エビリファイは、まだ何も一切抗精神病薬が投与されておらず、ドーパミンD2受容体が修飾されていないようなフレッシュな統合失調症にはすばらしい薬である(英語の学術論文ではそういった状態をnaiveと表現する)。私も初発例にはエビリファイをファーストチョイスにしている。

しかし、初発例以外のケースで既に何らかの抗精神病薬が投与されていた統合失調症の場合には、エビリファイにて失敗することが多い。特に前薬を中止していきなりエビリファイに変更するとほぼ失敗する(病状がさらに悪化する)。大塚製薬はそうならないための切替える際の措置として、前薬の投与量は変更せずにそこにエビリファイを上乗せして、エビリファイを追加投与して様子を見ながら前薬を中止していってほしいと説明しているのであった。しかし、そのように前薬の投与量を変更せずに上乗せしても失敗することが多々あるのである(この点に関しての印象は精神科医によって異なるようだ)。

それは、ドーパミン受容体のD2highという受容体の親和性の変化が絡んでいるのであった。エビリファイは他のどの抗精神病薬よりもドーパミン受容体に強くくっつくようであり、既にドーパミン受容体にくっついている他の抗精神病薬をはねのけてまで優先的にどんどんドーパミン受容体にくっついてしまうのであった。そしてそのエビリファイがくっついたドーパミン受容体がもしD2highになっていたら、アゴニストとしてドーパミン受容体を強く刺激してしまうことになり、その結果、いっきに病状が悪くなってしまうようだ。

しかし、初発例ではドーパミン受容体はまだ抗精神病薬にて修飾はされておらず、そういった懸念されるような現象は起きないため安全に使用できるのであった。

エビリファイは歴史がなにせ浅い薬である。20年、30年と長期間内服し続けた場合のデータはまだないのだが、遅発性ジスキネジアなどの有害事象はおそらく生じないだろうと言われている。そして、従来の抗精神病薬と比して長期に投与してもドーパミンD2受容体のD2highの比率を増やさないと報告されている。長期投与でも従来の抗精神病薬よりは安全だと思われる。(ドーパミン受容体には親和性が異なる2つの状態があり、統合失調症でドーパミン受容体が増えていると世界で初めて報告したシーマン教授によれば、D2lowとD2highの2つに区別されるという。)

(エビリファイはドーパミン受容体のD2highを増やさない)
http://schizophreniabulletin.oxfordjournals.org/content/38/5/1012.abstract 

(エビリファイ以外の従来の抗精神病薬はドーパミン受容体のD2highを増加させ、ドーパミン過敏性がさらに亢進し、遅発性ジスキネジアなどの誘因となる)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20643630 

(統合失調症の誘因はドーパミンへの過敏性亢進とドーパミン受容体のD2highの比率の増加である。従来の抗精神病薬では長期投与し、いきなり断薬すれば、統合失調症の再発の危険性が初発時よりもさらに高まる。クロザリル、セロクエル、エビリファイはそういった心配はない。わざわざ前薬をエビリファイに切替える意味はこの点にある。スイッチがうまくいけば再発する危険性は前薬よりは確実に減るはずだ。)


しかし、よく分からないのは、エビリファイが薬理学的にうつや不安の根本的な治療にもなるのかということである。 

どうもエビリファイを不安障害などの統合失調症以外の精神疾患に使用するには抵抗があるのである。全ての精神疾患を全く同じ疾患みたいに扱っているように思えてしまうからである。 

セロトニン受容体への作用で説明しようされてはいるが(5-HT1A partial agonist、5-HT2A antagonistなど)、特に、5-HT1A partial agonistとしての作用だと大塚製薬のMRは言うのであるが、そうであればSSRI+セディール(5-HT1A partial agonist)で十分かなとも思えるのであった。しかし、SSRI+セディールを試したことは何度もあるが、あまり効果がないのであった。なぜなのだろうか。 

私には、エビリファイが、セロトニン系に作用して不安を軽減しているのではなく、幻聴をも軽減するほどの力をもって不安を感じさせないように感覚を鈍化させているか、妄想をも消すほどの力をもって思考力を奪い単に不安なこと考えさせないようにしているだけのようにも思えるのではあった。