認知症

中枢神経系への緑茶の効果


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 今回は緑茶に関することである。私は、コーヒーではなく緑茶をよく飲む。仕事中に毎日1本くらいの緑茶のペットボトルを飲んでいる。いろんなメーカーの緑茶のペットボトルが発売されているのだが、気に入っているのはキリンの生茶である。苦みが少ないのでこの味が気に入っているのである。ただし、カテキンテアニンがどのくらい含まれているかは分からない。国内で発売されているペットボトルの緑茶の成分を詳細に比較したデータがほしいのだが見つからないままでいる。
 
 苦みが少ないということはカテキンの含有量は少ないのであろうか。しかし、各メーカーによって抽出のプロセスには大きな差はないであろうし、有効成分には大差はないと思われるため、気にせずにキリンの「生茶」をよく飲んでいるのであった(認知症の予防に少しは役に立つかもしれないと思いながら^^;)。なお、カテキンをたくさん摂りたいのであれば、「濃いお茶」というカテキンが通常の2倍含まれているペットボトルも売っているが、味は苦くなる。私は、カテキンもしっかりと摂りたいと思っているので、カテキンが多めに含まれているような緑茶も交互に飲むようにしている。

 緑茶の学名はカメリアシネンシス・ツバキ(Camellia sinensis Theaceae)であり、緑茶はツバキ科の植物である。緑茶、紅茶、ウーロン茶も元の植物は同じであり、カメリアシネンシスの樹の新芽を摘んで加工したものである。緑茶の起源は中国であり、緑茶には心や体をリフレッシュさせる効果があると言われ、中国では紀元前の時代から皇帝らが緑茶を愛用していた。
 
 緑茶から抽出される成分にはカフェインやテオフィリンなどいろいろなものが含まれているが、その中でもポリフェノールに属する成分(カテキン)やアミノ酸(テアニン、など)に注目が集まっている。そして、加工の仕方の違いから、緑茶には紅茶やウーロン茶よりも高濃度のポリフェノールが含まれている

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 緑茶に含まれるポリフェノールの代表はカテキン{(+)-catechin}であり(カテキンはフラボノイド類でもあるが)、カテキンには、エピカテキン{(-)-Epicatechin}、エピガロカテキン{(-)-epigallocatechin}、エピカテキンガレート{(-)-epicatechin gallate} 、エピガロカテキンガレート{(-)-epigallocatechin gallate EGCG}などが含まれている(その中でもEGCGが一番研究されているようだ)。

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 カテキンには、抗酸化作用抗炎症作用(抗TNF-α、など)、抗発癌・抗転移作用肝臓保護作用抗肥満作用抗糖尿病作用抗アテローム性動脈硬化作用抗菌作用抗ウイルス作用抗う蝕(抗虫歯)作用などの有益な効果があることが分かってきており、現在、注目を集めている。下の日本の研究者が書いた総説に詳しく書かれてあるので参照して頂きたい。

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 (余談になるが、緑茶の成分の1つであるテオフィリンはホスホジエステラーゼ阻害作用{PDE}があり、喘息の治療薬として使用されているのは有名である。テオフィリンは非選択性のPDEなのでEDにも効果があるかもしれない。私が緑茶を飲む理由はそこにあったりして^^;)

 さらに、緑茶は中枢神経系にも有益な作用を有することが報告されてきている。神経保護作用抗うつ作用抗不安作用リラックス促進作用、などである。

 そして、緑茶を飲むと認知機能が増す(頭が良くなる)という論文が本年3月に発表された。今回はその論文を紹介したい。

緑茶の抽出成分はワーキングメモリーを使用中の頭頂ー前頭の接続性を増強する
「Green tea extract enhances parieto-frontal connectivity during working memory processing」

抄録
Abstract

根拠
Rationale

 緑茶の抽出成分(green tea extract)は、認知機能に有益な影響を及ぼし臨床的な意義が示唆されると提唱されてきている。しかし、緑茶抽出成分の認知増強効果の神経へのメカニズムは依然として不明なままである。

目的
Objectives

 ワーキングメモリーのプロセスの最中には脳の接続性のパラメータがタスクの実行性に関連していると思われる。そこで本研究では、緑茶の抽出成分を摂取することで、ワーキングメモリーのプロセスの最中の脳の接続性を効果的に調節できるかどうかを調査した。

材料と方法
Material and methods

 二重盲検相殺法を使用して試験をデザインした。12名の健常な被験者は27.5gの緑茶抽出物含む(または、含まない=対照)乳清ベースのソフトドリンクを摂取しfMRI検査を受けた。前頭葉と頭頂葉の間の接続性に関する緑茶抽出物のワーキングメモリへの効果を動的因果モデルを用いて評価した。

結果
Results

 緑茶の抽出成分は、右上頭頂葉~中前頭回の間の接続性を調節し、ワーキングメモリーを増加させた。注目すべきは、緑茶の摂取量の大きさは、前頭・頭頂間の接続性の増加を誘導し、タスク性能の向上と正の相関を認めたことである。

結論
Conclusions

 今回の我々の研究結果は、頭頂・前頭間の脳の接続性の可塑性を変化させることで(短期的ではあるが)、緑茶は、認知機能、特に、神経システムレベルにおけるワーキングメモリーのプロセスに対して有益な効果が存在する証拠を最初に提示したものである。

 ワーキングメモリーのプロセスにおける前頭葉と頭頂葉の脳の領域間の接続性の効率をモデリングすることは、認知症などの精神疾患における認知機能障害の治療における緑茶の有効性を評価するために役立つかもしれない。

はじめに
Introduction

 最近の研究では、緑茶の抽出物やその主要な成分は人における認知機能に有益な影響を及ぼすことが示されている。例えば、緑茶を消費することで軽度認知障害(mild cognitive impairments、MCI)の被験者の記憶や注意力を改善することが実証されている。さらに、緑茶などのフラボノイドが豊富に含まれている食品の消費は、β-アミロイドによって媒介されるアルツハイマートランスジェニックマウスの認知障害を減少させることが報告されており、認知症への治療としての緑茶の有用性が示唆されている。
EGCGはアミロイドの凝集を阻害する

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 一方、緑茶を多く消費する高齢者は認知機能障害の有病率が低いことが報告されている。55歳以上の2501名の高齢者の調査でも同様な結果が得られており、緑茶を摂取することで大幅に認知障害の有病率が低下することが示されている。さらに、緑茶は認知機能の低下を防止することに加えて、高齢者の認知パフォーマンスを良化するだろうとも言われているが、このことは緑茶が健常者の認知機能をも増強する効果を有するのではないかと示唆される。

 最近、認知機能への緑茶の有益な影響は、高次の認知機能に従事している領域に生じた脳の活動の変化に関連しているかどうかを調査するためにfMRIを用いた研究が成された。この研究では、前頭・頭頂領域における相対的な脳の活性の増加が示されたが、最も活性化された領域は右前頭皮質であり、緑茶抽出物を投与した後にN-back課題によるワーキングメモリー(WM)のプロセス作業中に活性化された。
(N-back課題について)

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 これらのデータは、緑茶の抽出物は、人間におけるWM処理を遂行する上で重要な領域である背外側前頭前皮質(dorsolateral prefrontal cortex、DLPFC)という脳の領域の活動性を調節することができることを示唆している。

 一方、N-back課題の際のWM処理をうまくやるためには頭頂葉と前頭葉の領域間の機能的なカップリングが必要となることは、機能や接続性の効率を見る実験によって確認されている。

 頭頂皮質から前頭皮質への接続性の効率は、刺激の符号化に貢献するかもしれないことが示唆されているが、逆に、前頭皮質から頭頂皮質への接続はルールの更新を媒介していることが示唆されている(例えば、2-back状態)。 

 それ故、緑茶の投与後に、WMの処理中の前頭葉領域の活性が増加しているのではと考えられ、この現象は頭頂皮質から前頭皮質への機能的なカップリングとしての脳の接続性の変化に起因している可能性がある。

 そこで我々は、緑茶抽出物の投与がWMの処理中に前頭葉と頭頂葉皮質の間の脳の接続性を変更するかどうかをfMRIを用いて調査した。特に、我々は、動的因果モデル(dynamic causal modeling、DCM) を緑茶抽出物(または対照)飲料を摂取した健常な12名の被験者のN-back WMタスクを遂行中のfMRIデータに適用して解析した。

 DCMは、接続性の効率に関する効果を明確に評価することが可能であり、fMRIのデータを用いれば薬理学的な影響をも検出することができる方法である。
(DCMに関する参考サイト)

 さらに我々は、緑茶の接続性を含めたWMへの効果を調べ、タスクパフォーマンスに対する緑茶の効果が関連するかどうかを検証した。
 
 その結果、N-backのタスクの最中に頭頂と前頭間の脳領域の機能的な結合が生じることと、緑茶の抽出物を摂取することで前頭前野の活動が増加するという重要な所見が得られ、緑茶抽出物は頭頂から前頭皮質への接続性の効率を高めるのではないのかという仮説を立てることに至った。

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材料と方法
Material and methods

被験者
Participants

(詳細略)。12名の健常者な男性。平均年齢24.1歳。全員非喫煙者。研究の開始時には尿のサンプルをドーピング検査した。全員が陰性。

実験計画
Experimental design

(詳細略)。ランダム化された二重盲検を採用。4セッション以上を実施。緑茶抽出物が13.75gまたは27.5gを含む500mlの乳清ベースのソフトドリンク(または、乳清ベースのソフトドリンクのみ)を摂取。4回スキャンを実施(各スキャンは1週間の間隔をおく)。静脈から物質全体の血中濃度がモニターされた。

試験飲料の組成
Composition of test drinks

Rivellaは乳清ベースの市販の炭酸飲料である。

 1999年、緑茶抽出物が0.05%含まれる新しいフレーバー味のRivellaが発売された。コントロールのドリンクは緑茶抽出物は含まれていない。飲料には、水、乳清35%、乳酸、二酸化炭素、シクラミン酸カルシウム(calcium cyclamate)、アセスルファムK(acesulfame K)、および以下のミネラルが含まれる。ナトリウム130 mg / L、カリウム450 mg / L、マグネシウム35mg / L、カルシウム165 mg / L、塩素330 mg/Lである。さらに、緑茶0.05%、アスコルビン酸120 mg / L、ピリドキシン30 mg / L、25 g / lのフルクトースが含まれる。緑茶抽出物は乾燥したカメリアシネンシスの緑の葉から調製され(5.5:1の抽出率)以下の成分を含む(高速液体クロマトグラフィーで解析された値)。47.5~52.5%m / mのポリフェノール、5.0~10.0%m / mのカフェイン、0.3~1.2%のm / mのテオブロミン(theobromine)、1.0~3.0%m/mのテアニン(theanine)。抽出物の1gは緑茶葉だと5.5gに相当する。炭水化物の総量が等しくなるようにコントロール飲料では250ml、500mlに対してスクロースがそれぞれ6.25g、12.5g添加されている。
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fMRIのパラダイム:N-backタスク
fMRI paradigm: N-back task
(詳細略)

 文字の提示時間は1秒間、提示間隔は2秒とした。バックする数の課題に従い、同じ文字が提示されたらボタンを押す。

画像解析
Image acquisition and analysis
(詳細略)

 2-back >0-back の対比(=タスクのメインの効果)に焦点を絞ったfMRIの画像を解析した。さらに、DCMを使用して接続性の効率を解析した。接続性は、以前の論文を基に両側の上頭頂小葉(superior parietal lobule、SPL)と中前頭回(middle frontal gyrus、MFG)に限定した。

効果的な接続性解析:DCM
Effective connectivity analysis: DCM
(詳細略)

 前頭頭頂領域との間の結合強度は2バック状態(調節効果)によってどのように変化するかを調べた。

モデルの設計や時系列の抽出
Model design and time series extraction
(詳細略)

