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 今回は認知行動療法(CBT)がテーマである。認知行動療法に関しては、現在では多くの論文や書物が出版されており、ネットでも多くのサイトで詳細に紹介されており、このブログであえて触れるまでもなく、一般社会で既に広く浸透しているうつ病などへの標準的な治療方法になっているものと思える。ところが、未だに、認知行動療法って何ですか、認知行動療法はこの病院ではしていないのですか、などと認知療法について聞かれることが多々ある。その際には、そんな時間の余裕はないので当院では認知行動療法していませんと返答している。
 
(患者さんへの説明)
 確かに、認知行動療法はうつ病の標準的な治療法になっています。今はCBTに力を入れているクリニックも増えてきているはずです。しかし、どこのクリニックに行けばいのかは私には分かりません。一般にCBTはセラピストに就いてもらってマスターするのですが、一人でもマスターできると言われてます。本を紹介しますから一人でマスターしてください。CBTの原理や原則さえ理解していれば一人でも十分にマスターすることができます。CBTとは何かをひとことで言うならば、「マイナス思考をプラス思考に変えていくことです。そのようになるためのトレーニングがCBTなのです。」と言っていつも逃げている(汗;)。
 
 CBTをするには1人の患者に30分以上はかかる。そんなことをしていたら外来がパンクしてしまう。実際にはほとんどの精神科のクリニックではCBTを取り入れた診療は行っていないだろう。CBTを行っているところは、臨床心理士を雇い、臨床心理士が外来診療とは別枠で行っているはずである。

(厚生労働省の認知行動療法のマニュアルを下のURLに示す)
 
 しかし、ただ単に、本を紹介して勝手に一人でマスターしてくださいでも気まずい。それなりの資料を患者さんには渡しておなねばならない。CBTの理論をそれなりに理解さえしておけば、CBT的な日常生活が自然と身についていき、メンタルヘルスにもいい影響を与えることであろう。そこで今回は、患者さんに渡すCBTのガイダンス資料を作成した際に参照したネットでの記事をせっかくなのでブログに書き留めておくことにした。
 
 なお、いつも紹介している本は次の2冊である。

「こころが晴れるノート: うつと不安の認知療法自習帳」
(雅子様の主治医の大野先生が書いた本である。アマゾンでのカスタマーレビューはまずまずのようだ)
こころが晴れるノート

「自分でできる認知行動療法」
(この本もアマゾンでのカスタマーレビューはまずまずのようだ)
自分でできるCBT

 ここで、強調しておきたいことが一つある。それは、CBTをマスターすることはメンタルヘルスのためだけでなく、もっと他にもプラスに作用することがあるということである。

 今回のブログを最後まで読んで頂ければ分かると思うが、CBTは世の中で成功を収めている人達の生き方そのものではないのだろうかと思えることである。成功を収めたいと思っていても、ネガティブな感情に支配されたマイナス思考ばかりしていたのでは問題を適切に解決していくことはできずに、失敗を繰り返すことになってしまう。これでは成功を収めることはできないであろう。しかし、たとえ意識していなくてもCBT的な生き方をしていれば、常に現実に沿った適切な対処方法をしていくことになり、失敗を繰り返すことはなくなり、自然と成功へと導かれるはずである。

 CBTは、精神疾患の治療方法としてだけではなく、人生を成功へと導いてくれる素晴らしいツールでもあるのだと私には思える。

 さあ、自分の人生を成功に満ちたすばらしいものにするために、CBTをマスターしようではないか。

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まずは、CBTの歴史から説明を始める。

認知行動療法の歴史
History of Cognitive Therapy

 認知療法(CT)、または、認知行動療法(CBT)は、1960年代にアーロンT.ベック博士(Dr. Aaron T. Beck )によって開発された。彼はペンシルベニア大学の精神科医であった。彼は精神分析を研究しマスターしようとしていた。彼は、うつ病の精神分析の概念をテストするためにいくつかの実験をデザインして行った。しかし、うつ病の基本的な概念を検証できると彼は予想していたが、検証しようとしていた内容とは正反対のことを見つけて驚いた。

 Beck

うつ病の新しいコンセプト:自動思考
A new concept of depression: automatic thoughts

 ベック博士は、うつ病を概念化する他の方法を見つけようとしていたが、彼は、うつ病患者では自発的に生じる否定的な考えを経験していることを発見した。彼はこの認知の歪みを自動思考(automatic thoughts)と名付けた。そして、これらの認知の歪みは次の3つのカテゴリに分類できることが分かった。(1)自分自身(2)世界(3)将来、の3つのカテゴリーである。うつ病患者は、これらのカテゴリーに対して常に否定的な考えを持っていた。

新しい臨床アプローチ
A new clinical approach

 ベック博士は、これらの患者の自動思考を同定し評価する手助けとなる手法の開発を行った。自動思考を同定し評価することで、患者はより現実的に考えることができるようになることが判明した。その結果、彼らの感情は良くなり、機能的に振る舞うことができるようになった。患者は、自分自身について、自分を取り巻く世界について、他の人々についての自分自身の基本的な信念を変更した場合にのみ長期的な変化をもたらした。ベック博士はこのアプローチを「認知療法(cognitive therapy)」と呼んだが、それは「認知行動療法(cognitive behavior therapy)」として知られるようになった。

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(この自動思考を現実に沿った適切な内容に修正していくのがCBTなのである。)

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認知モデル
Cognitive Model

 認知行動療法は、精神病理学の認知理論に基づいている。認知モデルでは、自分が置かれた状況に関する自分の認識や自動思考が、自分自身の感情や行動(そして多くの場合、生理学的な)上の反応にどのように影響するかを記述している。悩んでいる時には、個人の認識は、しばしば、歪んだり機能不全に陥る。しかし、自分自身の「自動思考」(自発的に生じる言語的な、または視覚的な認知)を同定し評価することを学ぶことは可能であり、より現実に即した形に自分の思考を修正することができる。思考を現実に即した内容に修正することで、苦痛は軽減し、機能的に行動することができるようになり、(特に不安の場合には)生理学的な覚醒度合いは弱まる。さらに、自分自身の歪んだ信念(自己に関する基本的な理解、自分のいる世界、他の人々)を同定し修正することを学ぶことができる。
 
 これらの歪んだ信念は情報処理に影響を与え歪んだ思考を生じさせる。このように、認知モデルは、経験によって媒介される個人の感情的な、生理学的な、行動上の反応を説明する。そして、感情や行動上の反応は、自分の信念に影響され、現実世界との相互作用に左右されるだけでなく、自分自身の経験に左右される。

 セラピストは、自動思考や信念に対する評価や対処に役立つようなソクラテス的な質問のプロセス(Socratic questioning process、ソクラテス的問答)を使用し、自分自身が自動思考や信念に対する評価プロセスに従事する方法を教えることになる。さらに、自分が予測した認知を検証するために、実験的に行動する内容を自分自身で設定することをセラピストはセッションを通じて手助けすることもできる。患者の思考を検証する際には、セラピストは、問題を解決し、患者自身の結論を評価し、それらを行う上での困難さを受け入れることができるように、患者の主体性を尊重した形での共同作業をすることになる(協同的経験主義、collaborative empiricism)。
 
 (CBT自体が主体性を尊重した方式を採用しているのであり、この観点からは自分自身で自動思考をモニターし修正をしていくことは十分に可能だとも言えよう。)

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自動思考も信念も我々の思考パターンを理解する上で重要である

 自動思考は以下のような特徴を有する。

(1) 自動思考は反復される。
(2) 自動思考はポジティブかネガティブかどちらかである。
(3) 自動思考は大脳辺縁系から作られるが、大脳辺縁系は脳の一部であり、物事に即時に感情的に反応する。

 一方、信念の中心的部分(Core Beliefs、中核的信念信念のコア)はもっと深いレベルの思念である。それは、自分自身を、他人を、世界全体をどう見るかの核心的な部分である。

 自動思考や信念は、若い頃の特定の経験に起因する。自動思考や信念は、強固で柔軟性がなく変更することが難しいことがよくある。我々には、日々遭遇する自分の信念に反するものよりも、自分の信念をサポートする証拠に焦点を当ててしまう傾向がある。信念のコアに関しては、自分の行いや思念の全ての源として考えるべきである。

 思考、感情、行動は、互い影響を受け合い、逆に、影響を他に与える。CBTは思考のレベルに介入することで感情や行動に影響を与える戦略を採用した心理療法である。

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(思考、感情、行動の3つの中で自分の意志で一番制御し修正し易いのが思考である。)

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認知トライアングル
cognitive triangle

