2019年06月13日

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『女医者』
秋琴女史 
(晴光館:明治36年,7版)

 一問一答式の、医学相談本。
 初版は明治35年。だいぶ売れた本のようで、正・続・新編と全三巻ある。見つけたのは正巻の第7版。
 城市郎『発禁本』によると、正続の合本版が明治43年に風俗禁止の発禁処分を受けているようだ。

 この7版も、243頁から248頁が削除されていた。
 と言っても、何の断り書きもなくただページが切り取られているだけ。
 はたして当局の指導によるものなのか判断に困る処だが、削除されている部分が本書でも一番過激な章「色欲」だったので、これは官憲によるものだと思う。
 ちなみに、削除された部分の目次を拾うと

「男子を嫌ふ女の心理」
「女子終身独身の衛生」
「男女天然的想像力」
「陰具と色欲関係」
「服薬と交接力」
「飲食物と交接力」


 これでは削除されても仕方がない。

 
▼肝心の内容だけれども、かなりバカな質問があって楽しい。
 特に性の悩みは、本人が大真面目なだけに妙な可笑しさがある。
 少しその問を抜き出してみる(句読点を加えました)。
「手淫の為め陰茎曲りたる者。交接に差支なきや、又妊娠せしむるものなるや」
 
「拙者は娼妓とは交接を遂げ得れども妻とは交接出来ず。原因及療法を」
 
「私は二十五歳ですが、交接の際非常に早く佳境に入り易く、従て快味も至って少し。右は全く房事過多の結果ならんが、如何に致せば快味を長く、且つ増さしむるか知らせて下さい」

「十七歳の未婚の女子。如何なる故にや両乳非常に大きく発育せり。小さくすべき方法なきや」


 また、獣姦鶏姦(男色)の害悪についての説明が凄い。
 いかに人倫に悖る汚らわしい行為であるのかを、おどろおどろしい文言で脅しつけてくる。

 獣姦の害を説明せられたし

 獣姦に至りては、其(の)不倫の甚しき。
 其(の)両生殖器、相適合したるものにあらざれば、生殖器を傷害せらるゝ事勿論にして、身神も之が為めに腐朽せらるゝなり。
 淫猥なる婦女子の仰向(け)に臥し、犬の腹を擦りて其をして発情せしめ交合を遂げたるとか、其他鳥獣を捕へて面白半分に交合をなす等、泰西諸国に於ては往々耳にする処。
 又、梅毒を患ひたる者、其病毒を移植せん目的を以て行ふ事等あり。皆昔時に属する事にして、我国に於ては長崎に於ける犬姦事件より以来、未だ斯の如き忌はしき事を聞かざるは甚だ喜ぶべき事なりとす。

 獣姦を行えば生殖器が傷ついた挙句、心身が腐朽するらしい。
 どちらかといえば心身が腐朽しているからこそ、そのような行為にでるのではあるまいか。
 また、梅毒を移して直すために獣姦するという因習は初めて聞いた。


 鶏姦の害を説明せられたし

 近来青年間に於て一の忌はしき風習あり。しかも白昼乱行して恥とせず、群を成して対手を選び、特に美少年を見れば跡追掛け、泣叫ぶをも聞かばこそ其肛門を女陰に替へて情念を洩らす者あり。之を鶏姦と云ひ人の忌む所たり。
 即ち自然的交接を得ざる結果にして、男色の邪道に陥る者多し。殊に、合意的に相互の鬱情を交換して恥とせざるに至っては、言語道断と言はざるべからず。鶏姦の害たるや手淫と相選ぶなく、反って甚しきに至る。
 風紀紊乱ここに極まり。
 男色趣味の青年が群れをなして相手を物色、美少年を追いかけては『泣叫ぶをも聞かばこそ其肛門を女陰に替へて情念を洩らす』らしい。
 どんな世紀末だ。

