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(前回の続きである)

 小麦が主食の欧米ではグルテンフリーダイエット(GFD)がブームになりつつある。アメリカでは既に160万人もの人々が食事をGFDにしているらしい。グルテンフリーダイエット食品の市場は数十億ドルの規模まで拡大しており、今後ますますグルテンフリー食品の市場は拡大するであろうと言われている。

 ただし、グルテンフリーダイエットが流行している背景として、やせるためにグルテンフリーダイエットをしている女性も多く、ネットでの記事を見ると多くの女性に減量できると信じられているようである。一方、GFDをしても意味はないという意見もある。確かに、セリアック病の肥満にはGFDは有効であるという論文は多い。そして、少ないながらも、セリアック病以外でも肥満対策には有効であるという論文も既に出されてはいる。しかし、まだエビデンスとして確定している訳ではない。一方、実際にグルテンへの感受性があるためにメンタルに悪影響を及ぼされているような場合にはグルテンフリーダイエットを行う意味は十分にあろう(グルテンへの感受性を有し、そのためにメンタルに問題を抱えているケースがどの程度存在するのかはまだ不明なままではあるが。推定では約5%であろうか)。
 
(2か月間のGFDで15Kgも体重が減ったという某女優の記事)
(GFDで体重を落とそうとしても意味はない)
http://robust-health.jp/article/cat29/mohnishi/000430.php
(グルテンフリーダイエットはインスリン抵抗性や炎症を軽減し肥満対策に有効である)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23253599

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 小麦に含まれるグルテンが健康を害しているという仮説は元々は古い疾患概念であったのだが、最近再び注目を集め、グルテンやカゼインといった食事由来の特定の物質への感受性が身体や精神に悪影響を及ぼしているのではと考えられるようになってきている。アメリカ合衆国では、グルテン関連疾患は一般人口の推定10%にも存在すると見積もられている。10人に1人がグルテンによって健康を害されているのである。その観点からグルテンフリー・カゼインフリーダイエット GFCF食を精神疾患の食事としても推奨する動きがある。実際に精神疾患への効果を報告する論文も増えてきており、グルテンフリー食(GFD)は今後、精神科における食事療法として導入される可能性があろう。

(ラーメンもグルテンフリーへ。ニューヨークでの日本人による挑戦。麺は米から作られている)
http://www.tastingtable.com/entry_detail/nyc/15477/Ippudo_Ramen_now_makes_a_gluten_free_vegetarian_ramen.htm
(グルテンフリーのレストランやグルテンフリー食品専門店も大人気)
http://www.schar.com/

gluten free ramen
 
 アメリカでは既にFDAグルテンフリーだという表示ができる基準を定めている。日本ではまだこの基準は定められていない。西洋諸国におけるグルテン関連疾患への関心の高さが理解できよう。
http://www.fda.gov/food/guidanceregulation/guidancedocumentsregulatoryinformation/allergens/ucm362510.htm
http://www.fda.gov/Food/GuidanceRegulation/GuidanceDocumentsRegulatoryInformation/Allergens/ucm362880.htm

ちなみに、PubMedで調べてみたところ、グルテンフリーダイエット(GFD)に関する論文も年々増えてきていることが分かった(下図)。研究者の間でもGFDへの関心が非常に高くなっているのが分かる。

 いずれグルテンフリー食を治療食として提供しないといけない時代がやってくるのであろうか。たとえ低レベルの場末の精神科病院であろうとも。はたして日本のP科病院はグルテンフリー食を提供できるのであろうか(汗;)。

GFD papers
 
 後述するが、グルテンやカゼインは身体疾患のみならず、自閉症、統合失調症、双極性障害などの精神疾患にも関与していることを示唆する論文も多くある。グルテンやカゼインは精神疾患と決して無縁の物質ではないと理解しておくべきであろう。

 そこで今回は、グルテンの問題(グルテンとセットして扱われることが多いカゼインも含めて)について触れてみることにした。

 今回は、グルテンフリー食を実践したいと考えている人への参考資料となりえるものをできる限り詰め込んだため非常に長いブログになってしまった。 グルテンフリー食には興味がない方は読み飛ばして頂きたい。
 
 まずは、精神疾患へのグルテンフリー食の効果を報告している論文から紹介する。
 
 (なお、グルテンフリーダイエットにおける推奨品目の表を下図に示しておく。この表中でさらに乳製品が含まれていない条件を組み合わせるとGFCF食となる。米は全ての種類がグルテンフリーである。)

gluten free list

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 かっては自閉症へのグルテンフリー・カゼインフリー食(GFCF食)の有効性を報告する研究論文がある反面、否定的な意見や効果は限定的であるとする論文も多く、自閉症へのGFCF食は推奨されるとは言えないと考えられていたが、最近になり自閉症へGFCF食の効果を報告する論文が増え始めている。
 
 この背景として、FDAが基準を定めたことなどで、以前よりも、GFCF食の精度やコンプライアンスが高まり、ミスが減っていることが大きく影響しているものと思え、今後ますますGFCF食の効果を報告する論文が増えていくことが予想される。
 
 最近行われたデンマークでの研究。24ヶ月間、2段階からなるGFCF食のRCTを行った。その結果、12ヶ月の時点における、自閉症診断観察スケジュール(ADOS)やギリアム自閉症評価尺度(GARS)などの自閉症スコアの改善を認めた。24ヶ月の時点での第2ステージのデータは、GFDのプラトー効果(ある一定のレベルでプラトーに達し、それ以上は効果が上がらない)の可能性を示すものの、GFCF食によって自閉症の臨床症状の改善が持続する証拠が示された。この研究はNCT00614198(ClincialTrials.gov)に登録された。

 アメリカペンシルベニア州立大学での調査結果。これによると、胃腸症状、食品アレルギー、食品過敏症を有する自閉症(ASD)児童ほど、そういった生理症状のみならず、ASDの症状や社会行動面での症状の改善度合いが大きかったことが判明した。さらに、厳密にGFCF食を行っているほど、ASDの症状、生理症状、社会症状の改善度合いが大きいことも分かった。これらの所見は、ASDの中には、サブグループが存在し、GFCF食から大きな恩恵を受けるグループが存在することを意味している。

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 ASDへのグルテンフリーダイエット(GFD)がの効果を文献でレビューした。唯一の二重盲検クロスオーバー試験では、GFDの有効性は確認されなかったものの、他のいくつかの研究では、GFDから恩恵を受けていることが示された。GFDの恩恵を受けるかもしれない自閉症のサブグループが存在するが、このサブグループのプロフィールは不明なままである。

 これまでのASD児童へのグルテンフリー食の限られた有効性を示す結果は、二重盲検試験が多く、かつ、実施されたRCTの数は少ないが、RCTにおいてもサンプルサイズが小さいなどの試験方法側の要因に起因するものであろう。

 自閉症スペクトラム障害のいくつかのケースでは、グルテンフリー(GF)、カゼインフリー(CF)、または、グルテン・カゼインフリーダイエット(GFCF)が中核症状と周辺症状を改善し、予後をも改善することを示唆している。完全に肯定することはできないものの、発表された研究の大半が食事療法による統計学的に有意な症状の軽減を報告している。方法論的な問題が存在するが、特に、コミュニケーションの障害、注意障害、多動といった症状に関する改善が記述されている。しかし、ベストな反応を示す者と非反応者との特徴はまだ完全には解明されていない。反応者も非反応者に対しても、食品に関連した他の疾患の時のような正確な作用様式は不明である。GFCF食で中~長期間コントロールした研究では、GFCF食と生物学的所見との間の確固たるリンクが示され、食事と関連した自閉症の表現型が存在することは明らかである。そのような食事療法が、自閉症スペクトラム障害へのベストな実践的ガイドラインになるかどうは、さらなる議論が必要である。

 自閉症児童へのGFCF食への反応性を予測する潜在的な因子を同定する調査を行った。その結果、不注意多動性を有することはGFCF食に反応する予測因子となることが分かった。年齢は7~9歳の間が最もGFCF食の利益を得るようであり、最強の予測因子であることが見出された。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24075141

 さらに、前回のブログの最後で述べたように、統合失調症でもグルテンフリー食の効果が報告されている。ある研究論文では次のように述べられている。
 
 我々は以前の研究で、統合失調症におけるグルテン関連抗体の有病率を同定した(PMC3004201)。調査したSZ群は、健常対照群(1.1%)と比較して、5.5%が抗tTG抗体の高いレベルを有していた。一方、SZ群は、対照(3.1%)と比較して、抗グリアジン抗体(AGA)の陽性率は23.1%と非常に高いことが示された。しかし、AGA陽性者は、抗tTG抗体を有していなかった。統合失調症では抗tTG抗体やAGAの陽性率が高いことは他の研究グループの調査でも報告されている。統合失調症に対するグルテンフリー食(GFD)の効果を調べた7つの臨床試験が行われている。これらには抗体についてテストしていない統合失調症患者が含まれるため、初期の研究では、結果は異なっている。ただし、グルテンを除去したことで統合失調症の症状が完全に消失した例が報告されている。
 
 そこで、我々は、抗tTG抗体やAGAが陽性だと既に判明している統合失調症患者へのGFDの2週間のオープンラベル試験を行った。被験者は、臨床症状は安定しており、試験開始前に全く同じ抗精神病薬を内服しており、開始4週間前から使用用量の変更はなかった。

 その結果、抗tTG抗体かAGAが陽性のどちらの群においても、BPRSとSANS(精神症状スコア)の著明な改善が認められた。さらに双方ともアカシジアやEPSの著明な改善を認めた(たった2週間で劇的に症状が改善したのである)。この所見は、抗tTG抗体やAGAが陽性の統合失調症では、グルテンフリー食によって統合失調症の改善のみならず、錐体外路系の副作用(EPS)までもが確実に改善する可能性があることを示唆している。統合失調症の新しい治療方法が殆どない以上、このグルテンフリー食の結果は刺激的であり、グルテンフリー食はこの壊滅的な障害である統合失調症に苦しむ患者の1/4(抗体陽性者の推定率)に改善を提供することができる治療方法になろう(統合失調症の患者さんの4人に1人はGFCF食を食べれば症状が改善する可能性があるのであった)。