 この思考、感情、行動の3つを認知トライアングル(cognitive triangle)と呼ぶことがある。認知トライアングルは、非合理的な思考を特定し、思考内容を変化させる際に使用するツールである。多くの精神疾患は、非合理的な思考が拡大したために発生する。思考の合理性は、特に、不安障害、うつ病、人格障害に影響を与える。こういった疾患に苦しんでいる多く人達は、泣いたり、悲しんだり、心配したりといった、疾患に関連した感情や行動を変えたいと望んでいるが、こういった感情や行動の背後では自動的に考えている自分自身の思考が大きく影響していることを悟ることはない。従って、非合理的な思考を同定する方法を学ぶことは、これらの疾患の治療に大いに役に立つことになる。

 この3つに、さらに生理的な反応(physiological responses、physiological reactions)を加えて、4つのカテゴリー相互作用し、互いに影響を及ぼし合っていると理解するとさらに分かりやすくなる。例えば、深呼吸をして気持ちを落ち着かせる方法は副交感神経系に働きかけるという生理的な反応にアプローチする方法である。

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(CBTの理論を理解する上で「認知トライアングル」という概念も知っておこう。)

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思考の悪循環
vicious circle thought
マイナス思考の悪循環
vicious circle of negative thinking

 ストレスが障害(障壁)にまで発展した時には、出来事を処理したり起こりうることを予想する際には思考がネガティブな自動思考のスタイルへとシフトすることを経験する。この種のネガティブな思考は、感情が大きく動揺するといった不適切なレベルにまで結びつき、自己妨害行動に結びつく。そして、最初の問題を増大させ、次なる新しい問題を引き起こし、さらにネガティブな思考が強固になっていき、とどんどんと悪循環に陥っていく。

 例えば、不安の認知行動療法(CBT)モデルでは、不安が惹起するような状況で悪循環が始まることが説明されている。この状況は、仕事上の責任、旅行、社会的な関わり、心配していたような他の出来事が起きた時など、外部からの何らかの刺激が引き金になって生じる。不安はさらに、内部の何らかの刺激からも生じうる。すなわち、生理的な感覚、恐れていることについて考えること、不快な感情、などからも生じる。悪循環は、認知(思考)、行動、感情、生理的反応という4つのドメインから構成されている。

ネガティブな自動思考の悪循環
「The Vicious Circle of Negative Auto-pilot Thinking」

 ストレスや不安に晒された時に、ネガティブな自動思考(Negative Automatic Thoughts 、NATs)が我々に対して無意識のうちに攻撃を始める。思考がグルグルと巡り始め、だんだんと絶望的で破壊的になり、NATsは悲惨な感情を我々に引き起こす。そして、NATsは我々ができると思う事やしたいと望む事を妨げる。結局、物事を回避したり物事の解決を先延ばしすることになり(こういた行動は将来的には何の助けにもならない行動なのだが)、NATsのことばかりを考えることで時間が多く費やされるようになる。NATsはますます強固になっていき、どんどんと悪循環に陥っていく。

 ストレスが障害にまで発展した時には思考はネガティブな内容へとシフトする。それ故、不安障害やうつ病の人達は歪んだ思考や信念を持つようになり、これがさらに日々の出来事に対する不適切な感情を抱かせたり行動に走らせたりするようになる。これらは「否定的な自動思考(negative automatic thoughts)」として知られており、以下の特徴を有する。

 NATsは、非現実的非論理的である
 NATsは、不安、低い自尊心、ストレスなどの負の感情を増すような思考である
 NATsは、自滅的(自己敗北的)である
 NATsは、脳内で回路が形成されており(hard-wired)、大脳辺縁系から自動的に発生する

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(CBTの理論を理解する上で「否定的な思考の悪循環」という概念も知っておこう。この悪循環を断ち切るのがCBTの目的でもある。)

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 さらに、自動思考と連動して理解しておいた方がよいことがある。スキーマである。

スキーマとは
 スキーマSchemas、概要、図式化、アウトライン)は、適切な訳語がないためスキーマという単語がCBTではそのまま使われているが、心理学では、過去の経験に基づいて作られた心理的な枠組みや認知的な構えの総称として用いられており、認知の経験から蓄積され組織化された心の奥底(大脳辺縁系)に存在する思考や行動パターンの単位である(固定観念、価値判断の規範、偏見のようなもの)。スキーマは状況がトリガーとなって信念のコアから呼び出され、ステレオタイプな内容になる場合が多く、柔軟な考え方や自由な行動を妨げてしまう

 現在抱えている問題がどのようにして進行していくのか、そして、実際にどのような意味をなすのかは、この種の定式化された思考パターン(根底に潜むスキーマや現在のトリガー)に照らして合わせて考えればうまく説明できる場合が多い。ネガティブな自動思考は、スキーマや信念のコアから、状況に関連したトリガーが刺激になって発生すると考えられている。なお、スキーマや信念のコアの根本的な起源は幼少期の生活(ライフイベント、トラウマ、人間関係、成功体験、遺伝的要素など)に由来する。そして、これらの信念の歪みの多くは、子供時代にダメな人間だと扱われたり、お前はダメなやつだと言われたりしたこと(親から否定されたように扱われたり言われたりしたこと)、といった人生の早期(幼少時期)の経験に由来するものである。スキーマの模式図を下図に示す。

 スキーマに焦点を当てた認知療法はベック博士の弟子だったジェフリー E.ヤング博士(
Jeffrey E. Young)によって開発された。クライアントとの共同作業で、ヤング博士と彼の同僚は、治療のために来院したが、標準的なアプローチでは恩恵を受け難い人々がかなりいることに気付いた。ヤング博士は、これらの人々は、思考、感情、行動、コーピングの仕方において特徴的な長年のパターンやテーマを有していることを発見し、その結果、標準的なアプローチとは異なる介入の手段を必要とすることを発見した。そして、ヤング博士は、「スキーマ(schemas)」あるいは「ライフトラップ(lifetraps)」として知られるようになったこれらの深いパターンやテーマに取り組み、修正することを手助けする方法を開発していった。

 治療において標的とされるスキーマは、永続的な自滅パターンである。それは、人生の早期に始まり、繰り返され、入念に作られ、否定的で機能不全的な考えや感情を引き起こし、自分の目標を達成の障害となり、自分のニーズを満たす上での障害となる、といった特徴を有する。スキーマは、通常、人生の早期(幼児期や青年期)の生活の中で形成されていくが、成人期からでも形成することがある。これらのスキーマは、スキーマを維持するようなコーピングスタイル(対処の仕方)、回避的なスキーマ、スキーマを補償するようなことで永続化される。ヤング博士のモデルは、非常に手強いこれらの思考パターン、感情パターン、行動パターンを打ち破り人々を助けることに中心を置いている。 

 ヤング博士は、スキーマに焦点を当てたアプローチを定式化するに当たって、認知行動、経験、対人関係、精神分析療法などの最高の側面を組み合わせて1つの統一治療モデルを作成した。ヤング博士の仕事と彼によって訓練された弟子達の努力によって、スキーマに焦点を当てた治療は、以前に試した他の方法や努力が不成功に終わった人々の長く続いた思考パターン変えることを助けて、大きな成果を上げている。

 スキーマの一般的な概念はヤング博士によって提唱され、18個早期不適応スキーマが定義されている。以下のように5つのドメイン内でグループ化されている。

切断(Disconnection)/拒絶(Rejection):感情的な剥奪、放棄、不信/虐待、社会的孤立/疎外、欠陥/恥。
自律性やパフォーマンスの障害(Impaired Autonomy/performance):達成に失敗すること、機能的な依存/無能力、危害や疾患への脆弱性、噛み合わない自己/未発達の自己。
その他の指示性(Other Directedness):服従、自己犠牲、承認への希求。
過覚醒(Overvigilance) /抑制(Inhibition):感情的な抑制、情け容赦ない基準、刑罰と悲観。 
制限の障害(Impaired Limits):権利と不十分なセルフコントロール/自己への規律。

具体的には、
 
感情的な剥奪(Emotional Deprivation)
 自分の基本欲求は満たされることはないという信念と予想。誰も私を育てない、世話しない、案内しない、保護しない、共感してくれないと思うこと。

放棄(Abandonment)
 他者は自分から去っていく、他者は信頼できない、他者との関係は脆弱である、損失は避けられない、いつも最終的には孤独になるだろう、といった信念や予想。 

不信(Mistrust)/虐待(Abuse)
 他者は、虐待的であり、操作的であり、利己的であり、自分を傷つけるか、自分を利用することしかしない、他人を信用すべきではないという信念。

欠陥(Defectiveness)
 自分には欠陥がある、破損している、可愛らしくない、そのせいで自分は拒否されるだろうという信念。

社会的孤立(Social Isolation)
 疎外感とカップルした大きくなった孤独感。

脆弱性(Vulnerability)
 世界は危険に満ち溢れた場所であり、災害はいつ起こるか分からない、私は待ち受けている課題にいつも圧倒されるだろうと思うこと。 

