HD-1

 DSM-5から新しく加わった精神疾患がある。Hoarding disorder (HD)である。ホーディング障害・買いだめ障害・溜め込み障害・貯め込み障害、ふさわしい適切な日本語訳は何と表現すべきなのであろうか。
 
 今回は、この難解な疾患(?)がテーマである。

 このホーディング障害の極端な例が、ゴミ屋敷となった家であり、そのような家の住人は世界中に存在し、海外でも周囲は多大な迷惑を被っているようである(見た目が不潔で、異臭がたまらんのですが、ゴミ屋敷の住人はそんなことは全く感じていないようです。汗;)。そして、そのゴミ屋敷は、今では、ホーディング障害(Hoarding disorder)と呼ばれたり、ディオゲネス症候群(Diogenes syndrome)と呼ばれるようになった。その背景には、精神疾患として対処することで、何とかその状況を解消させ、周囲も安心して暮らせるようにしていこうという狙いがあるのかもしれない。

(心の病気にでもしないと、強制的にゴミの撤去はできませんからね。)
 
 今年、野党が「ごみ屋敷」対策法案という法案を提出したのだが、残念ながら廃案になるのではなかろうか。財産権の問題が絡み、どう見てもゴミとしか思えなくても、これはゴミであり財産とは見なされないとは誰もが言い切れないためである。強制的に撤去することになると、憲法などのいろんな法律に抵触してしまうため、法学者からは反対意見が出されるであろうし、法案が可決される可能性は低いように思える。しかも、ゴミを撤去しただけで、本当の解決になるのかも疑問である。近隣住民にとってはこうするしかないのだろうが(現時点では法の強制力をもって解決するのが一番現実的なものだと私にも思えるのだが)、ゴミを捨てることで本人にとっても真の解決になるのであろうか。このゴミ屋敷の問題は非常にやっかな問題であることには間違いないであろう。

(下のサイトには日本でのゴミ屋敷の写真がたくさんある)
http://matome.naver.jp/odai/2138526876752768301
 
 しかし、こういった法案が成立しないと、結局、精神科に何とかしてくれと、行政から泣きつかれてしまっているのも現状である。もし、回復が困難な重度の精神疾患と診断し、成年後見制度を利用して、後見人や補佐人がつけさえすれば、財産の管理権は後見人や保佐人に渡るため、ゴミの撤去も可能にはなる(私も、認知症のケースで、成年後見制度が適応され、本人は施設に入所し、ゴミが撤去されたというケースは経験しています)。法律が全く整備されていない現段階では、この方法が一番確実なのかもしれないが、ゴミ屋敷の住民の全てが成年後見制度が適応されるべき精神疾患のケースでもないため、このゴミ屋敷の問題は、現在の法律の範囲では解決が難しい問題だと思える。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%90%E5%B9%B4%E5%BE%8C%E8%A6%8B%E5%88%B6%E5%BA%A6
  
 当院にも、ゴミだらけの家(部屋)の中で生活している患者さんが入院し、入院中に家の中を家族や行政の職員が綺麗に片づけるといったことがちょくちょくある(近所からのクレームがあればそうせざるを得ない)。一緒に立ち会ってもらい処分するのが原則なのだが、それができないような場合には、口頭で同意を得たり、本人が立ち会うことなくゴミは捨ててもいいという同意書にサインをしてもらったこともある(公共の福祉が優先される時は、憲法で保証されている権利が制限される時もあるということで、力づくでサインさせたりしていますが。汗;)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E5%85%B1%E3%81%AE%E7%A6%8F%E7%A5%89

HD-2

 さらに、保健所の地域精神保健業務の支援に行っていると、時々、ゴミ屋敷の相談を受け、現場まで行ってほしいと依頼されることもある(保健所に支援に行っている多くの精神科医がこういった経験をしていることであろう)。しかも、家の中に入って、その住人と直接会って精神障害じゃないかどうかを判断してほしいと言うのである。どうやら近隣住民からのクレームが絶えないようだ。しかし、中がどれだけ不衛生な状況になっているかは分からないし、そんな場所には行きたくないと、どの精神科医も言っている。私もそのような場所には行きたくはないが、近隣住民からのクレームがあれば行政が様子を見に行かねばならない。保健所もいろんなことをしなければならないから大変である。しかし、何も現場に行かなくても、写真だけでも十分に判断できるし、後は本人を保健所にまで連れてきてくれ、ここで診察をするからと言いたくもなるのだが、同意もなく勝手に連れてきてもいいのだろうかということで、結局、精神科医と保健所のスタッフとで恐る恐るしぶしぶ様子を見に行くことになるのであった。しかし、ゴミ屋敷の住民は必ずしも精神疾患であるとは限らない。話をしたが普通の人にしか思えなかったということもある。

HD-3

 ホーディング障害とゴミ屋敷。これは、何らかの精神疾患なのであろうか。精神疾患となり整理整頓をする能力を失くした結果なのであろうか。はたまた、人生に敗北し心に傷を負った人の生き様の1つなのであろうか。それとも、心が物欲に支配され、物にしか価値を見い出せなくなった、そんな哀れな自分の姿が見えなくなっている果ての結果なのであろうか。
   