ベイジアンモデル選択とベイズモデル平均
Bayesian model selection(BMS) and Bayesian model averaging
(詳細略)

DCMパラメータの統計量
Statistic of DCM parameters
(詳細略)

結果
Results

ワーキングメモリーパフォーマンス
Working memory performance

 感度指数(sensitivity index)によって示されたように、緑茶の消費後にはタスクパフォーマンスが大幅に改善された(下図)。

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ベイジアンモデル選択
Bayesian model selection

 前頭・頭頂接続に関して、双方向、前方向、後方向の3つの調節モデルを比較するためにベイジアンモデル選択(BMS)を使用した。BMSによって、WMによって誘発される前前頭皮質・頭頂の間の接続に関しては、前方向+後方向の調節が他の調節よりも優位であることが明らかにされた(緑茶のEP 63%、対照のEP 66%)。単一のモデルでは、モデル12が最もあり得るモデルとして浮かび上がった(緑茶のEP 45%、対照のEP 49%)。これらのBMSの結果は図3(図は省略)に要約した。

接続性の効率に関する結果
Effective connectivity results

 全12個のモデルのBMAに対して、カップリングによる推定値をもとに、緑茶処置による接続強度の差を統計学的分析した。このようにして、我々が行った接続性の効率に関する分析では、WMプロセス(2-backタスク)によって誘導された前頭・頭頂接続(大脳半球間内の接続、及び、大脳半球を横切った接続)に関する8つのパラメータに対する緑茶による差をテストすることができた。

 接続性に関するt検定(Paired t test)の結果を表2にまとめた(表は省略)。コントロールの飲料と比較して、緑茶によってWMによって誘発される右SPL→右MFGへの接続性の調節度合は増加していた(図4、下図)

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議論
Discussion

 本研究では、緑茶抽出物の認知機能に対する有益な効果の基礎となる神経メカニズムについて研究した。特に、WMプロセスによって誘発される頭頂・前頭皮質の間の接続性の効率の調節度合が緑茶抽出物によって変化するかどうかをfMRIのデータにDCMを適用することにより検討した。

 主な調査結果して、緑茶抽出物は、WMプロセスによって誘発される右上頭頂小葉(right superior parietal lobule)→中前頭回(middle frontal gyrus)への接続性の調節度合を増加させる所見が見い出された。

 さらに、この頭頂・前頭間の接続性に対する緑茶の効果は、タスクのパフォーマンスへの効果と正の相関を有しており、このことは、緑茶によるシステムネットワークレベルにおける認知機能へのポジティブな効果は、頭頂・前頭間の接続性を介する神経メカニズムによるものが示唆される。

 緑茶によって誘導されるWMプロセスの最中に増加する頭頂・前頭間の接続性の増加という所見は、緑茶の投与後に脳の前頭前野領域(特に、背側外側領域、DLPFC)の活性が増加するという最近の研究報告をうまく説明するものかもしれない(この論文は今回と同じ研究グループが行っている)。
http://www.researchgate.net/publication/230756027_Neural_effects_of_green_tea_extract_on_dorsolateral_prefrontal_cortex

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 したがって、これらの研究は同時に、緑茶抽出物は、頭頂皮質からのボトムアップ接続を増強し、その結果、脳の前頭前野の活性を増加させ、ワーキングメモリーのプロセス処理能力を調節(増強)したことをも意味する。同じデータに対する競合モデルを比較した結果、WMプロセスによって誘発される頭頂葉と前頭葉皮質の間の双方向の接続の調節性を考慮したモデルは、緑茶処置の有無に関係なく全ての被験者のデータにフィットしていることが判明した。

 この結果は、ワーキングメモリーにおける前頭・頭頂間の接続性の重要性を強調した機能的接続に関する以前の研究結果をサポートする。

 N-backタスクでは、視覚的な文字情報やルールの更新を持続してエンコーディング(記憶、記銘、情報変換、等)していくなどの様々な認知プロセスが要求される。頭頂葉皮質から前頭葉皮質(ボトム-アップ)への接続は、入力された刺激のエンコーディングに貢献するかもしれず、一方、頭頂葉皮質から頭頂葉皮質(トップ-ダウン)へ接続はルールの更新に関与しているようである。このような観点から、緑茶の摂取により誘導された頭頂・前頭間の接続の強化は、N-backタスクの最中の刺激のエンコーディング能力の改善を示している所見であろうと我々は推測している。

認知機能への緑茶の効果は可塑性に依存したメカニズムが基底に存在する
Plasticity-dependent mechanism underlying the effect of green tea on cognitive functioning

 緑茶の成分は主に、ポリフェノール、特にカテキン、例えば、( - ) -エピガロカテキンガレート((-)-epigallocatechin gallate、EGCG)、さらに、カフェイン、テアニン(theanine)等の多くの成分から構成されている。
 
 これらの異なる物質は少なくとも1つの生化学的な経路の活性化、特に、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDA受容体)への経路にオーバーラップして作用しており、緑茶のマクロからミクロレベルの段階での認知機能への効果は可塑性に依存したメカニズム(plasticity-dependent mechanism)とリンクしていることを示唆しており、以下にその概要を示す。

 げっ歯類での研究では、促進現象が抗酸化作用を有するカテキンによって誘導され、緑茶の投与後に認められるが、それはワーキングメモリーへの効果であろうと支持されている。
 
 以前の研究では、EGCGは、抗酸化剤として、さらに、鉄キレート剤としての特性、および、細胞内シグナル伝達と細胞生存経路を調節することで認知機能に対する保護効果を発揮しているだろうと提唱されている。

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 言い換えれば、EGCGは、活性酸素種(ROS)生成の過程で惹起される酸化ストレス(OS)による神経毒性を減少させるようである。ROSの生成は、NMDA受容体依存性のカルシウムイオン( Ca2+)の神経細胞内への流入によって媒介される。
 
 マウスの実験では、強力な天然の抗酸化剤である緑茶のカテキンによって、NMDA受容体の活性化反応が完全に正常化したが、これはNMDA受容によって誘発されている可塑性の異常には酸化ストレスが関与していることが示唆される。
 
 さらに、EGCGは、マウスの海馬の神経可塑性を促進し、Ca2+依存性のグルタミン酸の放出を円滑にする

 一方、アルツハイマー病では、Aβオリゴマーは、ROSの産生増加と共にNMDA受容体によって媒介されるカルシウム流入を減衰させる。

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 さらに、アミロイドタンパク質は、NMDA型グルタミン酸受容体依存性シグナル伝達経路に影響を及ぼすことでシナプスの可塑性を障害する。
 
 特に、アルツハイマー病の脳から直接分離されるアミロイドb(Ab)タンパク質2量体は、長期増強(LTP)を抑制し、長期抑圧(LTD)を増強することでシナプスの可塑性だけでなく記憶をも障害するが、両者の現象は共にNMDA受容体を介する現象である。
 
 驚くべきことに、EGCGの投与によってマウスではAβレベルやAβプラークが減少したが、これによってアルツハイマー病のトランスジェニックマウスの認知障害やタウ病理変化を減少しただけでなく、Aβによって誘発されるミトコンドリアの機能不全、NMDA受容体のCa2+の流入障害、ROS産生をも防止した。

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 さらに、カテキンだけでなく、茶葉に見られるユニークなアミノ酸であるテアニン神経保護作用を有するが、その作用はNMDA受容体などのイオンチャネル型グルタミン酸受容体サブタイプに対する拮抗(アンタゴニスト)作用によるものであろう 。
 
 そして、ストレスによって誘発させる記憶障害に対するカフェインの有益な効果は、アデノシンA2a受容体へのアンタゴニストとしての特性であり、おそらく、グルタミン酸作動性神経伝達を制御する能力に由来し、特に、NMDA受容体に依存する可塑性を介した作用であろう。
 
 このように、これらの研究成果は、緑茶抽出物やその成分はNMDA受容体に依存するシナプスの可塑性に及ぼす効果を介してOS(酸化ストレス)によって誘発される認知機能障害に対抗できることを示唆している。

 本研究では、緑茶を摂取することで、ワーキングメモリーの処理中の前頭・頭頂葉皮質間の接続における短期的な可塑性を変化させるかどうかをDCMを用いて神経ネットワークの接続レベルで調べた。DCMは、一般的なベイジアンシステムを採用した同定手法であるが、神経マクロシステムの相互作用の動態をコンピュータで計算することによって、NMDAに依存するシナプス可塑性を推測することができる。

 これまでの研究で、NMDA受容体への刺激に対するDCMの検出能力は実証されており、NMDA受容体をブロックすることで、聴覚オドボール課題中の左一次聴覚野から上側頭回へのボトム-アップの接続性に関するシナプス可塑性の変化を誘導することが示されている。

 それ故、緑茶の摂取によって誘導されたワーキングメモリーの処理中に頭頂・前頭間の接続性が強化されたという今回の我々が得た結果は、緑茶によってNMDA受容体に依存するシナプスの可塑性の変化が誘発されたことを反映しており、緑茶による認知機能への効果のネットワークレベルでのメカニズムを示唆しているものだと提唱したい。

制限事項
Limitations

本研究では、考慮すべきいくつかの制限事項が存在する。

 イメージングの結果とは対照的に、緑茶によるタスクパフォーマンスへの統計学的な有意な効果は観察されなかった。しかし、タスクパフォーマンスが良化するという強い傾向があることを見出しており、我々の研究のサンプルは小さかったため行動のパラメータの差が統計学的に得られなかったことが示唆される。

 この所見は、小さなサンプル数のfMRIのデータは比較的堅実なデータであることを示す他の証拠からはタスクパフォーマンスが良化すると言えるかもしれないが、一方で、行動インデックスは特にパワーが不足しがちであり、多くの個人的特質に合わせてタスクパフォーマンスに必要な認識課題を適切に割り当てることは明らかに不可能なため結果が混乱したためだとも解釈できる。

 さらに、注意すべき点として、緑茶を含む清涼飲料と純粋な緑茶抽出物と間には違いが存在するということである。純粋な緑茶抽出物の経口摂取では、緑茶抽出物の認知能力に対するプラスの効果に関しては、認知機能に影響を及ぼす可能性があるカフェインなどの他の成分による交差効果や影響を避けられたかもしれない(=本研究では清涼飲料水を使用しており、カフェインなどの他の成分が認知機能に影響を及ぼした可能性もあり、その可能性は除去できない)。

結論
Conclusions

 本研究は、緑茶抽出物の摂取によって、健常者のワーキングメモリーの処理の際に頭頂皮質から前頭皮質への機能的接続が増強したことを示している。興味深いことに、この接続性の効率に対する効果は、緑茶によって誘導された認知パフォーマンスの良化に関連していた(緑茶を飲むと頭頂葉・前頭葉間の接続性が向上し、ワーキングメモリーが増し、ワーキングメモリーを必要とするようなタスクパフォーマンスが向上する)。

 我々が得られた結果は、神経ネットワークレベルにおけるワーキングメモリーの処理に対する緑茶の効果を世界で最初に提示するものであるが、異なる領域間の脳の接続に関する短期的な可塑上のメカニズムを介した現象であることが示唆される。

 さらに、我々の知見は、ワーキングメモリーの処理の最中における前頭葉と頭頂葉の脳の領域間の接続性の効率を評価する事で、精神障害における認知障害(例えば認知症など)の治療に適用できるような緑茶や他の化合物の有効性を評価することが可能になるような有望なツールを提供しうることを示唆している。

(論文終わり)

 緑茶を飲むと脳の接続性が向上し、認知機能も向上すると言えよう。この所見は、既にラットでは確認されており、今回の論文で人でも確認されたことになる。

 緑茶抽出物は、高齢のラットにおける学習や記憶を有意に改善した。さらに、高齢ラットだけでなく若齢ラットの学習や記憶をも改善させた。なお、アセチルコリンエステラーゼ活性の低下が若齢ラットよりも高齢ラットの大脳で観察された。緑茶抽出物の投与は、高齢ラットにおける学習や記憶を増強する上で有効であり、加齢に関連する障害を逆転させるのに有用に機能することができる。
 