依存(Dependence)/無能(Incompetence)
 自分は自身の決定をうまくすることができない、自分の判断はいつも疑問だらけである、責任を全うして自分を助けるためには他の人に依存する必要があるという信念。 

エンメッシュ(噛み合わないこと、Enmeshment)/未発達な自己(Undeveloped Self)
 自分は、他者と自分をはっきりと区別できるようなアイデンティティや「個別化した自己(individuated self)」を持っていないと思うこと。 

失敗(Failure)
 失敗するだろう、十分に行うことはできないだろうという信念や予想。

服従(Subjugation)
 他者のコントロールを受けていないければならない、あるいは、服従していないと処罰されたり拒絶されるだろうという信念。

自己犠牲(Self-Sacrifice)
 いつも他人のために自分自身のニーズを自発的に強く諦めなければならないという信念。 

賛成の希求(Approval-Seeking)/承認の希求(Recognition-Seeking):
 自己表現や自分自身に忠実であることよりも、賛成(同意)してもらい、注意を向けてもらったり、承認(認証)を受けることがはるかに重要だと思うこと。 

感情的な抑圧(Emotional Inhibition)
 自己表現をしたり他者を拒否し批判することをコントロール(抑制)しなければならないという信念。 

否定(Negativity)/悲観(Pessimism)
 将来への否定的な予想に沿って、生活の中のことを否定的に予想することが肯定的に予想することことよりも重要視すべきであるという確固たる信念。

情け容赦ない基準(Unrelenting Standards)
 自分はベストであらねばならない、常に完璧な努力をして、間違いを犯すことを避けねばならないという信念。

刑罰(Punitiveness):
 人間の過ちや欠点は厳しく処罰させるべきであるという信念(自分に対してだけでなく他者に対しても同じ刑罰を受けるべしという信念を抱く)。 

権利(Entitlement)/誇張(Grandiosity)
 自分は特別であり他のものよりも重要である、ルールに従わないことが他者にマイナスの影響を及ぼす可能性があるにも係らず、ルールに従う必要はないと思うこと。同じような意味で、自分には権利があり、他者を支配できる優位性があるのだと誇張して焦点を当てて訴えること。

不十分なセルフコントロール(Insufficient Self-Control)/自己規範(Self-Discipline)
 退屈で反復的でイライラするような場合には、自分の目標を達成することはできないと思うこと。同じような意味で、有害な結果をもたらすような衝動に抵抗することができないこと。

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(スキーマに気付かせて自分で修正させるのもCBTの目的の1つである)

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(以下は、CBTに関する総合的な解説である)

認知行動療法を深く掘り下げる
「In-Depth: Cognitive Behavioral Therapy」

 認知行動療法(Cognitive behavioral therapy、CBT)は、問題解決に向けた実践的で実用的なアプローチを採用した短期的で目標(ゴール)指向型の心理療法である。CBTにおけるゴールは、困難さの背後に潜む思考や行動のパターンを修正し、本人の感じ方を変化させることである。CBTは、睡眠障害から、人間関係の問題、薬物・アルコール乱用、不安、抑うつまで、個人の生活における幅広い問題に対処するために使用されている。CBTは、自分が考えている思考や、抱いているイメージや、信じている内容や、他者や世の中に対する態度へ焦点を当てることによって個人の態度や行動を変えていくことで機能する。CBTで焦点が当てられるものは、我々が内部に保持している認知プロセスであり、認知プロセスがどのようにして我々の行動に関わっているのかを、そして感情の問題をどのように扱うべきかという点に焦点が当てられている。

 認知行動療法の重要な利点は、感情的な問題に対して4ヶ月~7ヶ月という短い治療期間で終えることができる点である。クライアントは、週に1セッションのCBTを受け、各セッションは約50分間からなる。この時間の間に、クライアントとセラピストは一緒に問題に取り組み、何が問題であるかを理解し、それらに取り組むための新たな戦略を開発していくことになる。CBTは、必要がある時にはいかなる場合でも適用可能な一連の原則を示し、その原則に従えば生活の中で大きな利益を得ることができるようになるだろう。

 認知行動療法は、心理療法と行動療法の組み合わせだと考えて良いだろう。心理療法の観点からは、CBTでは我々の物事に対する思考パターンは子供の頃から既に始まっているのだという重要な点が強調される。行動療法の観点からは、CBTでは、個人が抱えている問題は、個々の行動や思考と密接に関連しているのだという点に細心の注意が払われている。
 
認知行動療法の歴史
The History of Cognitive Behavioral Therapy

 1960年代に、精神科医のアーロンT.ベック(Aaron T. Beck)は、精神分析のセッション中に、自分自身に話しかけているような患者自身の心の中で続けられている対話があることを観察した。しかし、彼らは、このような内部の思考についてはごく一部しか報告しなかった。

 例えば、治療セッション中に、クライアントは自分自身に向けてこう考えるかもしれない。「セラピストは本日、あまり話してくれない。セラピストは私と一緒にいることでイライラしているのかな? 」。こういった考えは、クライアントを少し不安にさせ、おそらくイライラとした気分にさせてしまうであろう。そして、彼(または彼女)はこの思考に呼応して別の新たな思考をすることになろう。「セラピストはきっと疲れているのだろう。あるいは、私はまだ最も重要なことについての話をしていないのかもしれない」。第二の思考は、クライアントの感情を変化させることになる。

 ベックは、思考や感情とのリンクが非常に重要だということに気付いた。彼は、心の中に突然現れる感情で満たされた思考を記述するために「自動思考(automatic thoughts)」という用語を考案した。ベックは、人間は自動思考を常に完全に意識できている訳ではなく、自動思考を学ぶことで、自動思考を識別し報告できるようになることを発見した。何らかの形で不調を感じた時には、自動思考は通常はネガティブな内容となり、現実的な思考内容であっても本人を助けてはくれない。ベックは、これらの自動思考を同定することは、クライアントを理解し、クライアントの困難な問題を克服する鍵となることを発見した。

 ベックは思考の重要性に的を絞ったことから認知療法(cognitive therapy)と呼ぶことにしたが、この治療は行動に関する技術も同時に含まれているため、現在では認知行動療法という用語が普及している。治療の内容によっては、認知と行動の各々の要素のバランスは様々に異なってくるが、認知行動療法という包括的な用語の下に全ての治療が位置すると考えて良い。それ故、CBTは、異なるチームによって多くの治療施設で臨床試験が行われるようになり、様々な精神疾患の問題に適用されるようになった。

否定的な考えに気付くことの重要性
The Importance of Negative Thoughts

 CBTは、自分自身を混乱させるのは、出来事そのものではなく、その出来事に自分自身がどのような意味を与えるかによるというモデルや理論に基づいている。自分の思考があまりにも否定的な場合には、否定的な思考は物事を見つめ直すことを妨害してしまい、適応的ではないことをさせてしまう。これは、自分が正しいと信じていたこと(=否定的な思考)は間違いであったということを証明している。言い換えれば、我々は毎回同じような古い考えに固執し続けており、新しい何かを学ぶことに失敗し続けていることになる。

 例えば、うつ病の女性がこう考えたとしよう。「私は今日は仕事に行くけない。仕事をすることができない。何もうまくいかないだろう。きっと不愉快な気分になるだろう」。そのような否定的なことを考え、そしてそれを信じた結果、その女性は病気を呼び覚ましてしまう。
  
 このように行動することで、彼女は自分の予想が間違っていたことを見つけるチャンスを失うことになる。彼女は何かを成し得たことを発見したかもしれないし、少なくともいくつかの心配事は杞憂だった可能性がある。しかし、その反対に、彼女は自宅にとどまり、仕事に行けなかったことをくよくよと考え、次のように考えて終わることになる。「私は皆をの人を失望させてしまった。皆は私のことを怒っているだろう。私はなぜ皆ができることをできないのだろうか。私はとても弱くて役に立たない人間だ」。おそらく彼女は気分が落ち込んで一日が終わることになり、次の日は仕事に行くことが一層困難になるだろう。このようにして、思考⇔行動⇔感情の下方スパイラルが始まる。この思考⇔行動⇔感情の悪循環(vicious circle)は、様々な異なる領域の問題に大きく関与している。

これらの否定的な考えはどこから来るのだろうか?
Where Do These Negative Thoughts Come From?