 さらに、統合失調症でGFDによって前頭葉の機能障害が改善されたことをSPECTで確認したケースも報告されている。

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 このように、自閉症(ASD)や統合失調症(SZ)といった精神疾患の枠組みを横切って、GFCF食に反応するサブグループが存在することは確かなようである。このサブグループでは、GFCF食によって精神症状や疾患の予後が改善・安定することが示されている。この所見は、ASDやSZのある種の患者ではグルテン感受性(GS)が存在しており、そのグルテンへの感受性が病状に悪影響を及ぼしているものと推測できる。
 
 では、グルテン感受性(Gluten Sensitivity、GS。今は、非セリアック病グルテン感受性NCGSとも呼ばれる)とはいったいどういった病態なのであろうか。まだ不明な点は多いものの、現在研究が進められており、GSに関してはかなりのことが分かってきている。
  
 本年度にもグルテンやカゼインへの感受性に関するレビューがいくつか発表されている。そのレビューの1つを元に他の論文もからめてグルテン感受性について紹介する。
 
非セリアック病グルテン感受性: グルテン関連疾患の新しいフロンティア
「Non-Celiac Gluten Sensitivity: The New Frontier of Gluten Related Disorders」

1. はじめに(Introduction)

 グルテン感受性(Gluten sensitivity、GS)は、既に1980年代に記載されていた。最近、この症状群(syndrome)の実態が再発見されたが、GSはグルテンを含む食品の摂取に関連した腸管症状や腸管外症状を特徴とし、セリアック病(celiac disease、CD)や小麦アレルギー(wheat allergy、WA)のいずれにも該当しない症状群である(言い換えれば、血清学的特徴もCDやWAの基準を満たさないし、小腸絨毛の萎縮も存在しないPMC3908912)。2010年にSaponeらによってGSの臨床的特徴や診断が記述されたが、その後、GSに関する論文が急増し、GSはグルテン関連スペクトル疾患に含まれるべきであることが確認された。しかし、GSの疫学、病態生理学、臨床スペクトル、治療に関しては不明なことが多い。近年、世界においてグルテンフリーを表示する製品の市場が拡大してきており、グルテンフリー食(gluten-free diet、GFD)を実践する個人が増えてきている以上、GSをCDやWAから厳密に区別して再定義する必要があろう。グルテン関連疾患の新たな命名法と分類に関する専門家委員会が、2011年2月にロンドンで開催され、診断アルゴリズムが提案された。

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 この会議の後に、新しい多くのGSに関する論文が発表された。一般集団における頻度は依然として不明であるが、疫学的データはGSの問題の大きさを理解する上で役に立つ。過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome、IBS)とGSとの間のオーバーラップが疑われているため、厳格な診断基準が必要であろう。既に子供のGSの最初の症例報告もなされている。しかし、バイオマーカーが欠如しているため、他のグルテン関連疾患とGSとの鑑別診断はまだ困難な状況である。なお、2012年11月30日に第2回目のGSの専門会議がミュンヘンで開催されている。
 
 補足しておくと、セリアック病に関しては、wikipediaの解説によれば、小腸内の上皮細胞には絨毛・微絨毛と呼ばれる小突起が存在して栄養の吸収を行なっている。セリアック病の患者がグルテンを含有する食物などを摂取すると、ヒトの消化酵素では分解できないグルテン分子の一部が小腸上皮組織内にペプチド鎖のまま取り込まれ、これに対する免疫反応がきっかけとなって自己免疫によって小腸の上皮組織を攻撃して炎症を起こすことで絨毛などを損傷し、さらに、上皮細胞そのものの破壊にまで至ってしまう。この結果、小腸から栄養を吸収出来なくなり、食事の量などに関らず栄養失調の状態に陥る。と解説されている。CDは消化吸収不全病なのでもある。しかし、NCGSでは消化吸収不全のような状態になることはなく、栄養失調にまでは陥ることはない。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%83%E3%82%AF%E7%97%85

グルテンの進化(The evolution of gluten、PMC3908912による補足)

 グルテンは、古くから人類の食事として食べられていた訳ではないため、この新しい疾患であるグルテン関連疾患が現代になって生じたことは驚くべきことではない。かっての人類の食事は、果物、野菜、肉から成っており、穀物にはほとんど曝露されたことはなかった。しかし、1万年前に農業が革命をもたらし穀物の栽培が始まった。穀物の栽培は、中東の肥沃な三日月地帯からヨーロッパに広がり、それに伴いセリアック病(CD)と一致するような症状の記述が始まった。
 
 CDの最初の記述は、AD2世紀のローマ時代のアレタイオスにさかのぼるが、疾患の完全な記述は1888年のサミュエル・ジー(Samuel Gee)までは成されなかった。さらに、1952年にオランダの小児科医であるWK・ディック(WK Dick)は小麦が利用できなくなった第二次世界大戦の間にCDの子供が症状の改善を示したことを記載したが、それ以降は食物とCDとのリンクが受け入れられ、グルテンを含まない食事(GFD)が開発された

 (これと同じような現象が統合失調症でも報告されている。統合失調症も小麦を食べられなくなった第二次世界大戦の時には入院患者数が激減しているのである。)
http://articles.mercola.com/sites/articles/archive/2013/06/22/gluten-grains-cause-schizophrenia.aspx

 小麦の全ての品種に毒性がある訳ではない。1万年の間に、25,000種以上の小麦の品種が開発された。過去500年の間に小麦の中のグルテン含有量が増加した。グルテンは、パン生地の膨張を助け、食品の口当たりのよいテクスチャーを維持する。また、ライ麦と大麦でも発見されグルテンは、グリアジングルテニンというタンパク質の両方で構成されている。プロリンやグルタミンが豊富であるグリアジンは、遺伝的素因を有する個体では腸の消化酵素によって分解されず、免疫反応をトリガーすることになる。小麦には様々なグルテンタンパク質があるが、どれもが数~数百のグリアジンとグルテニンの成分を含有し、各成分の毒性は未知である。実際には、各々のグルテンタンパク質は、T細胞を明確に刺激する配列を有し(下図の黄色の部位)、ユニークな毒性プロフィールを持つ。なお、食品によく使用されている現在の小麦の品種(Triticum aestivum、パンコムギ、3粒以上) よりも、一粒小麦や二粒系小麦といった古い品種はグルテン関連疾患に対しては忍容性が優れていると言われている。

(グリアジンのアミノ酸配列を下図で示す。PMC3292448)。

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 小麦の使用を増加させた農業技術の普及が、一部の地域に見られるセリアック病の高い有病率の理由を説明できるかもしれない。グルテン関連疾患は、ヨーロッパ系の人種以外では稀だろうと考えられていたが、現在ではそうではないことが知られている。アフリカ、南アジア、ラテンアメリカ、中東東欧諸国で行われたスクリーニング調査では、CDとNCGSの診断率は米国と同様の診断率であった。これらの地域では、CDの発病に必須であるヒト白血球抗原(HLA)のタイプの保有率が元々高く、西洋型食事の増加に影響されて、CDも増加していったと考えてもおかしくはない。それにも係らず、専門家はグルテン関連疾患が増加している理由は、遺伝的要因のみでは説明できないと考えている。むしろ、CDの有病率は、CDの発症には環境要因が大きな役割を有していることを示唆している(その環境要因については不明であるが)。

 今日では、先進国や発展途上国におけるカロリー摂取源の50%は小麦からであり、小麦は世界で最も重要な食料源の1つである。他の穀物に比べ小麦の世界的な消費が加速している。これらの変化は、可処分所得の増加、都市化、多国籍食品企業の進出だけでなく、小売店やマーケティング技術の進歩によっても後押しされている。1人当たりの年間小麦粉消費量は米国では132.5ポンドと推定されている。グルテン関連疾患の有病率の増加は、忍容性に優れアレルゲン性粒子が小麦よりも少ない穀物を探索する必要性が高まっていることを示唆している。
 
 (小麦に代わる主食となる穀物が、今、世界中で切実に求められてきているのである。小麦よりも優れている穀物と言えば。そう、それはである。今後は米の価値が非常に高まっていくのである。私は政治家の諸君に言いたい、日本の米をもっと大事にせよと。日本の米が世界を救う日が来るかもしれないのである。安倍晋三さん、日本を取り戻したいのであれば、日本の米を大切に思う心を取り戻さなければならない。それに、腸疾患ならばグルテンフリー食ですよ。米をもっと食べるべきです。小麦ばかり食べていたら、また体調を崩して辞任することになりますよ^^;)
http://celiacdisease.about.com/od/glutenfreefoodshoppin1/f/Gluten-Free-Rice.htm 

 なお、Wikipediaによれば、グルテン (gluten) は、小麦、大麦、ライ麦などの穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種であり、胚乳内の貯蔵タンパク質であるグリアジンとグルテニンを、水分の存在下で反応させるとグリアジンとグルテニンが結びついてグルテンとなる。弾性を示すため、グルテン前駆体の2種のタンパク質を含む小麦粉を水でこねるとグルテンが生成され生地に粘りが出る。パン生地などが発酵した時に気泡が残るのも、生地がグルテンによって粘りをもっているためである。と記載されている。小麦の中に最初からグルテンが含まれている訳ではないのである。グルテンは人類が人工的に作り出したタンパク質なのである。

