2010年12月17日

<弁護士法人エルティ総合法律事務所所長 藤谷護人先生>

Q1.弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。photo_fujitani
A1.私はもともと医者を目指していました。というのも小学生の時に野口英世の伝記を読み感動したからです。高校の時は文系の科目の方が得意だったのですが、医者になりたいという強い思いから医学部を目指していました。1浪してもなお医学部を目指していたのですが、結局中央大学の法学部しか受からず、経済的な事情もあってそこに行くことに決めました。ただ当時の中央大学法学部というと司法試験合格者が東大よりも多い時代でしたから、自分も司法試験を目指すことを決めました。卒業してからも受験していたのですが、択一試験は受かり論文試験は落ちるという状況が続きました。そこでやむを得ず、腰掛けの積もりで千代田区の職員として就職したのですが、11年間勤めた後に、司法試験に合格し、弁護士になりました。



Q2.千代田区役所ではどういった業務をされていたのでしょうか。
A2.企画課に配属されて、基本計画づくりと事務改善の仕事を担当したのですが、昭和54年当時の千代田区役所は全くコンピュータが一台も入っていなかったので、私がパソコンの導入、さらにはホストコンピュータを使った住民記録システム構築の提案をし、採用されてプロジェクトリーダーとして足かけ10年、情報システムの分析・設計・プログラミング、さらにはプロジェクトマネジメント、そして個人情報保護条例の起草など、ゼロからシステム導入までのあらゆることを担当しました。月の残業時間が250時間を超えることもあり、プログラムのバグを夢の中で解決したり、逆に心身症になったり、かなり大変でしたね。しかし、私は、システム開発技法を徹底的に身に付けたことで、司法試験の知識ではなく考え方を試すという方向転換に適合できたし、またシステム監査技術も身に付けることが出来ました。

Q3.弁護士になって特に印象に残っている案件(事件)を教えてください。
A3.1つ挙げるとするならば、IT関係の訴訟で解決までに8年程かかった事件です。この事件はある程度の加入者がいるユーザ組織が発注したプログラムが完成しないことの責任をITベンダに対して請求した訴訟で、私はユーザ側について最終的にはそれ相応の損害賠償金はとれました。しかし訴訟が終わって考えてみると、長期間の裁判が続いたことにより、その間、発注者であるユーザは新しいシステムの開発にも取り組めない状況に陥っていました。訴訟に勝っても、長期間に亘って、組織の成長発展を停止せざるを得ない、私の心の中に、これが「本当に求められる紛争解決と言えるのだろうか?」という大きな疑問と課題が芽生えました。
この事件をきっかけとして、裁判以前の段階で、システム技術と法律技術を融合した「システム監理技術」を土台にした様々なシステム紛争解決のサービスメニューを開発し、裁判に頼らない紛争の解決を目指した「LT式ITソリューションサービス」を構築することとなります。

Q4.藤谷先生は東京地方裁判所の非常勤裁判官の経験もおありですが、そこではどのようなことを得られましたか。
A4.東京地裁ではIT分野と建築分野の調停専門の裁判官を勤めていたのですが、そこで感じたのがITに詳しい裁判官がいないことです。なぜかと言えばITの歴史そのものが浅いからです。コンピュータができてから60余年、インターネットが普及してから15年しか経っていないので、裁判所にはIT訴訟に関するノウハウがありません。労働・知財・商事・医療過誤などの分野と比べると紛争の数が少ないからでしょうか、専門部という体制が取られていません。しかし、裁判所だけでなく、弁護士にも、民法学者にも、分析解明と解釈論の掘り下げが不足しているのだと痛感しましたね。

Q5.Q2でおっしゃっていた「LT式ITソリューションサービス」とはどのようなサービスなのでしょうか。
A5. 「LT式ITソリューションサービス」は事後的紛争解決と未然紛争防止、そして裁判外紛争解決(IT−ADR)という3つの分野から構成されています。特に、未然紛争防止と裁判外紛争解決は裁判に頼らない紛争の解決を目的としています。通常の訴訟だと数年かかるところを、このサービスを使い、ITベンダとユーザがフラットな場所で、訴訟の弁論主義という喧嘩ではなく、技術的真実主義に基づいて、共同で紛争解決のプロジェクトチームを作って、話し合うことで、3〜6カ月で合意点を見付けることができます。実績も沢山あります。

