<弁護士法人希望さくら総合法律事務所 古市佳代 先生><埼玉東部法律事務所 斉藤耕平先生>

2013年01月16日

<弁護士法人やまと法律事務所 安田弘光先生>

photo_yasuda_20130116安田弘光先生にインタビューをさせて頂きました。


Q1. なぜ、弁護士になろうと思われたのですか?
A1. 法学部に入った当初は、特に弁護士になろうとは考えていませんでしたが、法律を学んでいくうちに、法律を生かして、困っている人の役に立ちたいと考えるようになりました。
 大学4年生のとき、田宮裕著「刑事訴訟法(新版)」を読み、刑事訴訟法が単に処罰を目的とするわけではなく、捜査機関に対する制約を加えるものである、ということを学び、また、身柄を拘束されている被疑者・被告人が世の中で一番助けを必要としている存在であると考えるに至り、刑事弁護人として、刑事裁判に関わっていきたいと思うようになりました。被疑者、被告人は困っている存在であり、弁護人はそうした方の唯一の味方になって、被疑者被告人の権利を守っていける存在であるということに魅力を感じました。
 田宮裕著「刑事訴訟法(新版)」は、私が今までで一番感銘を受けた書籍で、受験時代に買った書籍を今も事務所の机の上においてあり、仕事で詰まったときなどによく読んでいます。




Q2. 今までどのようなお仕事をされてきましたか?
また、現在どのようなお仕事をされていますか?
A2. 民事、家事、刑事のほか、医療過誤や行政事件も含め、幅広く取り扱ってきました。
 中でも、刑事事件と生活保護問題については積極的に取り組んでいると思います。
 今もまんべんなく多様な事件を取り扱っていますが、手持ち事件の中で一番大きい事件は、年明け(平成25年1月)に公判がある裁判員裁判です。これは殺人の犯人性を否認している事件で、起訴されてからこれまで、何度も検察官に証拠開示を求めたりして、争点の整理をしてきました。公判では、短期間にたくさんの証人を集中的に尋問したり、冒頭陳述・弁論をしたりしなければならず、準備が非常に大変です。
 裁判員裁判は法律についての知識をお持ちでない方が裁判に参加されます。ですので、わかりやすくこちらの主張を伝えることが難しいところだと思います。当然難しい法律用語を使えば理解してもらえませんし、法律用語を簡単なわかりやすい言葉に置き換える必要があります。また、長々とこちらの主張を続けるだけではなかなか裁判員には伝わりません。例えば書面を出すのであれば、出来るだけ一枚で短くし、文章ではなくレジュメのような形で用意し、それを口頭で説明したりします。また、私は裁判員裁判ではパワーポイントを使って視覚的にもわかりやすく理解をしてもらうようにしています。
 裁判員裁判では、直前はそれに掛かり切りになります。今回の裁判は否認事件で犯人性を争っているのですが、年明けはそれに掛かり切りになると思いますし、年内(平成24年)から準備をはじめています。また、裁判員裁判に掛かり切りになっていると、その間に他の期日が入らなくなりますので、他の事件の期日はその後にずれ込んできます。その分、他の事件の書面の締め切りが集中してしまい、裁判が終わってからも大変になります。
Q.お仕事の中でやりがいを感じる時はどのような時ですか。
 刑事事件では準抗告や不服申し立てが認められた時や無罪を取った時のように、こちらの主張が認められた時はやりがいを感じます。
 民事に関しても最終的にこちらの主張が認められた時は嬉しく思います。相手方の主張が対立していてこちらの主張を裏付ける決定的な証拠を見つけた時などはすごく嬉しいと感じます。しかし、事件の中には当然負ける時やこちらの主張が認められない時もあります。そうした事件の時でも、依頼者の方にきちんと話をして納得していただける解決になった場合はほっとします。
 また、生活保護の関係では、生活保護と刑事事件は似ているところがあります。両方ともすごく困っている方がいるということですね。刑事事件では、被疑者・被告人は身柄が拘束されていて、外界との接触が遮断され、受けたくもない取り調べを受けています。そうした人たちには外部からの助けが必要です。生活保護に関する経済的に困窮している人も、明日死ぬかもしれないという先が見通せない状況にあり、お金がなくて弁護士に助けを求められない状態にあります。そうした困っている状態ということが共通していることがあります。また、国や公権力に対して闘っていかなければならないという点で、刑事事件と生活保護は共通していると思います。
 生活保護では、本人が申請に行った際に違法な理由で保護を受け付けないという形になる相談が多くあります。それを我々が援助して保護が出るようになった時は本当に感謝され、私自身も嬉しく思います。