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 言葉としての「グルテン」は複雑である。グルテンフリー食(GFD)は、小麦、ライ麦、大麦を含まない食事である。グルテンは、水と小麦粉を洗浄した後に残る接着剤のような塊を指す。グルテンは、穀類中に見出される貯蔵タンパク質でありベーキング特性を有する。セリアック病(CD)は、組織トランスグルタミナーゼ脱アミドグリアジンペプチドに対する免疫グロブリン(IgA抗体)が原因となり、グルテンによって誘発される小腸粘膜の炎症性疾患である。小麦アレルギーは、グルテンに対するIgEと、急性のアナフィラキシー症状である。NCGSは、診断基準はまだないが、グルテンによって誘発される臨床的徴候によって特徴付けられる。NCGSは今のところは臨床用語で定義されているに過ぎない。NCGSは食事制限によって治療することができるが、これらの実体が実際にオーバーラップするかどうかはまだ分からないままである(PMC4031484)。

 なお、補足しておくと、NCGSではグルテンフリー食にて抗グリアジン-IgG抗体は消失することが分かっている(=治癒する)。非セリアック病グルテン感受性(NCGS)患者44名、セリアック病の患者40名に対して、GFDの6ヶ月後のIgG型とIgA型の抗グリアジン抗体の変化をELISAにて調査した。NCGS患者の大多数(93.2%)はGFDの6ヶ月後にIgGクラスの抗グリアジン抗体は消失していた。対照的に、セリアック病患者の40%は、GFD後もこれらの抗体は持続した。NCGS患者では、GFD後のIgGの持続性と臨床症状の程度はGFDに対する低いコンプライアンスと相関していた。

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2. 病名(Nomenclature)

 「グルテン関連障害」という病名は、グルテン含有食品の摂取に関連した全ての条件を記述するために使用される。セリアック病(CD)は、食事のグルテンやプロラミン(prolamines)への暴露によって引き起こされ、免疫システムによって媒介される慢性の小腸疾患であり、遺伝的素因を有するケースでは、組織トランスグルタミナーゼ2(tissue transglutaminase 2、TG2)や筋内膜(endomysium、EMA)に対する特異的自己抗体によって特徴付けられる。小麦アレルギー(WA)は小麦タンパク質に対する有害な免疫反応(アレルギー反応)である。WAでは、小麦への特異的IgE抗体が病因の中心的な役割を果たしているが、非IgE性のWAも存在し、この場合は、GSと区別することが困難である。

 このレビューでは、GSは、グルテンの摂取がトリガーとなって症状が生じるが、セリアック病に特異的な抗体や古典的なセリアック病絨毛萎縮は存在せず、そして、ヒト白血球抗原(HLA)は個々のケースごとに様々であり、第1世代抗グリアジン抗体(AGA)を有するかどうかも様々であるような病態として定義する。
 
 GSはグルテン過敏性腸疾患として定義されることが度々あり、CDとの混同を避けるために「非セリアック病グルテン感受性」(non celiac gluten sensitivity、NCGS)という病名が提唱された。確かに病名の問題がある。穀物タンパク質はグルテン以外の物質を含んでおり、「非セリアック病小麦(タンパク質)感受性」という病名を支持する研究者もいたが、こういった病名はグルテンを含む他の穀物(ライ麦、大麦)がグルテン感受性を有する患者に害を与えることになってしまうかもしれない。専門家らは、これらの問題を念頭に置いて、将来的に修正する必要があるかもしれないが、この病態を暫定的にNCGSとすることに同意した。
 
 なお、グルテン不耐症(gluten intolerance)という用語を使用する研究者もいる(PMID25245857)。

3. 疫学(Epidemiology)

 一般人口におけるNCGSの有病率は未だに不明なままであるが、現在、多くの人が医学的な診察を受けずに自己診断でGFDを開始している。ただし、最近のデータでは、NCGSは珍しい疾患ではないことが確認できる。ニュージーランドでは、調査した5%子供がCDという診断を受けていないがグルテン含有食品を回避していると報告された。そして、グルテンの回避の理由は行動や胃腸症状の改善のためであった。米国の国民健康栄養調査(2009-2010年、6歳以上)では0.55%がGFDを実践してることを自己報告している。GFDは、女性や高齢者の方が高かった。

 過敏性腸症候群(IBS)の疫学データはNCGSの間接的な推定値を提供する。北ヨーロッパで最近行われた調査では、一般人口におけるIBSの有病率は16%~25%であった。IBSを有する成人への二重盲検、プラセボ対照のチャレンジ試験の結果ではNCGSの頻度は28%であった。Carroccioらの大規模研究では、IBS様症状を持つ30%に小麦感度性や複数の食物過敏症を認めた。IBSでは一定の割合でNCGSに罹患している可能性があるため、一般集団におけるNCGSの有病率はCD(1%)よりも高くなる可能性がある(PMC3908912によれば、3%~6%と推測される)。NCGSは若年/中年の女性に多いようである。子供のNCGSの有病率はまだ不明である。なお、NCGSの危険因子はまだ同定されていない。また、PMC4031484によれば、罹患率は6%と高めに推定されている。NCGSの集団において、そのうちの半数は過敏性腸症候群と互換性の兆候を持っていたし、同様にその診断を受けた。
 
 補足: 最近発表されたイタリアで行われたNCGSへの大規模な調査結果は以下の通りであった(PMC4053283)。
 
 調査した被験者の3%にNCGSの疑いのある患者(486名)が1年間で同定された。女性/男性の比率は、5.4~1であり(女性に多い)、平均年齢は38歳(3~81歳)であった。臨床症状は、胃腸症状が多く(腹痛83%、膨満感87%、下痢/便秘、吐き気、心窩部痛、胃食道逆流、アフタ性口内炎)、胃腸症状以外では、疲労感(64%)、頭痛、線維筋痛症のような関節/筋肉痛、足や腕のしびれ、foggy mind (30%)、皮膚炎や皮膚の発疹、うつ病 (18%)、不安 (39%)、貧血、などである。大多数の者は、グルテン摂取と症状の出現間の時間は2・3時間~1日であった。最も頻繁に関連していた障害は、過敏性腸症候群(IBS、47%)、食物不耐症(35%)、IgE型アレルギー(22%)であった。さらに、NCGSの14%にグルテンと関連すると思われるような自己免疫疾患が検出された(自己免疫性甲状腺炎など)。家族歴に関しては、患者の18%がセリアック病と関連していたが、NCGSとHLA-DQ2、HLA-DQ8陽性との間には有意な相関は見られなかった。IgG抗グリアジン抗体は、テストした患者の25%で検出された。十二指腸生検を受けたものについては、腸粘膜は正常(69%)か上皮内リンパ球の軽度の増加(31%)を示したに過ぎなかった。28の参加施設では、NCGS:新らたにCDと診断された患者の比率は、1.15:1であった(結論: NCGSはCDよりも有病率はわずかではあるが高い)。

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 なお、メリーランド州での調査では、2004~2010年の間で調査した5896名の患者の347名(6%)にNCGSの基準を満たす患者が認められた(PMC3292448)。 そのためセリアック病よりも6倍の頻度でNCGSが存在すると考えている研究者もいる(PMC3641836)。
  
 なお、PMC3908912によれば、小麦アレルギー(WA)は米国では0.5%(~9%)と見積もられており、大人よりも子供において一般的である。なお、WAの子供は他の食品アレルギーやアトピー性皮膚炎を有することが多いと述べられている。

4. 臨床的特徴と経過(Clinical Picture and Natural History)

 NCGSは通常はグルテン摂取後にすぐに生じる症状を特徴としているが、数時間~数日以内に症状は消褪する。古典的なNCGSの症状は、IBS様症状の組み合わせであり、腹痛(68%)、腹部膨満、排便習慣の異常(下痢や便秘、下痢は33%)、すっきりしないような曇ったような心 foggy mind、頭痛、倦怠感、関節・筋肉痛(34%)、脚や腕のしびれ(20%)、皮膚症状(40%。湿疹、発疹、紅斑など)、全身症状を含む、抑うつ(22%)、注意力低下、貧血(20%)、等である。専門医に受診した時点でNCGS患者の多くが既にグルテン含有食品の摂取と症状悪化との因果関係を報告している。子供では、腸管以外の症状を訴えることは少なく、腹痛、慢性の下痢などの典型的消化器症を訴えることが多く、腸管以外の症状の症状で最も一般的な症状は疲労感である(括弧内の数字はメリーランドセリアック研究研究センターでの数字。PMID25245857)。

 なお、この十年間で多くの研究がNCGSと神経精神障害との関連性を示唆している(自閉症や統合失調症とNCGSに関しては6と7で後述する)。

 あるケースではグルテンフリーの正の効果はプラセーボ効果だと説明できるかもしれないが、これは真のNCGSとは言えない。二重盲検無作為化プラセーボ対照試験では、NCGSのIBS様症状はプラセボ群(40%)に比べてグルテン投与群(68%)の方が多かった。さらに最近の研究では、性格、身体化(somatization)の程度、生活の質、不安、抑うつ症状に関してはCDやNCGSとの間に有意差は認められなかった。身体化は両疾患で低かった。さらに、グルテンチャレンジ後の症状の増加はNCGS患者のパーソナリティとの関連性は認められなかった。

 未治療の場合のNCGSの大きな合併症はまだ報告されていない。CDにおいて観察されるような疾患、特に、自己免疫併存疾患はこれまでは報告されていない(PMC4053283では自己免疫性疾患との併存が報告されている)。しかし、NCGSの経過に関するデータが不足しており、合併症に関しては結論を出すことは困難である(将来、NCGSの合併症として、自閉症、統合失調症、双極性障害などのメジャーな精神疾患名が列記されることもあり得よう)。
 
 CDの自己免疫疾患に関しては、グルテンフリー食を厳守しているケースほど自己免疫疾患の併発率が低くなることが示されている。そして、抗甲状腺抗体(14.4%)やT1DM関連抗体(11.1%)の自己抗体が陽性を示していたケースも、自己抗体は、グルテンを含まない食事を開始した2年後以内に全例で消失したという(PMC3908912)。原因不明の自己免疫疾患に悩まされているような人は、とりあえず2年間を目標としてGFDを頑張ってみるのがいいのかもしれない(ただし、NCGSでは抗グリアジン抗体はGFDにてもっと早く消失する)。