 今回紹介した論文では触れられていなかったが、記憶や学習能力の改善には緑茶がアセチルコリンエステラーゼの活性を抑制することも関与しているようだ。
 
 一方、緑茶の中枢神経系に対する有益な効果はワーキングメモリーやタスクパフォーマンスに対してだけではない。中枢神経系への様々な他の有益な効果が既に報告されている。以下に、これまでに報告された他の論文を簡単に紹介する。

 まず、今回の論文中でも触れられていたように、EGCGはAβレベルやAβプラークを減少させることが動物実験で確認されている。この所見が事実であるならば、緑茶を飲むことは認知症の予防として大きく期待できることになる。
 
 この点に関して、緑茶は認知症の予防として非常に期待できると思えるような論文がSuk-Joon Hyungら(2013年度)によって発表されている。

 アルツハイマー病では、金属が結合(関連)したアミロイド-β(金属Aβ)と病因とのリンクが示唆されているが詳細は不明なままである。アルツハイマー病の基礎的なメカニズムを理解する上で(そして、アルツハイマー病の予防の上でも)、金属Aβ種をターゲットとして調節することが可能な化学分子を見つけ出すことが重要である。緑茶抽出成分であるEGCGは金属キレートおよびAβとの相互作用が可能な化学構造を有する。そこで我々は、( - )-エピガロカテキン-3 -ガレート(EGCG) が、金属[銅(II)と亜鉛(II)]Aβと金属フリーのAβ種-との相互作用や反応性を調査した。
  
 EGCGは、in vitroにて、金属-Aβ種と相互作用し、金属-Aβ種の凝集体の構造を小さいサイズにして非構造化した。その作用は金属フリーのAβ種よりも顕著であった。さらに、EGCGとインキュベーションすることで金属フリーのAβと金属Aβの毒性は双方ともに緩和されることが生きた細胞内で確認された。この所見からは、EGCGがAβの凝集を阻害し、EGCGは金属によって媒介されるAβ凝集経路を阻害することが示唆される。
 
 そこで、このEGCGのAβの凝集を阻害するという反応を分子レベルで理解するために、イオン移動度-質量分析(IM-MS)、2D NMR分光法、コンピュータ解析を行った。その結果、EGCGのAβへの凝集阻害作用が構造学的に解明された。すなわち、(1) EGCGはAβモノマーおよびダイマーに結合し、EGCGで未処理のAβ種よりもコンパクトなペプチドの立体構造を生成することができる。(2) EGCGは金属-Aβと三元複合体を生成する、以上のことが分かった。EGCGには、金属Aβ種に対するアンチアミロイド反応性が明らかに存在し、このメカニズムはAβの構造の変化に基づいたものだと言えよう。

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 どうやら、緑茶にはアミロイドβタンパク質を凝集しにくい構造に変えてしまう力があるようである。この能力は認知症を予防する上で大きな力を発揮することであろう。

 さらに、緑茶の認知症予防効果は疫学的調査でも確認されており、今回紹介した論文の中でも触れられている。

 補足しておくと、以下の金沢大学の論文(2014年度)は日本人での調査結果である。

 緑茶、コーヒー、紅茶(black tea)の消費が高齢者の認知症や軽度認知障害(MCI)の発症に影響するかどうかを60歳以上の日本人(中島プロジェクト)に対してプロスペクティブ調査を行い解析した。 緑茶、コーヒー、紅茶の消費量をベースライン(2007~2008年)の時点で評価した。ベースラインの調査時点で正常な認知機能を備えていた723名の参加者のうち、490名がフォローアップ調査(2011~2013年)を完了した。追跡期間中(平均±SD:4.9±0.9歳)の認知症の発生率は5.3%でであり、MCIは13.1%であった。全く緑茶を消費しない参加者と比べて、毎日緑茶を消費する参加者では、認知機能の低下(認知症やMCI)の発生率のオッズ比は0.32であり、1週間に1~6日消費する参加者では0.47と低下していた。さらに、認知症に関しては、全く緑茶を消費しない参加者との比較では毎日緑茶を消費する参加者の発生率のオッズ比は0.26であった(=毎日緑茶を飲むと認知症になるリスクは1/4に減少する)。一方、コーヒーや紅茶の消費量と認知症やMCIの発症との間での相関は認められなかった(=コーヒーや紅茶の消費とリスクの低下との有意な関連は認められなかった)。この結果は、他の因子を補正した後でも緑茶の消費量と認知機能低下のリスクの軽減とが関連していることを示している。

 なぜ、このような差が出たかについては、緑茶とコーヒーや紅茶の抽出成分の違いによるものが考えられる。お茶の主なポリフェノールは、紅茶ではテアフラビン類であるが、緑茶ではカテキン類であり、EGCGが含まれている。さらに、紅茶に比べて、緑茶にはより多くのミリセチン(myricetin)が含まれている 。EGCGは、血液脳関門を透過し、Aβの凝集阻害することでアミロイドβ(Aβ)の毒性に対して神経保護効果神経救命効果を発揮する。ミリセチンもAβ凝集を阻害する。そして、EGCGやミリセチンの経口投与は、アルツハイマー病(AD)のモデルマウスのAD病理変化の発症を予防することが知られている(こういったポリフェノール類の差が結果に反映している可能性があろう)。さらに、緑茶と黒茶に豊富に含まれているアミノ酸であるL-テアニンはコーヒーには含まれていない。L-テアニンは、Aβによって誘導される酸化ストレス、ERK1 /p38 MAPKの活性化、NK-kBの経路を阻害することにより抗酸化特性や神経保護作用を有する(緑茶の認知症への予防効果に関してはEGCGだけでなく、ミリセチンやL-テアニンへの検証がさらに必要となろう)。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%B3

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 これは日本人での調査結果であり、日本人の我々には非常に期待できる結果である。日本人のライフスタイルも西洋化が進み、緑茶よりもコーヒーの方を好み、コーヒーを多く消費する人も増えているのではあろうが、高齢化し認知症が増え続けている日本では、昔に戻り、認知症を予防するために緑茶をもっと飲むようにすべきなのかもしれない
 
 一方、緑茶の統合失調症や双極性障害への効果も検討されている。Jennifer M. Loftisら(2013年)は次のように報告している。
 
 緑茶は心を落ち着かせる作用があると言われており、中国では皇帝らが愛用していた程である。さらに、緑茶には一酸化窒素(NOS)合成酵素やサイトカインの産生を阻害する作用が知られている。一方、酸化ストレスや炎症を低下させることに焦点を当てる戦略は、統合失調症や双極性障害の治療上の利点を有すると考えられている。そこで、緑茶抽出物のエピガロカテキンガレート(EGCG)が抗精神病薬のメンテナンスを補助する上で有用かどうかの二重盲検試験を行った。抗精神病薬や他の向精神薬で維持されている統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害を有する成人に、EGCGまたはプラセボが無作為に割り付けられた。
 
 精神症状はベースラインからの変化は認められたが、残念なことに、EGCG群では、プラセボと比較して精神症状や炎症マーカーに有意な影響を与えたという結果は示されなかった。このプラセボ対照試験では緑茶抽出成分であるEGCGの精神症状に対する治療効果は示されなかった。しかし、精神科症状の減少は有意ではないものの、Th1、Th2、Th9サイトカインの産生の低下を伴っていることが分かった。

 さすがに、精神病症状を改善する効果まではないようだ。しかし、サイトカインの産生低下が認めらており、緑茶を飲むことで精神症状の悪化を防止するような作用は期待できるのかもしれない。

 次に、緑茶には抗うつ効果抗不安効果があることも報告されている。既に動物実験においては緑茶の抗うつ効果が示されている。
 
 Wei-Li Zhuaら(2012年)は以下のように報告している。最近の研究では、緑茶を多く消費する高齢者は抑うつ症状の有病率が低いことが示されている。しかし、うつ病の動物モデルを使用した緑茶の抗うつ様効果の研究は行われていない。そこで、うつ病動物モデルを使用して緑茶の抗うつ効果のメカニズムを調査した。うつ病モデルマウスに緑茶ポリフェノール(GTP、5,、10 、20 mg/kg)を7日間経口投与し、強制水泳試験(FST)、尾懸垂試験(TST)を行った。さらに、血清コルチコステロン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)レベルを測定した。緑茶ポリフェノールはFSTとTSTの双方における不動時間を減少させた。この所見は、GTPは抗うつ様効果を有することを示唆している。さらに、FST中における血清コルチコステロン、ACTHレベルを低下させた。緑茶ポリフェノールの抗うつ様効果のメカニズムは、視床下部-下垂体-副腎・軸の抑制を介するものかもしれない。

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 Bombi Leeら(2013年)も次のように報告している。外因性のストレスホルモンであるコルチコステロン(CORT)の反復投与は、視床下部-下垂体-副腎(HPA)・軸の調節不全を介してうつ病や不安をもたらす。我々は、CORTの慢性投与によって誘発される行動の変化に対するカテキン(CTN)投与の影響を強制水泳試験(FST)と高架式十字迷路(EPM)試験を用いて検証した。さらに、ノルアドレナリン作動システムに対するCTNの効果をチロシンヒドロキシラーゼ(TH)免疫反応性の変化を観察することによって調べた。

 ラットはCORTの21日間の連続注射の1時間前に10、20、40 mgの/ kgのCTN(IP)の注射を受けた。HPA軸の活性化は血清のCORTレベルや視床下部のコルチコトロピン放出因子(CRF)の発現を測定することで確認した。その結果、CTNによって、FSTにおける不動時間の有意な低下、EPM試験におけるオープンアーム探査行動の増加、青斑核(LC)におけるTHの発現の増加を有意に阻害した。これらの知見は、CTNは、高用量の外因性CORTに対抗して、中枢神経系のノルアドレナリン作動系を調節することにより、無力的な(抑うつ)行動を改善することを示している。カテキンはうつ病や不安障害に関連する複雑な症状を治療したり緩和するための有用な物質となろう

 どうやら、緑茶にはHPA軸の過剰な活性化を抑制する作用があり、それが抗うつ効果と結びついているようだ。ストレスで真っ先に影響を受けるのがHPA軸である。もし、緑茶にHPA軸の過剰な活性化を抑制する作用があるのであれば、緑茶には抗ストレス効果もあると言えよう。
 
 さらに、緑茶の抗うつ効果は他のメカニズムが関与していることも報告されている。
 
 Qiangye Zhangら(2013年)は次のように報告している。緑茶の定期的な摂取は抑うつ症状の有病率を低下するという報告と同様に、齧歯類において抗うつ様効果を誘導することが報告されている。一方、報酬学習の障害が無快感症(anhedonia)やうつ病の中核症状と関連していることが提唱されている。しかし、緑茶と報酬学習の関係は十分に検討されていない。そこで、健常な被験者において緑茶が報酬学習のプロセスに影響を与えることで抑うつ症状を調節するかどうかを検証した。

 74名の健常な被験者が5週間の緑茶(かプラセーボ)の経口投与に関する二重盲検無作為化プラセボ対照試験に参加した。報酬学習を評価するために金銭的インセンティブ遅延タスク(monetary incentive delay task、MIDT)を使用して評価した。さらに、緑茶とプラセボとの報酬への応答に対する反応時間を比較した。さらに、モンゴメリアスベルグうつ病評価尺度(MADRS)とハミルトンうつ病評価尺度の17項目(HRSD-17)を評価した。その結果、プラセボと比較して、緑茶はMIDTでの反応時間を減少させた、これは、緑茶が報酬学習を増強したことを示している。