 今から45年ほどの昔、私が小学生の低学年の時(3・4年生)、私の近所にもこのような家があった。家というよりも完全にテントである。テントの周りにはたくさんの物が置いてある。テントの色は黒だった。中に高齢の男性が犬と一緒に住んでいるらしく、土地はその人のものだが、塀は一切なく、そこへ行こうと思えば自由に行ける。しかし、気味が悪くてとても近づけない。そこだけ異次元のような場所となっていたのである。時々、異臭が伝わってくる。近所の大人達は、皆、非常に迷惑だと思っているようだった。
 
 テントの周囲は雑草が生い茂り、テントの入り口にだどりつける小道だけが雑草が生えていない。見るからに異様な雰囲気。化け物が住んでいるのかもしれない。しかし、子供達は興味津々だった。

HD-4
 
 噂によれば、地震で家も家族も全てを失った人らしい。絶対に近づいたらダメよと親や近所の大人達は皆そう言って注意する。確かに、誰も近づこうとはしない。近所との付き合いは一切ない。近所の大人達は、そんなテントは存在しないかのように見て見ぬふりをしていた。
 
 しかし、そう言われると余計に近づきたくなるのが子供である。好奇心まんまんのクソガキ達は、ある日勇気を出してこっそりテントの中を見に行ったのであった。音がしない。犬もいない。誰もいないようだ。皆でそーっと近づき、テントを開けて中を覗いてみる。ガーン!!。なんだこれは。中はむちゃくちゃ。外よりももっとゴミだらけ。汚い布団が1枚敷いてある。布団の周りは足の踏み場もない。食べ残した鍋や食器とかが散乱している。すごく臭い。カビのような、動物のような、汚物のような、何とも言えない臭いである。臭くて息ができない。こんなところで生活ができるのだろうか。しかし、何か面白いものがないかと思い、クソガキ達は、鼻をつまみながらテントの中に入った。
 
 中に入ったのはいいものの、子供でも超不潔だと分かるため、何も触れない。すると、誰かが何かを見つけた。これ、写真じゃないか。写真立ての中に1枚の写真があった。その男性とかっての家族の写真。我々クソガキ達は、えっ、今と全然違うじゃないか。こんな普通の家がここにあったのか。こんな普通の人がここに住んでいたのか。
 
 そこに、その男性が帰ってきたのである。
 
 何してんだ。泥棒め、こら待て!!。
 
 ひえ~、まずい、逃げろ。
 
 誰かが服をつかまれたのだが、必死でふりほどきテントの外に一目散で走り出した。テントの中はさらにむちゃくちゃになった。
 
 その男性の姿を始めて見たのだったが、びっくりしてしまった。髪が女性のように長く、髭ぼうぼうで、ぼろぼろの汚いジャンパーとズボンを着ており、凄い形相で追いかけてくる。
 
 何すんじゃ、このクソガキ。石投げやがって。ぶっ殺してやる!!
 
 殺される~、助けてくれ。
 
 石を投げながら、皆で必死で逃げた記憶がある。今思えば、とても悪いことをしてしまったのだが、もう二度と近づくことはなかった。
 
 数年前に別の用事でその場所に行ったのだが、もう、そこにはそのテントはなかった。当然か。なぜか寂しく悲しい気持ちになってしまった。あの時、土足で家の中を踏みにじり、見られたくはないプライバシーを勝手に盗み見してしまったことをずっと謝りたかったのだが、そして、どんな人だったのか、もっとよく知りたかったのだが、それは叶わぬことになってしまった。
 
 しかし、こんなに狭い場所だったのかと思った。小さい時は、もっとすごく広い空間のように感じていたのだが。まさに、子供の私にとっては異次元の空間だったのである。
 
 今なら、そのテントはゴミ屋敷と呼ばれ、その人は、ホーディング障害や、ディオゲネス症候群などと診断されるのだろう。しかし、大人達は忌み嫌い避けてはいるが、本当は不幸な出来事(心的外傷体験)を経験した可哀想な人だったんだなと、子供ながらにそう思ったのであった。
 
 今思えば、そのテントの住人は現実から逃げ続けていたのだろうと思う。しかし、現実から逃げていたのは本人だけでなかったのである。近所の住民も逃げていたのである。見て見ぬふりをして、逆に、それが本人の現実逃避を続けさせ、近所への迷惑を増長させていたのであろう。誰かが救いの手を差し伸べていたら、もっと早く第二の人生を踏み出すことができていたのかもしれない。しかし、本人にも、近所の住民にも、誰にもどうしたらいいのかが分からなかったのである。

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 まずは、OCDやその関連疾患(Hoarding disorderを含めた)の第一人者であるDavid Mataix-Cols博士のHDに関する簡単な解説から紹介する。
 
 ほとんどの人間がそうであるように、財産を保管(saving)したり収集(collecting)することは、完全に正常なレベルから病的な範囲にまで及ぶ。ほとんどの子供達は何からのコレクションをしており、約30%の英国の大人達は自分はコレクターだと認めている。ホーデイングや強迫的なホーディング(Compulsive Hoarding=ゴミ屋敷のような状態)は、過度で問題となるような収集癖(collectionism)を有する者に対して使用される。

HD-5

 ホーディング障害(買いだめ障害、溜め込み障害)の有病率は非常に多い。人口の約2~5%と推定される。英国だけでも潜在的に120万人以上もいるだろうと推定されている。そして、ホーディングは重度であり、機能障害が相当に認められ、患者や、患者の家族、社会にととって大きな苦痛となることが多い。
 