 なお、PMC3908912によれば、CDでは、疱疹状皮膚炎(Dermatitis herpetiformis、下図)が見られることがある(入院中の患者さんでも、時々、こういった皮疹をみることがあるが、グルテン感受性が原因なのかもしれない)。さらに、グルテン失調(Gluten ataxia、GA)という病態も報告されている。GAは、小腸の組織的な病変の有無とは関係なく、抗グリアジン抗体(AGA)の存在下で発症する特発性で散発性の運動失調(歩行失調、下肢失調、眼振、など)である。GAは通常は50歳以降に発症する。CD同様にHLA-DQ2とDQ8が関連している。GAはグルテンフリー食によって1年後には症状の大きな軽減を認めている(さらに詳しいことはPMC3641836を参照のこと)。

Dermatitis Herpetiformis

 他にも、てんかん発作性疾患との関連性も報告されている。不安障害でもGFDにて1年後に著明な改善を認めた例が報告されている。同様に、セリアック病ではうつ病と診断される率が高く、NCGSを有する高齢者はうつ病のリスクが2倍になることも報告されており、GFDによるうつ症状の改善が記載されている。GFDによる改善はADHDでも報告されている(PMC3641836)。

 また、原因不明の神経機能障害を有する人の57%は抗グリアジン抗体が 陽性であることも報告されている(PMC3641836)。

 CDでは、症状が多種多様なものを提示するため、臨床的にCDだと認識することがますます困難になってきている。現在では、非古典的なCDを呈する患者は、下痢、腹痛、貧しい成長といった古典的なCDの症状を持つケースの数をはるかに超えてしまっている。CDは小児期に発症を有することを特徴としていたが、最近のデータでは、グルテンへの寛容性の喪失を示している時に発生せずに、未知の環境因子がトリガーとなり任意の時点で発症することがあると分かっている。思春期以降や成人になってからでも、急に発症することがあり得るのである(後述するが、感染症などをきっかにNCGSが発症することがあり得る)。従って、子供時代に小麦が大丈夫だったからと言って、大人になってからも大丈夫だとは限らないことになる。

5. NCGSとIBS:その複雑な関係(NCGS and IBS: A Complex Relationship)

 IBS食事タンパク質との間の複雑な関係が最近検討されている。CD患者ではIBSと互換性のある持続する症状を呈することがしばしば報告されている。最近のメタ解析では治療されているCD患者におけるIBS型症状の有病率は38.0%であり、対照群よりもも高かった。厳密にGFDを守っているCD患者と比べて、GFDが守られていない患者のIBS様症状のオッズ比は2.69であった。

 Vazquez-Roqueらによって、CDを有さないIBSのDバリアント(下痢型)の患者では、グルテンの摂取によって胃腸症状が誘発されることが示されている。HLA-DQ2やDQ8遺伝子型を有している患者では、グルテンを含有する食事(gluten containing diet 、GCD)で腸の動きが増大する。さらに、GCDは高い小腸の透過性と関連していた。
 
 GCDを食べている患者では、小腸粘膜の閉鎖帯1(expression of zonula occludens 1)の発現が減少しており、直腸・S状結腸粘膜の閉鎖帯1、クローディン-1(claudin-1)、オクルディン(occludin)の発現が有意に減少しており、これらの発現に対するGCDの影響はHLA-DQ2 / 8陽性患者で有意に大きいことが判明した。この所見から、グルテンはIBSの患者、特にHLA-DQ2 / 8陽性の患者の腸のバリア機能を変化させると結論付けられた。これらのデータはグルテンの除去(gluten withdrawal)がIBS患者の症状を改善させるメカニズムを説明するものかもしれない。

 IBSの患者の食事からグルテンを除去した時の影響はまだ十分には解明されていない。グルテン以外でも、小麦由来の他の成分、例えば、アミラーゼトリプシン阻害物質(amylase-trypsin inhibitors、ATIs)やフルクタン(fructans、フラクトオリゴ糖)はIBS症状を誘発する可能性がある。Biesiekirskiらは、IBSで自己申告型のNCGSを有する患者に二重盲検クロスオーバー試験を行った。患者は無作為に、発酵性で低吸収性の短鎖炭水化物(発酵性オリゴ糖、一糖類、二糖類、ポリオール=fermentable oligosaccharides, monosaccharides, disaccharides, polyols=FODMAPs)を減少させた食事が割り当てられ、その後、グルテンや乳清タンパク質チャレンジが行われた。その結果、FODMAPsを削減中に胃腸症状が改善した全ての被験者は、グルテンや乳清タンパク質が含まれている食事に変更になった時に以前と同じようなレベルにまで悪化した。FODMAPsのリストには、小麦、野菜やミルクなどにも含有されているフルクタン、ガラクタン、フルクトース、ポリオールが含まれている。

(FODMAPsについて)
http://en.wikipedia.org/wiki/FODMAP

 補足しておくと、小麦の中に含まれるATIsが多いと害虫に強くなるため、品種改良された最近の小麦の中のATIsの含有量はさらに多くなっている。ATIsは腸内で分解されにくく、腸粘膜からのサイトカインの放出を刺激する。さらに、ATIsの存在下で消化分解されたグルテン由来のグリアジンは炎症誘発作用が強いタイプになる。なお、ATIsは小麦以外の、米やトウモロコシなどの様々な穀物にも含まれている。ATIsがGSの原因にもなり得る可能性があると言えよう。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0733521013000969
http://blogs.scientificamerican.com/guest-blog/2013/03/04/gluten-sensitivity-what-does-it-really-mean/ 
 これらの結果は、小麦がFODMAPsの供給源の1つであることを考えると、IBS+NCGSを有する患者におけるグルテンフリー食(GFD)の正の効果は、FODMAPsの摂取量を減少させた非特異的結果であるという可能性も示唆される。しかし、豆科植物(小麦よりFODMAPsがはるかに多く含まれている)のように、FODMAPsを他の供給源から摂取し続けるにも係らず、GFDの期間にNCGS患者が症状の軽減を経験するのは、FODMAPsが原因ではあり得ないと考えるべきである。にも係らず、Biesiekirskiによって報告された結果に基づいて、NCGSとしては分類できないがFODMAPsに起因するIBSの症例が存在することもあり得るであろうという結論になった。

 なお、牛乳、豆類、ハチミツ、ある種の果物(スイカ、チェリー、マンゴー、洋ナシ)、野菜(チコリ、フェンネル、ビート根、ネギ)はFODMAPsの最も一般的な供給源となる(PMC4053283)。そして、FODMAPsはグルテン以外の他の非アレルギー食物不耐症を起こすことが分かっている。ポリオール、ソルビトール、フルクトオリゴ糖、マンニトールなどのFODMAPsは低カロリーを目的として人工甘味料として使用され、多くの加工食品の中に含まれている。(PMC3388522)。さらに、フルクタンはビフィズス菌を増やすが、同時に大腸菌やクレブシエラ菌などの悪玉菌も増やしてしまう。こういったFODMAPsは、腸内細菌への悪影響を介して食品アレルギーを引き起こしている可能性もあろう。
(フルクトオリゴ糖について)
http://en.wikipedia.org/wiki/Fructooligosaccharide

FODMAPs

6. 自閉症はNCGSスペクトラムの一部であろうか?(Is Autism Part of the NCGS Spectrum?)

 自閉症スペクトラム障害(ASD)は、3歳前に発症する発達障害である。ASDは米国で最も急増している発達障害の1つである。ASDは、ステレオタイプ、反復行動、社会的機能障害、言語機能障害の広い範囲の症状を呈する。機能と転帰は中核となる障害よってだけでなく、多動、攻撃性、不安、抑うつなどに関連した行動によっても影響を受ける。多くの研究が行動療法と薬物療法がASD児童の管理において、部分的には役立つかもしれないことを示している。自閉症における食事と栄養の影響に関する研究は、特に、多動や注意障害への効果に焦点をあてた研究が過去20年間で増加している。ASDへの最も人気のある介入の1つは、グルテンフリー・カゼインフリー(GFCF)ダイエットである。
 
(オバマ大統領もアメリカにおける自閉症の増加に懸念を表明し、その対策への声明を発表しているほどである。)

オバマ緊急声明

 自閉症へのGFCF食の効果はセリアック病に対する効果によるものではないため、このASDとGFCF食との関連性は血清学的スクリーニング研究によって確認されてはいない。ASDのいくつかの症状はグルテンやカゼインを含む食品の不完全な消化から形成されたオピオイドペプチドにより引き起こされうるという仮説が立てられている。ASDでは、腸の透過性の亢進「漏出性腸症候群(leaky gut syndrome)」とも呼ばれるが、この病態が病因の一部ではないかと疑われている。これらのペプチドは、腸粘膜を横切り、血管内に侵入し、そして、血液脳関門(BBB)を通過することができ、中枢神経系の内在性オピオイドシステムや神経伝達システムに悪影響を与える。オピオイドが過剰になることがASDの行動につながると考えられており(オピオイド過剰理論、opioid-excess theory)、食事からこれらの物質を除去することは自閉症の行動を変化させることができると考えられている(このオピオイドペプチドは尿中のペプチドを調べることでチェックできる。PMC3908912)。
 
 漏出性腸症候群と自閉症との接続が科学者の間で議論を呼んでいる。最近の研究では、健常な被験者(4.8%)と比較して、自閉症患者(36.7%)やその親族(21.2%)では腸の透過性試験が異常である割合が高いことが判明した(ラクツロース/マンニトール比で確定される)。そして、GFCF食をしている自閉症患者は、食事制限をしていない自閉症患者と比較して腸透過試験の値は有意に低かった。しかし、糖(ラクツロースとマンニトール)やタンパク質/ペプチドの異常な腸の透過性の間の相関の程度はまだ不明確である。なお、RobertsonらのASDの子供達への小規模なコホートパイロット研究では、腸の透過性の変化は検出されなかった。
 
