パキシルのネガティブキャンペーンをするつもりは全くないのだが、これはいくら何でもまずいだろうと思うことが2012年の夏にアメリカで明らかになった。 

TIMEのこの記事を読んだ精神科医も多いだろうが、日本ではこういった医学の倫理に反することは絶対になされていないことを祈るばかりである。 

多くの精神科医は、MRの欺瞞や誘惑を断固としてはねつけ、一線を画し、適正な薬物療法は何かということを日々追求し続けているのだが、製薬会社に魂を売ったような一部の精神科医のせいで、他の真面目な精神科医までもがそんな眼で世間から見られてしまうのは、はなはだ迷惑なのであった。 

(TIMEの原文) 
http://healthland.time.com/2012/07/05/breaking-down-glaxosmithklines-billion-dol
lar-wrongdoing/

(日本語訳) 

アメリカ司法省は7月2日、グラクソ・スミス・クライン社に対して、認可された範囲を超えて同社の薬を販売したことや、食品薬品局に薬の安全情報を告示しなかったことを有 罪と判定し、同社に2,400億円の支払いを命じた。

判決では、抗鬱剤パクシルおよびウェルブツリンの違法販売と、糖尿病薬アバンディアの心臓への副作用の隠蔽で有罪としている。グラクソ・スミス・クライン社は刑事罰として 800億円を支払い、アドベア等の違法宣伝販売行為に対する民事罰として1600億円を支払う。 

今回の裁判所の判決が対象とする年度内で、同社はアバンディアを8,000億円、パクシルを9,300億円、ウェルブツリンを5,400億円を売り上げていて、総額2兆2 ,700億円の売り上げになる。(製薬メーカー・コンサルタント会社IMS Healthによる調査) 

「これほど売っているのだから、6種類の薬を10年以上違法販売して得た利益は巨大で、2,400億円は販売経費くらいであろう」と告発者グループのスポークスマンである パトリック・バーン氏は言う。 

今回の判決は、1990年代の後半から2000年代の半ばまでの違法行為に対して下された。4人の元グラクソ社員の告発によると、医師を豪華温泉旅行へ招待して、若年層へ の処方、適用外の症状に対する処方を頼んでおり、パクシルの場合は医師に医学雑誌に実際とは違った臨床試験データを発表するように迫っていた。パクシルは18歳以下の子供 に処方するのは禁止されているが、グラクソ社は医師や販売会社にキックバックを約束して販売、処方を薦めていた。 

政府は2002年に調査を開始した時点で、パクシル等の抗鬱剤は子供の鬱に対しては偽薬程度の効果しかないのが分かっていた。実際、グラクソ社自身が1994年から200 1年までに3回、18歳以下の子供の鬱病患者にテストをして、3回とも政府の基準に合格しなかった。 

”研究329”と呼ばれる臨床試験では、パクシルを飲んだ患者93人のうち10人が自殺未遂しているのに対して、 偽薬を飲んだ患者では87人中わずか一人の自殺未遂しか出ていなかった。にも関わらず、グラクソ社は専門会社を使ってパクシルの危険性を否定する医学報告を用意させ、デー タを捏造して安全性を強調する試験結果をでっち上げ、2001年に子供の鬱治療に有効として発表した。 

検察は、グラクソ社の販売幹部がこの報告書を利用して子供の鬱治療にパクシルを使うように販売促進活動をしていたと批判している。 

グラクソ社は”パクシル・フォーラム”と称して、精神科医を豪華なリゾートホテル、高価な食事、ヨット遊び、気球乗りに接待していた。 

2003年ごろから、パクシルを飲んだ10代の若者から自殺者がぽつぽつ出始めていた。一方、食品医薬品局も”研究329”を読み事実を把握していた。 

2004年に政府は、グラクソ・スミス・クライン社に対してパクシルを販売する場合、10代の患者には自殺リスクがある由の警告を添付するように命令した。