 注; アメリカにおける廃棄困難(Difficulty Discarding)を抱えているケースの有病率は20.6%だった。この障害は、DSMのI軸障害とII軸障害、精神保健サービスを受けていないことと強く関連していた。さらに、若者よりも高齢であることと、都市部よりも田舎に住んでいる人の方が関連していた。性別とは関係がなかった。年齢による廃棄困難の特徴も認められなかった。

 (このように、アメリカでも多くの人が、5人に1人もの人間が物を捨てることができずに悩んでいるのである。世界中の人々が物を捨てることができずに悩んでいるのもかもしれない。)

 注; 他の調査では(南西ロンドン地域の1698名の成人)、19名がDSM-5のホーディング障害の診断基準を満たし、もっとも低く見積もった場合の有病率は1.5%と推定された。傾向としては、高齢者で配偶者がいないケースに多く認められた(67%)。このグループでは、身体的な健康状態が損なわれていたり(52.6%)、他の精神疾患が併存する可能性が高く(58%)、ホーディングから利益を受けているのだと主張する者が多かった(47.4%)。さらに、かっては精神保健サービスを受けていたことが多かったが、ここ1年は殆どこういったサービスを受けていなかった。

 注; さらに、一般人口の5%にホーディングの傾向が認められ、強迫的なホーディングの生涯有病率は14%であると非常に高く推測された疫学調査結果もある。下の論文では、強迫的なホーディングは2~5%の範囲に収まるのではなかろうかと推測している。

 注; 強迫的に買い物をする障害も定義されており、強迫買物障害(買い物依存症 Compulsive buying disorder、CBD)と呼ばれている。有病率は5.8%と見積もられている。
http://en.wikipedia.org/wiki/Compulsive_buying_disorder

complusive buying disorder

 (すなわち、仮に1%と少な目に見積もっても、100軒の家があったら、1軒はゴミ屋敷となる可能性があることになる。特に、単身で孤立して生活している高齢者はゴミ屋敷化する危険性が高くなるため、ゴミ屋敷になる前に積極的に行政が関わる必要があると言えよう。)

 注; なお、日本におけるゴミ屋敷(強迫性ホーディング)の調査でも、海外の調査結果と同様の傾向を認めたという報告がなされている(大阪市立大学での調査)。

HD-6

 ホーディングは、強迫性障害(OCD)の症状ではないかとこれまでは考えられてきた。例えば、自分の「汚染された」所有物を廃棄すると他者を汚染させたり危害を加えてしまうという不合理な確信や、あるいは、何かを捨てることがある種類の大災害を結果的に引き起こしてしまうだろうといった迷信的な考えや恐れによって買いだめ(溜め込み)が行われる場合では、買いだめ(溜め込み)は強迫性障害の症状であることは明らかであろう。

 しかし、最近の研究では、ほとんどの場合で、ホーディングは、OCDや他の神経学的障害や精神医学的障害からは独立していることを示唆している(従来の疾患とは全く異なる新しいタイプの疾患である)。ホーディング障害の個人は、侵入的な思考やイメージ、強迫観念、何度も同じことを繰り返す行動(確認行為)といった精神疾患の分類・診断基準においてOCDと診断する上で必要とされるような症状を有さない。従って、ホーディング障害の患者の大部分は未診断のままとなっており、適切な治療が施されておらず放置されていることを意味する。

 注; ということは、DSM-5では、ホーディング障害はOCDの関連疾患の中で定義されたのだが、それは間違っているということなのであろうか。この点に関しては、DSM-5を支持するような意見もあるが、もし、独立した疾患であるのならば、OCDとは別の枠組みで定義すべきなのかもしれない。今後、研究が進めば、OCDとは全く別個の枠組みで再定義される可能性があろう。

HD-7
 
 注; なお、HDと併存する精神疾患は、OCDよりもうつ病やうつ症状、不安障害不注意タイプのADHDの方がはるかに多いことがこれまでの疫学調査では判明している。そして、HDは他の精神医学的状態の結果ではないことも示唆されている。

HD-8

 DSM-5では、Hoarding Disorder(HD、ホーディング障害、買いだめ障害、溜め込み障害)という病名が提案されたが、HDは、他の器質的な障害や精神障害が存在していなくても、そういった疾患からは独立して生じる障害である。世界保健機関(WHO)もこの疾患を承認する可能性があり、2015年に予定されているICD-11ではこの障害が含まれることであろう。

 HDの状態は次のようなものである。
 
 物を廃棄することが常に困難であり、あるいは、所有物を手放すことがことが常に困難であり(これらの所有物は他人にとっては価値がないことは全くどうでもよい)、廃棄することで苦痛が生じ、これらのアイテムを保持していたいという強い衝動を伴っており、そして、自宅や職場の活動エリアは所有物がたくさん蓄積された状態となり、そこで活動することがもはや不可能な程度になっている。例えば、ベッドムールで寝たり、台所で調理することができなくなっている。さらに、HDの症状には、利用可能なスペースが存在しないにも係らず、過度に収集したり、買い物をしたり、あるいは、必要に応じて窃盗をすることが伴う。
  