 一方、食物抗原に対するIgGクラスの抗体の検出は、腸の透過性亢進の間接的な証拠とみなされる。自閉症児童は、健常な児童と比較して、特に、胃腸症状を有する場合では、グリアジンIgG抗体(ただし、IgA抗体ではない)のレベルが有意に高いことが報告されている。最近の研究でも、これらの所見が確認されており、さらに、カゼインや全乳を含むいくつかの他の食物アレルゲンに対する抗体の上昇も報告されている。

Leaky Gut

 GFCF食の人気があるにも係らず、自閉症の行動を改善する上でのGFCF食の有効性は完全に証明されていない。2008年のコクランレビューでは、ASD児童へのGFCFダイエットの効果を調べた2つの小規模のRCTのレビューがなされている。それによると、データが偏っているためRCTの転帰は分析できないし、治療群と対照群での転帰には差がない、現時点ではASD児童へのGFCFの効果は乏しく、大規模で良質なRCTが必要であろうと結論付けた。

 一方、Whiteleyらは、2つのステージを使用することで、ASDのGFCF食の無作為化対照試験を最近行ったが、GFCFダイエット中の8カ月と12カ月後に自閉症の中核症状と関連行動の有意な改善を報告した。8カ月と24ヶ月の間であまり劇的な変化を示さなかった結果は、プラトー効果を反映している可能性がある(PMID20406576)。

 上記のデータは、食事からグルテンを除去することは、ASDと診断されたある種の子供達の臨床転帰に好影響を及ぼし得ることを意味しており、少なくともある種のASDケースではNCGSのスペクトルの一部であってもよいことを示唆している。しかし、自閉症の小さなサブグループだけがGFCF食の恩恵を受ける可能性があるに過ぎないという事実に注意する必要がある。さらなる調査が必要である。

  既に、ASDと胃腸症状の双方を有する自閉症児童において抗グリアジンIgG抗体が有意に上昇していることが報告されている。そして、そのようなケースでは、セリアック病特異的な血清学的マーカー(グリアジンに対するIgA抗体)やHLA-DQ2/DQ8との関連性は認められなかった。この所見は、ASDのある種のサブグループではセリアック病とは異なるグルテンへの免疫反応が亢進していることを示唆している。

Gluten-7

 さらに、GFCF食をしているASDのケースでは、そうではないASDのケースと比較して、腸の透過性障害が軽減されているという報告もある(PMC3641836)。
 
 一方、カゼイン由来のペプチドによる悪影響も報告されている。ASDでは葉酸受容体と交差反応するカゼイン由来のペプチドへの抗体の存在が報告されている。その抗体は、葉酸受容体α(FRα)に特異的に結合し、血液から中枢神経系への5-MTHFの輸送を阻害する。その結果、人の脳は葉酸欠乏症(cerebral folate deficiency、CFD)に陥ってしまうことになる。牛乳には、人間のFRαと91%の相同性を有する水溶性FRα抗原が含まれている。牛乳の除去は、その自己抗体の濃度を低下させ、CFDの症状の改善を示す。これは、ミルクを含まない食事によって自閉症が改善する理由の1つを説明するものであろう。CFDは既に自閉症と関連していることが報告されており、CFDの所見を有していた自閉症児におけるFRα自己抗体の存在も報告されている。さらに、経口フォリン酸(ロイコボリン、0.5~2mg/ 体重kg /日)の投与は、コミュニケーション、社会的相互作用、注意、ステレオタイプ行動の部分的から大きな改善に至るまで、さまざまな改善をもたらしたことが報告されている(PMC3865379PMID15781839)。
 
 自閉症患者の免疫系の異常はグルテンやカゼインによってトリガーされうる。通常または制限した食事療法行っている自閉症児の腸の透過性が既に調べられている。そこで我々は、セリアック病が除外された自閉症児への腸の透過性や様々な特異抗体について調査した。その結果、対照と比較して、抗グリアジンIgG抗体(AGA-IgG)、脱アミド化されたグリアジンペプチド(deamidated gliadin-peptide)へのIgG抗体(DPG-IgG)の力価はで自閉症児で高くなっており、抗体価は食事療法の有無によって変化していた。同様に、カゼインIgG力価も、対照よりも自閉症でより頻繁にかつ有意に高いことが示された。腸の透過性亢進は、健康な小児(2.3%)と比較して、自閉症では25.6%に認められた。なお、抗体の総生産は腸の透過性によって影響されていなかった。自閉症のある種のサブグループの免疫系の異常はグルテンとカゼインによってトリガーされており、AGA、DPG、カゼインに対するIgGの上昇や生産は腸のバリア機能を損なうことに関連している可能性があろう(PMC3747333)。

 以上の所見からは、ASDでは有効な治療法が示されていない以上、GFCF食を試みる価値はあるものと思える。

Gluten-8

7. グルテン関連障害と統合失調症(Gluten-Related Disorders and Schizophrenia)

 統合失調症とCDとの間の関連性は既に1960年代に指摘されていた。1986年にVlissidesが行った二重盲検グルテンフリー/グルテン負荷対照試験(24名)では、食事のグルテン除去に反応し統合失調症の症状が改善した。しかし、Potkinらが行った小規模な5週間のグルテンチャレンジ盲検試験では統合失調症患者の臨床症状への有意な変化は認められなかった。その後のStormsらの研究では、グルテンフリーか高グルテン食のどちらが割り当てられた試験を統合失調症患者に行ったが、心理テストのバッテリーパフォーマンスにおけるグループによる差は認められなかった。
 
 一方、Dohanらは、1966年に統合失調症とグルテンに関する多くの研究を発表している。これらの研究では、穀物の消費が低い場合は統合失調症の有病率が低いことが示され、乳汁や穀物を含まない食事が統合失調症の症状を改善することを報告している(PMC3641836)。
  
 臨床抗精神病薬介入効果試験(CATIE)の血液サンプルを使用した最近の研究では、統合失調症を有する患者の5.5%が(健常対照サンプル中の1.1%と比較して)抗tTG抗体(トランスグルタミナーゼ抗体)の高いレベルを有しており、23.1%がAGA-IgG抗体(抗グリアジン-IgG抗体)が陽性であることが判明した(対照では3.1%)。興味深いことに、tTG抗体陽性の被験者の大部分は、EMA(筋内膜)抗体は陰性であり、はたしてtTG抗体陽性はセリアック病(CD)に関連していたのだろうかという疑問をもたらした。実際、統合失調症患者のわずか2%がCDの診断基準(抗tTG抗体とEMA抗体の双方が陽性)を満たすに過ぎない。
 
(トランスグルタミナーゼ tTGは、タンパク質を架橋重合化して、細胞膜に集め、裏打ちして、物理的にも化学的にも強力なバリアを作ることに役立っている。腸管細胞のtTGが抗体で阻害されると腸管のバリアー機能が低下し透過性が亢進することになる)
 
 そして、別の研究では、tTG抗体陽性者はtTG-6抗体が陽性であり、神経炎症のバイオマーカーであることが示唆された。この研究は、統合失調症の患者の一部においてNCGSに関連するであろうグルテンに対する特異的免疫反応が存在することを示唆している。他の研究でも統合失調症患者ではAGA抗体の有病率が高いことが確認されたが、グルテンフリー食を行っている一部の患者で症状の改善が観察される根底にある正確なメカニズムは不明なままである。
 
 グルテンフリー食(GFD)の恩恵を受けることになる食物不耐性に苦しむ統合失調症のサブグループ存在するという主張も含めて、統合失調症の免疫学的メカニズムが提案されている。さらに、GFDの有益な効果は、脳の生理学的プロセスに影響を与える血液内を循環している食物由来ペプチド(エキソルフィン、exorphins)を介するものかもしれない(自閉症で説明したものと同様のメカニズム)。もし、それが事実であれば、統合失調症患者のサブグループはグルテンへの感受性に起因する症状を示し、これらの個人へのGFDによる治療は、向精神薬より簡単であり、より効率的であるだけでなく、生活の質も同様に改善されることであろう。要約すると、NCGSの中枢神経系への影響は未確定であり議論されている真っ最中であり、グルテンの真相を解明するためには的確にデザインされたさらなる研究が必要である。

exorphins

(エキソルフィンについて)

(エキソルフィンは食品中毒との関連性も問題となる。
 さらに、牛乳のカゼインもエキソルフィン(casomorphin)を生み出すことが知られている。グルテンだけでなくカゼインも避けるのはそのためである。


Gluten-9

 ここで、他の研究論文の内容を補足しておくと、

 前述したDohanらは、ラットの脳内にグリアジンポリペプチドの分画を注射したところ、高用量の注射の後に、発作、固執行動、異常な動作などの反応が認められたと報告し、グリアジンポリペプチドと統合失調症との関連性を考察している(PMC3641836)。
 
 なお、PMID20471632によれば、最近発症したSZ患者(マルチエピソードの再発を含む)の抗グリアジン抗体を調べたところ、健常者と比較して、AGA-IgG陽性はオッズ比 5.50、AGA-IgA陽性はオッズ比 2.75というグリアジン抗体の高い陽性率を認めたことが報告されている。抗tTG抗体とEMA抗体は陰性であった(=CDとは診断できない)。この所見は、発症や悪化(再発)にグリアジン抗体が関与している統合失調症のケースが存在することを示唆している。

 一方、グルテン誘発性精神神経疾患(gluten-induced neuropsychiatric disease)という概念も提唱されてきている(PMC3944951)。
 
 1996年、Hadjivassiliouらは原因不明の神経学的症状を有する患者では抗グリアジン(AGA)抗体を有する患者が高いことを見出した(57%、対照は12%)。そして、AGA抗体が陽性だった57%の患者の大半がセリアック病と診断できるような組織学的証拠を示さなかった。Hadjivassiliouらはさらに2010年のLancetにおいて(PMID20170845)、グルテン感受性と運動失調、神経障害、脳症、てんかん、筋疾患、ミエロパチー(脊髄症)のと間にリンクが存在することを支持する追加論文を発表した。同様の報告が他の研究者でもなされており、セリアック病が存在しない条件下でのグルテン感受性と神経症状と間には関連性があることが確実になってきている。