Q6.弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。
A6.弁護士は人の人生に関われる仕事なので、悩みを抱えて落ち込んでいた人を笑顔にできたときには嬉しいと感じます。ある時、精神的にかなり病んでいる女性がパワハラ問題で相談に来たことがありました。その後親身になって2時間程話を聞くと、女性に笑顔が戻りました。このように相談に来た当初は深刻な表情をしていた人から、最終的に笑顔で感謝されると本当に嬉しいと思います。

Q7.弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。
A7.責任の重さですね。事件はすべて、一人の人間、一つの企業の生存存否に関わりがあります。依頼者の心の痛みを共感することが弁護の出発点であるというのが私の身上ですが、必然的に、かなりのストレスを背負い込むことになります。それもその責任は1つではありません。大きい事件も小さい事件も含めると何十もの事件を抱えていて、私はそのすべてをチェックするようにしていますから、ストレスも半端なものではありません。

Q8.休日はどのようにお過ごしですか。
A8.仕事をしていることもありますが、それ以外ですと合気道とスキューバダイビングですね。合気道は23年やっていまして、裁判所合気道部の次席師範代も務めています。私の場合、週2回の合気道で日常的なストレスを解消し、年何回かのスキューバで体中のエネルギーをチャージすることで、心身の健康を維持しています。

Q9.弁護士としてお仕事をする上での信条・ポリシーを教えてください。
A9.「依頼者の痛みに共感する」「専門性の高いサービスを提供すること」「フットワークが良いこと」「高品質なリーガルサービス」であること。この4点ですね。

Q10.ご依頼者様に対して、特に気をつけていることは何ですか。
A10.依頼者とコミュニケーションをするということです。司法試験の勉強ばかりしていると人と人とのコミュニケーションが不足する場合がありますが、弁護士にとってこの能力は不可欠だと思います。

Q11.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A11.IT分野はもちろんですが、刑事事件も大好きです。正義感を奮い立たせてくれます。

Q12.今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。
A12.弁護士の資格を得たとしても就職ができない訳ですから、弁護士になろうと考えている人には大変厳しい状況です。日本社会の活力という観点からも、早急にこの現状を改善すべきだと思います。

Q13.先生の今後のビジョンを教えてください。
A13.私はベンチャー精神を持って「日本のIT社会に貢献する」ことを目指しています。先に述べたように「LT型ITソリューションサービス」という今までにはないオンリーワンの手法を駆使して、企業や社会のために尽力していきたいと考えています。

Q14.ページを見ている方々に対してメッセージをお願い致します。
A14.新聞などでも報道されていますが、毎年、自殺する人が増えています。原因は様々ありますが、弁護士に相談すれば解決の糸口は必ず見つかります。人生において解決できない問題はありません。決して命を粗末にするようなことを考えるのではなく、何か悩みがあればとにかく弁護士を頼りにして下さい。

Q15.ページを見ている法曹界を目指している方に向けてのメッセージをお願いします。
A15.確かに今後の弁護士業界は厳しいですが、状況の変化というのはどの時代にもあります。その中でも自分のやりたいことを見つけて努力すれば、自分の道を開拓できると思います。さらに私は弁護士の仕事はクリエイティブだと思っています。知り合いの弁護士が、毎年同じような仕事をやっていてあまり面白みがないと言っていたのを耳にしましたが、決してそんなことはありません。離婚事件であれ、債権回収であれ、1件1件内容が異なり、それぞれ違った対応が求められます。その意味では弁護士は非常にクリエイティブな仕事であって、学生の皆さんには是非そのような仕事ができる弁護士を目指して欲しいですね。

<取材学生からのコメント>
システム監査技術者としての資格もお持ちでIT関係のトラブルにおいて有数のご活躍をされている藤谷先生にお話を伺いました。今までのIT関係の法的トラブル(特にITベンダとユーザ企業の訴訟)では、どうしても解決までに時間とコストがかかっていました。この状況を改善しようと裁判ではなく話し合いでの解決方法=「LT式ITソリューションサービス」を提案された方が藤谷先生です。この新しい方法は、法的サービスの枠を超えたまさにソリューションであると思います。お話を伺う中で、藤谷先生は単に頼まれた案件を法的に対応するのではなく、双方の企業、ひいては日本のIT社会を考えたソリューションサービスを提案されていると実感しました。
藤谷先生、お忙しい中インタビューにご協力いただきまして誠にありがとうございました。

首都大学東京法学系4年 古賀圭一朗



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