 注; ホーディング障害は 4つの重要な要素によって特徴付けられる。
(1) 破棄困難(difficulty discarding)、
(2) 過剰な拾得(excessive acquiring)、
(3) クラッター・散らかし(clutter)、
(4) ホーディングによる心理的苦痛や機能障害(distress and impairment due to hoarding)である。

 注;  下の論文では、上の4つの要素の中でも、過剰な拾得(excessive acquisition)がホーディング障害の本質を最も表している要素であろうと述べられている。
 
 本研究では、ホーディング障害における拾得について調査した。臨床的に有意なホーディング障害の基準を満たした被験者の中で、61%が強迫ホーディングの診断基準を満たし、約85%に過剰な拾得が認められた。家族からの情報によれば、95%が過剰な拾得を有することが示された。過剰な拾得するケースでは、より重度のホーデイングとなる傾向を有し、早期からの発症であり、長期間の精神科的な障害を有する傾向があった。そして、強迫性障害、うつ病、不安の症状を有する傾向があった。
 
 過剰な拾得には2つの形があるが(物を買う行為と無料の物を取得する行為)、この2つの形は独立しており、双方ともにホーデイング障害の重症度やホーデイングと関連する症状(散らかし、廃棄することの困難さ、苦痛、干渉、優柔不断、など)の予測因子となり得ることが分かった。さらに、物を買うことと無料の物を取得することの双方の拾得をしているホールダーでは、1つだけの方法の拾得をしているケースよりもホーディングの症状は重度である傾向があった。
 
 一方、強迫的な買い物と無料の物の過剰な拾得の間にはかなりの重複が見られるものの、今回の知見からは、無料の物を強迫的に拾得する行為(ゴミ拾い、ゴミ漁り、ゴミ集め)は強迫的に買う行為からは独立した別個の行為であり、ホーディングの重症度と優柔不断さを、強く予測する因子となることが示唆された。なお、無料の物を過剰に拾得することは、性別による傾向はなかったが、所得と相関しており(低所得のホールダーは、より無料な物を拾得する)、経済的な要素も拾得やホーディングの重症度に影響し得ることが示唆された。

HD-9

 注; こういった行為はウェストピッカーとも呼ばれ、貧困や格差などの社会問題としても議論され始めている。いずれにせよ、ゴミにまつわる問題は人類文明の陰の部分の象徴なのである。
http://en.wikipedia.org/wiki/Waste_picker

(私が思うに、拾うという行為は、買うという行為とは異なり、より動物的で本能的な行為に思える。物を買って集めて溜め込むことよりも、外で何でも拾ってくるという無料で物を拾得する行為、すなわち、ゴミ拾いの行為の方がホーディング障害の本質を表しているのだと思える。)

 注;  一方、買うにせよ拾ってくるにせよ、この過剰に何でも拾得するという行為は、強迫性障害(OCD)における一種の強迫行為であると思えなくもない。この強迫性という観点からは、HDでも強迫性(compulsivity)が増加しているような認知プロファイルを有していることが判明し、HDは強迫性スペクトルの特徴を有する疾患であり、DSM-5がホーディング障害をOCDの関連疾患として定義したことを支持すべきであるという論文もある。
 
 注; さらに、ホーデイングは病的賭博や放火癖などに共通した衝動性の制御障害としての行為である可能性もある。プロセス依存の一種なのかもしれないと下の論文では解説されている。

(DSM-5を支持する支持しないは別としても、ホーディング障害では強迫性や衝動性も増しているようであり、ゴミ屋敷の住人は、とにかく、ゴミを拾ってきたくて仕方がないのであろう。)

 次に、病識の有無が周囲への迷惑の度合と関連し、病識がないほど周囲に迷惑をかけ続けることになる。

 あるホールダー(溜め込み患者)では自分の溜め込み行動によって引き起こされている問題に対して洞察ができているが、別のホールダーは大きな問題になっているという証拠を提示されても、溜め込みという状況は問題ではないと完全に確信していることに注意しておかねばならない。これらの患者は、家族や近隣住民に多大な苦痛を与えているのだが、自分の問題のために助けを求めることに関しては消極的である。時には、溜め込んだ物が道路などの公共エリアにまで及び、地域住民が大きな影響を受けるため、行政が介入を余儀なくされることがある。

 注; DSM-5では、ホーディングに対する病識(洞察、insight)の程度で、ホーディング障害を、good insight(病識あり)、poor insight(病識は乏しい)、absent insight/delusional beliefs(病識欠如、妄想的な信念)の3段階に区別している。

HD-10

 この新しい障害が精神医学の世界では承認され、専門家や患者によってサポートされてはいるが、ホーディング障害は精神障害であると100%確実には断定できないことに注意しておくことが重要である。

 唯一の希望は、DSM-5でこの疾患の診断基準が追加されたことで、国民の意識が高まり、ホーディングのケースの識別が向上し、研究が進み、この問題のための具体的な治療法が開発されていくことである。ホーディング障害の患者は、いつでも援助を受け取ることができなければならないのである。
 
(David Mataix-Cols博士の解説は終わり)

 ここで、DSM-5のホーディング障害の診断基準の英文を下に示しておく。DSMの委員でも何でもない私が勝手に日本語訳を提示することは不適切なため、原文をそのまま示しておく。下に示したURLも参照して頂きたい。