 さらに、PMC3944951には、グルテンに曝露されると幻覚(幻聴、幻視)を呈する女性の症例が報告されている。その女性は4~5歳の頃から幻覚や胃腸症状を経験するようになった。学校では幻覚に邪魔されて授業に集中できないことがあり、幻覚や胃腸症状でよく学校を欠席した。そして20代になってから過敏性腸症候群と医師によって診断された。そのため、大豆や乳製品などを除去する食事を試みたが症状は消失しなかった。しかし、大学の栄養学の講義でグルテン感受性のことを知り、グルテンフリーダイエット(GFD)を始めた。すると幻覚や消化器症状は完全に消失した。その後はGFDを続け、幻覚や胃腸症状に悩まされることはなくなった。しかし、気付かずにグルテンが含まれている食事を食べてしまう時があり、そういった時には再び幻覚に襲われ精神の変調をきたす出来事を度々経験した。例えば、グルテンが含有していたオートミールを食べた3時間後に完全に幻覚妄想状態・見当識障害となり、助けに来たボーイフレンドも認識できない状態になってしまった。しかし、症状は2~3日で消失した。その女性は、ATTG抗体、AGA抗体、小麦タンパク質へのIgE抗体、抗筋内膜抗体(EMA)は陰性だった。原因は未だに不明であるが、グルテンの曝露と精神症状の因果関係は明らかであり、グルテン誘発性精神神経疾患とでも呼ぶべき症例である。
 
 何らかの毒素に侵襲されて抵抗性を失った組織では、一見些細な環境のトリガーでも、中枢神経系に悪影響を与える炎症性サイトカインの産生と放出につながる可能性がある。抗体、ケモカイン、インターロイキンなどの様々な炎症誘発物質がトリガーが刺激になって作られて放出される。グルテンは、その些細な環境のトリガーとして作用するのであろう。
 
 一方、双極性障害PMID21320252)や急性躁病PMID22386570)でもAGA-IgGが陽性であることが報告されている(CDの診断にむすびつくようなAGA-IgAや抗tTGは陰性)。そして、急性躁病ではAGA-IgGの高さは6か月間のフォローアップ期間中に再入院になることと相関していた。双極性障害や躁病でもグルテン感受性とグルテンの摂取が病状の悪化に関与している可能性がある。再発を繰り返すような双極性障害の場合はAGA-IgGを調べた方がよいと言えよう(国内でもAGA抗体価を受注している臨床検査機関がある。ただし保険は効かないから自費となる)。

Gluten-10

 他の論文でも双極性障害におけるグルテンやカゼインに対する抗体価の上昇が報告されており、炎症性腸疾患との関連が示唆されている(なお、この論文ではトキソプラズマや麻疹への感染症に関する抗体も上昇していた)。すなわち、グルテンやカゼインへの曝露によって消化管の炎症が生じ、免疫系が賦活され、双極性障害が発症したり悪化(再発)する可能性があることになる。

 このグリアジンに対する抗体は小脳のプルキンエ細胞のエピトームやシナプスに存在するリン酸化タンパク質であるシナプシンI(Synapsin I)と交差反応をすることが示されている。精神疾患への悪影響は中枢神経系との交差反応による自己免疫疾患的な障害に起因するのかもしれない(PMC3641836PMID17475890)。

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(シナプシンIについて。シナプス小胞からの神経伝達物質の放出に関与している。)

 さらに、統合失調症や双極性障害ではシナプシンIaなどが減少しており、それが病因ではないかという報告がある。抗グリアジン抗体によってシナプシンのグループタンパク質が障害を受けてしまい、シナプスの機能が障害されてしまうことが病状の悪化につながってしまうのであろうか。

 他にも、グルテンやカゼインへのIgG抗体が統合失調症における脳脊髄液関門や脳脊髄液の流出機能障害と関連している可能性や(PMID25241021)、グルテンペプチドやカゼインペプチドとIgG抗体の複合体がC1qへ作用し補体経路を活性化していることも示唆されており(PMC3465075)、様々な形でグルテンやカゼインへの抗体が統合失調症に関与しているようである。

 最後に、セリアック病やグルテン感受性と精神・神経学的合併症を関連付ける多くの論文があることを付け加えておく。PubMedの文献検索(1953~2011年)では精神・神経疾患との合併症を報告する162個オリジナルの論文がヒットした。統合失調症20個、うつ病14個、不安障害10個、ADHD10個、自閉症10個などである(PMC3641836)。
 
 食事が西洋化した以上、日本人もグルテン感受性のせいで精神疾患で苦しんでいるケースが意外と多いのかもしれない。しかし、日本においてはグルテン感受性に関しては一切調べられていない。検査できる臨床検査機関も限られており、グルテンへの感受性の有無については検査すらできない状況である。グルテン関連の抗体検査が保険内でルーチンで行われるような診療体制の整備が急務の課題であろう。

8. 研究室での評価(Laboratory Evaluation)

 NCGSの特異的なバイオマーカーがまだ同定されていない。最近、Voltaらが未治療のNCGS患者のセリアック病的な血清学的所見を報告した。統合失調症の多くの患者は、ネイティブなグリアジン(56.4%)に対する「第一世代」のAGA-IgGの抗体価の上昇を有することが報告された (56.4%)。NCGSにおけるIgG型のAGA抗体の陽性率はセリアック病(81.2%)よりも低いが、一般集団の健常者(2%~8%)だけでなく、他の疾患、例えば、結合組織疾患(9%)、自己免疫性肝疾患(21.5%)よりもはるかに高かった。一方、NCGS患者におけるIgA型のAGA抗体の有病率は非常に低かった(7.7%)。
 
 補足すると(PMID25245857)、AGA抗体の特異性は低いと言える。特に、AGA-IgAは、デューリング病、グルテン運動失調、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシスなどの自己免疫疾患の患者でも陽性のことがある。AGA-IgGは、腸の透過性が増大している患者の4分の1で観察される(炎症性胃腸障害、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など)。そのため、IgG-AGAは、NCGSマーカーとみなすことはできない。NCGS患者の大多数はグルテン中止後にAGA-IgGは消失する。
 
 注目すべきは、NCGS患者においては、孤立した低力価の形で検出されるIgG型の脱アミド化グリアジンペプチド(DGP)抗体を除いて、「最良」のCDマーカーであるはずのIgG型の(DGP)抗体、IgA型のtTGA、IgA型のEMAは常に陰性であることに注意しなければならない。IgG型DGPは体内における組織トランスグルタミナーゼとグリアジンのペプチドの間に相互作用が存在することを意味しているが、IgG型DGP陰性という一貫した所見は、NCGSの病因における適応(獲得)免疫(adaptive immunity)の関与を否定している所見である。
 
 NCGSにおけるIgG-DGPが陰性であるという所見は、NCGSの病因としては適応免疫は関与していないように思える。興味深いことに、NCGS患者中のIgA型のtTGAのELISA活性は、NCGS患者の30%が1AU未満という非常に低い値であった。
(適応免疫について) 

 一方、主要組織適合遺伝子複合体が関与している可能性がある。セリアック病の素因であるHLA-DQ2やDQ8遺伝子型は、CD(95%)の場合よりも低いが、NCGS患者の50%で認め、一般集団(30%)よりも高い保有率である(なお、CDの90%の人がHLA-DQ2を有し、HLA-DQ8は5%のCD患者が保有する)。

HLA-DQ

(HLA-DQについて)
http://en.wikipedia.org/wiki/HLA-DQ
(主要組織適合遺伝子複合体について)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E8%A6%81%E7%B5%84%E7%B9%94%E9%81%A9%E5%90%88%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E8%A4%87%E5%90%88%E4%BD%93

 Saponeらの研究では全ての被験者が十二指腸内視鏡検査で小腸生検を受けた。NCGSの患者では軽度の炎症を起こしているものの正常な小腸粘膜(Marsh 0 ~ 1)を有していたが、CD患者では陰窩の過形成による部分的な、または、全面に近い絨毛の萎縮を示した。予想されたように、CD患者では、CD3 + IELSの数が増加していたが(> 50/100腸細胞)、NCGS患者は比較的絨毛構造は保存されており、CD3 + IELSはCD患者と健常者との中間の数を示していた。NCGS患者でのγδIELSの数は健常者に類似していたが、CDの患者ではTCR-γδIELS数は上昇していた。最近では、循環血液中の好塩基球の活性化と、十二指腸粘膜固有層における好酸球の浸潤の増加が報告されている。
 
 なお、Saponeらは、CDやNCGSの患者の小腸生検所見を比較したが、腸の透過性は、CDの患者とは異なり、NCGSの患者では無傷であった(PMC3908912)。この腸の透過性に関しては、自閉症などの精神疾患の所見とは異なるが、透過性が必ずしも亢進していなくても、曝露されるグリアジンペプチドの用量に依存して通過するようになるのではとも思える。

 補足しておくと(PMC3908912)、NCGSではまだ研究されていないが、CDやWAでは腸内細菌叢の変化が病因として絡んでいる可能性が示唆されている。例えば、WAの乳児では生後1年におけるビフィズス菌の保有率が健常な乳児よりも低かった。などが報告されている。

 腸内細菌叢の変化は、自閉症や統合失調症などの精神疾患でも数多く指摘されている。グルテンへの感受性の獲得には腸内細菌叢の変化も絡んでいるのかもしれない(腸内細菌がグルテンを菌内に取り込み別の有害な物質に変えてしまう、腸内細菌のLPSとグルテンが相互作用をして免疫系を活性化する、など)。 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3732507/
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25034760

