<河合法律事務所 河合良房先生><山下法律事務所 大谷賢市先生>

2013年05月14日

<浦和サライ法律事務所 野木尚郎先生>

photo_nogi_20130329野木尚郎先生にインタビューをさせていただきました。

Q1. なぜ、弁護士になろうと思われたのですか? 
A1.著名な弁護士を親族に持つ高校時代の友人が弁護士志望であったため、高校時代に初めて弁護士という職業を意識しました。いわゆるつぶしがきくことも考慮に入れ法学部に入り,法律サークルにも入会して法曹志望の友人に囲まれていたものの,政治活動も行ったりと,今思えば余り身を入れて勉強してはいませんでした。卒業後は、バブルに便乗して起業したりしましたが,中小企業を取り巻く社会の実情に触れ,改めて本気で法曹を目指して今に至っている次第です。


Q2. 今までどのようなお仕事をされてきましたか?
また、現在どのようなお仕事をされていますか?
A2.いままで,中心的に手掛けてきたのは,交通事故、医療事故などです。労働事件では,労使双方の代理人をやらせていただいています。埼玉県という土地柄,債務整理、離婚、遺産分割、遺留分滅殺請求,建物明渡など,相談された事件は何でも取り扱うという姿勢で取り組んでいます。いわゆる街弁ということになるでしょうか。また,埼玉は刑事弁護に熱心な土地柄ですので,国選弁護を中心に相当数の刑事事件を手掛けてきました。裁判所にご選任いただくという点で一般の事件とは異なりますが,破産管財人も相当数やってまいりましたし,相続財産管理人,後見人などもやっています。

Q3. 特に印象深い事件がありましたら教えてください。
A3. 依頼された事件はどんな事件も全力で取り組むことを目指しているので,どれも印象深いのですが、強いて言うならば、長くかかった事件はやはり強く記憶に残っています。例えば労働事件では,今は労働審判などの早期解決のための制度もありますが、かつては,純粋に紛争処理の手続だけ見ても,仮処分から始まり、高裁まで行ったりすると、数年単位のスパンで取り組む必要がありました。労働事件は、いわゆる紛争処理手続に乗る以前から、事態が流動的に変化していく場合も多く、腰をすえて取り組む必要があります。もちろんこれは労働事件だけに限った話ではなく、交通事故においても被害者の方の怪我や後遺症の状態などは変化していきますので,同じことなのですが,そういった意味では、司法研修所が紛争類型としている古典的な事件といわゆる現代型の事件では色合いが違うかなと感じています。また,刑事事件では,もちろん殺人事件などの重大事件の弁護は強く記憶に残りますが,いわゆる重大事件でない事件でも,印象深いものもあります。単なる出入国管理法違反事件でしたが,被告人の方が,ある国の独裁政権に対する反政府団体の幹部の方の事例ですが,その方が別の国に政治亡命し,そこからさらにわが国に政治亡命する際に,手続に必要な資料を紛失し,わが国に先に亡命していた知人も運悪く死亡してしまっていたという事件がありました。当初捜査機関は全く信じなかったのですが,本当であることを立証することもでき,無罪にこそなりませんでしたが,刑事手続終了後,最終的には政治難民として取り扱われることになったと聞いています。その後,その反政府団体も,民主化によって有力野党になっているので,彼が活躍していればよいなと思っています。

Q4. 弁護士としてお仕事をする上で意識していることは、何ですか。(信条・ポリシーなど)
A4.事案に沿った丁寧な事件処理を心がけています。
事件を迅速に処理しようとするとどうしても定型的に処理する必要がでてきます。しかし,他方,事件には必ず個別の事情もあり,時には、一見法律的には無駄と思える事情を掘り下げてゆくことで、展望が開けることもあります。無論裁判所に一蹴されることも多いですし、全ての事件で,個別事情を掘り下げていると,結果的に事務処理量が膨大になってしまいますし,時間は無限にあるわけではないので,悩ましいところではあります。ある交通事故事件の例ですが,逸失利益の項目について,当方の多額の主張に対して,相手側は完全にゼロ主張という真っ向からの対立事案がありました。過去の判決例に照らすと当方の主張が通る見込みがないと思われ,実際,いわゆるマニュアル本にはそのように書かれてもいたのです。そこで,過去の判決例全てを時系列に並べた際の時代の傾向との相関関係を分析し,それに沿った主張のために、個別の事情を拾い上げ、元に遡るとこういう発想があると掘り下げていったところ,1審の判決では,当方の主張がほぼ認められました。残念ながら控訴されて,控訴審では和解せざるをえなかったのですが,それでも結果としてかなり満足のいく結果になったと記憶しています。この例は一例にすぎず,一般化はできませんし,勿論,事件を判例に照らして諦めることも多く、その方が早い解決を導くこともできるというメリットもあるため判断は微妙なところです。依頼者のお気持ち次第とも言えますが、何が依頼者にとって最善か悩みつつ,できるだけ依頼者の気持ちに答えることができるように足掻いてみるのも重要なではないかと思っています。