Q3. 弁護士としてお仕事をする上で意識していることは、何ですか。(信条・ポリシーなど)
A3. 自分の感覚を信じる、ということだと思います。
 弁護士として仕事をしていると、「実務の壁」というのを感じることがよくあります。これは、法律の本来の理念とかけ離れた実務の運用が定着している、という場合です。例えば、刑事手続でいうと、勾留延長は、「やむを得ない事由がある」と認められる場合にのみなし得るものですが、実際にはかなり緩やかに認められています。
 こういった実務の壁に対して、「実務はこうだから」と諦めていては何も変わらないので、自分がおかしいと感じたら、自分の感覚を信じて、実務の運用を変えるために可能な手段を執っていくことが必要だと思います。
 多くの弁護士は実務の中で問題点を感じているのですが、実際に勾留延長に対して準抗告をしたりしても、なかなか認められるものではないので、認められないことが積み重ねられるとだんだんやらなくなるということがあると思います。刑事事件で良い結果を出している弁護士でも、うまく行かなかったケースをその何倍も経験しています。良い結果を出すためには、負け続けたから諦めるというわけではなく、勝てるまで自分が正しいと信じて、戦い続けていくことが大切ではないかと思います。


Q4. 安田先生は弁護士会の貧困問題対策委員会や反貧困キャラバン2012の奈良実行委員会委員長を務められるなど、貧困問題に取り組まれていらっしゃいますが、弁護士は貧困問題にどのように関わっているのでしょうか。
A4. 私が初めて生活保護問題を取り扱うことになったのは、弁護士になって3年目のときに、生活保護を受けたいが窓口で受理してもらえない、という相談を受けたことがきっかけです。生活保護では、申請があっても受理しない「水際作戦」ということが行われることがあるのですが、そういった不当な対応がなされた依頼者を間近で見て、生活保護行政を何とかしなければならないと思ったからです。
 経済的に困窮している人は、社会的にも弱い立場にあります。弁護士というのは、困っている人を助けるというのが本来の使命だと思いますので、弁護士は貧困問題に積極的に取り組んで、経済的弱者の声を代弁していく必要があると思います。
 私が生活保護問題に取り組み始めた頃は、貧困問題に取り組む弁護士は少なかったと思いますが、最近は、特に若い弁護士を中心に、貧困問題に積極的に取り組む弁護士も増えてきていると思います。
Q.反貧困キャラバンではどのような活動をしましたか。
 反貧困キャラバン2012を今年行いました。前回が4年前の2008年に開催されました。キャラバンカーが二台あって、沖縄と北海道から出発して半年かけて全国を回り、反貧困に関する活動をします。貧困問題といっても失業問題や低賃金の問題など色々あるのですが、今年芸人の方の生活保護バッシングが起こりましたので、奈良では生活保護問題を中心に取り組みました。具体的には役所を回って要望を伝えたり、交渉をしました。また、街頭でビラを配ったり、法律相談を行いました。弁護士は基本的に法律相談を担当し、私自身は実行委員長でしたので、行政を回ることもしました。
 先述のように奈良では、生活保護問題に取り組むことをしたのですが、特に最近は生活保護に対して風当たりが強いです。本当に必要な人には必要なのですが、不正受給が強調されて、必要な人が遠慮してしまい受けづらい風潮があります。そうした芸能人に対するバッシングから必要な人が受けられなくなる風潮を改善することを意識しました。実際に駅前で話していても生活保護について反対という方もいらっしゃいました。生活保護に対してのバッシングは強くなっていますが、それに対して本当に必要としている人が声を上げていくことが難しいと思います。そうした声を大きくしてバッシングの流れを変えていく、そうした困窮した人の声を代弁出来るような形にして、生存権の実現を図っていくことが必要です。


Q5. 弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A5. 刑事事件と生活保護問題は、これまで関心を持って取り組んできた分野ですので、これからも続けて取り組んでいきたいとは思っています。
 弁護士が一番取り扱う一般民事(貸金、不動産明渡、登記請求など)や家事事件(離婚など)についても、一つとして同じ事件はなく、毎回頭を悩ませますが、「この主張を裏付けるのに、どこにどういう証拠があるか」と考えたり、主張の構成を組み立てたり、反対尋問の戦略を練ったりすることは、弁護士になりたての頃と比べて、経験を積んでいる分、楽しく感じられるようになってきています。こういった一般民事事件や家事事件についても、今までと同じようにたくさん取り扱っていきたいと思います。


Q6. ページを見ている方々へのメッセージ、法曹界を目指している方に向けてのアドバイス等をお願いします。
A6. 法曹界を目指している大部分の人は、能力的には大きな差はないと思いますので、自分を信じて、諦めずに、頑張って頂けたらと思います。



<取材学生からのコメント>
奈良県の弁護士法人やまと法律事務所でお仕事をされている安田弘光先生にお話をお伺いしました。
これまで安田先生が取り組まれてきたお仕事の中から特に刑事事件(裁判員裁判)と生活保護問題について詳しくお話ししてくださりました。
裁判員裁判にかかる労力や時間について、具体的に説明してくださり裁判員裁判ならではのご苦労が窺い知れました。
また、安田先生は反貧困キャラバン2012の奈良県実行委員長を務めるなど反貧困、生活保護の問題に熱心に取り組まれていらっしゃいます。そうした生活保護問題の第一線でご活躍されている安田先生から生活保護問題を巡る現状、生活保護を本当に必要としている人が受給できていないという問題点などお伺いすることができ、大変有意義なインタビューとなりました。
安田先生、お忙しい中貴重なお話をありがとうございました。


武蔵大学社会学部3年 尾澤佑紀




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