HD criteria
 
 一方、世の中には、何らかのコレクションを趣味の1つにしている人も多いだろう。それはHDと共通するような基盤が存在するためコレクションをしてしまうのだろうか。コレクションをしている人は、自分のコレクションがエスカレートしていくとホーデイング障害になっていってしまうのであろうか。
 
 この点に関しては、病識があるかないかにも絡んでくるのだが、コレクションとホーディングの違いは、正常範囲内に収まっているコレクションなのか、それとも、もはやゴミ収集でしかないホーディングなのかということが区別できているのかということが重要となる。この区別する能力が鍵であり、区別する能力が保たれていればホーディング障害にまでには至ることはないと思われる。
 
 次のDavid Mataix-Cols博士の論文では、区別できる能力の重要性を力説しており、程度をわきまえているコレクターはHDではないと結論づけている。
 
 コレクターとHDを比較した。コレクターは、HDと比べて、男性、有配偶者、精神疾患はないといった傾向があった。一方、コレクターは、HDと同様に、拾得が好きで、物への愛着があり、物を捨てることが苦手であった。しかし、部屋を散らかしたするなどの機能障害の程度は、HDと診断できるようなレベルではなく、最小限度の程度であった。さらに、コレクターは、自身が行う拾得に対しては、焦点を絞っており(例えば、限定した狭い範囲のアイテムを蓄積する)、より選択的であり(例えば、計画し、予め決めたアイテムを購入する)、自分の所有しているをアイテムを整理し、過剰なレベルの蓄積はしない傾向があった(=規範的normativeである)。従って、HDと規範的なコレクターとの間には、量や質ともに大きな違いがあり、規範的なコレクターでは物を区別できる機能を有していると言える。規範的なコレクターにHDの病理を適応することはできないであろう。

 借金をしてまでコレクションをしたり、家のスペースを無視してまでしてコレクションをするのは規範的ではなくなっており、病的(ホーディング)だと言えようが、そうではなく、自身の経済力や空間の限度設定の中でのコレクションはホーディングとは言えない行為なのであり、限度をわきまえているコレクターである限りは安心してよいと言えよう。

HD-11

 ここで、ゴミ屋敷では、どうも考えてもおかしいと思うことがある。HDでは本当に物の区別ができなくなってしまっているのだろうかということである。
 
 いろんな写真やこれまでのTV報道を見た限りでは、ゴミ屋敷では、敷地外からはみ出し公共エリアを占拠している物は、いわゆる過剰に拾得した物(excessive acquisition)であり、外で拾ってきたゴミばかりである。他人に無断で持っていかれることがないような我楽多ばかりがはみ出ている。(逆に、価値がある高価なものを屋外に放置しておくことは殆どない)。ゴミ屋敷でも、自分がお金を出して買ったものは家の中や敷地の中に100%収まっているのである。これには笑ってしまう。これは、どう考えても、ゴミ屋敷の住人は、お金を出した物と拾った物との区別ができており、あえて本当のゴミだけを敷地外にはみ出させているようにも思えるのであった

HD-12
 
 重度のホーデイングで一番問題となるのが、近隣住民への迷惑であり、道路や他人の敷地にまではみ出せば非常に危険であり、それはもはや加害行為であり、早急に行政が対処しなければならない問題であろう。
 
 一方、自分の敷地からはみ出すようになれば、区別する能力や病識の問題よりも、それはもはや人格やモラルの問題であり、社会のルールを無視した反社会的な行為だと見なすべきでもある。おそらく、そこまでする人は、反社会的(antisocial)な傾向、自己愛的(narcissistic )な傾向、無社会的(asocial)な傾向、統合失調症型(schizotypal)の傾向などがある人であり(=人格障害)、そういった人格の問題がある人にホーディング障害が合併した時に重度のホーディング(compulsive hoarding)へと発展していき、近隣への迷惑を無視して、ホーディングを続けることになるのだと思われる。

(人格障害の場合は、責任能力に対しては、完全責任能力であり、自分の行為には100%責任を負わねばならない。)

 このあたりのホーディングとパーソナリティとの問題は、強迫性人格障害との関連では研究されているのだが、他の人格障害との関連ではあまり研究はなされていない(統合失調症型人格障害、妄想性人格障害、回避性人格障害などとの関連性が報告されている程度である)。しかし、行き過ぎた社会に迷惑を及ぼすようなホーデイングは、人格の問題に起因する反社会的な行為であると認識し、行政が強制的に対処して撤去することも必要なのではなかろうか(領土欲にかられた国が一方的に自分の領土だと宣言して他国の領土を占拠するような反社会的な行為と同じだと私には思える)。

 なお、反社会的な行為との絡みでは、David Mataix-Cols博士が述べていたように、ゴミ拾いだけでなく、重度のホーディング障害になると窃盗も行うことがあるようだが、窃盗まで行っているのであればクレプトマニア(Kleptomania、窃盗症)との鑑別が必要となろう。落ちていたからといって他人が所有していた物を無断で持ち帰れば遺失物等横領罪(占有物離脱横領罪)に問われる可能性がある。もし、他人の土地にある物を無断で持ち帰れば、当然、窃盗罪となる。