Q5. 弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A5. 関心自体はあらゆる分野に対して持っているのですが,現実の取り組みは,やはり多く携わってきた交通事故と、医療関係などでしょうか。医療「関係」と言ったのは,いわゆる医療事故そのものにとどまらず、医事法と呼ばれる分野全般だからです。医療関係については、大学で,「患者の人権と医療倫理」という題名で,医療倫理や医事法の講師をしている関係からも、強く関心を持っていて、共著ですが著作もあります。医療刑事事件については研究会やシンポジウムもおこなっています。また,日弁連の民事裁判手続に関する委員会に所属している関係から、民事訴訟法の運用や関連法規の改正,また,日弁連の会員全般に向けた各種の訴訟類型ごとの研修などの運用も興味をもって携わっています。関心というか、著作という関係では,これも共著ですが,反社会的勢力に対する仮処分の利用に関する本や相隣関係に関する本のマンション関連部分を執筆しているので,これらも関心のある分野といえると思います。

Q6. 法曹界を目指している方に向けてのアドバイス等をお願いします。
A6.一般市民の言葉や感覚と、法律の世界の言葉や感覚は相当に違っています。その意味では,一般人の言いたいことを子細に分析して法的世界の言葉に変えて伝えていかないと,場合によっては,裁判のテーブルに載ることも自体も困難です。比喩的にいうと,裁判所は出てきたものを調理する仕事ですが、弁護士は極めて広範な材料から裁判所が調理しやすいものを選び取り、また調理しやすい形に加工して出す仕事だと思います。Q4でも触れましたが、一見無駄で馬鹿げた話のように聞こえても、よくよく考慮すると法的な翻訳が可能ということがありますので、弁護士は、依頼者の言葉や実感をどれだけ法の言葉に上手く翻訳できるかという、翻訳業のような側面があると考えています。そこを意識しつつ頑張って欲しいと思います。
また、実務家としての弁護士は何より、事案の法規への当てはめが勝負になります。学生や学者の方々の論文などを読んでいても、最高裁の判決・判例の読み方や検討について、体系性や理論的整合性の方に目が行ってしまっていて、実際に使うことをあまり考えていないと思われる論述をときに目にします。そして、実際の用い方をよく理解していないと、えてして事実そのものも見えてこないのではないでしょうか。学生時代、高名な裁判官出身の教授の講義で「事案を素直に見ることが大切だ」と繰り返し言われましたが,いくら自分自身の考えで「素直」に見ても,教授の要求する「正解」にたどり着かないのです。ところが,あるとき,ふと,教授は頭の中に法律へのあてはめが完全に入ってしまっているので,ご自身が「素直」と感じられることは,今までの判決例における事実へのあてはめの集積そのものなのではないのかと思い当たりました。そこで,教授の重視する多数の判決例を当該事案の事実との関係で徹底的に繰り返し覚えこむことで,ようやく教授の「感覚」に少し近づけたように思えた記憶があります。法律へのあてはめが血となり肉となっている人は、「事案を素直に見る」ことと、「法律的に見る」こととが表裏のように直結しています。裁判官は当然そういった目を持っていますが、学生や学者の方々は日頃そのようなことを余り重視していないのではないでしょうか。学生の皆さんには、現段階から、実際に法律を使うということを念頭において,日頃から「事案を法律に当てはめる」意識を持って勉強をしていただければと思います。


<取材記者からのコメント>
野木先生は、親しみやすいお人柄で、大変快くインタビューに応じてくださいました。実務家としての意識を強く持つと同時に、大学での教鞭も取っておられ、弁護士としての非常に広範なご経験・お考えをお持ちであることが、お言葉からひしひしと伝わってきました。今後も、広いフィールドで法律家として活躍されてゆくことと思います。
野木先生、お忙しい中ご協力をいただき、ありがとうございました。

慶應義塾大学文学部3年 鈴木塁斗


 


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