 さらに、緑茶を与えられた参加者はMADRSとHRSD-17スコアの低下を示した。今回の結果で緑茶は報酬学習を増強し抑うつ症状を予防していることが明らかにされた。これらの結果は、緑茶の補充的投与は報酬機能の正常化を通じて、うつ病の発症を逆転させる可能性があることを示している。

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 緑茶には減弱した報酬機能を回復し強化させる機能もあるようだ。

 では、その抗うつ効果はどの程度なのであろうか。

 Marmat Aら(2013年)は次のように報告している。緑茶のエタノール抽出物は、マウスでは強制水泳試験や尾懸垂試験おける不動時間の有意な減少を示した。 抗うつ作用はエタノール抽出物>水抽出物であった。 緑茶のエタノール抽出物の抗うつ活性はイミプラミン(10mg / kg)と同等であることが分かった。 
(同様な動物実験で、緑茶の水抽出物はデシプラミン10mg/kgに匹敵する抗うつ効果を認めたことが報告されている)

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 なんと、緑茶の抽出物には抗うつ剤に匹敵するような抗うつ効果があると言うのである。本当なのであろうか。動物実験でのデータであり人間にもそのまま当てはまるとは言い難いが、緑茶にはそれなりの抗うつ効果があるのは間違いないであろう。

 では、実際に人での抗うつ効果が確認されているのであろうか。この点に関しては疫学調査が行われており、それによればうつ病への予防効果が報告されている。

 東北大学の調査(2009年)では緑茶の消費が多くなるほど高齢者のうつ症状の有病率が低下することが横断的な疫学調査で示されている。

 さらに、国立国際医療研究センターらの調査(2014年)でも、20~68歳の成人において緑茶の消費が多くなるほどうつ症状の有病率が低下することが示されている(1日に1カップ未満と4カップ以上の消費量を比較すると、4カップ以上の消費量の場合はうつ症状の有病率のオッズが51%低下する)。 

 どうやら、緑茶を多めに消費することはうつ病の予防にもなるようだ。私はこの論文を読んでから1日に4杯以上は緑茶を飲むようにしている。

 さらに、緑茶には抗不安効果も報告されている。

 マウスの実験ではEGCGによる抗不安効果を認めた。これは、GABA(A)受容体を介した抗不安作用である。

 一方、緑茶のカテキン類であるEGCGばかりが注目されているが、テアニンにも中枢神経系への有益な効果が報告されている。

 Lu Kら(2004年)は次のように報告している。L-テアニンは、緑茶に見出される主要なアミノ酸のひとつであり、リラックス剤として使用されてきた。この研究では、予期不安(AA)のモデルを用いて、健常な人を対象した不安へのL-テアニンの急性効果をアルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系抗不安薬)やプラセボと比較して調べた。16名の健常なボランティアには、アルプラゾラム(1mg)か、L-テアニン(200mg)か、プラセボが割り当てられた(二重盲検プラセボ対照試験)。試験の前後のBAI、VAMS、STAIといった不安に関するセルフレポートを評価した。
 
 その結果、既にベースライン状態(リラックスした状態)の時に、VAMSスケールにおいて、L-テアニンのリラックス効果の証拠が示された。一方、アルプラゾラムは、リラックスした状態では、プラセボと比較して抗不安効果は発揮されなかった。さらに、L-テアニン、アルプラゾラム、双方とも実験的に誘導された不安状態の時には、有意な抗不安作用を示さなかった。この所見は、L-テアニンは、安静の条件下におけるリラックス効果を有するが、AAモデルによる不安増大の条件下では、L-テアニン、アルプラゾラム双方とも急性の抗不安作用は示さないことを示唆している。

 どうやら、テアニンにはリラックスさせる効果があるようだ。くつろぎたい時には緑茶を飲むと良いのかもしれない。

 さらに、名古屋大学の研究(2007年)ではL-テアニンによる抗ストレス効果が報告されている(L-テアニンによって、急性ストレスタスクにおける心拍数{HR}の減少や唾液免疫グロブリンA{S-IgA}の反応が低下することが示された。心拍変動の解析からは、HRやs-IgAの減少は、交感神経の活性化が低下したことに起因する可能性が高いことが分かった。L-テアニンは、皮質ニューロンの興奮を阻害することで抗ストレス作用を発揮することが示唆される)。

 他にも、L-テアニンの有益な効果が報告されている。Wise LEら(2012年)は、モルヒネ依存となったアカゲザルの禁断症状を減衰させ、マウスでは抗不安活性を誘導することを報告している。なお、L-テアニンはカフェインに拮抗する作用があり、コーヒーではカフェインを摂り過ぎてしまうことになるが、緑茶ではL-テアニンによって緑茶自身に含まれるカフェインの作用は緩和されることになる。コーヒーでは飲みすぎるとカフェンの過剰摂取によって不安やパニック発作が惹起されてしまうことがあるが、緑茶ではその心配は少ないと言えよう。

 さらに、L-テアニンは、海馬におけるBDNFを誘導し、NMDA受容体へのアゴニスト作用を介した抗うつ効果もあることも想定されている。

 また、L-テアニンには神経保護効果認知機能の増強作用があることも報告されている。これは、AMPAおよびカイニン酸受容体への拮抗作用によるものが考えられている。さらに、グルタミントランスポーターを阻害することで細胞外から細胞内へのグルタミンの輸送を抑え、細胞内におけるグルタミン→グルタミン酸への代謝を抑制することにも由来する。

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 そして、統合失調症や統合失調性感情障害患者における陽性症状や、不安症状を軽減することまでもが報告されている(8週間にわたるプラセーボとの無作為二重盲検試験)。

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 統合失調症の症状まで軽減させる作用があるのであれば、緑茶は凄いパワーを秘めている飲料だと言えよう。

 最後に、緑茶は他の薬剤と相互作用をする場合があるため注意が必要である。クロザピンの効果を下げたりリチウムの血中濃度を下げることがあるため、この2剤を内服している場合は注意をした方が良いであろう。

 なお、緑茶の種類や抽出の仕方によってカテキン(しぶみ成分)が優先的に抽出されたり、テアニン(うまみ成分)が優先的に抽出されたりするようである。一般的には、テアニンは玉露(日光をあまり当てずに栽培する)や初期の若い芽に多く含まれており、70℃くらいの低温で抽出した方が良いようである。カテキンはこの逆で、日光によく当たった若くない芽に多く含まれる、高温の方が抽出が良くなるようである。私が好きな生茶にはテアニンが多く含まれているようだ。
 
 とにかく緑茶を飲むことは中枢神経系にとっては良いことだと言えよう。さあ、これからは毎日緑茶を飲もうではないか。

(ただし、こんな意見もあるので、参考までに。汗;)
http://www.asyura2.com/13/health16/msg/267.html

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恐怖のアルコール その3 (アルチュハイマー病への移行を防ぐ可能性がある薬剤)

(前回の続きである)

 高齢者のアルコール依存症のケースで、解毒のための断酒がきっかけとなり認知症が進行してしまう。そういった悲惨なケースがあり、当院ではアルチュハイマー病として警戒しているのであった。 
アルコール脳


















 なお、精神科以外でも、入院中に認知症がいっきに進行してしまうことはよくある。心不全などの身体疾患の治療で入院していたが、その間に認知症が進行し、治療終了後に精神科に入院依頼がなされることが多々ある。

 前回までに分かったことは、アルコール依存症では、脳はアルコール依存となった状況に適応し、アルコールの代謝産物である酢酸をエネルー源として利用している。アルコールの暴露によって神経細胞のグルコーストランスポーターの発現が低下しており、ブドウ糖が細胞内に取りこまれにくくなっており、急激な断酒はエネルギー源である酢酸が絶たれてしまう危険性がある。

 さらに、アルコールの暴露によって、チアミントランスポーターも発現が低下し、チアミンの吸収が障害されており、アルコール依存症ではチアミン欠乏によるウェルニッケ脳症WEとなっている可能性がある。WEとしての臨床症状がなくてもWEであるケースが多く 、こういったケースにはチアミンを大量に非経口投与しないと適切な対応とはならない。経口投与ではコルサコフ症候群KSへの移行は防げない。しかし、非経口に大量に投与しても防げないケースも多い。

 しかし、WEとしての症状がないというのもおかしい。それはWEと言えるのであろうか。WEの症状がないのはWEとは別の病態である証拠ではないのか。さらにアルチュハイマー病ではKSのような作話がない場合も多い。WEやKSとは別の病因が絡んでいる可能性もある。では、アルチュハイマー病の背後には何が潜んでいるのであろうか。

 手っ取り早く海外のWikipediaでAlcohol dementiaを調べてみた(日本のWikipediaにはアルコール認知症のページはない)。結構詳しい解説が記載されていた。
http://en.wikipedia.org/wiki/Alcohol_dementia#cite_note-Djokic-17

 そこにはアルコール認知症はアルツハイマー病と区別し難いこともあるとあった。さすがに断酒が引き金となり移行や進行を早めるという記載はなかったが。さらに、現時点では明確な診断基準はないらしい。栄養障害、脳血管障害、様々な脳の部位への直接的なダメージ(萎縮)、など、複雑に多くの因子が絡んでおり、認知症としていろんな病態を呈するため、他の認知症疾患とオーバーラップする部分も多く、アルコール認知症を定義するのは困難なようだ。記憶障害や人格変化(易怒的、攻撃的となる)という症状が何となく特徴的なように思える。アルコール認知症では家族から人格変化をよく指摘されるらしい。アルコールによって海馬(記憶障害)や前頭葉(人格変化)が冒され易いのかもしれない。薬物療法としては、メマンチン(MNDA受容体アンタゴニスト)やリバスチグミン(アセチルコリン・エステラーゼ阻害剤)の効果が記載されていた。

 どうやらアルチュハイマー病を防止するには認知症に使用する薬剤を断酒開始時(可能ならば開始前)から投与していく必要があるのかもしれない。有力なのはメマンチンとAchE阻害剤(リバスリグミンやガランタミン)ということになろう(なお、ドネペジルは攻撃性が増す恐れがあるから使用しない方が無難であろう)。

そこで、まだ関連していないことがないかを調べた。以下に要約して列記する。

アルコールは一回暴露されただけでも遺伝子ネットワークの変調をきたす。

アルコールによる遺伝子コネクトの変化










 グルコースやチアミンなどの多くの重要なトランスポーター遺伝子がアルコールによって発現が阻害されるのは必然的な現象なのかもしれない。

 アルコールによって、灰白質、白質、白質線維束の微細構造の破壊(ニューラルネットワーク障害)、脳の体積減少を伴うことが示された。断酒によって一部はに可逆的である(全ては可逆的ではない)。さらに、グルコース代謝の低下、神経伝達物質系のバランスの破綻中脳皮質辺縁系の活動性の増加を認めた(注;この経路だけが優位に活動しているということなのだろう。これは統合失調症の急性期と同じような所見である。アルコールによる幻覚や妄想は、中脳ドーパミン神経の活動亢進の結果かもしれない。幻覚や妄想がある場合は、抗精神病薬の投与はやむ得ないだろう。)。

 アルコールによって脳のグルコース代謝の減少を認めた。減少する部位は偏りがあった。左頭頂葉、右前頭葉で最も低下していた。これは右前頭葉⇔左頭頂皮質の接続の中断を意味する。さらに後頭部皮質と小脳の相対的な減少を認めた(眼球運動障害や歩行障害に関係があるのかもしれない)。逆に、相対的に増加した領域は脳の報酬回路(CGA、側坐核、扁桃体、島と中脳を含む線条体)に関連付けられていた。これは、脳全体の代謝が戻れば報酬系の活動が優位になり再飲酒に結びつくことを意味する(naltrexoneは既に海外ではアルコール依存症の治療薬として承認されているが、この結果からもnaltrexoneの有効性が期待できよう。)