 ベックは、これらの思考パターンが子供の頃に設定され、自動的に生じるように固定されているのではと考えた。ベックが示唆したように、両親からオープンな愛情を殆ど示してもらえずに、しかも、学業を頑張ったことだけしか褒めてもらえなかった子供は、何でもネガティブに考えるようになってしまうのかもしれない。「私は全てのことをうまくやらねばならない。もし私がうまくできないと、皆は私を拒否するだろう」。そのような生きていく上でのルールは機能不全な仮定(dysfunctional assumption)として知られているが、機能不全な仮定は、他人のために多くの時間をかけて懸命に働くことに対しては役に立っているのかもしれない。

 しかし、もし、機能不全な仮定ばかりをしている人に、コトンロールの限度を超えた何かが起き、そして失敗を経験してしまうと、ネガティブな思考パターンが誘発されてしまうだろう。その後は、「私は完全に失敗した。誰も私を好いている人はいない。私は合わす顔がない」、などといった自動思考をし始めことになる。

 認知行動療法によって、心の中で何が起こっているのかを理解できるようになる。CBTは自身の自動思考を外にステップさせ、それらを検証するのに役に立つ。CBTによって、同じような状況の下で、自分に今何が起きているのか、あるいは、他者に何が起きているのかを正しく理解させ、現実の生活の中での経験を検証できるようになれる。先程述べたうつ病の女性はCBTによって勇気付けられることであろう。さらに、CBTによって、より現実的な展望の中に身を置くことができるようになれるため、他者に対して困難なことはいったい何なのかが明らかとなり、他者が何を考えているのかということを検証できるチャンスをも得ることが可能になる。

 嫌な出来事は必ず起こる。しかし、心の状態が乱れた時には、我々の予測や解釈は状況に対する偏見に基づく内容になってしまっており、自分自身で何でも悪く考えてしまい、その結果、困難なことを自分自身が作り出しているのかもしれない。CBTは、こういった誤解を修正する上で非常に役立つ方法である。

認知行動療法とは何か?
What Does CBT Treatment Look Like?

 CBTのセッションは心に思い浮かぶもの全てについて自由に話すのではなく、構造化(structure)されているため、CBTは他の多くのタイプの精神療法とは異なる。治療の開始時に、クライアントはセラピストに対して、特定の問題について述べ、クライアントが希望するゴールを設定することになる。
 
 問題はやっかいな症状かもしれない。例えば、よく眠れない、友達と交流することができない、読書や仕事に集中することが困難である、といった症状であっても良い。あるいは、生活上の問題かもしれない。例えば、職場での不幸な出来事、思春期の我が子のトラブル、不幸な結婚生活であっても良い。

 これらの問題とゴールは、その後のセッションの内容を計画し、問題に対処する方法を議論する上での基礎となる。一般的には、セッションの開始時に、クライアントとセラピストが共同で話し合い、この週に行うメインとなるトピックを決定することになる。さらに、前回のセッションの結論を議論する。そして、進捗状況を見ながら、最後にクライアントが自分自身のため宿題(homework)を設定する。セッションの最後に、セッションの枠外で行う別の課題(宿題、assignment)を計画する。

宿題に取り組む
Doing Homework

 セッション間における宿題への取り組みは、プロセスの重要な部分である。宿題に何が含まれるかは様々である。例えば、治療の開始時点で、セラピストは不安や抑うつ感情を刺激するあらゆる出来事の日記を付けるようにクライアントに指示することがあろう。その結果、日記をつけることで、その出来事に関する考えについて考察することができるようになる。治療の後半では、別の課題は、特定の種類の状況が関わるような問題に対処する演習で構成される。

構造化の重要性
The importance of structure

 このような構造化を行う理由は、構造化することで最も効率的に治療時間を有効活用することできるからである。さらに、見逃してはいけない重要な情報(例えば、宿題の結果を)を確認し、セッションに従いつつセラピストとクライアントの双方が新しい課題(宿題)を考えるということを確認することができる。

 セラピストはセッションの開始時は構造化に積極的に参加している。しかし、セッションが進行していくにつれ、クライアントは役に立つと思える原則を把握していき、クライアントがセッションの内容に対してだんだんと責任を持つ形になっていく。最終段階では、クライアントが独立して作業を継続していく力をを与えられているように感じるようになる。

グループセッション
Group sessions

 認知行動療法は、通常は一対一の治療法である。しかし、特に、治療の開始時に、グループや家族での作業にも適している。多くの人々が、初めは自分の問題が手ごわい問題に思えても、グループセッションによって同じような問題を持っている他者の困難な問題を共有できるようになり、大きな利益を見出すことができるようになる。問題を経験したことがある人々からのサポートやアドバイスを受けることができるため、グループセッションは価値のあるサポートや助言を得る源となる。さらに、一度に複数の人と同席できるため、サービスを提供する側は、助けを素早く得ることができるように、同時に複数の人に援助を提供することができる。

CBTは他の治療法とはどのように異なるのか
How else does it differ from other therapies?

 認知行動療法は、その性質上、セラピストとクライエントとの関係を確立しようとしていく他の治療法とは異なる。いくつかの他の治療法では、治療プロセスの一部として、クライアントに対してセラピストに依存するような形へと働きかけていく。そのため、クライアントは全知全能の存在としてセラピストを思うような関係となる。しかし、CBTではセラピストとクライエントとの関係は異なる。

 CBTは、ビジネスライクな、問題にのみ焦点を当てた、実用的な、セラピストとクライアントとが対等な関係を好む。セラピストは、クライアントに対してフィードバックをするために、治療を進めていく過程で今何が起こっているかを頻繁に問いかけて意見を求める。ベックは「協同的経験主義(collaborative empiricism)」という新しい用語を作った。その目的は、クライアントの個々の状況や問題対して、CBTをいかにして適応していくべきかどうかを検証するためには、クライアントとセラピストとの共同作用が重要であるという点を強調するためである。

CBTの恩恵を受けるのはどのようなケースか
Who Benefits from Trying CBT?

 特別(具体的)な問題を抱えていると述べようなケースは、CBTが最も適していると言える。なぜならば、CBTは特定の焦点に的を絞りゴール目指して行う治療方法だからである。逆に、漠然と不幸や満たされていなと感じており、その反面、困るような症状がなかったり、何とかしたいと思う生活上の特別な気持ちを抱いていないようなケースではCBTは適していると言えないだろう。
 
 CBTの考え方やCBTの問題解決アプローチが適切な方法だと思われ、CBTによって自己課題を実践的に解決していく必要性があると思われるようなケースであればさらに有益であろう。もし、クライアントがより実践的な治療を希望しており、洞察の獲得が主な目的ではない場合には、CBTが好まれる傾向がある。

CBTは、次のような問題を効果的に治療することができる
CBT can be an effective therapy for the following problems

怒りのマネジメント
不安やパニック発作
子供や青年の問題
慢性疲労症候群
慢性疼痛
うつ病
薬物・アルコール関連障害
摂食障害
一般的な健康問題
顔面チックなどの癖
気分変動
強迫性障害
恐怖症
心的外傷後ストレス障害
性的関係の問題
睡眠障害

 さらに、幻覚や妄想などに苦しみ、長期的な問題を抱えているケース(統合失調症)に対するCBTの使用が(薬物療法との併用だが)、新たな関心が急速に高まっている。

 重度の機能障害があり、短期の治療では解決できない長年の問題を解決するのは容易ではない。しかし、人間は、生活の質を向上させ、前進し、自らのチャンスを高める原則を学ぶことができる。

 自助(self-help)に関する様々な文献がある。文献は、特別な問題に対する治療法に関する情報や、独力であるいは友達や家族と一緒に何を行うことができるかといった考えを提供してくれる。

なぜ宿題をする必要があるのか
Why do I Need to Do Homework?

 自宅での宿題をしても構わないと思う人は、CBTから最も利益を得るであろう。例えば、うつ病の多くの人々は、良くなったと感じられるまでは、社会や職場では行動したくないと言うかもしれない。しかし、CBTが視点を変えてくれるかもしれない、この種の宿題という活動の試みは、始めは小さな活動になろうが、宿題という活動によって気分が良くなる手助けをしてくれることであろう。

 もし、活動を実際に試みることが可能であるのならば、宿題を遂行することに同意するはずである(酒を飲むためにパブで友達に会ってもよいと言うだろう)。リスクを冒すことができないと感じ、リスクの問題について話すことを好む人より、宿題を実行すると言った人の方が結果的に速く前進することであろう。

認知行動療法はどのくらい効果があるのか
How Effective is Cognitive Behavioral Therapy

 CBTは、実質的に多くの感情的障害の症状を軽減する。臨床試験では、この効果が示されている。短期的には、CBTは、うつ病や不安障害における薬物療法と同じくらい良い治療である。CBTの利点は効果が長く続くことがあり得ることである。薬物治療が終了した後に再発した場合には、もう少し長く薬物療法を継続した方が良いという助言が当然なされることであろう。

 治療終了後の2年間の追跡調査では、CBTの顕著な利点が多くの研究にて示されている。例えば、うつ病の2年間のフォローアップ調査では、CBTの12のセッションを受けるだけでも、薬物療法と同等の効果があることが示されている。この研究では、CBT治療を受けている間に、気分の改善を越えるような実際の変化がもたらされることも示唆されている。

