<新潟菜の花法律事務所 渡邊幹仁先生><飯塚法律事務所 荒生祐樹先生>

2013年06月19日

<富山中央法律事務所 坂本義夫先生>

photo_sakamoto_20130614坂本義夫先生にインタビューをさせて頂きました。

Q1.なぜ、弁護士になろうと思われたのですか? 
A1. 幼い頃、イタイイタイ病の記録映画を見たことが、弁護士を目指したきっかけです。イタイイタイ病に苦しむ方の姿や、大企業の経済活動により人の命が奪われる理不尽さが忘れられず、こうした人たちを助けたいと思うようになりました。また、イタイイタイ病被害者の救済の為に、全国各地の弁護士が集い、闘ってきたという事実にも心を動かされました。
 司法修習の際にその映画をもう一度みる機会があり、改めて弁護士への志を強めました。現在は、イタイイタイ病が起きた富山県で活動をしています。


Q2. 今までどのようなお仕事をされてきましたか?
また、現在どのようなお仕事をされていますか?
A2. 民事事件、家事事件、刑事事件など、法的紛争全般を扱ってきました。分野を限らず、依頼者の方のご相談に応じて様々な事件をお受けしています。
 その中でも、人の命や生活が軽んじられ、弱者が虐げられるような事件には、特に関心があります。イタイイタイ病のような公害訴訟や、全国B型肝炎訴訟、志賀原発運転差止訴訟など、分野を問いません。そういった方々に寄り添い、人々の命や家族、生活を守る力になれることが、弁護士の魅力だと思っています。

Q3. 弁護士としてお仕事をする上で意識していることは、何ですか?(信条・ポリシーなど)
A3. 弁護士を目指した頃から「命に関わる事件は見逃せない」という思いはずっと抱いています。人の命ほど大切なものはないにも拘らず、それが企業活動や経済的利益などのために犯されることが許せないのです。そういった思いから、現在も、イタイイタイ病やB型肝炎といった問題に関わり続けています。
 弁護士の法廷外の仕事や役割も大切にしたいと思っています。既存の法律に事件をあてはめて訴訟で事件を解決していくことももちろん重要な仕事です。しかし、それを超えて、法廷外で実情を訴えたり,マスコミに向けて声を発信したりするということも大切だし、そうでなければ解決しない問題もたくさんあると感じています。大きな問題に立ち向かったときこそ、弁護士が情報を発信し世論を動かすことができれば、法律の改正や新法の制定に繋がります。マスコミの前で話すことが好きなわけでも、得意なわけでもありませんが、自ら先頭に立って声をあげることも、弁護士だからこそできる、大切な役割だと思っています。

Q4. 依頼者の方との関係では、どのようなことに気をつけていらっしゃいますか?
A4. 最近になって、依頼者の方から、事件の「背景」を聞き取ることの重要さをより強く感じるようになりました。分野は同じ事件でも、依頼者の方の性格やそれまでの人生、事件の詳しい内容を知ると、やはりそれぞれの事件には違いがあり、同じ事件はありません。事件を解決するにあたる際は、そうした事件の背景に目を向けることで、依頼者にとってより良い解決が導けると思っています。
 もちろん、私たちもプロなので、依頼者の気持ちに引っ張られすぎて冷静な判断ができなくなってはだめですし、背景事情を必要以上に全面に出して情に訴えかけるような方法はとりません。しかし、その背景をきちんと知っていなければ、どんな言葉で訴えかけても、表面的で上滑りになってしまうように思うのです。事件の背景は、依頼者の気持ちを伝える上での大事な根底とも言えるかもしれません。
 だからこそ、依頼者の方とお話をする際は、話しやすい雰囲気を心がけ、細かい情報や、一見不要に思えるようなことでも、丁寧に聞き取ることを心がけています。

