2011年02月07日

<さかきばら法律事務所 榊原富士子先生>

榊原先生にインタビューをさせて頂きました。photo_sakakibara

Q1.弁護士になろうとしたきっかけを教えてください。
A1.プラス面の理由とマイナス面の理由の両方があります。まず、マイナス面の理由は、当時の社会情勢に関係しています。私はオイルショックの直後に国立大学法学部に入ったのですが、当時の男子学生の就職先は選り取りみどり、選び放題だったんですね。ところが女子学生の求人はゼロ。均等法もなく「男性のみ」募集が合法だった時代ですから。だから、女性が法学の勉強を生かすには、教師か、公務員か、何らかの資格を取るしか働く道が思いつきませんでした。その中では一番自由に仕事のできる法曹の道が良いと思いました。
また、私が高校生の頃は、高度経済成長の末期で、水俣や四日市など公害が問題になっていた時期です。小さい頃からませていた子で(笑)、本を読むのが大好きだったんですね。その延長で新聞で社会のことを読むのがとても面白くなり、そのような公害訴訟で、原告が次々に勝っていって、それが新聞の一面にバンとのるんです。それで弁護士という仕事もあるんだ、と思って、法学部に入りました。これはプラス面の理由ですね。



Q2.弁護士になって特に印象に残っている事案(事件)を教えてください。
A2.いくつか挙げますと、まずは婚外子の裁判ですね。民法900条4号但書の、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1という規定の違憲性をいつくかの裁判で争いました。1993年には東京高裁で初めて違憲決定をいただきました。もう1つが、婚外子の住民票や戸籍での記載方法に関する裁判です。95年までは婚外子は婚内子と違う方法で住民票記載がなされていました。すると住民票を見ると、「この人は婚外子だ」ということがわかってしまうわけです。個人情報保護法もなく、誰でもさしたる理由なく住民票を閲覧できる時代でした。それを差別のない記載方法に改めて欲しいという行政訴訟・国賠訴訟です。住民票については東京高裁で違憲判断、戸籍については東京地裁でプライバシー権侵害との判決をいただきました。もう1つは、婚姻後も生来の姓を使いたい、つまり夫婦別姓でいたいということで、大学教授の女性が、自分の勤務先を被告として、通称使用を認めてほしいという作為的差止を求めた訴訟です。高裁で将来志向型の和解ができました。これらの事件は大変時間もかかり苦労しましたが、結果も出て、また原告や支援の方たちとの交流がとても面白かったので印象に残っています。

Q3.弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。
A3.弁護士という仕事は解決すると喜んでもらえます。裁判官と違うのは、判決をもらって解決した後も依頼者と交流することができます。それが嬉しいです。1つ1つの案件を解決していって、幸せになるお手伝いを少しできることに喜びを感じます。会えなかった親子が10年ぶりに会えるようになった時は、本当に嬉しかったです。弁護士にはこのように人と人を“つなぐ”仕事もたくさんあります。

Q4.弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。
A4.たくさんありますよ。例えば離婚事件の中で。日本の離婚制度は完全な破綻主義ではなく、まだ有責主義を残しています。自分の側に破綻についての主たる責任があると離婚を請求はなかなか認められない。このため、自分ではなく相手が悪いんだ、ということを、10年、時には20年前の事実に遡って延々主張しあわなければならないような場合もあり、書面を作成していてもむなしい気持ちになります。子供が亡くなったとか、植物状態になったなど被害が重大な事件は、とても重い仕事ですね。だから弁護士には、重い事件を扱う時にも、自分も一緒になって気持ちが沈んでしまわないような、明るさとかパワーが必要ですね。

Q5.弁護士としてお仕事をする上での信条・ポリシーを教えてください。
A5.ものごとのプラス面を見るということですね。「感謝する、褒める」ということをとても大事にしています。自宅の冷蔵庫に「座右の銘」のような感じで貼ってあります(笑)。貼ってあるということは、毎日、なかなかそれが出来ていないということです。例えば依頼者が自信喪失したり展望を失っているときに、依頼者の持参された書面を見て「字がきれいですね」と言ったり、パソコンが得意な方だったら、「とても助かります」と感謝したりするようなささいな事も含めてです。それを続けていると物事がうまく回っていきます。

Q6.ご依頼者様に対して、特に気をつけていることは何ですか。
A6.依頼者の気持ちにしっかり寄り添うということです。若い弁護士や学生さんの方が、感情が素直で相談者の気持ちに寄り添いやすく、横でみていて勉強になることがあります。経験を重ねてくると先の展開が見えてきてしまい、裁判官的になってしまって、「そうは言っても無理だよね」という感じになりがちです。そうならないように気をつけたいと思っています。あとは守秘義務をしっかり守ることです。

Q7.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A7.一番関心のあるのは、親族・相続などの家事事件ですね。夫婦や親子の関係から生ずる紛争です。

Q8.今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。
A8.それはなんとも分からないです(笑)。プラス面もあると思いますよ。例えば若い人が増えてきて、社会的な問題に取り組む人も増えています。就職できないなどのひずみも出てきていますが、基本的には弁護士も競争しなければならないと思います。私がしているような市民事件の分野であっても、良い仕事を続けていたら食べていけないことはないと思います。「年収300万円以下の弁護士が溢れている」といった週刊誌的な記事もよくありますが、それは少しオーバーで実態とは違うと思います。昔ほど高収入は望めないけれど、生きがいと仕事が一致できるいい仕事だと思いますよ。

Q10.ページを見ている方々に対してメッセージをお願い致します。
A11.何か困ったことがあれば気軽に相談に来てください。実はみなさんが思っているほど弁護士費用は高くないですから。

Q11.ページを見ている法曹界を目指している方に向けてメッセージをお願いします。
A11.経済面や就職面でいろいろマイナスなことが書かれていますが、まだまだ自分自身でいくらでも仕事が開拓できる分野だと思います。自立心や心意気の高い人、社会のために頑張ろうという人には是非なって欲しいです。あとは語学力の獲得です。私の後悔の1つは、若いうちに留学して置けばよかったということです(中高年でもできますが、ハードルが高いです)。英語が使えたら知人友人が100倍以上増えたのになぁと思います。市民事件の分野でも、国際会議にどんどん出て行って、国外でも活躍できる弁護士になって欲しいですね。あとは、すべての分野の中で、ジェンダー視点を生かしてほしいということです。

<取材学生からのコメント>
家事事件に関する第一人者でいらっしゃる榊原先生にお話を伺いました。とても明るく優しい先生でいらっしゃいました。取材前は毎回少し緊張するのですが、先生がお部屋に入ってこられた瞬間に、すぐ安心してしまうような、そういう雰囲気の先生です。
家族に関する事件はとりわけ心の負担が大きく、依頼者の人は本当に大変なのだろうなと思います。そのような中で安心して自分のことを話すことのできる弁護士の先生の存在は不可欠だと思いますが、榊原先生は、そのようなときに本当に頼りになる先生だと思いました。今回はお忙しい中、お時間を作って頂き、誠にありがとうございました。

一橋大学商学部3年 丹野駿吾



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