 CBTと他の短期心理療法との比較では、明確な差はそれ程でもない。対人関係療法(inter-personal therapy)やソーシャルスキルトレーニング(social skills training)などの治療法もCBTと同様に有効である。治療を受ける意欲が、これらの介入をできる限り有効なものにするだろう。そして、どのタイプの治療に最も反応するかも、治療意欲が湧くかどうかで明らかになるだろう。
 
 認知行動療法は、奇跡の治療法ではない。セラピストは、多くの専門知識を持っている必要がある。一方、クライアントは、長続きする、オープンな、勇気を持つようにしなければならない。短期間で誰もが完全な回復し利益を受ける訳ではない。CBTに余りにも多くことを期待するのは非現実的である。

 今のところは、専門家は、問題を抱えているケースについて何が問題なのかを非常によく理解している。しかし、普通の人々がどのように行動するかについてはあまりよく知られていないし、明確に定義することができないような多くの問題を普通の人々が抱えているかどうかもよく知られてはいない。時には、クライエントが問題を多く抱えているのかを、そして、その問題をどのくらいの期間抱えていたのかを正しく評価するために、治療期間を長く設定しなければならないだろう。
 
 しかし、CBTには1つの事実が明らかに存在する。CBTは急速に進歩しているという事実である。今までCBTが扱っていた問題よりもさらに困難な問題を抱えているケースにも対応できるようにCBTの新しい考え方が日々研究されているのである。
  
認知行動療法はどのように働くのであろうか
How Does Cognitive Behavioral Therapy Work?

 認知行動療法の作用はどのくらい複雑なのであろうか。CBTがどのように作用するかについては、いくつかの理論がある。そして、クライアントもCBTに対する独自の意見を持つことだろう。CBTをうまく説明できる理論は1つもないかもしれない。しかし、CBTは、様々な方法で同時に作用する。ある時には他の治療法と共同で作用するが、ある時にはCBT固有の作用を持つ。以下に、CBTの作用について説明する。

対処スキルを学ぶ
Learning coping skills

 CBTは問題に対処するためのスキルを教えようとする。不安を有する人は、状況を回避することは恐怖を逆に煽ってしまうということを学び取るかもしれない。恐怖に徐々に直面しつつ恐怖を管理可能にする方法は、恐怖に対処する自分自身の能力に対する自信を持てるように手助けしてくれることであろう。うつになっている人は、自分の思考を記録し、自分の思考をもっと現実的に見ることを学ぶかもしれない。自分の思考をもっと現実的に見れるようになることは、気分の下方スパイラルに打ち勝つ上で役に立つ。他者との長年の問題を抱えている人は、いつも最悪なことを仮定するよりも、他者の動機を自分がどのように仮定しているのかをチェックすべきだということを学ぶかもしれない。

行動や信念の変化
Changing behaviors and beliefs

 コーピングの仕方に新たな戦略を持つことは、態度や行動に対して永続的な変化をもたらすことができだろう。不安を有するクライアントは物事を回避しないようにすることを学ぶかもしれない。不安は、自分で想像している程は危険ではないことを見出せるようになるかもしれない。うつの人は、自分はダメな人間であり致命的な欠陥を持つ人間だと考えることよりも、人類の普通のメンバーなのだという風に自分自身を見れるようになるかもしれない。さらにもっと基本的な部分でのものの見方が変わり、自分自身の考えに対する態度が変わる。自分の考えは、ただの考えに過ぎず、それ以上のものではないと自分自身の考えについて洞察できるようになる。
 
人間関係の新しい形
A new form of relationship

 一対一のCBTは、クライアントに対して、以前は持てなかったある種の関係をもたらす。「協調的(collaborative)」スタイルは、クライアントが変化することに積極的に関与していることを意味する。その後、セラピストは、治療が進行していく方向を形作るクライアントの意見や反応を求めていくことになる。クライエントは、その問題は非常に個人的な問題なのだということを明白に知ることができれば、そして、誰もがその問題を判断することはできないと理解できれば、安心感を得ることができよう。クライエント自身が問題を開示し説明することができれば、クライエントは大人の意思決定を下すことができるようになる。クライエントは指示されることはなく、自分自身の解決方法を自由に作ることができる。クライエントによっては、治療の最も重要な局面として、このような経験に価値を見出すことであろう。

人生の問題の解決
Solving life problems

 CBTは、クライアントが長年抱えて立ち往生しているような問題を解決する上で有用かもしれない。不安を抱いている人は、自分が変化することには自信がなく、退屈な仕事を繰り返す日々を送っているのかもしれない。うつの人は、新しい人に出会い自分の社会生活を改善しようとすることは余りにも不適切なことだと感じてしまうかもしれない。不満足な関係で立ち往生してしまっている人はCBTにて紛争を解決する新しい方法を見つけることができるかもしれない。CBTは、感情障害を基底に抱えているために生じている問題に対処できる新しいアプローチを教えることができるかもしれない。

どうすれば認知行動療法士を見つけることができるのか?
How Can I Find a Cognitive-Behavioral Therapist?
(海外の事情であり省略する)

認知行動のテクニックを自分で学ぶことができるのか?
Can I Learn Some Cognitive Behavioral Techniques Myself?

 認知行動療法に高度に教育されたコンポーネントを有するため、個人療法に関する文献が多く活用されていたが、近年では、自助(セルフヘルプself-help)に関するCBTの文献が増えてきている。CBTの研究者達は、これらの文献が自助の参考になるかどうかに関してはこれまでは多くの注意を払ってはいなかった。「フィーリンググッドハンドブック(The Feeling Good Handbook)」に関する研究が1つあるが、この自助的なCBTの本は、うつを緩和する上で効果的であることが見出された。この知見は、問題の重症度や問題がどのくらい続いているかにも依存するが、セルフヘルプなCBTの手法でも問題の解決には有益であることを示唆している。
(日本うつ病学会の元会長の野村先生らが日本語に訳して出版している。カスタマーズレビューではこの本の評価は非常に高い) 
フィーリングGood

認知行動療法を受けたデーブ(Dave)の物語
Dave’s Story with Cognitive Behavioral Therapy

 デーブは、キャリアの変更を行うことが原因となって、これまでの生活の中で何回もうつ病の発作で苦しんだことがある38歳のゲイの男性である。彼は二回の自殺企図がある。さらに、彼は、過大な不安やストレスに悩まされており、アルコールの問題を抱えており、特に、飲酒をした場合は、自分の気分を制御することが困難であった。

 デーブは、仕事でのストレスにより典型的なエピソードが誘発された後に、CBTを受けにやってきた。セラピストと彼との最初のミーティングの後で、デーブは、自分は既に仕事に失望していることを悟った。彼は、うつ病のため失敗を繰り返しているという感覚を抱いており、自分の今までのキャリアの中で殆ど成功したことがないと語った(「私は実際にキャリアを台無しにしてしまった」と語った)。デーブは仕事の見通しが立たないことが心配だった。彼は、仕事への魅力を感じることはなく、このままでは、ただ齢老いていき、魅力を失っていくだけだろうと心配していた。彼は、怒りの衝動がコントロールできずに危機に瀕していると感じていた。

 治療では、自分自身の行動と感情的な反応を自分自身が監視することを学び取ることになった。彼は、自分を奮い立たせ、恐怖のためこれまでは回避していたが、状況へ対処するべく計画を立て、行動することを開始した。彼は、自分の思考が極端になったり、偏見に満ちた思考になっている時を同定することを学び取った。彼は、思考が感情によって駆動されていることを検証し、感情に支配された思考を認識し解決することが得意になった。その結果、適切で大局的な見方ができるようになった。彼の気分は非常に良くなり、長い間続いている問題にまで取り組むようになった。

 彼は、これまでよりも現実的なキャリアの選択を計画し、アプリケーションを送信することで、仕事の展望を見つめ直すことを始めた。彼は仕事のパートナーと対等な関係を確立していった。彼は、友人から特別な注意や扱いを受けることを要求することなく、社会的な状況に対処するようになった。
 
 デーブは、自分の完璧主義や、他者への不当な要求といった簡単には対処できないような問題を直視しなければならなくなったのである。しかし、デーブのケースは、人生の危機の中で、CBTに出会い、自分が変化する方法を見つけたことで、高く動機づけられて成功したケースだと言えよう。

これは彼が治療の終わりに向けて書いたものである。

 私はこれまでの人生の中でうつ病による痛みを伴うたくさんのエピソードがあったが、このことは私のキャリアにマイナスの影響を与え、私の友人や家族に大きな負担をかけていた。私がこれまでに受けた治療、例えば、抗うつ剤と精神力動的カウンセリングは、症状に対処したり、私が抱えている問題の根本に対する洞察を得るために役に立ってはいた。しかし、CBTは、これらの気分の問題への取り組みの手段としては遙かに優れており、最も有用なアプローチであることを私は発見した。