 この点に関しては次のような報告があることを付け加えておく。

 人の腸から35種の腸内細菌144株を単離したが、興味深いことに、94株はグルテンを代謝することができた。その中の61株は、グルテンタンパク質に対する細胞外タンパク質分解活性を示し、いくつかの菌株は(乳酸菌やビフィズス菌など)、セリアック病の患者における免疫原性のペプチドとなるの33残基ペプチドを分解するペプチダーゼ活性を有していた。これは腸内細菌がエキソルフィンを分解して除去してくれることを意味する(しかし、グルテンの分解のされ方によっては、逆に、ある種の腸内細菌はグルテンを分解することで、グルテン感受性へと誘導するようなペプチドを産生することもあり得るかもしれない)。 

 もし、これが真実であるならば、プロバイオティクスにて腸内細菌叢を整えておけば必ずしもグルテンを制限する必要はないということになるのだが・・・・・。

9. 診断(Diagnosis)

 NCGSの診断は、食品の除去や摂取に基づいて患者自らが疑うことから始まる。もし、適切な血清学的検査や組織検査によって他のグルテン誘発性疾患(CDやWA)が除外された場合には、医師はNCGSであることに同意するであろう。しかし、患者が既にグルテンフリー食を行っている場合には、IgEは正常化している可能性があり、WAの診断が見逃されることになる。グルテン除去後に症状が消退する所見は、NCGSである可能性を高めるが、グルテンフリー食を少なくとも3週間行った後に二重盲検(またはオープン)経口グルテンチャレンジテストによって証明されるべきである(グルテンチャレン後に数時間~数日間NCGSの症状が表示される。PMID25245857)。
 
 臨床生物学、遺伝子データ、組織学的データの組み合わせに基づいて、最近公開されたアルゴリズムを用いることで3つのグルテン関連疾患(WA、CD、NCGS)の鑑別診断が可能となった。NCGSと小麦と関連する他の病態(例えば、低FODMAPsダイエットによるIBS、非IgE性小麦アレルギー)とがオーバーラップすることがあるため、定期的な再評価(例えば、6~12ヶ月ごと)と、正確な栄養摂取調査が強く勧められる。

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 補足すると(PMC3908912)、NCGSは結局は除外診断のままである。CDやWAへのテスト結果が否定される必要がある。そして症状がグルテンの摂取で生じ、グルテンフリー食で改善することが証明される必要がある。NCGSを有するケースの7.7%に上昇することが示されているIgG型のAGAを調べることは役立つかもしれない。しかし、除外されるべきWAの診断にも問題がある。
 
 WAにおいては、利用可能なテストとして、血清小麦特異的IgE検査(RAST)、皮膚プリックテスト(SPT)、パッチテスト(PT)、経口チャレンジテストが行われる。なお、児童に行った経口チャレンジテストでは、全員が即時型のアレルギー反応を示す訳ではないことが分かった。即時型反応を呈した児童は23%であり、残りの77%の児童は、湿疹や下痢などの遅延発症反応を示した。PTは子供においては鋭敏なテストであるが、それでもWAの子供35%が陰性である。一方、 SPT(93%)やRAST(100%)の感度は高い。大人のWAの診断ではさらに感度が低くなるようである。成人の二重盲検プラセーボ食品チャレンジテストでは48%が陽性であったが、その中でSPTが陽性な者は46%であり、小麦特異的IgEでは85%が陽性だった。

10. 病因(Pathogenesis)

 NCGSの病態生理学はまだ十分に解明されていない。Saponeらが行った研究では、NCGSの患者は、セリアック病の患者と比較して、腸の透過性や、クローディン-1(claudin-1)やZO-1の発現は正常範囲内であり、クローディン-4の発現が有意に高かった。同じNCGS患者では、健常者やCD患者との比較では、クローディン4のアップレギュレーションは、トール様受容体2(toll-like receptor-2)の発現増加(自然免疫のマーカー)やT-調節細胞マーカーFoxP3(T-regulatory cell marker FoxP3)の有意な減少と関連していた。
 
 さらに、クラスαとβのIELSの増加は観察されたが、インターロイキン(IL-6)、IL-21、インターフェロン-γ(IFN-γ)を含む適応免疫に関連した腸粘膜の遺伝子発現の増加はNCGSでは検出されなかった。これらの変化は、NCGSにおける腸管の自然免疫系の重要な役割を示唆しており、適応免疫反応は関与していないのかもしれない。Brottveitらは、CDやNCGSにおける早期の段階の腸粘膜の免疫学的研究を行っている。それによると、CD患者は、グルテンチャレンジに反応して先天性免疫応答や適応免疫応答が駆動されることが確認された。一方、NCGS患者では、グルテンチャレンジ後に、IFN-γのみが増加し、ベースラインにおける上皮内CD3(+)T細胞の密度の増加が示された。これらの知見は、NCGSの病因として適応免疫も関与していることを示唆している。

 NCGSへと誘導されるような腸粘膜へのトリガーは、CDへと進展させるグルテンペプチドの同じ配列部位であるとは限らない。CD患者の十二指腸粘膜とは異なり、グリアジンとのインキュベーションでは、NCGS患者の腸粘膜では炎症マーカーは発現されておらず、好塩基球もグリアジンによって活性化されていない。インビトロの研究では、小麦のATIsは腸の単球への先天性免疫応答のトリガーとして主要な役割を果たすことが示唆されており、マクロファージや樹状細胞に起きる先天性免疫応答は、最終的にNCGSに結びつく。小麦に含まれるATIsは腸でタンパク質分解されにくい相同性を有する5種以上の低分子量のタンパク質のファミリーである。これらは、パンで引き起こされる喘息に関与する主要なアレルゲンであることが知られている。ATIsは、TLR4-MD2-CD14コンプレックスに関係し、成熟型の免疫マーカーのアップレギュレーションを誘導し、セリアック病や非セリアック病患者の細胞や組織からの炎症誘発性サイトカインの放出を引き起こす。

 さらに、本年度に発表された論文では、グリアジンなどの食品由来のオピオイドペプチドは、システインの取り込みを阻害し、還元反応やエピジェネティックな変化をもたらすことが指摘されている(PMID25018147)。その論文によれば、

 グルテンフリーダイエットなどの食事療法の基本的なメカニズムは不明なままである。生後まもない発達段階の時に、CpGメチル化やヒストンの修飾を含むエピジェネティックなプログラミングが発生すると、その後の人生における疾患のリスクに影響を与えることになる。そのようなプログラミングは、特に、離乳食の時に、牛乳や小麦などの食事中の栄養因子によって調節されうる。カゼイン(主要な乳タンパク質)やグリアジン(小麦由来タンパク質)の加水分解産物にはオピオイド活性を有するペプチドが含まれているが、本研究において、これらの食品由来のプロリンに富むオピオイドペプチドは、オピオイド受容体を介してシステインの取り込みを調節することが、培養したヒトの神経細胞や胃・小腸の上皮細胞で実証された。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0955286314001144

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 システインの取り込みの減少は、細胞内の抗酸化物質であるグルタチオンやメチル供与体であるS-アデノシルメチオニンの変化と関連していた。牛や人のカゼインに由来するオピオイドペプチドは、システインの取り込みを阻害し、ゲノムの広範囲にわたり転写開始部位領域におけるDNAメチル化を増大させた。さらに、還元反応やメチル化ホメオスターシスに関与する遺伝子発現の変化も観察された。これらの結果は、牛乳や小麦由来のペプチドが、離乳食の時期に抗酸化反応の増大や負のエピジェネティックな変化を引き起こす可能性があることを示唆している。人と牛の乳ペプチドの配列の違いは、母乳と人工調整乳で育てられる乳児の間の発達の差に寄与することができる(実験では人と牛では、牛のカゼイン由来のオピオイドペプチドの方がシステインの取り込みを強く阻害した。上図)。小麦と乳由来のオピオイドペプチドに起因する抗酸化能力の制限は、炎症や酸化ストレスに脆弱な素因を有する個体へのグルテンやカゼインを含まない食事の利点を説明するものであろう。
 
 なお、統合失調症(SZ)や自閉症スペクトラム障害(ASD)では、シスチンの利用が障害されており、抗酸化物質であるグルタチオンのレベルが低くなっていることや、酸化ストレスが強まっていることが報告されている。さらに、カゼイン由来のオピオイドペプチドは自閉症や統合失調症の患者の尿中に存在することも報告されている。オピオイドペプチドを加水分解する酵素であるジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidylpeptidase IV)の活性が低いことも示唆されており、そのために尿中に検出されるようになるのかもしれない。そして、DNAの異常なメチル化のパターンもSZやASDで見出されている。グルテンやカゼインを制限してオピオイドペプチドからの影響を除去しない限り、こういった病態が改善されないのかもしれない。

(この病態に関してはμオピオイド受容体を解するメカニズムが想定されている。下図)
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0955286314001144

 この所見は、エキソルフィンは人のDNAの形態や発現量までをも変えてしまうことを意味する。まさに最強のエピジェネティックな因子となる。あな恐ろしやエキソルフィン。

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11. 現在の動向と今後の動向(Current and Future Trends)

 当初は、セリアック病の専門家の多くは、CDとは異なる疾患であるNCGSが存在するという概念に対しては大きな疑念を抱いていた。

 セリアック病(CD)の医療専門家らは、初期の頃は、CDは西洋人に限られた疾患ではないことを証明することで苦闘していた。40年前のCDと同様に、今ではNCGSも我々に存在しうる疾患となった。

 1980年代には、GSが存在することは分かっていたが、腸疾患へと誘導するメカニズムや、疾患遺伝子、疾患の病因に関与している免疫応答の種類、多方面にわたる臨床症状、合併症などについては殆ど情報を持っていなかった。さらに、適切に設計された疫学的研究を可能にする確固たるスクリーニングツールが欠けていたし、疾患や合併症に対する最も適切な管理方法に関しても殆ど理解されていなかった。NCGSにおける混乱は、この疾患に関する事実が少ししか解明されていないことと、NCGSに対する多くの幻想(思い込み)に由来する。このNCGSへの過去63年の間に発表された研究論文の数を比較すると次のようになる。過去20年間におけるセリアック病に関する論文は、1950~1970年の2500、1991~2010年に約9500、2011年~2013年の間には既に2000以上が発表されている。逆に、NCGSでは、1970年以前には殆ど科学的な論文は発表されておらず、殆どが2005年以降に発表されている。しかし、NCGSへの関心が非常に高まってきており、NCGS/CDの論文比率は、1950~1970年での1:438から、2010~2013年での1:10と変化してきている。