 従って、公共エリアにはみ出してまで溜め込むのは、もはや反社会的な行為であり、しかも、それは、本人が買ったものではなく、どこから拾ってきたものであり、遺失物の横領の結果かもしれないし、本人の財産とは見なせないものであろう。そのようなゴミは行政がさっさと処分しても何ら問題はないようにも思えるのだが、道路などの公共のエリアにまではみ出しているようなゴミ屋敷を放置しているのは、ある意味、政治や行政の怠慢であるとも言えよう。

HD-13

 さらに、多くの動物をホーディングして、近隣に多大な迷惑かけるケースが問題となっている。アニマル・ホーディングである。
 
 動物をホーディングすることで、騒音や異臭だけでなく、近所を不衛生な状況に陥れているのだが、動物屋敷の住民は、そんな近所への迷惑など、全くお構いなしのようだ。これなども、重度のホーデイング障害という観点で見るのではなく、人格障害による反社会的な行為だとして強制的に行政が中止させるべきであろう。それに、動物屋敷の住民は動物愛護法にも違反している。

 このアニマル・ホーディングに関しては、下の日本語のHPに詳しく書かれているので、それを参考にして頂きたい。そのHPを読んでいると激しい怒りを覚える。もう、そこまでするのならば、それは人間ではなく鬼畜の仕業(人格障害)としか思えないからである。

HD-14
 
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 では、人はなぜホーディングをするのであろうか?

(下の資料はスライド形式で分かりやすくまとめてある)

脆弱性のためか?
進化の過程に由来するものか?
生物学的な原因か?
遺伝子の異常か?
人生早期の体験の結果なのか?。愛着行動なのか?
信念のコアによるものなのか?
脳内の情報処理の欠陥のせいなのか?
所有物の意味や価値が分からなくなっているからなのか?
正の感情反応? 負の感情反応?
拾得(acquiring)と保管(saving)行動が強化されているためなのか?

HD-28

 いろいろなことが考えられうるのだが、ホーデイング障害に関しては十分に分かっていないのが実情である。
 
 まず、考えらうることは、ホーディングという行為は、動物としての本能による行為なのかもしれないということである。

 興味深いことに、食べ物を剥奪される経験をしたラットはホーディングをするようになることが示されている。
 
 そして、ラット以外の他の動物においてもホーディングのような行動が観察されている。どんぐりを木いっぱいにホーディングするキツツキがTV番組で紹介されていた。これは冬を越すための備えとしての本能的な行為である。動物においては食物に対するホーディングが多いのではあるが、カラスなどのある種の動物の巣には何でもホーディングされている場合がある。さらに、鳥類はキラキラと光るガラスなどを集めることがあるらしい(人間が宝石を集めるように)。どうやら、動物である以上、食物だけでなく何でもホーディングする可能性があるのかもしれない。

HD-15

HD-16

 ホーディングは、動物から進化した人類の動物としての本能的な行為である可能性があると言えよう。

 しかし、人間はラットやカラスとは違う。本能だけで生きているのではない。人間は心を有し、心で考え、その心によって行動を制御しながら行動していける自由な意志を持った生き物である。
 
 ということは、その心が病んでいるから、自由な意志を持てなくなり、動物のように本能的な行動が優先されるようになってしまっており、それでホーディングをするようになってしまっているのではとも考えられる。

 ラットも食物を剥奪されるという辛い体験でホーディングをするようになる。だとすれば、ホーディング障害とは、何らかの心の問題があるために、常に本能が呼び覚まされているような状態になっているのであろうか。
 
 では、その心の問題とはいったい何なのであろうか。まず心の問題として考えられうることは、私が子供時代に経験したテントの住人のように、心的外傷体験が関与している可能性が考えられる。

 心的外傷体験は、子供時代や青年期といった大人になる前に遭遇することも多い。この観点からは、大人になる前から既にホーディング障害が始まっているのではとも想定される。

 このホーディング障害に関しては、Wikipediaでは、次のような解説が成されている。
 
 ホーディング行動が始まる年齢を理解することは、この機能障害を治療する方法を発展させる手助けとなろう。ホールダー達は自分だけでなく他者に対しても危険である。強迫的なホーディングの有病率は、パニック障害や統合失調症やOCDなどの他の障害の発生率よりも有意に高く、2~5%と推定されている。買いだめ行動を自己申告した751名に関する研究がある。これらのケースのうち、ホーディング症状が始まった年齢で最も多かった年齢は11歳から20歳の間であり、70%が21歳以下の発症年齢であった。40歳を過ぎてからホーディング症状が始まったと申告した者は4%に過ぎなかった。

HD-25

  このデータは、強迫的なホーディングは、通常、40歳を過ぎてから始まるのは稀であり、人生の早期に始まることを示している。発症年齢が早期である理由は異なっており、(人生の早い段階での)家族からの影響が強く、散らかした物を親に勝手に捨てられたり、散らかさないように過度に制限されたりしたことが関係しているのかもしれない。早期に発症するようなホーディング行動を理解することは、「通常の」子供の頃の収集行動とホーディング行動を区別することが可能になり、将来を予測する上で役立つことであろう。