 私は、CBTによって、自分の思考が自分自身の気分に対してどれ程の大きな影響を与えているかを意識できるようになった。自分自身や他者や世界について、どのように考えるかで、最悪の場合は自分をうつ病に導いてしまう。CBTは、子供時代の経験に左右された思考のパターンを学び取り認識するという実践的なアプローチである。CBTは、今何が起こっているのかを見つめ直し、日々の気分を管理するツールを私に提供してくれた。

 仕事への強い思い込みによって、自分の生活が支配されてしまい、問題を引き起こす可能性がある。例えば、私の中には、権利への強い思い込み[自分は他者から特別な扱いを受ける権利があるという思い込みを]持っていることを発見した。このような思考によって、思い込むがままに行動することで、逆に、フラストレーションの耐性の低さ、怒り、衝動を制御できないこという症状を生じさせていた。CBTによって、これまでの生き方を顧みて、自分が行ってきた多くのことが、この悪しきパターンにどのように支配されていたかを確かめることができたのは意外だった。CBTは、自分の生活をより良くコントロールできているような感覚を私に与えてくれた。
 
 私は今、セラピストとパートナーの支援を受けながら、薬物治療を断つことができている。私はこの世界で生きていく新しい方法をCBTから学んでいる。これまでの思考や行動を変更する課題がまだ残っている。それは一夜では成し得ないことであろうが。

 デーブは自分自身を変化させる試み非常に積極的に行っている男である。この引用でも明らかなように、CBTは迅速に改善するだけでなく、それ以上の効果をことをもたらすことができる治療方法である。 

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(以下は、一人でCBTをマスターしていくためのハウツウ的な解説である)

どのようにして認知行動療理論を使用するのか
How to Use Cognitive Behavioral Theory

 CBTとしても知られている認知行動理論は、大きな成果をもたらすことができる、良く知られた一般的なテクニックである。CBTはストレスの根本的な原因を認識し、全く新しい観点の下でストレスを感知できるようになることが含まれる。これらを達成するためには、より多くのもの意識し、いかにして今やその瞬間を生きるかといった方法を学ぶ必要がある。さらに、非論理的思考と論理的思考を見分ける方法を知っておく必要があるが、これは、言うは易く行うは難しで、簡単にできることではない。成功するには、忍耐と粘り強さという他のスキルのようなものも必要となる。

作業を始める前に追加情報
Additional Information Before You Begin

 CBTのテクニックは、我々の苦しみは物質的な世界の存在や苦境などから生じるのではなく、無意識のうちに自分自身が作り出しているのだという事実に由来する。言いかえれば、様々な感情は、刺激そのもののではなく、状況をどのように自分自身が解釈するかということに依存して形成されていく。苦しい試練を評価する行為は一次や二次の評価と呼ばれるが、それは、自己の意識を管理するために、出来事にある意味を付加し、自分の信念に付け足していく心の行為である。
 
 我々は、出来事が発生した瞬間には自分自身の認識を直接に制御することができないかもしれないが、出来事が経過した後では明瞭に分析する能力を有している。継続的にトレーニングをしていくことで、平和で静穏な深い感情を失うことなく、生活の中での困難なタスクを自然な気持ちで受け入れられるようになる。そして、誤った自己の感覚を超えて心の繁栄を学び取ることであろう。その感覚は、過去に取得し固定してしまった幻想に基づくものに過ぎないのであるが。CBTがどのように機能するかを完全に理解するためには、思考に関わる脳機能の異なるレベルを識別できるようにならなければいけない。

認知行動理論のステップを使用する

ステップ1

地球上に存在する生命の無数の種から人類の脳はどのようにして進化したかを理解する
Assimilate how our brain has evolved over time through the myriad species of life that exist on earth.

 人類には、3つの主な脳の機能があるが、人類ではなかった過去の時代では、生存という目的を果たす上で役に立っており、生存本能として我々の心の中にも残存しており、今では日常生活の中での多くの場面で無意識にその機能が使用されるようになっている。単に生き延びることだけしか関心を示さない爬虫類として、最初に地球上を歩き回った時に全てが始まった。爬虫類の脳は原始的な動物の脳であり、それは、「id(イド、自我)」、すなわち、生きるためだけに機能する短期な意志しか有していなかった。生きるための脳の機能には、通常は意識されずに行われる呼吸や心拍動の維持のような重要なプロセスが含まれている。

CBT-7

 しかし、哺乳類は、祖先よりも複雑な心を持つように進化していった。

 哺乳類は感情的な脳として知られている大脳辺縁系を保有するに至ったが、大脳辺縁系は自分以外の他の存在との関係にとって重要な役割を有する部分である。大脳辺縁系によって作り出される感情は同情から怒りまで微細に異なり多種にわたる。恐怖という感情は扁桃体によって支配され、コントロールを受けており、捕食動物による脅威を回避し、「捕食者と戦うか、逃避するか」といった反応を誘導する。人類は、この扁桃体のシステムに未だに影響を受けており、扁桃体システムは自動的に活性化され、生活の中での小さな出来事でも活性化されて大きな影響を個人に及ぼす。しかし、我々人類は、動物脳による複雑な影響を容易に超越できる新皮質と呼ばれる脳を有している。
 人類という種が確実に生き残るために、自分が何に直面しているかを知り、自分自身に説明するために、扁桃体は新皮質に追いつく必要があった。しかし、扁桃体は新皮質に追いつくことはできず、結果的に、辺縁系と新皮質との間の葛藤を生じるようになった。これは、新皮質の論理的思考に対する原始的な脳である大脳辺縁系との対立の構図である。CBTは、生活の中で経験した精神的な重圧に由来するような恐怖や抱かなくても済むような妄想に対峙し、恐怖や妄想から回復するための新皮質のアプリケーションとして作用する。

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ステップ2

自分の思考を観察せよ(自動思考のモニタリング)
Observe your thoughts

 最初に知るべきことは、思考と意識は脳の全く別の事象であり、相互関係はないということである。自分自身の思考は、心の空洞の周囲で反響している単なる絶え間ない声に過ぎず、自分自身が遭遇したことについて絶え間ない判断や推量をしているに過ぎない。真の自己は強迫的な思考のプロセスとは全く関係がない。真の自己は、世界を観察できる者であり、不滅の概念を観察できる者である。我々は、真の自己として、自分の心を何度でも完全にコントロールすることができるはずである。
 
 それ故、心の中で生じた思考や感情はどんなものでも全て流し去ることができる。我々は、自分自身の心の中に喜びを容易に見つけ出すことができるにも係らず、喜びを見出すために外部の存在に常に依存しているような乞食のような存在であることを理解せねばならない。喜びを感じることは余りにも短く、逆に、急激に苦痛を感じるように変化することはよくあることである。この悪しき習慣のサイクルを止め、自我を保つことができる唯一の方法は、心の中の声や視覚的なイメージに支配された心の有様を受動的に観察することである。

 その思考は本当に有用かどうか、あるいは、単に外界に気を取られているだけなのではないのかを、常に問い直してみる。そうすることで、高いレベルの意識と心が接続できることになり、この世に存在する全ての存在と協調できる1つの存在になれるであろう。
 
 人は孤独なままでいることはできない。なぜならば、個人個人の意識も、世界を形成したエネルギーと全く同じようなエネルギーから成り立っているからである。過去にとらわれて将来をくよくよしとして考えることが心配を呼びこむ主な原因となっている。

 もし、心がチューンアップされれば、恐るるべきことは何もなく、恐怖は単に心や自我が作り出した幻影に過ぎないことを知ることができるだろう。我々の思考の約80~90%は役に立つものではなく、静かにしてうろたえなければ自然に達成されるはずの創造を妨害するに過ぎないものである。かつて世界で達成された全ての創造的な仕事において、思考は創造的な過程のごく一部を占めていたに過ぎない。

 さらに、五感がフルに活用されてしまうことで、日々の出来事への注意が自動的に惹きつけられてしまうかもしれない。例えば、もし、手を洗っている場合は、石鹸の良い香りを嗅ぎながら、他の部屋のTVの音を聞きながら、皮膚に対する水の感触をも同時に感じ取ることと同じである。

 もし、自分の思考を「観察」することを学ぶことができたならば、五感は自分を支配する力を失い、意識は純粋な(静寂な)状態になり、一時的な癒しや本物の喜びを提供しつつ、充実した心の状態になることであろう。他の方法でなくCBTによって自分の心を威厳に満ちた状態にまで達するような実践を積むことで、意識によってコントロールされた心の状態を長続きさせることができるようになることであろう。

ステップ3

認知の歪みを見つめ直す
Look for cognitive distortions. 