 アルコールによって前頭葉の神経変性が生じ、タスクの遂行障害、注意障害、衝動制御障害が惹起される。

アルコールで最も障害を受けやすいのは前頭葉である。

 特にBrodmanの10野のシナプスの喪失が顕著である。この所見は前頭側頭型認知症に見られるものと密接に類似している。この結果、性格や行動の変化、洞察力の欠如、共感欠如。感情のコントロール障害が生じる。

 どうやら怒りっぽくなるのは前頭葉へのダメージが関与しており、それは前頭側頭型認知症に類似した病態のようである。とすれば、効果がある薬物療法は限らてしまうかもしれない。

 アルコール認知症とアルツハイマー病はアセチルコリン作動性ニューロンの損失という共通の所見を有するが、疫学調査では、アルコールの使用はアルツハイマー病を発症するリスクに影響を及ぼすという証拠は得られていない。アルコール認知症とアルツハイマー病は、コリン作動性ニューロンの損失という共通した病態を有するが、基本的には異なる疾患なのかもしれない。

 アルコールによって軸索のミエリンが障害され白質の損傷が生じる
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/glia.22327/abstract?deniedAccessCustomisedMessage=&userIsAuthenticated=false

 アルコールによって広範囲に脳の白質の微細構造が障害されるが(ミエリン欠乏)、断酒によって回復する。しかし、喫煙者と非喫煙者では回復過程が異なっていた。非喫煙者では断酒当初の1か月間は白質の容積は増えず密度だけが増加し、その後の6か月に容積が回復した。しかし、喫煙者では断酒後から直ちに容積が増え始めた。これは、非喫煙者ではまずミエリンの再構成から始まるため回復が遅れることを意味する(逆に、喫煙者ではニコチンによるアセチルコリン受容体への効果が断酒前や断酒後に存在し、ミエリンの障害は少なく免れており、回復もアセチルコリン受容体への効果によってさらに早いことを意味するのかもしれない)

 pyrithiamineによって誘発されたチアミン欠乏症ラットでは前頭葉皮質と後帯状皮質のアセチルコリンAch作動性神経支配の減少と行動刺激によるAchの放出の著明な低下を認めた。認知機能の強化には皮質へのACh刺激が効果があるかもしれない。

 まだ認知症を発症していないアルコール症では前頭皮質のコリン作動性ムスカリン受容体の密度が40%減少していた。

これらの所見からもAchE阻害剤であるリバスチグミンの効果は期待できよう。

ただし、↓のような報告もあり、Ach受容体の刺激はニコチンではなくAchE阻害剤の方を使用すべきであろう。

 アルコールとニコチンによって脳のCYP2B6、CYP2E1のレベルが上昇した。この現象が他の臓器で起これば発癌に関連し有害である。

さらにモノアミン神経伝達系も関与しているかもしれない。

 高用量ではないアルコールを与えられていたマウスは、断酒後に海馬の神経新生が低下し(断酒前は神経新生の低下なし)、不安行動やうつ病のような行動をラットに引き起こす。なお、2日間の断酒ではその現象は生じなかった。そして、断酒中に抗うつ剤であるデシプラミンの投与によって神経新生の減少も異常な行動も阻止された。断酒はストレスでありグルコルチコイドの増加を起こす、それが海馬の神経新生を減少させるのかもしれない。さらに、断酒はノルアドレナリンや他のモノアミンシステムの調節不全につながる可能性がある。既に海馬のCREB活性低下はアルコール離脱中に発生する可能性が指摘されており、抗うつ剤はCREB活性を増加させるため、デシプラミンの効果はCREBを介した作用かもしれない。断酒中のうつ状態の予防には抗うつ剤の投与が有益となろう(注;高用量のアルコールは海馬の神経新生は当然低下する。)

コルサコフ症候群は海馬の機能不全に関連する

 アルチュハイマー病への移行を防ぐには海馬の神経新生を促す抗うつ剤の投与も有効かもしれない。

さらに、炎症や酸化ストレスも関連している可能性がある。

 アルコールによってグルコースの代謝は低下し逆に酢酸の利用が増加する。この結果、電位を帯びた代謝産物の不均衡により、例えば、[NAD+]/[NADH]比率は細胞質で減少し、ミトコンドリア内では増加する。その結果、細胞質とミトコンドリア間に電位の不均衡が生じ、電位依存性にミトコンドリアの膜に穴が開いたような通過性が増すような現象が生じる。(この結果、ミトンコンドリアの障害が生じることを意味するのだろうか)。
NAD+↑














 アルコールはグリア細胞のnuclear factor kappa-B(NF-κB)を活性化する。NF-κBは炎症関連遺伝子を活性化し、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNFα、ケモカインMCP-1など)の産生を誘導する。さらにアルコールは炎症惹起物質であるNADPH oxidase(NOX)を誘導する。NOXは超酸化物superoxideを生成し、活性酸素種reactive oxygen species(ROS)の産生を促す。ROSはドーパミン作動性神経毒性に結びつく。すなわち、アルコールによってミクログリアとアストロサイトが活性化され、炎症と酸化ストレスによって神経変性を引き起こすことになる。なお、細胞死を意味するcaspase-3の活性も亢進していた。caspase-3の活性の亢進は海馬の歯状回大脳皮質、特に、眼窩前頭皮質(OFC)で著明であった。nuclear factor kappa-B(NF-κB)・NOX・ROSとシグナル伝達経路は、アルコールによる神経炎症の誘発と神経変性に大きく関連していると言える。NOX阻害剤であるジフェニルヨード(DPI)はミクログリア活性化とROSの発生を減少させた。神経変性を防ぐには抗炎症作用や抗酸化作用がある物質の投与が有益になろう。
アルコールと炎症酸化ストレス










 アルコールによって海馬歯状回の神経新生は阻害されるが、それは酸化ストレスやニトロソ化ストレスに関連している。アルコールによってグルタチオンペルオキシダーゼ活性が低下する。そして、抗酸化剤であるエブセレンebselenによって防止された。
(注;エブセレンは双極性障害にも有効である)

抗酸化剤の投与もアルチュハイマー病の予防には非常に効果的かもしれない。

 なお、フェルラ酸は抗酸化作用があり、フェルラ酸(フェルガード)もアルチュハイマー病の予防には有益かもしれない。
 もし、前述のように、アルチュハイマー病では前頭側頭型認知症(ピック病)と同じような病態を呈しているのであれば、フェルラ酸の効果は十分に期待できよう。

 以上をまとめると、アルチュハイマー病を予防するには、事前に周到に計画された解毒と断酒が必要である。他科からのいきなりの入院依頼に応じ即座に解毒(断酒)を開始するのは危険である。

 断酒前には、経口からでもよいからあらゆる種類のビタミン剤の投与、栄養補給、AchE阻害剤、抗酸化剤(バルプロ酸、メラトニン、ミノサイクリン、グルタチオン、NAC、フェルガードなど)、抗炎症剤(NSAIDs)、抗うつ剤、抑肝散、ミエリン補強(ω3脂肪酸。ω3脂肪酸は抗酸化ストレス作用、抗炎症作用もある)などの投与がなされ(多剤併用には注意せねばならないが)、断酒へのストレスに対抗する準備をしておくことが望ましい。少なくとも1週間以上の断酒への準備期間が必要である。

 さらに断酒開始と同時に、チアミンを非経口から大量投与する。他のビタミン剤や抗酸化剤であるグルタチオンも非経口から投与する。引き続き、断酒前に投与されていた物質の経口投与を継続する。そして断酒時には、必ず酢を飲んでもらう

 が、しかし、もし何をもってしてもアルチュハイマー病への移行が防げないのであれば、断酒を選択せずに天寿を全うするのも選択肢の一つかと思う。努めて食べるように指導し、せめて夜だけ飲むようにしてもらい、昼間は酢を飲んでもらい、薬物治療によって易怒性や攻撃性を抑え、メマンチンやSSRIやトピラマートによって飲酒行動を抑制し、神経保護作用があるような物質を投与し、家族に迷惑をかけずに穏やかに酒を飲み続け(ここが一番重要であろう)、天寿を全うするのも、それはそれで本人にとっては本望なことなのではないのだろうか。


 

恐怖のアルコール その2 (VB1の大量投与も効かないかもしれないアルチュハイマー病)

(前回の続きである)

 当院には40歳前にアルコールにて認知症となり、未だに入院している男性が数名いる。どの家族も引き取りを拒否し、だんだんと家族も亡くなっていき、入院期間は長い人では30年近くになるだろうか(さすがに場末の病院だけのことはある)。入院後の記憶は一切ないようなのだが、ある時点から前の過去の記憶だけは保たれており、診察時に「お母さんに会いたいです」としか毎回言わない。言うのはそれだけである。母はかなり昔に亡くなったのだが。何回か母が死亡したという事実は伝えたはずだが、「ああ、そうですか」と悲しそうな顔もせずに、数日後には再び「お母さんに会いたいです」。

 なぜ自分が入院しているのかも、自分が誰なのかも分からない。あるのは子供の頃の記憶だけのようだ。彼の時間は永遠に止まったままである。

alcoholdemetia





 

(悲惨ですよ、アルコールでこうなっちゃうと。若年性アルチュハイマー病の恐怖。)

 今回は、チアミン(ビタミンB1・VB1)がアルコール認知症にどのように関連するかを調べてみた。日本でも、この問題に取り組んでいる大学があり、浜松医科大学第一内科のHPに掲載してあった「チアミン・トランスポーター遺伝子変異とWernicke様脳症」という記事をまず紹介する。

 Wernicke脳症(WE)はチアミン欠乏により引き起こされる急性の代謝性脳症である。チアミンはアルコールやストレスで大量に消費され、他のビタミンに比べて体内に蓄積し難い。(アルコールにて、容易に欠乏状態となるようだ。)血中チアミンの欠乏が診断では必須である(やっぱりチアミンの血中濃度検査を外注機関にオーダーせねばいけなかったのか)。全ての症候がそろうのは17%程度。全体の3割は軽度の意識障害のみである(えっ、そうなの)。さらに、MRI検査のFLAIR画像で中脳水道周囲、乳頭体、視床背内側核の高信号域が特異的である。そして、この所見は、チアミンの大量静注600mg/日で速やかに(3日目には)消失するとあった。(やっぱり、MRI検査をせねばならんのか。こりゃ、頭部CT検査しかできない場末の病院ではWEはお手上げですわ。もし、紹介元の内科でMRI検査をしていたならば、FLAIR画像を必ずCD-ROMに焼いて持参してもらわねばならない。)

WE-MRI













 さらに、チアミン・トランスポーターTHTR遺伝子異常が紹介されていた。こういった遺伝子異常があれば、WEの発病年齢は若いようだ。しかもアルコールとは関係なく発病するようだ。(「お母さんに会いたいです」としか言わないOさんは、THTR遺伝子異常も絡んでいるのかもしれない。彼は20歳台からの連日の半端じゃないようなアルコールの大量飲酒でそうなったのだけど。)そして、血中のチアミンが基準値以内であっても、チアミンの大量投与が推奨されている。海外の推奨量は、500mg/回を3回/日静注(1日の総量が1,500mg)これを2日間行った後、500mg/日静注を5日間行う。とあった。

 えっ、血中のチアミンが正常値でも、アリナミンF100mgを1日に15本も静注するんですか。しかも経口投与はダメなんですか。ということは、アルチュハイマー病が怪しいと思われるような高齢者には、血中のチアミン濃度の値に係らず全員に15本ものアリナミンFを非経口から大量投与せねばならないってことになりますぞ。それって、日本では保険が通るのですか。高齢のアルコール依存症に、アルチュハイマー病への移行防止のためとは言え、全員にやっていたら、過剰診療だと支払基金に怒られてしまいますがな・・・。(;゚Д゚)