Q5.弁護士として特に関心のある分野は何ですか。
A5. やはり、私が弁護士を目指すきっかけでもあった、イタイイタイ病の問題には関心があります。四大公害病が問題になったのは昔のことと思われている方もいるかと思いますが、イタイイタイ病の問題は、勝訴判決が確定して40年以上たった今でも、終わっていません。
 イタイイタイ病に関して言えば、主治医がイタイイタイ病と診断しても県がイタイイタイ病と認定しない例があります。そのような方のイタイイタイ病認定申請は今でも続いており、イタイイタイ病の患者は今も発生しています。
 また、かつてカドミウムが流された神通川の水は現在は綺麗になっていますが、上流には今も稼動している工場があり、カドミウムに汚染された堆積場があります。神通川がまた汚されることがないように、またこんな公害が起きてしまわないように、監視をしていくという活動はこれから先もずっと続きます。私も神通川流域の地元住民の皆様と共に、工場の排水に目を光らせてきました。工場の不注意だけでなく、地震などでダムが壊れたりすることもないようにも、気を配っています。
 公害のように大きい問題は簡単には解決に至りません。被害者の数が多いため、いくら法律や公害病認定制度を設けても、どうしてもその枠からこぼれ落ちてしまう方がいらっしゃいますし、そうした方ひとりひとりを救わなければいけません。また、裁判だけでなく、マスコミや世間に対して声を発し続けることも必要です。一見事件が解決したように見えても、その闘いは長く続くのです。私自身、これから先も、地域の皆さんと共に、イタイイタイ病の問題に取り組み続けたいと思っています。

Q6.現在、法曹界を目指している方へのアドバイスをお願いします。
A6. 事件の依頼者と最も密接に関わり、あらゆる面から支えるのが弁護士の仕事です。といっても、弁護士を目指す人は、特別にまっすぐな性格や大きな志を持っている人でなければいけないわけではないと思います。弁護士活動の根底にあるのは、誰もが当たり前に持っている正義感です。目の前に困っている人がいたら、反射的に「助けてあげたい」と思うことがあるでしょう。立場の弱い人が虐げられていたら、誰でも「おかしいな」と思うはずです。そんな当たり前の気持ちや小さな疑問を見逃さず、実現するのが、弁護士なのだと思います。
 もちろん簡単な仕事ではないので、失敗することもありますが、弁護士は、依頼者・被害者ひとりひとりの人生を支えているというやりがいを強く感じられる仕事です。私自身、公害やB型肝炎のような問題を扱っていると、弁護士にしかできないことをしている、というやりがいを感じることがあります。
弁護士は、医者のように病気を治せるわけではありませんし、自らの手で川を綺麗にできるわけでもありません。ましてや、一度起きてしまった事件をなかったことにもできません。そういった意味での「本当の救い」は弁護士の手では成し遂げられないかもしれません。それでも、一番近い場所で被害者の痛みを共有し、寄り添える弁護士だからこそ、救えるものや新たに作り上げることのできる希望があると感じるのです。
 これから弁護士を目指す方には是非、そうした弁護士ならではのやりがいや役割を感じながら、仕事に励んでほしいと思います。


<取材学生からのコメント>
坂本先生のお話で最も印象に残っているのは、Q5.でお聴きした、現在のイタイイタイ病問題に関してのお話です。私自身、四大公害は既に解決されているものだと思っていたので、今でも被害者が増え続けていること、そして、裁判が終わって川が綺麗になっても、この先もずっと終わることがないということにとても衝撃を受けました。Q5.でも、「本当の救いは弁護士の手では成し遂げられないが、それでも一番近くで痛みを共有できるのは弁護士」というお言葉がありましたが、失われたものを少しでも取り返すこと、世間に向けて声をあげること、そしてそれ以上に、新たな希望を守り続けることの難しさと厳しさを感じました。しかし、こうしたお話も、坂本先生は重くなりすぎず、常に明るくはきはきとお話し下さり、弁護士のお仕事に対して、辛さ以上にやりがいを感じておられるのだなと思いました。坂本先生、お忙しい中、インタビューをお受け下さり、誠にありがとうございました。

武蔵大学社会学部4年 柳田香帆



 


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