アルコールもかなり飲んでいるようだ。それでは「うつ」は良くならないはずだと、「うつ」症状を訴え続けているが、いっこうに抗うつ剤の効果がないような患者様に遭遇した精神科医は多いのではなかろうか。 

精神科医はよく知っているが、案外他科のドクターには知られていないのが、アルコールとうつの問題なのであった。アルコール・デプレッションという言葉があるくらい、アル コールはうつを惹起する薬物なのである。 


入院依頼の「うつ」では、時々、アルコールのせいでで「うつ」になっているのか、「うつ病」のせいでアルコールが増えているのか、いったいどちらなのだろうかと悩むような患者がちょくちょく紛れこんでくるのである。(γGTPが3ケタまで上昇しているようなケース。) 

こういったアルコールも絡んでいる「うつ」の事例は、(1)断酒してもらい抗うつ剤は投与せずに様子をみるべきか、(2)断酒+抗うつ剤で様子をみるべきか、(3)飲酒継続+抗うつ剤で様子をみるべきかは、意見はまだ分かれている段階のようだ。 

アルコールを専門にしているドクターやアルコール専門病棟では(1)の立場を取る場合もあるのだが、(2)でもいいように思えるのではあった。さらに、患者様は(3)ばかりを希望するのであった(アルコールの問題は大きいのだが、どうもアルコールに関しては認識が甘い人ばかりである)。 

私はアルコール依存症の専門医ではないし、入院治療ともなれば必然的に(2)になってしまうのではあるが、アルコールによる「うつ症状」の誘発はセロトニン系が関与しているという説や、アルコール依存症モデルマウスへのSSRIの効果、(2)が良いとする論文は10年以上も前から多くあるので(2)の断酒+抗うつ剤での対応にはしているのであった。 (なお、抗うつ剤を使用せずに断酒だけで良くなったケースももちろんある。) 


ここで、患者様からよく質問されるのが、飲酒をやめずにSSRIを内服するのはなぜダメなのかということである。 

飲酒はダメに決まっている。断酒しない限りはうつは良くならないし、抗うつ剤の効果が減じてしまう。さらに、変な風に酩酊したりするし、併用は絶対にダメであると回答するのではあるが、今一つ自信がないのである。 (本当にダメなのだろうか?、この説明でいいのだろうか?) 

しかも、日本うつ病学会のガイドラインでは、アルコールとの問題は詳しく述べられてはいないのであった。

↑のガイドラインでは、アルコールで睡眠の質が確実に悪くなる。飲酒は控えること。飲酒がコントロールできていなければ対策を検討すべし。としか書かれていないのであった。

飲酒は禁忌とはみなされてはいないようだ 。しかし、これでは困るのであった。アルコールへの認識が甘いのではないのだろうか。もっとアルコールに対しては具体的に丁寧に対策を提示してくれないと困るのであった。WHOも「うつ病」と「アルコール」の問題を重視しているのは言うまでもない。

日本うつ病学会ではアルコールに関しては頼りにならない。個人的に調べるしかないのだろうか。 

患者様に、なぜアルコールとSSRIを併用したらダメなのかと質問されたら、明確なエビデンスを持って回答しなければ説得力がないので、もし、アルコールとSSRIが同時に脳に作用したら脳内でどのような変化が生じるのか、SSRIの効果はアルコールによって減じてしまうのか、SSRIの有害事象がアルコールによって生じ易くなるのか、本当に異常酩酊をきたし易くなるのか、逆に、アルコール依存症への治療としてのSSRIの効果はあるのか、などを文献で調べてみた。 

PUBMEDを使い 
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Google Scholarを使い 
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(゜Д゜;) 

検索の仕方が悪いせいもあるのだろうが、文献がいっぱい出てきてしまい、読みきれないし、まとめきれないのであった。 

SSRIにて飲酒量自体が減っていくという論文は多々あった。さらに、安全性の上ではSSRIとアルコールの併用は問題はないという海外の論文もあることはあったのだが、うつ病で苦しんでいる場合は、アルコール自体が「うつ」を誘発するため、極力控えるべきであり、可能な限り禁酒すべきであろう。