<赤井・岡田法律事務所 赤井勝治先生><ブレークモア法律事務所 末啓一郎先生>

2012年06月15日

<弁護士法人名古屋南部法律事務所 岩井羊一先生>

photo_iwai岩井羊一先生にインタビューをさせて頂きました。


Q1. なぜ、弁護士になろうと思われたのですか?
A1. 学生時代に、水俣病の訴訟の支援の学生の会にはいり、そこでみた弁護士が魅力的だったからです。
 また、弁護士は、困った人を直接助ける仕事が出来ること。組織に属することなく自由に自分の思ったことが出来ると思ったからです。
実際に弁護士になってから感じることとして、自由な部分と、やはり弁護士という職業から制約される部分があります。弁護士は興味を持った分野を手がけていくと自然とそうした事件が増えていき、好きな事件を扱うことが出来ます。そうした自由な面とは反対に、弁護士会に所属して弁護士会の仕事など弁護士としてやるべきことをやらなくてはならなかったりもします。事務所を作った場合には事務所の経営的なことを考えたり、構成員を考えたりと人間が組織を運営する以上一人でやれない仕事があります。また、必ずやりたい事件がくるわけはありません。それに加え、多くの依頼者の方と関わります。中には、なかなか法的なことに関して理解を得られない方もいらっしゃいます。人から依頼を受けてやる仕事という制約もあり、考え方が合わない人の事件をやらなければならないこともあります。実際の弁護士業務は思い通りになることばかりではありませんね。



Q2. 弁護士のお仕事の中で嬉しかったことは何ですか。
A2. 判決言い渡しに立ち会い、勝訴判決を言い渡される瞬間です。
私は、名古屋南部大気汚染訴訟の弁護団に所属していましたが、2000年11月に「差し止め」を認める判決に立ち会ったときのことは大変印象に残っています。この事件は1989年に訴訟提起されました。大気汚染物質を排出した会社と名古屋の南にある国道23号線等の道路から大気汚染物質を排出した国に対して呼吸器の病気になった原告の方が訴えました。この裁判では、一定の濃度をこえる大気汚染物質を道路から排出させてはいけないということを国に命じた判決が出ました。当時大気汚染に関しては全国で裁判が行われていました。それまでは道路から出ている大気汚染物質が健康被害を起こすので損害賠償を認めたという事件はあったのですが、尼崎で2000年1月に出た判決で、初めて道路からの大気汚染物質排出の「差し止め」を認めました。その流れで名古屋はどうなるのかと注目されていました。結果としては前述ように「差し止め」を認める判決を裁判所が言い渡しました。差し止めと聞いた時は嬉しかったですね。
また、この事件の他では過労死、過労自殺の裁判でやはり勝訴を言い渡され、法廷で、一緒に裁判をしてきた原告の方と一緒に喜ぶときが特にうれしい瞬間ですね。


Q3. 弁護士になって一番大変だと感じることは何ですか。
A3. 大変 といって思い浮かぶのは
   依頼者と意見が合わないとき。
   自分が担当したことがない種類の事件にとりくむとき。
   専門的な知識がいる事件を担当するとき。
   膨大な資料、記録がある事件を担当するとき。
  大変なことは色々思いつきますが、多くの弁護士が経験していることですね。
また、分野は違えど、どの職業でも、困難なこと、お客様とのトラブルはあることなので、弁護士だけがとりたてて大変と思えることもありません。


Q4. 弁護士としてお仕事をする上で意識していることは、何ですか。
A4. 最終的にどのようにして終わるのがもっともよいことなのかを考えることです。
  相談であれば、単に相談者の質問に答えるだけでなく、本当にこの人の求めに答えるためにはどのような事情を聞いて、どのような回答まですべきなのか。
 受任した事件であれば、どのような結論で終了するのが依頼者のためにもっともよいのか。よく話を聞き、説明することを心がけています。
依頼者の方とお話をする際、実際に起こっていることが次にどのように進んでいくかという説明をします。そのときにどういった対応をしたらいいのか、どういう風に終わっていくことがメリットのある終わり方なのか、その方が思っていることも受け入れつつ最終的な落ち着きどころを色々と示してあげることが重要であると思います。依頼者が望むことが出来ないときは、どうして出来ないのか、どういう理屈なのかということを丁寧に説明します。事の本質に迫った説明が求められるということでしょうか。法律はどうしてそうなっているのか、どうして法律的にはだめになるのか、どうして法律が出来ているのかという法律の教科書に書いてあるようなことも噛み砕いて話しています。


