験に出そうなところばかりを勉強していましたが、これではだめですね。最終的には教科書の理解など、遠回りでも基本を理解するように努め、合格につながりました。

 

Q6.司法試験のために学んだ知識が実務の中で役立ったと思うのはどのようなときでしょうか

A6.日々役立っています。知識そのものというよりも、ものごとを論理的に考える訓練が役に立っています。「受験は受験、実務は実務」ではなく、論理的思考による問題解決のアプローチが基本という点で、両者はかけ離れているとは思いません。ですから法的なものの考え方はビジネスにとっても有益なわけです。

 

Q7.最初に入所した事務所を選んだ理由と、そちらでの経験を教えてください。

A7.「大小にかかわらず、紛争を11件きちんと公平なルールに従って解決することが社会正義であり、弁護士の役割である」という考え方に共感し、現在最高裁判事をされている那須弘平弁護士の事務所に入りました。基本的には一般民事の事件を扱う事務所で、私は3人目の弁護士でした。

ここで裁判の基本と、一つ一つの事件を丁寧に解決することの大切さを学びました。

 

Q8.依頼者の方と接する際に、特に気を付けていることは何ですか。

A8.弁護士が「先生」と呼ばれることが嫌なので、依頼者の方にも事務所内でも、「國廣さん」と呼んでもらうようにしています。

訴訟、企業法務、危機管理を問わず、仕事は社長から社員、弁護士がチームとなって取り組むことが基本です。お互い対等な立場で同じ船に乗るチームの一員なので、形式的な「先生」などという呼び名が出てくる必然性はないのです。先生がいて生徒がいる、先生がいて依頼者がいるというスタンスではないというのが私の基本姿勢、こだわりです。

 

Q9.休日はどのようにお過ごしですか。

A9.元々山が好きで学生時代は山登りをしており、妻とはそこで知り合いました。夏休みは長めにとって、一緒に世界中の辺境(カラコルム、カムチャッカ、ボルネオなど)に山歩きに行きます。最近、山梨の山奥に家を建て、週末はそこで畑作りをしています。
普段仕事がハードな分、休みの時は思い切り環境の違うところに行くようにしています。

 

Q10.特に関心のある分野を教えてください。

A10.本籍地は訴訟弁護士ですが、最近は企業の危機管理やリスク管理体制構築(コンプライアンス、内部統制、コーポレートガバナンスのアドバイス)が増えています。

また、新しい分野の仕事として、最近話題になっている「第三者委員会」の仕事も多く扱っています。

 

Q11.國廣さんにとって、弁護士に最も求められる力とは何でしょうか。

A11.法律知識というよりは、何が事実であるかという事実を認定する力と論理的な思考能力だと思います。それと、法律の条文から出発するのではなく、ビジネスや紛争の実態から出発して、問題の本質を把握して、解決のための筋道を示す力でしょうか。
その際、法律は一つの有力な武器になりますが、唯一の武器ではないことを理解すべきです。

 

Q12.ページを見ている方々に対してメッセージをお願い致します。

A12.法律とは一般市民の生活と別次元に存在するものではなく、日々の生活において不可避的に発生するトラブルを合理的に解決するためのルールです。「お上」から押しつけられるものではありません。
2人以上の人間がいれば利益衝突は必ず起こります。その時に、力の強い側のゴリ押しによる解決ではなく、理屈が通り、説明可能な解決をするというのが「法というものの考え方」です。
「私は法律を知りません」「難しいことはわかりません」といった意識ではなく、世の中で起こることを合理的に解決するものが法であるという見方をしていただければと思います。

 

Q13.これから法曹界を目指す学生にメッセージをお願い致します。

A13.弁護士は職業ではなく一つの資格で、弁護士=裁判=職業と考えない方がいいと思います。大事なことは、資格を取った先にどういった仕事をするかです。

法曹資格を持ちながら企業に勤めるもよし、公務員になってもいいと思います。自分が資格を持ち何をしたいかを、従来のように固定的な考えに囚われることなく自分の頭で考えてください。

 

<取材学生からのコメント>

企業法務、コンプライアンス、何一つまともに理解していなかった私に、國廣さんは、『この本を読めば少しはわかると思う』と一冊の本を手渡してくださいました。國廣さんご自身が最近書かれた「それでも企業不祥事が起こる理由」(日本経済新聞出版社)でした。
「企業法務」と言われて「難しそう、ややこしそう、私とはかけ離れた存在」といったイメージを抱いていた私にとっては取っつき難い分野でしたが、本を読ませて頂き、見方が変わりました。企業法務は書類とにらめっこというイメージから一転、弁護士は法曹資格を持ったチームの一員として行動しているというイメージに変わり、『弁護士は単なる資格だよ』とおっしゃっていた意味がわかった気がしました。また、コンプライアンスの分野を『面白そう』と感じるようになったことは私にとって大きな変化でした。

國廣さん、お忙しい中インタビューにご協力いただき本当にありがとうございました。

 

東洋大学法学部2年 鈴木美貴子




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