 NCGSに関する文献は限られており、NCGSに関しては取り組むべき多くのテーマがある。NCGSは永久的か一時的なものか?。NCGSとなる感度の閾値は皆同じなのか?。個々のケースで異なるのか、同じ患者でもずっと同じ閾値なのか?。NCGSの頻度は?(これまでの文献では疾患の定義が文献ごとに異なるせいか、0.5%~6%と大きなばらつきがある)。最近行われた、よく設計された二重盲検に基づいたプラセボ対照試験では、CDを有さないIBSなどの特定の疾患におけるNCGSの有病率のデータが提供されている。自閉症や統合失調症も含めて、NCGSの有病率に関する調査が必要である。しかし、除外診断に使用できる妥当性があるバイオマーカーが欠如している。現在、大規模な多施設プラセボ対照試験が行われているが、うまくいけば、正確な診断や、一般集団や特定の疾患におけるNCGSの有病率を確立するためのツールを提供してくれることであろう。
 
 最近の研究では、グルテンや小麦ATISに加えて、低発酵性で難吸収性の短鎖炭水化物も NCGSの患者の症状発現の原因になることが分かってきている(すくなくともIBSに関連する症状を誘発できる)。これらの新しい知見は、より大きな追加研究で検証される必要がある。これらの新しい知見が確認された場合には、グルテンだけでなく小麦の他のコンポーネントもNCGSの症状の原因である可能性が確定され、NCGSという病名から小麦感受性(wheat sensitivity)という病名に変更されるかもしれない。

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 では、なぜここにきてグルテンへの感受性が問題となる個人が急に増えてきているのだろうか。
 
 今回紹介した論文でも述べられていたが、環境要因も絡んでいるのではと推定されているのだが、具体的には不明なままである。そもそもグルテンへの曝露が増えたのは現代ではなく、もっと昔の時代である。グルテンへの曝露自体が急激に増えたせいではないだろう。現代で起きた社会現象と言えば、思い当たることは穀物への遺伝子組み替え操作などによる品種改良である。収穫量を増やしたり干ばつや植物疾患などに強くなるように様々な形で遺伝子が組み替えられ品種改良を施された小麦が出回るようになり、小麦の中のグルテン(グリアジンやグルテニン)の内容自体が急激に変化したせいで、グルテンへの感受性も急激に変化した可能性がまず考えられる。
http://www.nature.com/scitable/spotlight/gmos-6978241 
 
 この点に関する指摘をしている本がアメリカの循環器科医(ウィリアムス・デービス)から出版されている(日本語にも訳されている)。この本は2011年度のベストセラーになり、アメリカでのグルテンダイエットブームの一因にもなった(彼によれば、現在の小麦は品種改良が進み、1960年代に食べられていた小麦の品種は既に存在しないらしい)。
http://www.amazon.co.jp/%E5%B0%8F%E9%BA%A6%E3%81%AF%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%81%AA-%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%87%E3%82%A4%E3%83%93%E3%82%B9/dp/4537260335
 
ウイリアムス・デービス博士のブログ

NCGSが急増したのは、はたして、小麦の品種改良のせいであろうか。

小麦は食べるな!
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 次に、考えられるのが、最近になり人類への蔓延の実態が明らかになってきた恐怖の寄生病原体であるトキソプラズマ・ゴンディである。NCGSはトキソプラズマが原因なのであろうか?

toxoplasma gondii-0

 下の論文によれば、トキソプラズマに感染したことでグルテンへの感受性を持つことになった母親は、グルテンへの感受性を子孫に伝えてしまうことになる。

 グルテン感受性は、統合失調症、双極性障害または自閉症を有する個体のサブセットにおいて病因に影響を与え得る。一方、トキソプラズマ感染は、寄生虫の直接的な脳や行動への病理的効果によって統合失調症の危険因子となることが分かっている。最近、同一個体でグルテンへの抗体とトキソプラズマへの抗体を同時に有するケースが報告されているが、これらの2つは共同で免疫反応に影響を及ぼしている可能性がある。そこで、マウスのモデルを使用して、これらの2つの抗原との間の接続性を評価した。小麦ベースの餌で飼育されているマウスに、 トキソプラズマを腹腔内注射や経口投与して感染させ、非感染マウスと比較した。

 その結果、非感染マウスに比べて、感染した全てのマウスでは抗グルテンIgGレベルの有意な増加が観察されたが、経口感染の雌マウスは、経口感染した雄マウスよりも抗グルテンIgGの高いレベルを示した。この所見は、トキソプラズマの胃腸感染は、性別依存的に抗グルテンに対する有意な免疫応答をもたらすことを示唆している(マウスでも人と同様に雌がグルテン感受性を獲得し易い)。さらに、感染した母から生まれた子マウスでも同様な所見が認められた(抗トキソプラズマ抗体や抗グルテン抗体、抗C1q抗体が陽性となる=子孫にグルテン感受性が伝わってしまう)。この免疫応答には補体系の活性化を伴っていた。これらの知見は、統合失調症の2つのリスク因子であるトキソプラズマ感染症とグルテンとがリンクして精神疾患の病因となる免疫系の活性化を引き起こしている可能性を示唆している(補体が間に入り関与しているのかもしれないが、この2つがどのようなメカニズムを介してリンクしているのかは不明である)。

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 トキソプラズマは先進国の中で最も一般的な寄生虫感染症であり、世界の人口の3分の1近くが感染している可能性が示唆されている。トキソプラズマに感染した女性は従順となり、感染していない女性よりも男性から好まれるため、子孫をより多く残すことになり、だんだんとグルテン感受性を有する人間が増えていっているのかもしれない。

 多くの家畜がトキソプラズマに汚染されている危険性が指摘されている。近年、食品衛生が向上し、人類は油断し、そのことが逆に十分に過熱していない生肉を食べることにつながり、トキソプラズマの経口感染を増やし、皮肉にもトキソプラズマに感染している人間を蔓延させ、グルテンへの感受性を介して精神疾患の増大を招いているのかもしれない。

 これまで紹介した他の研究論文でも、トキソプラズマへの抗体とグルテンへの抗体が同時に陽性となっている精神疾患のケースが報告されており、しかも、精神疾患の発症や悪化や予後に関連していることが示されている。

 グルテンばかりに気を取られていたが、犯人は実はトキソプラズマだった可能性もあると言えよう。

 日本では抗グリアジン抗体は契約している臨床検査機関が実施していなければ自費でも調べられないが、トキソプラズマ抗体ならば保険適応で調べられる。もし、なかなか病状が安定せず、かつ、トキソプラズマ抗体が陽性の時は、グルテンへの感受性が生じているかもしれないと判断し、グルテンフリー食を試みるのも一つの方法かもしれない。

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 最後に、グルテンフリー食を行っているはずだが、なぜか症状が改善しないということがあり、グルテン感受性ではなかったということも考えられうるのだが、気付かないうちにグルテンがコンタミ(汚染)している食品を口にしてしまっているのではということも考えられうる(gluten cross-contamination、グルテン交差汚染)。もし、グルテンに非常に過敏になっているのであれば、グルテンを含む食品がいかに多く出回っているかを理解しておかないと、グルテンフリー食は成功しないと言えよう。
 
20ppmの微量でもグルテン感受性を引き起こすことができる)。

 オート麦などの特定の穀物粒子は、一般的に安全であるが、生産や処理の段階で小麦に汚染される可能性がある。それらは特異的に表示されない限り、グルテンを含まないものとして認識されてしまう。さらに、香料などの食品添加物、加工食品のデンプン、サプリメント、ビタミン剤などの薬剤にまでグルテンが結合剤として使用されていることがある。さらに、同じ機器で様々な製品を製造する時にも起こり得る。使用された後に十分に洗浄されていない器具を用いて調理する場合、クロスコンタミネーションは家庭でも発生する可能性がある(同じトースターを使ってグルテンフリーのパンと通常のパンを焼くなど)。

 さらに、多くの調味料の中にもグルテンが含まれており、調味料にも注意する必要がある。醤油にもグルテンが含まれている。

 しかし、グルテンへの感受性と言っても、全てのケースが同じではなく、ごく微量でも有害事象が生じるのか(アレルギーやアナフラキシーに近い)、あるいは、ある程度までは許容範囲があり、うまく消化しきれないレベルのグルテンを摂取して閾値を超えてから生じるのかはまだ分かっていない(用量依存性)。もし、後者であれば、そんなに厳密な制限をしなくてもいいようにも思えるが、まだまだ不明なことばかりである。

 なお、子供へのGFDでは、栄養バランスの乱れ、カロリー/蛋白質不均衡、食物繊維、ミネラル、ビタミン不足に陥りやすいという指摘がなされている。GFDを行う時には常に栄養バランスに注意しておいた方がいいと警告されている。

 こうなると、もはや食べるものがないようにも思えるが、はたしてグルテンフリー食は実践できるのであろうか。特に、グルテンへの表示がない日本では不可能なのではなかろうか。
 
 いいや、日本でも実践できるのである。

 アメリカではキッコーマンがグルテンフリー醤油を販売しており、ベストの調味料として紹介されている。なぜなのか。
http://celiacdisease.about.com/od/glutenfreefoodshopping/tp/Gluten-Free-Soy-Sauce.htm

 そう、それは寿司のためである。寿司に使う醤油もグルテンフリーでないといけないのである。寿司こそ究極のグルテンフリー食なのである。グルテン感受性の問題がある限り、これからも、世界的な寿司ブームは続くことであろう。
 
 グルテンフリー食を実践したい諸君、寿司をもっと食べようではないか。

(次回に続く)

ultimate gluten diet