 しかし、先天的なTHTR遺伝子異常は稀であろう。THTR遺伝子に異常がなくてもそんなにVB1を大量に投与する必要があるのか、など、まだまだこれだけの情報では不十分なので、さらに論文を調べることにした。すると、必ずしもVB1の大量投与に反応する訳ではないことが分かったのである。非経口によるVB1の大量投与によっても認知症への移行が防げないことがあるようなのだ。

コルサコフ症候群の進化と治療
「The Evolution and Treatment of Korsakoff's Syndrome」
(補足的な資料として、この論文の著者が作成した↓のスライドを参照して解説を付随しておく。)
http://www.docstoc.com/docs/84282836/How-Common-is-Wernicke-Encephalopathy-in-alcoholics

 ウェルニッケ脳症(WE)と診断されず適切に対処されなかった場合にはコルサコフ症候群(KS)に移行する可能性がある。アルコールに関連したチアミン欠乏症(TD)はより複雑である。アルコールが絡まないような単なる栄養失調に伴うTDではVB1の経口投与によって速やかに改善するが、アルコール依存性によるTDに対しては、適切に処理するには、最初の24時間でVB1が1g以上の大量の静注が必要な場合がある。経口からの摂取では効果が発揮できない。KSは残念なことに、そういったVB1が非経口投与されなかった結果かもしれない(WEで完全に回復するのは10%でしかない。70%はKSへ移行する。20%は死亡する)。
WEの予後










 
 
 長期大量のアルコール消費は、認知障害につながることが知られており、これらはアルコール関連認知症alcohol-related dementiaと文献に記載されて、アルコール関連脳損傷alcohol-related brain damage(ARBD)として考えられている。ウェルニッケ・コルサコフ症候群(WKS)の患者は、一般的にTDとアルコール誘発性神経毒性の両方の結果による脳へのダメージの結果である。そして、TDとアルコール誘発性神経毒性の相乗効果も存在する。WKSは単一な病状ではなく(=heterogeneous)、脳へのダメージのスペクトルを呈するであろう。
 
 調査によって認知症の約10%がアルコール関連の認知症であることが分かっている。スコットランドの調査ではARBDの殆どは50代や60代前半であった。ARBDは典型的な認知症よりも若い年齢層が中心である。早期発見と早期介入が重要である。総合病院はARBDの最初の接点である。総合病院の緊急治療室のスタッフはARBDに警戒せねばならない。剖検例によればアルコール依存症の12.5%が脳のWKS領域に特徴的な神経病理学的所見を有していた。チアミン依存性の小脳の損傷は35%にも上った(注;アルコール依存症の10人に1人はWKSへの変化が既に始まっているのだろうか)。さらに、WKSの3人に1人が栄養失調による入院歴があった。女性と65歳以上にその傾向が強かった。KSとARBDを予防するには健康的な食生活を維持する必要がある。
 
 アルコールはGABAやグルタミン酸系の神経伝達システムに作用する。アルコールは、抑制性GABA受容体をエンハンスし、興奮性グルタミン酸受容体(NMDA受容体)を抑制する。断酒はこれらのシステムの不均衡を惹起し、アルコール離脱症状を起こす。コルチゾールは離脱症状時には上昇しており、アルコールの離脱はストレスが強いプロセスであることが分かる。飲酒と断酒による離脱を繰り返すと、グルタミン酸誘発性興奮による持続性の神経ダメージが誘導される。アルコールを代謝するためのVB1の要求増加は離脱期間をさらに長引かせることであろう。TDは過剰なグルタミン酸の放出によっても引き起こされる。そして、過剰なグルタミン酸の放出はグルタミン酸受容体のアップレギュレーションを引き起こす。それらが加わると、アルコール離脱時の潜在的な神経毒性はさらに強まるであろう。我々は、未治療のアルコール依存症で、アルコール離脱中に予期しない形で突然にKSが発生したことを経験している。アルコール離脱中のTDの併発では、経口または非経口のVB1の単独投与ではARBDは直ちには逆転されにくい(注;断酒によって、逆にKSが生じ易くなることがあるのかもしれない。著者らも解毒はWEを進行させるリスクがあることを考慮しておかねばならないと参考資料としたスライドに記載している。)
 
 TDの動物モデルには、抗チアミン剤によるモデルと、食事中のチアミン欠乏モデルとの2つがある。アカゲザルにおける食事によるTDは、下丘や中前庭核の病変を示していた。大脳基底核のダメージはTDの期間の長さに関連していた。乳頭体や視床の背内側核のダメージはチアミンの剥奪に最も関連していた。抗チアミン剤によるモデルでは乳頭体や視床の背内側核の神経変性認められなかったが、WKSと同じような記憶障害を認めた。ARBDは、TDとTDのエピソードの繰り返しによって神経へのダメージが蓄積されているためより重度な病態であろう。
 
 これらの知見は、アルコール依存症では、脳を保護するために、精神科に受診となる前の段階で、医療を受ける際にVB1の経口または非経口(吸収が阻害されている場合)投与が必要があることを意味する。VB1を吸収する能力は、チアミン2リン酸TDPの増加で確認できるが、評価されることはない。従って、我々は、250mgのVB1の非経口投与を5日間受けることを推奨する。VB1の必要な用量はまだ確立されていない。他のビタミン欠乏も絡んでいるであろうし、臨床は動物モデルよりもっと複雑である。KSはTDによって純粋に引き起こされることは殆どない。それは、VB1に反応しなかったKS移行患者も多々いるという事実から、KSは他の栄養素とARBDが原因である可能性がある。VB1の推奨用量でKSへの発展を完全に妨げるか、KSの発生率を低下させるかといった臨床試験はまだ行われてはいないのである。

 WEには遺伝子が関係していることがある。チアミン・トランスポーターには高親和性であるTHTR1(SLC19A2遺伝子)と低親和性であるTHTR2(SLCA3遺伝子)の2種の遺伝子がある。さらにアルコールの慢性消費によってTHTR1とTHTR2の発現が低下することが示された。そして、ラットではTHTRの発現低下によって腸管からのチアミンの吸収が減少した。さらにチアミンの律速段階に作用する補酵素であるthiamin pyrophosphokinase (TPKase)も低下することが示された。アルコール依存症では吸収不全に食事摂取不良なども加わって数週間で体内のチアミンは枯渇するだろう。そして吸収障害によってVB1の経口投与は不適切な治療となってしまう。(まさに、負のスパイラルとなり、悪循環を繰り返し、TDとARBDがだんだんと進行していく。この負のスパイラルを断ち切るには適切な食事摂取しかない。なお、チアミンは1日に1~2mgが必要である。体内に貯蔵されているチアミンは肝臓で3~4mg。体全体でも30mgしか貯蔵されていない)。
 チアミン吸収の悪循環












 TDとアルコール代謝が組み合わさることによって生じるダメージはBBBを含む人体の多くの部位の適切なチアミンの輸送に干渉し、さらに、正常に機能するには高濃度のチアミンが必要であるアポ酵素の障害を引き起こす。BBBが障害されるため脳へチアミンを供給するには高濃度のチアミンが必要となり、経口投与では血液中の高いチアミン濃度を達成できないため不十分な治療となる。少量のVB1に反応する栄養不足によるWKとは対照的である。

 慢性アルコール中毒では他の栄養素不足も関連している。葉酸欠乏はVB1の吸収不全に関連している。葉酸欠乏ラットはVB1の吸収不全を示し、葉酸は能動輸送のプロセスの統合性の維持に役割を持つと考えられている。ビタミンB6とB12の欠乏はVB1の貯蔵を下げ、チアミン自体がチアミンの輸送速度を変更する。これらの知見は、治療では欠乏しているあらゆる栄養素を補給することの重要性を意味する(マグネシウムも補給する必要がある)。葉酸は神経新生を刺激する。前段階のWKSの海馬では神経新生が損なわれることが示されているため、葉酸の輸送障害も認知障害のメカニズムである可能性がある。肝障害や低血糖も寄与要因である可能性がある。慢性アルコール中毒では、肝障害が重度になるほど脳の変化はより重度になることが示された。KSの予防と治療の成功の鍵は、不足している全ての栄養素を補給することで、ARBDを防止し修復することである。(なお、アルコールにチアミンを加えて飲んでも、他の栄養素を取らないのではARBDを防ぐ効果は全くない。)

  TDはARBDとの相乗・相互作用でKSへの進行を促進することが示唆されている。オキシチアミン投与によるTDとアルコールへの神経毒性が組み合わされることで記憶保持障害が生じることが動物実験で示された。この障害は不可逆的であり、TDのみのケースで生じた場合と異なり、チアミンによる治療に応答しなかった。フェニトインには反応したため(フェニトインはNA+/K + ATPase活性を促進する)、TDとアルコールへの神経毒性の相互作用によるNA+/K + ATPase活性阻害によるものと推測された。

 脳のチアミンの80%はチアミンが2つリン酸化した形態を取る。これは脳細胞のエネルギー代謝(注;TCAサイクル)に関連するα ketoglutarate dehydrogenase、transketolase、pyruvate dehydrogenaseという3つの酵素の補酵素として作用する。ウェルニッケ・コルサコフ症候群と診断された剖検例では、この3つの酵素の著明な減少を認めた。脳のチアミンの50%はピルビン酸の酸化に使用されている。そして、脳は代謝や合成のプロセスのために常にチアミンの供給を必要とする。
 
 WKSの候補遺伝子が調べられている。チアミントランスポーター遺伝子(SLC19A2とSLC19A3)である。我々は、チアミントランスポーター遺伝子の3つの非翻訳領域にある2つの変化が遺伝子の発現に潜在的に影響を与えることを示した。さらに、WKSの109例と220例のコントロールによる遺伝子関連の研究では、WKSにおいてSLC19A3遺伝子上の4つのマーカとの関連性を示した。他にも関連している遺伝子があるかもしれない。WKSは多因子遺伝疾患であるかもしれない。
 
 単なる栄養不足によるTDと異なり、アルコール依存でのTDでは高用量のVB1が必要である。BBBやトランスポーターや酵素系が障害されているかもしれない脳への到達を可能にするVB1の濃度は、正常な濃度ではなく高濃度が必要である。吸収も低下している慢性アルコール中毒患者への経口投与では、高濃度は達成されていない可能性がある。しかし、プラセボとの対照研究はまだない。アルコール依存におけるワーキングメモリとVB1の投与量との関連を調べた研究では、200mgの筋注は5mgの筋注よりも著しく有効であることが示された。高濃度の方が確実に効果があるのである。さらに、WEでは高用量のVB1の経口投与では死亡例を防げないことが示されている。臨床反応を得るためには最初の数時間でチアミンを1gまで非経口投与する必要がある場合がある。ウェルニッケ脳症の即時治療については表に示した(大量にチアミンを非経口投与しても有害事象が出たのは0.001%であり殆ど生じない。なお、著者らは、参照したスライドではメマンチンが健忘の進行を防止するのに有効であると記載してあった。)

WEの即時治療








 

 栄養失調によるWEは劇的な変化で生じるため見逃されることはないが、アルコール依存によるWEではアルコールにより症状がマスクされ不顕性であり見逃されることがある。チアミン二リン酸(TDP)の血中濃度の測定がWEを発症することを識別できるかもしれない。TDPはメモリパフォーマンスに関連していた。これは、チアミンの輸送障害があるケースは記憶障害を発症する危険性があることを意味し、WEの予測因子になるかもしれない。WEの非アルコール性とアルコール性での比較では、アルコール性では眼症状、小脳症状, 古典的3兆候(眼球運動障害、失調性歩行、意識障害)、精神状態の変化が多かった。しかし、脳の神経病理学的所見と臨床病状とが相関しないこともある。(3症状があるのは16.5%でしかない。WEを疑う症状がなった例は18.6%もある。94例のアルコール性WEのうち64例はWEと診断されなかった臨床所見を信じてはいけない。なお、眼球運動障害は適切なチアミン投与によって1.5~6時間で改善が見られるはずである。)
眼球運動障害