 この研究の第2の鍵は、ストレスの強いライフイベントがホーディングの発症とリンクしているかどうかを同定することであった。心に傷を負った人間が現実の中で不安やトラウマに直面した時に、それに対して何かをしないために、自分自身に対して「問題」を作ることで対処することがある(リストカットなどの自傷行為と同じように)。現実の問題に直面することは自分にとってはあまりにも難しいことなので、彼らは「人工的」な問題を作成し(=ホーディング)、現実を正しく認識し、それを直視し、不安そのものに対して何かをするのではなく、現実の問題を不適切な行動(=ホーディング)で対処することを好む傾向がある。ホールダーは「溜め込むこと」によって心理的な痛みを抑圧しているのかもしれない。
 
 注; 下の論文でもトラウマになるようなストレスの強い出来事とホーディングとが関連していると報告されている。
 
  心的外傷を起こすような人生の出来事や人生の早期における物の剥奪(material deprivation)は、病的なホーディング行動に進展していく危険性を有する環境因子になることが同定されているが、これまでの証拠は未だ確固たるものではない。そこで、本研究では、構造化された面接などにてレトロプロスペクティブ(後ろ向き)な調査を行い、心的外傷体験やストレスの強いライフイベントと、ホーディング障害の発症やホーディングの悪化との間の関連性や、物の剥奪との関連性を評価した。その結果、PTSDが併存する率は3つの臨床グループ(HD、OCD、健常)の間では差がなかったが、ホールダーでは、ホーディングを有さない2つ群と比較して、心的外傷体験やストレスの強い人生の出来事に対して多大に曝露されていたことが判明した。この傾向は、年齢、性別、教育レベル、うつ病、強迫症状を加味して解析しても同様であった。そして、心的外傷を体験した回数は、ホーディングの重症度と有意に関連していた。しかし、強迫症状の重症度と心的外傷の回数は関連していなかった。さらに、子供時代における早期の発症との有意な関連性は示されなかったものの、ホーディング障害の約半数(52%)のケースでは、ストレスの強い生活環境がホーディング障害の発症とにリンクしていた。一方、物の剥奪とホーディングとのリンクは示されなかった。今回の結果は、トラウマや強いストレスとホーディングが関連していることを示唆しており、ホーディング障害の治療を概念化していく上で役に立つかもしれない。

HD-22

 これまでの研究では、ホーデイングをしている大人は、力づくで物を所有しようとすることが多く、強制的に性交をしようとしたり(本能に支配されたような行動である)、強制的に対人関係を持とうとしたり、子供時代に身体的に乱暴な扱いを受けていたことが報告されており、心的外傷の出来事がホーディングの重症度と正の相関をしていることが示されている。さらに、被験者の5年間におけるホーディング症状の重症度が評価されたが(1~4。4が最も重症)、548名は慢性の経過をたどり、159名は重症度が悪化していき、39名は重症度が軽減していった。ホーディング行動の増強は、ストレスの強いライフイベントの5つのカテゴリーと相関していたことが判明した。
 
 注: ホーデイングは、慢性の結果をたどり、どんどんエスカレートしていく傾向があるのであった。そして、ホーディングが自発的に軽減していくことは稀である。従って、高齢者になればなる程、j重度のホーディングを示す有病率が増えていくことになる(下図)。

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 このように、ホーディングの背景には、心的外傷体験が深く関係している可能性があると言えよう。
 
 心的外傷体験が関係しているということは、ホーディング障害はPTSDの亜型なのであろうか。

 しかし、心的外傷体験はあくまでトリガーであるに過ぎず、その背景には遺伝的な要因などが絡んでいることも考えられうる。心的外傷体験が契機になるのは、ホーディング障害やPTSDだけではなく、統合失調症、うつ病、不安障害などの内因性と想定されているような精神疾患でもトラウマが契機となり得るからである。ホーディング障害では心的外傷体験を有する人が多いのかもしれないが、ホーディングの原因が心的外傷体験であるとは言い切れまい。ホーディングは、心的外傷体験がトリガーとなった1つの結果としての行動なのかもしれない。

 この点に関しては、思春期や青年期といった人生の早期からホーディングが始まることが多いことから、遺伝子的な要因が考えらうる。15歳の双子の児童に焦点を当てて調査した論文がある。それによれば、
 
 3974名の15歳の双子の児童に、ホーディング障害、強迫性障害(OCD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)の有無を調査し、ホーディング障害において共通するような遺伝的な影響や環境的な要因がないかを解析した。その結果、HDの症状を有する率は2%であり、男児よりも女児に有意に高いことが判明した。クラッター(散らかし)を除外した時の有病率は3.7%に上昇した。拾得(ゴミを拾ってくること)は、ホーディングが著明なケースで高く報告された(30~40%)。HDと他の障害との併存率は、OCD:2.9%、ASD:2.9%、ADHD:10.0%であった。さらに、男児では、遺伝(32%)や非共有性の環境因子が影響していることが示唆された。一方、女児では、共有性・非共有性の双方の環境因子が無視できない役割を果たていることが示唆された。この所見は、HDは他の精神疾患とは独立した疾患であり、遺伝子的な影響や環境的な影響が関与しているが、男女で異なっていることを意味する。

 なお、逆に、女児の双子では遺伝的要因が50%を占めているという調査結果もある。
 
 性別では異なる傾向があるものの、ホーディング障害では、どうやら、遺伝子の影響や環境といったエピジェネテックな影響も絡んでいるようである。このあたりは、ホーディング障害も他の精神疾患と同様なのかもしれない。
 