Q5. 弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A5. 労災(過労死、過労自殺)の事件と、刑事事件です。過労死、過労自殺の事件は、事務所の大先輩である水野幹男弁護士に誘われて担当するようになりました。いくつか取り組んでいるうちに、だんだん担当する事件も増えてきました。亡くなってしまったことは非常に不幸です。ご遺族は、普通に死んでいかれるのではなく、誰かにその人の人生を妨げられて死んでしまった事に対し、無念な気持ち、怒りの気持ち、真実を知りたいという気持ちがあります。ご遺族の方がその理由がわかったとき、或いは生活の保障がされ喜ばれたときにはやりがいを感じます。 また、労災を認められること自体数が少ないことですので、難しい事件という面もあります。それが苦労して裁判所に認められると、「国家権力」が決めたことが間違っていたということがはっきりします。そうした時には、間違っていたことを正すことが出来た達成感がありますね。
 大変な点としては、亡くなっている方についての裁判なので、本人の意見を聞くことが出来ません。わからないことが多く、尚且つ情報を持っているのは相手方です。その人が勤めていた会社が、仕事が大変かどうかということは一番知っているはずです。しかし、会社は労災が認められると困る側ですので、正直に教えてくれるかわかりません。そのために情報が少なく、事情がよくわからないということが苦労します。亡くなった方のご遺族の方は家でしか仕事の話を聞いていないのでわからないことが多いのです。細い断片的な情報をもとに労災を認めてもらうのは大変ですね。また、日本の裁判は自分で証拠を集める必要があります。証拠がきちんと集まらなければ立証責任で訴えた側が負けるという仕組みになっています。この仕組みは、無茶な裁判を起こされても証明出来ない限り認められないので、訴えられた人が守られるという面があります。しかし、証拠がどちらかに偏っている時は問題です。証拠の収集の制度は議論されていますが、解決出来ていません。証拠を強制的に収集する制度がないことは苦労するところですね。
 刑事事件は、弁護士会の刑事弁護委員会に所属しており、委員会の活動をしていくなかで、事件を多く担当するようになりました。
2つは、いずれも、国を相手にする裁判となる部分が、似ているようにも思えます。


Q6. 今後の弁護士業界の動向はどうなるとお考えでしょうか。
A6. 誰もが、弁護士にアクセスでき、相談することができるようになること。そのうえで良質な弁護士のサービスを受けることができるようになること。
そのためには、一般の方は弁護士費用の負担を心配せずに利用できる制度。弁護士にとっても必要な費用が受け取れる制度を充実させる必要があります。
労働審判制度ができて、労働事件を司法の場に持ち込む件数が増えました。このように司法がさらに利用しやすくなる制度も作っていく必要があります。
そのような方向に弁護士、弁護士会が努力していく必要があると思います。


Q7. ページを見ている法曹界を目指している方に向けてのメッセージをお願いします。
A7. 弁護士は現在人数が増えて大変な状況にあります。しかし、弁護士は、人のために活動し、感謝される、やりがいのある魅力的な職業です。人の権利を守るという感覚が前提にある仕事なので、高い志を持ってほしいと思います。
是非目指してください。



<取材学生からのコメント>
愛知県の名古屋南部法律事務所の岩井羊一先生にお話をお伺いしました。
岩井先生は労災(過労死・過労自殺)、労働事件(労働者側)、刑事事件などの分野に関心を持って取り組まれている先生です。今回のインタビューでは特に労災の事件についてのお話を重点的にお伺いしました。労災の事件の特徴ややりがい、大変な点など岩井先生ならではのお話をお聞きすることができ、大変貴重な経験となりました。
岩井先生、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。

武蔵大学社会学部3年 尾澤佑紀




bengoshiretsuden at 10:06│Comments(0)TrackBack(0)

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