 認知の歪みは、常に作動している原始的な脳から派生した単なる幻想に過ぎず、意識的したとしてもこの滑稽な幻想による解釈は実現することはない。感情的な脳による支配は、今自分が置かれている状況を正しく分析することを許さない程に圧倒的なものであり、無意識のうちに適用されるため、否定的な思考は感情的な脳による支配から生じるものに過ぎないということを認識することが重要である。

主な認知の歪みには10種類のものがあるが、心の二次的な判断や評価として容易に生じる。

注; 10種類の認知の歪み以下のようなものがある。
 
(1) ALL-OR-NOTHING THINKING
全てか無かという思考(極端な考え方)

 黒か白というカテゴリーでのみ物事を見てしまうような二者択一的な思考。もし、パフォーマンスが完了できない場合は、全て失敗したと見なしてしまうような思考となる。

(2) OVERGENERALIZATION
過剰な一般化(取りこし苦労)

 1回だけのネガティブな出来事を永遠に続く終わりのない敗北のパターンと見なしてしまう思考。

(3) MENTAL FILTER
心のフィルター(偏見)

 1つのネガティブな些細な事柄をピックアップし、他のものを排他的に扱ってしまう思考。そのため、ビーカーの水にインクが落ちて水が濁ってしまう時のように全ての現実が曇ったようにしか見えなくなる(他の良い部分は見えなくなり、全体からすれば悪くないような現実でも悪いとしか思えなくなる)。
 
(4) DISQUALIFYING THE POSITIVE
ポジティブなことをマイナスだとみなす(マイナス思考)

 何らかの理由で「ポジティブな経験には該当しない」とポジティブな経験を拒否(否定)してしまうような思考。この思考パターンによって、日常の経験がネガティブな確信となって維持されてしまい、実際とは矛盾するようになってしまう。

(5) JUMPING TO CONCLUSIONS
結論へのジャンプ(速断)

 自分の結論を支持るような有力な事実が存在しないにも係らず、時間をかけずに即座に否定的な解釈をしてしまうような思考パターン。大きく分けて以下の2つの思考に分かれる。

a. Mind Reading 読心(先読み)。
確かめもせずに、相手は自分に対して否定的に反応しているのだと結論を下してしまう。

b. The FortuneTeller Error 間違った占い(外れた予想)。
事態が悪く展開するだろうと予想してしまい、その予想が既に既成事実であると確信してしまう。

( 6) MAGNIFICATION (CATASTROPHIZING) OR MINIMIZATION
拡大解釈(破綻化)または最小化

 物事(自分の失敗や誰かの成功)の重要性を誇張して考えてしまう。逆に、物事(自分の美点や成功を、他者の失敗や欠点など)を小さくとらえ、不適切に物事を矮小化してしまうような思考。
これは「双眼鏡のトリックbinocular trick」とも呼ばれる。

(7) EMOTIONAL REASONING
感情的な推論

 自分のネガティブな感情を、実際の物事にあてはめて考えてしまう。
「私はそう感じる。それ故、それが真実に違いない。」
(例: 私はあの人は嫌いだ。だから嫌なやつに違いない。)

(8) SHOULD STATEMENTS
~でなければならない、~であってはならない

 shoulds(~でなければならない)とshouldn'ts(~であってはならない)という考えで自分自身に動機を与えようとする。それはまるで、物事を予測する前に、自分自身にむちを打ち罰を与えるような思考である。Musts(しなければならない)やoughts(すべきである)も加害者となる。感情的に結論をくだすことは罪を与えることと同じである。他者に向けて「SHOULD STATEMENTS」を直接ぶつけたら、ぶつけられた他者は、怒りや、フラストレーションや、憤りを感じることであろう。

(9) LABELING AND MISLABELING
レッテルを貼ったり、間違えたレッテルを貼ること

 これは過剰一般化(over-generalization)の極端な形である。自分の間違いを受け入れる代わりに、自身自身に否定のラベルを貼り付ける。たとえば、「私は敗北者だ」。あるいは、他者が間違った方法であなたを困らせた時に、彼に否定のラベルを貼り付ける。たとえば、「あいつは最低で下劣なやつだ。」。間違えたレッテルを貼ることには、色眼鏡で見たり感情的な言語を用いて出来事について思考することが含まれる。

(10) PERSONALIZATION
個人化

 主な責任が実際には自分にはないような時でも、自分自身を否定な出来事の原因と考えてしまうような思考。

 実際に、強迫的思考や感情が生じていることを自分自身で感知する際には強い衝動性を感じることであろう。認知の歪みを感知するためには忍耐力が必要であり、忍耐力は認知の歪みの異常な性質を理解するための力になるであろう。

 いったん認知の歪みの変動パターンを見極め始めれば、認知の歪みからは自動的に解放されるようになるだろう。

 認知の歪みを繰り返し自分に依存適用されているとき、それは彼らの自己の感覚や人が実際にいるようになるまでのコアの信念は、小児期に最も頻繁に形成することができる。殆どは子供時代に成されるのだが、自己への歪んだ認識や、自分が実際にそうなのだという認知の歪みの強化が繰り返された時に、中核となるような歪んだ信念(信条、思い込み)が形成されてしまうのかもしれない。

 自我は過去と将来の可能性から派生した単なる想像上のアイデンティティであるに過ぎないことを覚えておくべきである。自我は自分が何者であるかという点では真のパーツではない

 これらの歪んだ信念を削除できる唯一の方法は、この信条が長い目で見て自分にとって本当に役に立つものかどうかを繰り返し自分自身に問いかける方法である。

「今の歪んだ考え方で自分の現在の状況が本当に変わるのだろうか?」

 この方法は費用対効果技法(cost-benefit technique)と呼ばれ、もし、この方法が適切に使用されていれば、自己への歪んだイメージがこびりついたような思考を捨て去ることができるだろう。

 スキーマ(概要、組織化された認知の単位、schema)という用語には、現実世界を知覚するために発達した様々な思考の仕方が含まれている。スキーマには、ステレオタイプな思考(紋切型思考)、信頼できないような理論、特定の状況への名称なども含めることができる。

 我々は生活の中で認知の歪みやスキーマを絶えず体験しているという重要な事実がある。長い目で見て重要なことは、この事実を常に意識し、歪んだ思考やスキーマに対処していくことである。

 誰かが非常に穏やかで和やか処分を持って生まれていない限り、我々は、すべて脳の原始的な分野の影響を受ける。生まれつき非常に静かで温和な傾向を持つような人でない限り、人間は常に脳の原始的な領域の影響を受けている

 ストレスを扱うのが得意に見える人は、おそらく自覚せずにCBTを使用しているのであろう。もし、非常に冷静でストレスの扱いが上手に見える人々を見たら、そういう人は自覚することなくCBTを使用していると思った方がよい。

 もし、CBTを使用していないのならば、真の自己を表示することを恐れており、感情を表現することを隠しているだけなのだろう。脳の層は個別に独立して同じ強度で機能しているため、全ての領域の機能をコントロールしうる他のオプションは(CBT以外は)通常は存在しない。
 
 CBTは、OCD、不眠、全般性不安障害などの障害を持つ人々のために広く使用される技術であり、誰もが学び取ることができる。CBTの効果が期待できるものとしては、完全に歪んだ信念のパターンになってしまっている心的外傷後ストレス障害(PTSD)でさえも含まれる。PTSDでは、歪んだ信念は脳の幻想に過ぎないということを明確にしていくことで対処することができるようになる。

 この効果的なCBTのテクニックを必ず使用しなければならないという必要性はない。必要があることは常識を持つことであり、上手にCBTを使い成功しようという意志を持つことである

ステップ4

CBTのテクニックの4段階目では、5つ全てのステップの中で最も重要な認知の歪みへの対処が含まれる。
The fourth stage of the technique involves dealing with your cognitive distortions, the most important of all the five steps.