 そして、上の論文では、他の精神疾患とは独立しているものの、併存する精神疾患としてはADHDが一番高かった。他の論文でもADHDとの高い併発率が報告されている。ということは、小児期のADHDが関連している可能性があると考えることもできよう。

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 ADHDの大人は整理整頓が苦手で自宅や職場はひどく散らかった状態になっているとよく言われる。ホーディング障害は実はADHDの大人になった時の姿なのであろうか。

 この点に関して、小児期のADHDが、その後の人生におけるホーディングと関連しているという調査結果がある。
 
 この調査によると、その後の人生におけるホーディング症状は、ADHDの症状のない子供よりも、ADHDの症状を有する子供において高かった(2.7%対8.9%)。そして、小児期の不注意(ただし、多動ではない)が、その後のホーディング症状と関連しており(OR = 6.04)、OCD症状を考慮してもなお不注意とホーディングが関連していた。小児期の不注意はその後の人生におけるホーディングの前駆症状なのかもしれない。

(ADHDの大人では、部屋の中が散らかったままになってしまうケースがあるのだが、それは片づけられないからだと思われている。しかし、片づけられないのではなくて、実は、ホーディングがあり、捨てることができないことの方が大きく影響しているのかもしれない。)

 他にも、ホーディングは不注意による症状であり、OCDのサブタイプではないという研究論文もある。
 
 ホーディングは、強迫性障害(OCD)の亜型として概念化されてきたが、今では、ホーディングはOCDよりも注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状の可能性があることが示唆されている。本研究結果からは、OCDの症状はいかなるHDの中核機能をも予測しないことが実証された。逆に、ADHDの不注意症状(ただし、多動や衝動性ではない)が有意に、廃棄、拾得、クラッター(散らかし)の重症度を予測することが判明した。これらの結果は、現在OCDのサブタイプとしてHDが概念化されているが、HDはOCDのサブタイプではなく、OCDとは異なる他の神経認知機能障害と関連していることを示唆している。

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 しかし、上の2つの論文の所見は、次のようにも解釈することも可能である。
 
 ホーディングは、ADHDを有する場合に高くなるという傾向があるだけで、ADHDの子供が100%ホーディング障害になっていく訳では決してない。逆に、ADHDではなかった子供のケースでも3%というそれなりの頻度で生じる訳であり、不注意ということがホーディングの本質の1つであり、不注意があるからADHDと診断されているだけであり、実はADHDではなく(多動とは関連しないという点からもADHDの診断基準を満たしているのかが疑問であるが)、心的外傷体験に由来する機能障害の結果、不注意が生じているだけなのかもしれない(私は、このように解釈したいと思う)。
  
 ADHDは散らかすだけで、物を拾ったりはしない。むしろ、逆に、何でも気にせずホイホイと捨ててしまうことも多いのではなかろうか(捨ててはいけない大事な書類とか。汗;)。ホーディング障害は、ADHDとは基本的には関連しない疾患だと私は考えている。

 さらに、ホーディングは注意力の低下、すなわち、認知機能障害の結果であるという論文がある。下の論文では、ADHDとの関連性から述べているのではなく、認知機能の点から注意力の低下があることを指摘している。
 
 ホーディングは障害(HD)は、神経認知機能の障害であると示唆する研究がある。そこでHD患者とOCD患者の神経認知機能(パフォーマンスなど)を健常者と比較した。その結果、健常群と比較して、HD患者は、注意を維持する能力が低下しており、適切に記憶する戦略能力が低下していた。さらに、HDでは注意容量が相当低下していることが示された。

 次の論文でも、同じく、ホーデイング障害では、情報処理、ワーキングメモリー、遂行機能などに障害があり、注意力が持続しないことが重症度と関連していると推測している。

 これらの論文によれば、ホーディング障害では、注意力だけでなく、記憶力も機能障害をきたしており、適切な形で記憶できなくなっており、歪んだ形の記憶しかできなくなっているのかもしれない。
 
 その結果、ホーディング障害では、買ったことも、後片づけをしなかったことも、ゴミを捨てなかったことも、ゴミを拾ってきたことも、そういったホーディングのような行為をしたという記憶自体ができず、そういった行為をしたこと自体もすぐに忘れてしまっているのではなかろうか。

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 これまでのことをまとめると、ホーディングは、人類がまだ動物だった頃からの本能的な行為であり、動物に逆戻りしてしまっているような状態である。その背景には、心的外傷体験が絡み、そう簡単には癒えないような心の傷を抱えており、その結果、人間としての注意力も失われ、記憶の中身まで歪み、ホーディング行為を記憶することや、ホーディングをしていることにすら気付かなくなってしまっている。そして、他人に大きな迷惑をかけていることにも気づかず、人間として大切なことが見えなくなってしまっている状態がホーディング障害なのだと言えよう。
 
 ひとことで言うならば、ホーディング障害は、心に傷を負ったせいで、物に心を奪われてしまっており、大切なことが見えなくなってしまっている不幸な状態なのだと表現できよう。
  
(次回に続く)


<ゴミ屋敷に住むと噂される芸能界の意外な女達>
(あくまで噂ですけども。屈託のない笑顔とは裏腹に、彼女達は決して癒えることのない心の傷を抱えているのかもしれません。涙。)
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