 治療が開始される前に既に不可逆性の脳へのダメージが存在するかもしれないが、それは適切な量のVB1が長期的に与えられてからの結果を見ない限り推測できない。現時点では適切なVB1の量は分からない。英国ではチアミンはPabrinexという製剤で経口投与されている。Pabrinexは、アスコルビン酸500mg、ニコチン酸アミド160mg、塩酸ピリドキシン50mg、リボフラビン4mg、チアミン塩酸塩250mgを含む。ニコチン酸欠乏においても有効と思われる。しかし、残念ながら、英国ではアルコールによるWEを治療するためのガイドラインをまだ持っていない。
 
 アルコール依存症では以下のことを考慮してWEのリスクを評価しておかねばならない。
(1)アルコール依存症の重症度と依存の期間、断酒の期間。
(2)むちゃ飲みのパターンがあるか。
(3)性別。むちゃ飲みする若い女性が特に危険に晒される可能性がある。
(4)飲酒開始年齢。依存になった年齢(遺伝的な素因を持つ場合はアルコール依存が始まるのは25歳である)
(5)離脱時のてんかん発作などの合併症の既往や重症度。
(6)アルコール関連肝障害などの身体合併症の既往や重症度。
(7)BMIや栄養/栄養不良の度合。
(8)アルコール解毒の既往(解毒の回数や内容、経口でチアミンが与えられたかどうか、)
なお、若い患者では悪い状況下にあってもチアミンへの反応は早いが、高齢者であることは慢性的なアルコール依存と複数の不顕性のWEエピソードを有し予後不良である危険因子となる。
 
 KSは、重度の前向性健忘と逆行性健忘、時間や場所の見当識障害、病識欠如によって特徴づけられる。末梢神経障害、眼振、運動失調も存在するかもしれないが、KSでの眼振や運動失調は以前のWEのエピソードに関連しているものであろう。他の共通する症状としては、作話、不安、意欲低下がある。KSでは前頭葉の機能、遂行機能、時間空間処理の機能を調べるテストで低い点数を示す。しかし、IQはしばしば保たれており、手続記憶、意味記憶も保たれている。最近の研究では、KSはARBDが続いている結果であるという理論が支持されている。認知機能の評価はアルコール離脱後4週間までは行われるべきではない。
 
 WEが誤診されるか、VB1の治療が不十分である時に、KSが発生する。しかし、診断された時点で既に永続的または半永続的な脳障害が存在し、治療への反応が制限されるケースがある。常にWEのリスクのある患者を同定し非経口VB1の十分な量で治療しなければならない。チアミンの要求を増やすような脳内の変化が生じる前の時期での早期の介入が重要である。アルコールと非アルコールによるチアミン欠乏によるWKSには差がある。非アルコールでのチアミン欠乏ではKSに移行することは稀であり、KSはアルコール性で多く生じる。メカニズムが異なっており、アルコール性では高用量のチアミンの非経口投与が必要となる。我々は、WEを持つ多くのアルコール依存症は、チアミンで治療した後にもKSに移行するという現実に直面している。既に発症時には不可逆的な脳のダメージが存在するのだろう。非経口のVB1に対する応答や必要な量は様々である。必要となる非経口のVB1の量と期間に関する対照試験はなされていない。ARBDからの回復は時間がかかる。必要であれば数ヵ月にわたり脳機能に必要な他の栄養素の全てを供給し、非経口でVB1を与えねばならないだろう。今後の研究課題はアルコール中毒と離脱の繰り返しによる脳への相乗効果を調べることである。
 
(論文終わり) 

 この論文の著者らは、英国のアルコール性のWEのスペシャリストである。しかし、論文では、大量のチアミンの非経口投与でも、それでもなお、認知症への移行を防ぎ切れないケースがあると述べられている。アルコールの暴露によって脳神経細胞のTHTR発現も低下しているため、細胞内にチアミンをスムーズに取りこめなくなっているのかもしれない。

 場末の病院にはもっと条件の悪い患者が紹介されてくる。高齢者で、精神状態が極端に悪くなるまでは妻からも放置され続け(もはや解毒したところで手遅れかもしれません)、栄養失調、加齢による変化、脳血管性の変化など、多くの認知症へのリスクファクターが揃い過ぎているのである。場末の病院だし、大学病院でもないし、そんな悪い条件が重なったケースの認知症への移行が防ぎ切れなくても仕方がないことだと論文を読んで納得できた次第なのであった(そんな簡単に納得していいのかと言われそうだが)。

 これからは、病棟のナースから変に思われても嫌がられても、薬局からVB1の過量処方だとクレームの電話がかかってこようが、本人が点滴を拒否しようが、とにかく入院初日には最低10本はアリナミンFを、他のビタミン剤と伴に、口からではなく静脈(点滴)から投与するぞと誓ったのであった。もちろん酢も飲んでもらうのだ。それでも認知症に移行したらもう諦めるしかないだろう。

 このアルチュハイマー病の問題は非常に考えさせられるテーマである。論文の著者らも、解毒のための断酒がWEを進行させる懸念があると言っている。もうここまできたら、最後まで断酒や解毒をせずに天寿を全うしてもらうのもありかと思える。認知症になるリスクを冒してまで断酒する意味があるのだろうか。断酒が災いして認知症になってしまう本人にしてみたら、そんな哀れな認知症になってまで解毒や断酒はしたくないと言うかもしれない(断酒によってかえって逆に認知症が進行するリスクは家族には説明することはあるが、それでも、入院して断酒させて解毒させてください、できればずっと入院させておいてくださいと言う家族ばかりである)。解毒は本人の意志ではなく、家族の希望で家族のために行われる場合も多いのだ。しかし、赤塚不二夫のような生き方もありかもしれない。騒いだり暴力を振るわなければ、酒を飲んでいようがいまいが、家族としてはそれでいいのだから・・・。

 
(しかし、チアミン大量投与でも防げないということは、アルチュハイマー病には他にももっと問題が潜んでいるのかもしれない。もう少し調べることにした。)

以下、次回に続く。

バカボンのパパ1

恐怖のアルコール その1 (酢を昼間から飲んでいた酒豪のクラスメートの謎がようやく解けた)

 大学時代に酒豪のクラスメートがいたが、彼はよくを飲んでいた。彼の机には酢の瓶がいつも置いてあり、コップについではガブガブと飲んでいた。彼が言うには、酢がすごくうまいのだという。しかも酢を飲むと集中力が高まり勉強がはかどるのだという(そんなことあるかいな)。

 しかし、この謎が30年以上も経ってようやく解けたのであった。アルコールを飲み続けると、脳の神経細胞はアルコールの代謝産物である酢酸ばかりをエネルギー源として利用するように変化してしまうという論文が出たのである。彼は、ブトウ糖よりも酢酸を好んで消費するようになった脳の命令に従って、昼間から脳のエネルギー源として酢を好んで飲んでいたのだ。今、ようやくクラスメートの謎が解けたのであった。

ET-AC





 

ヘビードリンカーの脳は酢酸を取り込んでどんどん利用している
「Increased brain uptake and oxidation of acetate in heavy drinkers」

 この論文は、これまで脳はブトウ糖しかエネルギー源として積極的に利用しないと考えられていたことをくつがえすような論文である。ただし、飢餓などの際には脳はケトン体を使用して一時的にしのぐことは既に分かっているのだが、ブトウ糖よりも酢酸を優先的に利用するようにシフトするというのは初めての発見である。

 一方、最近、易怒性や暴力や妄想(家族への、特に妻への被害妄想)が強くなり、物忘れや記銘力低下や見当識障害をきたし始め、一日中酒を飲み、酒がなくなると怒り始め、酒を持ってこい!!と家族に暴力を振るうため、家族が困り果てて内科病院などから直接紹介されて入院となるような、65歳を過ぎた高齢者のケースが増えている。精神症状は、アルコールによるものなのか、アルツハイマー病のような認知症としての疾患が生じてきているせいなのか、もはやどちらが主なのか区別し難いようなケースが増えているのであった。
 
 酒ばかりを飲み、食事はろくに食べないため、るい痩を認める(そうでない場合もある)。体はボロボロになりかけている(そうでない場合もある)。明らかに栄養失調である(しかし、栄養失調はない場合もある)。γGTPはかなり上昇している。GPTやGOTも上昇している。高血圧、高脂血症、糖尿病が合併していることもある。一方、頭部CT検査では、海馬や側頭葉内側というアルツハイマー病に特徴的な部位の脳萎縮があるような無いような、微妙な所見である。さらに、これもまた微妙であるが前頭葉にも萎縮があるように思える場合もある。おまけに、PVLやラクナ梗塞が少しあるあるような無いような、脳虚血性変化も微妙にあるケースもある。HDS-Rも25点前後くらい。これまた微妙である。物忘れや記銘力低下や見当識障害といった認知症の中核症状も微妙。既に認知症かと言えるような、認知症とも言えないような、とにかく微妙な段階なのである。画像所見も臨床所見も、何から何まで全てが微妙なのであった。なお、歩行障害、運動失調、眼球運動障害、意識障害などは無い(ウェルニッケ脳症を疑うような所見は無い)。作話も無いし明らかな健忘も無い(コルサコフ症候群とも診断できない)。

 定年となり、何もすることがないので暇だし、酒でも飲もうかと昼間も飲み始め・・・。朝から毎日飲むようになり、気が付いたら精神科病院に入院していました。定年ということがきっかけとなり、アルコールにどっぷりと浸るようになってしまったけど、かっては仕事一筋で日本を支えてきたりっぱな人です。仕事人間だったことが、逆に徒になったとしか言いようがない、これもまた人生さと言うような、切なさ一杯の人達ばかりです。

場末のP科病院にようこそおいで下さいました。もはや手遅れかもしれませんが、一応、アルコールの解毒として1か月ほどは入院してもらいます。

 ここで、不思議なことが起こるのであった。アルコールの解毒のために入院して断酒したにも係らず、認知機能が低下していくケースがあるのであった。確かに、断酒がきっかけとなり、シャッキとして良くなるケースは多い(このパターンが一般的である)。しかし逆に、断酒中にますます崩れていくようなケースがあるのである。
 
 頭部CT検査では脳の萎縮が進行したような所見はない。画像所見上は入院時との変化はない。しかし、入院時よりも退院時のHDS-Rの方が明らかに低い(HDS-Rが5点以上も低下することがある。20点未満になることもある)。これはどう見ても認知症が進行したとしか思えない。認めたくはないが、断酒が逆効果になったとしか思えないような経過なのである。
 
 いったい、何が起こったのだ。肝機能は良くなったけど、脳機能というか、認知機能が逆に落ちてしまうのでは、入院してもらい解毒した意味があったと言えるのだろうか・・・。そして、当院ではこういったケースを密かに「アルチュハイマー病」と呼び警戒しているのであった。(しかし、最近、本当に増えている。アルチュハイマー病が。)

 入院中になぜか見当識がだんだんと悪くなっていっている。病室も覚えられない。だんだんと身の周りのことができなくなっている(遂行機能障害)。作話のようなことを話し始めることもある(作話がないことも多いが)。何かがおかしい。断酒中に認知症疾患に移行していっているとしか思えない。コルサコフ症候群に移行しているのかもしれない。しかし、ビタミンB1(VB1)は多めにちゃんと飲んでもらっている(ただし、点滴ではなく経口投与が多い。点滴を拒否する人も多いし、そうなれば拘束して点滴せねばならない。しかも、食事をちゃんと食べていたら点滴しようという判断にはなりにくい)。ウェルニッケ脳症への移行は経口からのVB1、それで十分に防げるはずだ。事実、これまでウェルニッケ脳症を疑うような所見は一度もなかった。ウェルニッケ脳症になってもいないのに、ましてや、コルサコフ症候群に移行するはずはない。
(厚生労働省のHPより。ウェルニッケ・コルサコフ症候群の解説)
(同じく、アルコール性認知症の解説)