 このステップは、CBTをリードしている心理学者によって同定された様々な認知の歪みを読み取る(前述した10種の歪みやスキーマに陥っていることに気づく)ことから開始される。

 第1の歪みは、全か無か(白か黒か)という思考であり、あるいは、絶対に完璧であらねばならないとか、怖すぎて行動できないという結論に達するような思考である。

 第2の歪みは、困難な事がいったん生じると、過剰に一般化したような歪んだ思考をしてしまうことである。以前の経験がどのようなものであっても、過剰に一般化してしまう思考は生じ続けることであろう。

 第3の歪みは、ポジティブな経験だと思われるような場合にも、出来事のネガティブな些細な部分にこだわる傾向である。

 そういう傾向はモノトロピズム(偏屈性、monotropism)として知られているが、ポジティブに行動することが完全に忘れ去られているか消去されてしまっている。

 この心理的な用語は、全体像を見ることができず、その代わりに、タスクや状況の個々のどうでもいいような一部の側面にしか焦点を当てていないことを意味する。

 5番目の歪みでは、自分は未来を予測できたり他者のボディランゲージを分析できるといった超自然的な能力を持っていると考えるような思考であり、そういった思考は、無謀な仮定に過ぎないという検証すらしないことである。

 視覚トリックを使用すれば、誰もが出来事の重要性が実際よりも拡大して見えてしまうようにできる。

 さらに、自分が抱いた感情は、現実や物事の実際の姿を反映しているのだと考えてしまうミスを犯す人もいる。

 そして、状況を個人化し、実際にそうなのだというラベルを貼り、達成不可能なタスクを自分自身に強要してしまう人もいる。

 これらの歪んだ全ての仮定は、権威で自分を保とうとする自我を偽っている無謀で衝動的な思考である。

 これらの歪んだ思考を効果的に分析する上での最初のステップは、生活の中で最も該当しているような10の歪みを同定することである

 これらの歪んだ思考の経験を分析することを始めた時間を書き留めるか記録する。(この記録するということが大切である。人間はすぐに忘れてしまう動物である。自分が気づいた思考や認知の歪みを記録しておくだけでも大きな意味があろう)

 ここで、3つの要点を確認しておかねばならない。すなわち、

 1つ目は、ネガティブな思考や感情を生じさせた根本的な原因は何なのかということである。

 2つ目は、もし、同じようなネガティブ思考を続けた場合にどのような副作用が生じるかを知ることである。

 3つ目は、ネガティブな思考をを防ぐために考え直すとすれば、どのように新しく考え直していけば新皮質による論理的な思考になるのかということを理解することである。

 最後のステップは、自分の歪んだ思考と決別し、成功するか失敗するかを決定づける最も重要なステップとなる。人生の必然的な逆境の全てを回避することはできないかもしれないが、このような逆境と思われるような出来事への認識の歪みを変更することはできるはずである。歪んで思考する習慣を徐々に変更していくことで、自分の人生をより良い方向に変えていくことができることであろう。

ステップ5

 これまでに記載した作業は、最初は単調な作業のように見えるかもしれないが、この作業を続けていれば、もし、おぞましい状況に遭遇した時でも、自分の脳による論理的な思考の優位性を保つことができるだろう。
At first the above work may seem like a monotonous task, but if continued you will gradually you’re your logical part of your brain more dominant when it comes to abhorrent situation. 

 どのようなシステムがストレス応答の原因になっているかを科学的な視点から詳細に学び取るためには、以下の記述を参考にしてほしい。

 自分の心の中の幻想的(妄想的)な性質を消し去るという目標に到達する上で重要な役割を担う脳の2つのシステムが存在する。

 1つ目は交感神経系であり、交感神経系は戦闘を開始させたり、戦闘中に優位になる構造体であるが、どのようなものと遭遇しても良いように、遭遇する対象に焦点を定めて準備し、警告となるような体の症状を誘発する。

 2つ目は副交感神経系であり、副交感神経系は脳と体をスローダウンさせ、心拍や呼吸のリズムを自然な形にまで徐々に回復させる。

 深呼吸が、しばしば、人を落ち着かせるために使用されているのは、第2のシステムである副交感神経系を活性化するためである。交感・副交感系は完全に独立して作用するため、交感神経系が過剰に作用してしまうことは珍しいことではなく、この結果、不必要なエネルギーの損失を招き、癌に罹患するリスクさえも高くなっていく。

 しかし、交感神経系の裏では副交感神経系も同じシステムを使用しているので、この悲惨な現実を怖がる必要はない。ストレッサーが過ぎ去れば、第2段階の評価をしている最中に副交感神経系の働きによって落ち着くことができるのだということを学ばなければならない。

 人類がネアンデルタール人だった頃には、食物を捜し求める狩りを行っている最中に、捕食者となり得る動物を見た時には、交感神経系が急速に活性化され、走って逃げ去るか、危険を冒してでも捕食者と戦うかのどちらかの行動を引き起させていた。

 もし、ストレス応答に対抗するようなパーツを使用しなければ、脅威的な出来事が終了した後でも不必要な交感神経系の作用が続くため生存することはできなかったことであろう。

 第2段階の評価をしないようなことは、人類がより洗練された種となる進化を妨げる可能性があり、さらなる敵(注;様々なストレスなど)に対して人類はより脆弱な存在となることであろう。現在では、自分の取った行動の意味や、エネルギーを保存することの意味を明確に思考できることができるようになったため、人類はネアンデルタール人の脳(大脳辺縁系)を支配したと言えよう。

 しかし、ネアンデルタール人と同じことが普段の生活の中で起こりうる。もし、第2段階の機能を無視したような場合には、今の人類に授けられた力を行使した生活をしていないことになるため、パフォーマンスは低下することであろう。

ステップ6

 それ故、これからは、将来に控えているテストに対してストレスを感じるような時には、認知の歪みに立ち向かい、呼吸を整え、自分に課せられた大きな課題に取り組むエネルギーを作り出す練習をしなければならない。
Therefore, next time you feel stressed out about a future test, practice tackling cognitive distortions and making your breathing more fluent to allow yourself some fuel for the great task ahead.

ヒント

 CBTのプロセスを快適にこなしていくためには、同じCBTのテクニックを駆使できる人がそばにいれば助かることであろう。このような人には、あなたのニーズや考え方を理解してくれるような知人や仲間が含まれる。
 
 そういった多くの知人がいれば不安と戦うことが容易になり、精神的に強くなり、CBTを実践している他の人物になれることとであろう。

 自分自身に関して絶対に諦めないことと、多くの人が自分と同様に生活の中で多大な苦痛を感じていることを知ることが重要である。

 しかし、自分自身の歪んだ思考や不適切な習慣を変え、人生に永遠の平和や楽しさをもたらす力を有する唯一の存在は自分自身であることを知れねばならない。この感情をコントロールするCBTの力を発展させていかねばならない。

 自分自身への強い不安を抱いている場合、家族にそのことを知らせることはできるであろう(=家族にアシストしてもらう)。

 感情や精神の多くの疾患はこのCBTの技術を用いて治療されていることを忘れてはいけない。

 wikiHowには様々な要因に対処するためのCBTに関連する多くの記事が掲載されている。

 特定の状態を手助けすることができるページに接続するには、以下のいずれかのリンクをクリックすること(リンクは省略)。

 もし迅速な成果が得られなくても焦ってはいけない

 どんなに軽度の刺激であっても、ストレスに遭遇した際には、新皮質は普段は休眠しているため、悪い習慣から抜け出すためには長い時間を要するかもしれない。

 結局のところ、我々人類の祖先だったネアンデルタール人の血は今でも残っており、大脳辺縁系の影響からを拭い去ることはできない。

 成功を達成するためには、忍耐強くなり、脳の欠陥部分(大脳辺縁系)の影響を絶ちき切る意欲を持たねばならない。

 CBTへの理解を深めていくために、CBTのトピックに関する本を読むことは役に立つかもしれない。

 2つの良いリソースがある。ニック・デュビン(Nick Dubin)の「不安(Anxiety)」と、エックハルト・トールの「今ある力(The Power of Now)」である。
(Anxiety)
(The Power of Now written by Eckhart Tolle)

CBT-9

 両方のテキストは目的は完全に異なるが、CBTに適用することができる。前者の本は、認識行動理論にのみ焦点を当てているが、後者の本は精神的な啓発にも焦点を当てている。

 もし、CBTのテクニックを用て30日以内に具体化な結果が現れない場合は、心理学者やカウンセラーに診てもらった方がいい時期に来ているのかもしれない。

 場合によっては、このウィキハウの記事を熟読することよりも、経験豊富な医師やカウンセラーから何をすべきかをアドバイスされた方がより快適であろう。

 適正な心理学者を選ぶ方法ことは重要である。不適切な心理学者は、結局、多くの害をもたらしてしまうかもしれない。

 経験ある様々なカウンセラーが存在する。従って、自分にとって適切なカウンセラーが必ず存在することであろう。

 自分には合わないと心理学者に伝えることをためらわない方がいい。ただし、適切なカウンセラーを見つけたいような場合には、カウンセラーの全ての言葉に注意をすべて集中して耳を傾けなければならないことは言うまでもない。

(ブログは終わり)

 CBTは精神疾患を克服していく上で大きなツールとなるが、CBTの効果はそれだけに留まらない。CBTは成功を約束してくれるツールにもなるのである。人生で成功を収めようと思うならばCBTをマスターしておくべきであると言えよう。

 なお、自動思考やスキーマをどのような内容に修正していけばいいのかは、成熟した大人の防衛機制(Mature defense mechanisms)も良い参考になるのではと私は考えている。成熟した大人の防衛機制に沿った内容に変えていくのである。成熟した大人の防衛機制もCBTと同時にマスターすればいっそう効果的であろう。

(参考ブログ2013年5月10日 成熟した大人の防衛機制)