2011年01月21日

<ロータス法律特許事務所 秋山佳胤先生>

秋山佳胤先生にインタビューをさせて頂きました。photo_akiyama

Q1.弁護士になろうと思ったきっかけを教えてください。
A1.私は東工大出身で理系だったのですが、大学時代に膝をケガして入院したのをきっかけに司法試験を目指すことになりました。ケガをして約2ヶ月間入院した後、ちょうど年度末試験があって非常に忙しく過ごしていました。その後春休みを迎えて急に時間に余裕が出てきた時に、ふと司法試験を思いつきました。
法曹の中でも弁護士を選んだ理由は、自分は強い人間ではないため、人を裁いたり(裁判官)、正義の名の下、被告人を糾弾したり(検察官)することに違和感を感じ、むしろ被告人の育った環境、ライフストーリーを知ると、責める気持ちより共感する気持ちになることから、弁護士を選びました。



Q2.弁護士になって特に印象に残っている案件(事件)を教えてください。
A2.私は主に知的財産事件を扱っていますが、最も思い出に残っているのは、サンゴ砂事件(東京地判平成15年10月16日・平成14(ワ)1943号)でしょうか。この事件は、米国での製品の販売行為が、米国特許権を侵害するかという点について、東京地裁において、米国特許クレームを解釈し、均等論の成否まで検討して非侵害であることを判断したものであり、外国特許権の侵害の有無について、我が国の裁判所が、具体的内容に踏み込んで判断した初めての事案です。尊敬する先輩である故安田有三先生からお誘いを頂き、一緒に担当させて頂いたものですが、第1回期日では、裁判所から訴えの取下を勧告されるなどの苦労やいろいろな工夫をしたのが大変有り難い経験になりました。その他、JALとANAの訴訟も印象に残っています。JALがANAのチケットレスシステムが特許侵害であるとして、差止と損害賠償を求めた事件です。これはいわゆるビジネスモデル特許の分野でリーディングケースとなるはずの事件でしたが、損害論に入らず、結審ということで被告である当方の勝訴が確実な状況になった時点で、JAL側が請求の放棄をしたものでした。事務所の先輩である美勢克彦先生が主任になり、事務所のボスの松本重敏先生、また、ユアサハラの牧野利秋先生他とも一緒に仕事をさせていただき、とても勉強になりました。

Q3.秋山先生は知的財産がご専門ということで、知財関係の訴訟でQ2の他にも印象に残った事件がありましたらお聞かせ下さい。
A3.最近の事件で言うとマジコン訴訟でしょうか。メディアでも報道されていますが、マジコンを使うとゲームが無料でできてしまう訳ですからソフトウェアメーカーとしては大きな被害を受けることになります。私たちは任天堂を始め、50社以上のソフトウェアメーカーらから依頼を受け原告代理人となり、2009年2月に勝訴判決(差止判決)を得ました。しかし依然としてマジコンは秋葉原等で売られているのが現状です。そこで、2009年10月に第二次訴訟を提起しまして、今回は差止に加えて損害賠償も請求しています。

Q4.弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。
A4.大変だとはあまり感じることはなく、少しでも人のお役に立てる機会があることに感謝しています。もちろん、事件が立て込んでいて早急に対応しなければいけない時などはありますが、それを大変だと思って苦しむか、やりがいを感じて感謝し、楽しみながら仕事をするかは自分の意識次第だと思っています。

Q5.弁護士としてお仕事をする上での信条・ポリシーを教えてください。
A5.事務所名の「ロータス」は、蓮の他に「楽園」という意味があります。私が意図しているのは、皆様一人ひとりの持っている素晴らしい力が発揮され、それが横のネットワークでつながり、調和することにより、地上に素晴らしい楽園が創造されるということです。弁護士としては、それぞれの方が本来の力を十分に発揮し、調和的な解決ができるよう、法的なサポートをさせて頂ければと考えています。特許の分野では、特許による独占権が強すぎては一企業の利益のための道具になってしまいますし、反対に特許が弱過ぎると、発明に対するインセンティブが十分に与えられず、産業の発展につながりません。このため、特許法のあるべき秩序を考慮しながら、よりよき調和を意図して、一つ一つの事件に取り組んでいます。

Q6.依頼者の方に対して、特に気をつけていることは何ですか。
A6.物事を解決するのは、本来的に、ご本人の力によるものと考えています。そのため、心がけているのは、前述したとおり、依頼者の力が最大限に引き出されるためのお手伝いをさせて頂く、ということです。これは、法律相談だけでなく、病気にかかった際などの健康相談も同様と考えています。医者が病気を治してくれるのではなく、病気を克服するのは本人の自然治癒力が最も大切と考えています。その意味で弁護士として、また一人の人間として、ご縁のある方々の最大限のサポートをさせて頂くということが役割と考えています。

Q7.今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。
A7.現在弁護士業界は変化の時期に来ていますが、今法曹を目指している人たちにとっては酷な状況に見えるかもしれません。ただ変化は必ずしも悪いものではなくて、必要があって生じているものだと思います。今までのものにしがみつこうとすると苦労しますが、逆に、変化の波を受け容れ、上手く乗っている方には、いろいろなサポートが入り、楽しく過ごされている例を多く見ています。
近時の司法改革については、温故知新ということを忘れて、旧司法制度の良さを十分に検討せずに、新制度へ移行してしまった、という問題があるのではないでしょうか。

Q8.現在法曹を目指している学生へのメッセージをお願いします。
A8. 法曹は仲間であって、互いに尊重する心を持ち続けていきたいと思います。統一司法修習制度の下では、弁護士になろうとする人でも、裁判所に行って判決を考えたり、検察庁で取り調べの実習もします。裁判官、検察官、弁護士それぞれに立場の違いはありますが、お互いに立場を尊重し合い、調和的な解決に向けて協力することが、関係者の救済とあるべき法秩序の実現に寄与するものと考えています。その意味で「法曹」というのは一つの仲間だと思います。裁判官、検察官、弁護士という役職はひとつの「役割分担」であって、社会正義の実現や人権擁護など目指すところは共通していると思います。法曹を志される皆様とご縁を頂くのを楽しみにしております。

<取材学生からのコメント>
知的財産がご専門で、JALとANAの紛争や任天堂のマジコンの訴訟、またサンゴ砂事件などメディアでも大きく取り上げられた事件を多く担当されてきた秋山先生にお話を伺いました。個々の事件について非常に興味深いお話が伺えたのはもちろんですが、先生の他者を尊重しようとするお考えや、学生である私への接し方を拝見して本当に素晴らしい方だと感じました。また、秋山先生の恩師である松本重敏先生の「特許は一私人の利益のためにあってはならず、人類のためにならなければ、その存在意義はない。」というお言葉には、特許法ひいては法律が何のためにあるのかということを改めて考えさせられました。
秋山先生、大変お忙しい中ご協力頂きまして誠にありがとうございました。

首都大学東京法学系4年 古賀圭一朗

 



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