 そして、そのような不埒な行為に耽り続けていると、肉体的な変化が生じ様々な弊害を及ぼすという。
 此習慣を持続するときは、亀頭は尖鋭となり細長なる陰茎に変ず。成年期に達し女子と交接するに当りて、勃起力薄弱にしてしかも陰萎する事ありて、生殖の目的を達する事能はす。被鶏姦者の肛門は閉鎖十分ならずして鉢状に陥凹し、痔核脱肛等を患ひ或は糜爛し又直腸の慢性加答児を発す。

 ……えっ、亀頭が尖るの?
 怖っ。


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2018年12月04日

ボール表紙本の落語速記本を安価にて発見。
なんとたったの800円!

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翁家さん馬『左甚五郎美術の誉』(駸々堂:明治22年)

翁家さん馬は5代目。
内容は「竹の水仙」と「三井の大黒」を一席の続きにしたもの。

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竹の水仙

現在高座で演じられる「竹の水仙」「三井の大黒」とほとんど同じ型。
くすぐりや言い回しも、共通点が多い。

俺は三代目桂三木助の「三井の大黒」が好きで、とりわけ左甚五郎のとぼけた人物像がたまらない。
それがすでに全部出ている。「ポン州」という甚五郎のあだ名もある。
 
ただし「三井の大黒」のサゲ、恵比寿・大黒像に狂歌をつけるくだりはなかった。
「商いは 濡れ手で阿波のひとつかみ 守らせ給え ふたつ神たち」
この歌はいつ誰がこしらえたのだろう?

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三井の大黒


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2018年12月01日

「探偵実話」の文字に惹かれて購入。
 
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『世界スパイ 探偵実話』中島武(金鈴社:昭和16年)

 内容は、古今東西におけるのスパイのエピソード集。
 しれっと忍術が入っているのがいい。
 そういえば、陸軍中野学校では忍術の授業があったらしい。
 今でも、公安で忍術の研究をしていたら面白いのに。

 しかし装丁がいい。
 見開きにすると、サーチライトが横断する。
 シンプルなら力強いデザイン。
 題字の変形明朝体も好きだなあ。


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2018年11月22日

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雑誌「変態・資料」の揃い全21冊を購入。
総て読むのに半年ぐらいかかってしまったけど、まあ楽しかった。

「変態・資料」は、艶本界の雄・梅原北明「変態十二史」シリーズの儲けをつぎ込んで刊行した会員制配布雑誌。
全誌に渡り、きわどい記事が満載。
全21冊の内8冊が発禁処分を受け、さらには刊行前の内容見本ですら発禁になっている。
続きを読む

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2018年07月13日

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『モダン千夜一夜』
田中直樹
(チップ・トップ社:昭和6年)

発禁本。文庫上製本。
雑誌「犯罪科学」の埋め草記事を集めたもの。

巷間から集めた現代エロ挿話。
「遊ばせ言葉で金を巻きあげるキャフェの話」「デパート娘に栄光あれ」「ライスガールの出現」「ビルディングと女の脚の話」「エロ・エロ・エロ広告時代」「チャブ屋女にも実はあり過ぎると言ふ話」という具合に、一つひとつは短いがエログロ世相のスケッチとして十分。
その意味では、壱岐はる子『エロ・エロ東京娘百景』にちょっと似ている。


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刊行広告(「犯罪科学」第3巻第7号)
「エロ・エロ・エロ・性のイソップ」という惹句が光る


 著者の田中直樹は武侠社の編集者で、雑誌「犯罪科学」(武侠社)、「犯罪公論」(四六書院)や、「近代犯罪科学全集」「性科学全集」(共に武侠社)などを編集したという。

 この本が発禁になったのは、外人のヌード写真が数多く挟まれているせいだろう。
 口絵はもちろんのこと、数ページごとに文章とは何の関係もなくコンスタントに外人ヌードが挿入される。
 数えたら50枚あった。
 これはもう、当局に喧嘩を売っているとしか思えない。


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