 さらに、入院当初は離脱症状の予防にベンゾジアゼピン系の薬剤を使用したが、その後は眠剤くらいしか使用していない。薬物は努めて使用しないようにしている。易怒性や暴力や妄想などが目立つ場合は、少量の非定型抗精神病薬やバルプロ酸などの抗てんかん剤は使用する。抑肝散も使用することがある。しかし、そういった薬剤で認知機能が落ちていくことがあるのであろうか。既に、重度のウェルニッケ脳症であるならば、飲酒・断酒とは関係なく病状が進行していき、そういった経過をたどらないとも限らない。しかし、ウェルニッケ脳症と診断できるような神経学的所見は入院時から全く無いのである。確かに、場末の病院だから、MRI検査機器はないため頭部CT検査しか実施していないのだけれど、入院前の内科系病院ではMRI検査をしており、ウェルニッケ脳症を疑うような異常も指摘されてはいない。まあ、血中のVB1の濃度の検査はしていないので、ウェルニッケ脳症を完全に否定できた訳ではないのだが。これはまるで神経学的所見がないウェルニッケ脳症とも呼ぶべき病状である。

 脳にも良いはずの断酒が災いとなる。認知症とまだ診断しきれないケースが、断酒によって認知症に移行する。断酒をしない方が良かったのだろうか。これはいったいどういうことなのだろうか。

 しかし、そういうことだったのかと、この論文を読んでようやくアルチュハイマー病の謎が解けたのであった。そうだ、これが原因だったのだ。

 もはや、脳が酢酸ばかりを利用し、ブドウ糖を積極的に利用しなくなっており、断酒によりエネルギー源にしていた酢酸が絶たれ、神経細胞のエネルギー産生が激減し、断酒が逆にアポトーシスを早めてしまったのだ・・・・・(;゚Д゚)。

 ウェルニッケ脳症前段階(認知症移行段階)+断酒による酢酸の供給停止に伴う脳へのエネルギー源の途絶→(ウェルニッケ脳症へ発展。しかも、このステージをいっきに飛び越えて)→完全なる認知症(コルサコフ症候群やアルツハイマー病を含む認知機能低下をきたす病態の複雑な合併)へワープ完了。

 そこに、もし、脳血管性の変化も加われば、病態は、さらに複雑なことになるであろう。脳へのエネルギー供給の激減によって、認知症へのワープ速度はさらに加速することだろう。
 
彼には酢酸が必要だったのだ。入院中に酢をどんどん飲んでもらうべきだったのである(そんなバカな)。

この論文によれば、

 アルコール依存症とはまだ診断されていないヘビーの飲酒家HD(週に8ドリンク以上の女性、週に14ドリンク以上の男性、そして飲むとしたら1日に4ドリンク以上は飲む。ただし、ドリンクの定義は論文では不明。ワインをグラスに1杯くらいが1ドリンクか。日本酒にしたら1合くらいが1ドリンクか?)とライトな飲酒家LD(週に2ドリンク未満)を被験者として採用した。そして、放射性同位元素である13Cで標識された酢酸([2-13C]acetate、AC2)を用い被験者に静脈内投与し、magnetic resonance spectroscopy(MRS)で脳内の酢酸の代謝スピード、13Cで標識された、Nアセチルアスパラギン酸N-acetylaspartate (NAA)、グルタミン酸glutamate(Glu)、グルタミンglutamine(Gln)、γ-アミノ酪酸GABAなどを解析した。これらの13Cで標識された物質は、静脈から投与した酢酸から生成されたものだと分かる仕組みである。(MRSの解析手法などは省略する)。

(この論文の著者らは既にラットによる実験にて、今回の結果をある程度予測をしていたようだ。)

 その結果、ヘビードリンカーHDは血液よりも2倍に濃縮された脳内の13Cで標識された酢酸の濃度を持ち、LDよりも2倍以上の13Cで標識されたグルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)の濃度を示したのだった。さらにLDでは検出されなかった13C-GABAもHDでは検出された。

brain-ac-tca
 











 

 これらの所見は、飲酒の習慣の影響で、脳が積極的に酢酸を神経細胞内に高速にトランスポートし、酢酸を代替エネルギー源として積極的に利用するように変化していることを意味する。その結果、グルタミン酸、グルタミン、GABAが増えていることを示唆する。グルタミン酸やグルタミンは肝性脳症の発現機序にも関与しており、酢酸をエネルギー源とするグルタミン酸の増加などの変化はアルコールの離脱時の意識障害と関連しているのであろうか。

(肝性脳症の発生機序について)

 酢酸は、アセチル-CoAシンセターゼ(acetyl-CoA synthetase)を介してトリカルボン酸(TCA)サイクルに入り酸化される。その過程でアデノシンが多く作られる(=adenosinergic)。アデノシンは抑制性神経伝達物質として神経細胞外に放出されて鎮静的に働く。そしてアデノシンは薬物依存形成にも関与しており、禁断症状や離脱症状の発現にも関与していることが分かっている。断酒によりアデノシンの生成は減少し、それが離脱症状に関連しているのかもしれない。さらにこのアデノシンが増えるというメカニズムが、飲酒への動機付けとなり、飲酒行動にさらに向かわせることになるのであろう。
(アデノシンと薬物依存に関する詳しいレビュー)

TCAcycle















 大量のアルコール摂取は低血糖につながるが、ブドウ糖の利用を減少させ、アルコールから産生された酢酸を積極的に利用することで、脳がアルコールによる低血糖という現象に対抗しているのだろう。まさに、脳のアルコールへの適応現象である。しかし逆にその適応が断酒時の徒になってしまうようだ。

(アルコールの暴露によって神経細胞のグルコース・トランスポーター・タンパク質GLUT1とGLUT3の発現が減少する。神経細胞に存在するGLUTは、もっぱら1と3である。3がメイン。アルコールに暴露され続けば、永続的な神経細胞のブドウ糖利用の減少につながる。しかし、アセチルLカルニチンAcetyl-L-carnitineがGLUT1とGLUT3の発現減少を防止する。大酒家はアルコールによる認知障害の予防のためにアセチルLカルニチンを内服すべきである。なお日本ではアセチルLカルニチンは未発売である。海外から個人輸入するしかない。)
(アルコールによってGLUTが減少し、BBB機能障害を誘発する。これが、古典的ウェルニッケ ・コルサコフ症候群とは区別される酸化的神経損傷や神経認知障害を引き起こす。)
(GLUT3について)
http://en.wikipedia.org/wiki/GLUT3
(酢酸の優先利用はアストロサイト内へのの酢酸のトランスポートの増加に起因する。)

 そして、確かに、入院後に何らかの離脱症状が出たほど、さらに、その離脱症状が激しければ激しいほど、アルチュハイマー病としての経過をたどる傾向があるようにも思えるのであった。離脱症状の激しさは、それだけアルコールによる脳の代謝の変化(酢酸の利用増加、ブドウ糖の利用減少)を反映しているのかもしれない。(なお、他の身体状況、るい痩や栄養障害などはそれほど関係はないようにも思える。とにかく一番関係があるのは、何らかの離脱症状が出たか出なかったである。)

 さらに、論文では、深酒を繰り返すことは、脳が酢酸ばかりを消費するようになるこの適応メカニズムが促進されるから非常に危険であり、深酒はやめねばならないと警告している。これらの現象を防ぐには、酒を飲む時はちゃんと食事も食べてブドウ糖を減少させないようにすることが大切だと著者らは述べている。

 そして、この論文では、最後に、アルコール依存症の解毒時の禁断症状などを緩和するために酢酸を供給することが有益になるだろう。と締めくくられていた。

やはり、酢が鍵だったのだ。酒豪の大学のクラスメートが30年前に証明していたのだ。

 医局でその後、この話題になった時に、あるドクターが、そう言えば、酒飲みはポン酢が好きですよね。何にでもポン酢をかけて食べてませんか。と指摘した。ポン酢とかマヨネーズとか、そういった酢の入った味付けを好むようになったら危険なサインかもしれませんねえ。大酒飲みの病院のA部長が宴会でポン酢ばかりじゃぶじゃぶかけてましたよ。と話していた。

 私も酒は飲める方である。飲酒は週に3日。1回にだいたい350mlの缶ビール2~3本くらいの酒量か。外では殆ど飲まない。妻のおいしい手料理を食べながら自宅で飲むので、満腹になって飲めなくなってやめるのだが、しかし、飲もうと思えばいくらでも飲める。

げっ、そう言われれば、俺も最近はよくポン酢を料理にかけているではないか。こ、これは「ポン酢症候群」とも言うべき危険なサインなのかもしれない・・・。(;゚Д゚)
 
ところで、じゃあ、VB1はアルチュハイマー病とは関係なかったのだろうか。

(以下、続く)


(ポン酢好きのツィッター↓。ここに書き込んでいる人達、マジでやばいかも。)
https://twitter.com/anything_ponzu 

ポン酢

テレビのCMでは友蔵さんになるはずが、とんでもないことに・・・

ちびまる子ちゃんを使ったCM:エーザイ→アリセプト 
樹木希林を使ったCM:第一三共→メマリー 

TVでこの2つのCMをよく見かける。 

なぜか、薬の名前は一切出てこない。出てくるのはスポンサーの製薬会社名のみである。認知症はこのように良くなるのだというキャンペーンだと思われる。 

しかし、こういったキャンペーンは無責任であるし誤解を招くだけであり、TVでは流さないでほしいと思うのだった。 

アリセプトを内服してちびまる子ちゃんの祖父である友蔵さんみたいに優しい老人になるのはごく小数だろう(温和で穏やかになることは、薬理作用からすれば限りなくゼロだろう)。 

逆に、友蔵さんとは正反対の暴力老人になり、家族がどんでもないことになることが多々あるのだということは、あのCMだけ見ていたのでは一般市民は知るよしもないだろう。 

発売当初からアリセプトには5%もの頻度で暴力誘発といった有害事象が生じると警告さているのだが、個人的な使用経験からはもっと高頻度のようにも思えるのだった。 


ネットを検索すると、認知症の親がアリセプトを飲んでからすごく暴力的になってしまい、どう対応していいか困っているという家族の書き込みがたくさん出てくるのである。 


皆、アリセプトの内服で認知症になった親がちびまる子の友蔵さんのようになると期待していたのだろうけども、皮肉にも、友蔵さんどころか、正反対のとんでもない暴力老人になってしまい、あたふたしている姿が眼に浮かぶのである。 

アリセプト





 

製薬会社が認知症は良くなるのだというキャンペーンをするのは自由だが、キャンペーンと同時に、有効率、特に著効率は、DLB(レビー小体型認知症)を除けばせいぜい10%以下だろうが、もの忘れなどが改善する一方、攻撃的になり、暴力行為といった有害事象が出ることもあるのだということを必ず説明しておくべきである。 

(そのようなことをCMで流せば薬の売れ行きは確実に落ちるであろうが、販売者の説明責任を放棄しているように思えるのである。) 

エーザイがやっていることは、まんがのキャラクターをたくみに利用した非常にセコイやり方としか思えないのであった。 

さらに、メマリーのCMも誤解を招くようなCMである。そもそもメマリーの適応は中等度以上にまで進行した認知症であり、TVに出てる樹木希林が演じるような老人にはもう二度となれないのである。 

樹木希林が演じる老人は、あれはどう見ても初期かMCIのレベルである。認知症が中等度まで進行したら、メマリーを飲んだからといって初期に戻れるはずがなく、樹木希林が演じるような老人になれるなんて絶対にあり得ないのである。 

あんな甘い期待だけを持たせるようなCMは罪作りであるし、あのような誤解を招くようなCMは精神科医としては迷惑なのであった。 

誇大広告としてJAROは規制できないのであろうか。
 
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